<生か?死か?>…カズミと霞

某月某日 ここ某国に日本国首相による歴史的訪問が行われていた。

「ようこそ、わが国へお越しいただきました」

笑みを浮かべながら、その小柄な男は通訳を介して手を差し伸べた。そして、同じく笑みを浮かべながらその手を握り返す首相を某国の報道陣のカメラがフラッシュを焚き、取り囲む。

「私は以前から日本の文化、娯楽には大変興味がありましてね・・・」

文字通り外交辞令とも取れる某国指導者の言葉だが、事実その宮殿や邸宅には日本映画のDVDやビデオを数千本コレクションしていることは既にマスコミを通じて知られていることでもあった。

「それはうれしいですね、閣下・・・ところで最近はどういったものを特にお好みですか?」

首相も会談の糸口を見出したかのように、質問で返す。

「そうですね・・・今はゲーム、TVゲームに凝ってますよ、年甲斐もなくね・・・」

「ほう・・・いやいや、それはお若いですな・・・ちなみにどんなゲームを?」

首相の掘り下げた問いに指導者は、卓の上にある茶を一口含むと又笑みを浮かべながら答えた。

「“生か?死か?”・・・ふふふ、ありふれた格闘ゲームですよ・・・」

この会談より遡る事、約1年・・・・・某国より将軍直々の命を受けた諜報員の姿がここ日本にあった。手元には、人気格闘ゲーム“DOA”の登場キャラクターのイラストと詳細な設定プロフィールが抱えられていた。

霞・・・身長158cm 体重48kg 3サイズ B89W54H85 年齢17歳 国籍:日本 ロングのストレートヘア

このゲームの本来の設定に加え将軍による希望事項も添えられていた。

@     髪は黒髪のロング

A     黒目がちの丸顔

B     武道、もしくは格闘技をたしなんでいる者(さほど強くなくともよい)

C     処女であること

等々・・いささか偏執的なほどといっていいほど数々の将軍の好みが書き連ねてあった。この条件を満たす少女を拉致すること・・・これが彼ら諜報員に委ねられた特命であり、そして、この諜報員もその命に何ら疑いや反発を抱くこともなく遂行をしていた。独裁国家の官吏である彼らにとって、将軍の命に従うことは至極当然であり、むしろその命を未だ完遂できていないことに焦りを覚え始めていた。これまで本国へ候補となる日本人少女の映像、資料等を送付していたが未だ将軍のお目に適うものはなかったのだ。既に他のキャラクターは世界各地に飛んだ諜報員により集結しつつあり、残るは将軍が最も御執心の“霞”を待つのみとなっていた。

「くっ・・・・一刻も早く見つけなくては・・・・閣下のゲームの駒を!」

そうした頃、ある1人の少女が悪魔の手先の目に留まることとなった。

北川 和美 … 16歳 高校1年生 身長156cm 体重47kg B84W58H83 6歳から14歳まで父親の勧めで空手を続けるが高校受験を機に2年前にやめる。当時3級(緑帯)。家族構成は父母、そして7つ下の妹の4人家族。

(和美)は空手をしていた時には稽古の妨げにもなるので短くしていた黒髪を2年前から伸ばし始め、間もなく腰に届こうとしていた。その今どきの女子高生にしてはめずらしい美しい黒髪と、黒目がちな大きな瞳、丸みを帯びながらもすっと通った鼻筋、そして柔らかな唇と学校でも一際目を引く美少女へ成長していた。サイズはゲームのキャラクター“霞”よりもやや小ぶりだが、形のよいEカップのバストとくびれたウエストは充分ナイスバディといってよい・・・いや、むしろその幼さと可憐さの交じり合った容姿、肢体は正に今回の標的となるにふさわしいとさえいえる。諜報員より、さっそく映像を含む資料が本国へと送られることとなった。

某国内宮殿にて資料を手にし、笑みを浮かべる将軍・・・そして将軍からいよいよGOサインが出された。

ある日、和美は小学3年の妹・綾美との買い物を終え家へと向かっていた。母が勤めに出ており、又年が離れていることもあり、和美は綾美をよく可愛がり世話をしていた。綾美の方もよくなつき、2人の可愛らしい容姿と相まって評判の姉妹であった。この日は綾美の9歳の誕生日とあって、2人でそのプレゼントを買いに行ったのだが、2人は店を出て家への帰り道の間わずか300mの間で忽然とその姿を消した。まるで神隠しのように・・・。

「・・・・・・・うぅ、ここは?・・・ここは、どこ?」

薬で眠らせられていたのか、少しぼうっとする頭を振り和美は目を覚ました。そこは一見した限りでは質素なホテルの一室であり、空調が効いているのか季節は冬に近いというのに汗ばむほどでもあった。動揺する気持ちを抑え、ゆっくりと意識を辿る和美。衣服は捕らえられる時に着ていたセーラー服のままであり、乱れは殆どなかった。このことは少しだが少女に安心感をもたらせた。しかし、意識が覚醒するとともに和美は重要なことを思い出した。

「あ、綾美!・・・・・・・・綾美は?!」

妹がそばにいない・・・自分だけが誘拐されたのならまだしも、妹の安否が今の自分にはわからない・・・。不安に駆られて未だふらつく足で部屋の扉に取り付き、叩いて人を呼ぶ和美。

ドン!ドン!ドン!

「開けてください!・・・誰かいませんか?・・・ねえ!」

部屋は厳重に外から鍵が掛けられていたが、程なく近づいてくる足音を耳にした。近づく足音に警戒し扉から距離をとる和美・・・そしてゆっくりとその足音の正体が扉を開いた。

ギィィィ・・・・。

少し軋んだ音と共に現れたのは、身長180cm以上の大柄でがっしりとした体格の、男3人であった。一瞬怯んだ和美だが勇気を奮ってその内の1人にすがりつくように自分達が何に巻き込まれたのかを問い質した。

「あなた達は?・・・あたし達をどうしようっていうんですか?妹はどこなんですか!?」

「これから話をしてやる・・・静かにしろ!」

「あうっ!」

少し訛りのある日本語で取り乱す和美をいなすようにベッドへと突き飛ばした。身体を起こし、ベッドに腰掛けた状態で唇を噛み締める和美。

「まず貴様の妹だが無事我々が保護している。この国では、まあVIP待遇といっていいだろう。しかし、貴様が我々に従わねばどうなるかは保障しかねるがな・・」

男の言葉に未だに現状が飲み込めない和美だが、今聞いたことを断片的に考えるならば彼らは綾美を人質に和美に何かをさせようということなのか・・・しかし、親に身代金を要求するならわかるが、ごく普通の女子高生に過ぎない自分に一体彼らは何を要求しようとしているのだろう。

「・・・・一体あたしに何をさせようっていうの?」

「貴様は我等が敬愛する将軍閣下様に選ばれたのだよ」

(将軍閣下?・・・・もしかして・・・・)

和美の脳裏に新聞やTVニュースで報道されるあの拉致国家が浮かんでいた。その顔色の変化を見て取ったのか男の1人が、和美に語りかけた。

「そう、君の身は既に我が国家の中にある・・・君、そして君の小さく愛しい妹の生殺与奪も我が将軍閣下の御心のまま、ということだ。」

「そして君には我が将軍閣下の下で遊具の駒として働いてもらう。幸い君には空手の心得もあるようだし、閣下もさぞやお楽しみとなられることだろう。」

淡々と語り続ける男達に、和美は言葉を失っていた。

一体自分に何をさせる気なのか?・・・・・やがて男達の口から発せられた言葉は、あまりにも現実からかけ離れ、又恐ろしいものだった。

「閣下は最近日本のコンピュータ・ゲームに極めて御執心でな・・・特に格闘技ゲームの、えぇと日本の言葉で訳するならば“生か?死か?”だったかな、それをいたくお気に入りでな、お忙しい公務の合間を縫われてはやられておられていたのだが・・・しかし!」

「・・・・・・・?」

怪訝な面持ちで男の言葉を聞く和美だが、男は尚も言葉を続けた。

「最近閣下は、ゲーム上の戦いに物足りなさを感じられるようになられてな、是非現実の人間で、それも叶う限りゲームに忠実なカタチの者を揃えてやりたいと申されたのだ。登場人物の中に10代の少女がいるのだが、それに最もふさわしいと選ばれたのが君なのだよ。」

「幸い閣下も君を大層お気に入られたようだ・・・誠に名誉なことだ。」

「つまり君は閣下の宮殿の地下に建造された秘密闘技場で、これから他の諜報部員によって集められた者どもと戦ってもらうのだよ。」

「そ、そんな・・・そんな何故?何であたしが!?」

この恐ろしい計画に反問する和美・・・しかし、男達は眉ひとつ動かさず答えた。

「我等が国家に(何故?)や(理由)は、存在しない・・・・将軍閣下が望まれた、そのことこそが最大の理由だ!」

「おかしいわ!・・・・あなた達、狂ってる!」

男の上着にすがりついた和美に男は尚も言い放った。

「君がどうしてもと言うなら、君の愛しい者の安全を保障しないといったはずだが・・・・どうするね?」

この言葉に和美は力を失いその場に崩れ落ちた。

「・・・・綾美、・・・・・・・・・・」

こうして1人の日本人少女の地獄のゲームへの参加が決まった。

拉致をされてから1週間、和美はあわただしい日々を過ごすこととなった。闘技場での衣装のための採寸、そして何とわきからアンダーヘアの脱毛処理、その合間を縫っての基礎トレーニングのカリキュラムまで分単位のスケジュールが組まれていたのだ。かつて空手道場に通っていたとはいえ高校受験を機にやめて以来、約2年のブランクがあり、しかも3級(緑帯)で小柄な少女に過ぎない自分に大人を相手に五分に渡り合うなど到底不可能に思えた。又その間、妹・綾美とは1度電話での会話が許されたのみであった。闘技場のことは固く口止めされた和美は綾美に出来るだけ早く迎えに行くから、と伝えることしか出来なかった。今の自分に出来ることは、この狂った独裁者によってお膳立てされた“生か?死か?”のゲームの舞台に立つことしか選択は許されないのだから・・・。

こうした日々の中、少女の健気な覚悟に鞭打つように、この闘技場でのルール説明が諜報員によって伝えられた。ワープロによって日本語で記された数枚に亘る紙は以下のような内容だった。

闘技場規則

閣下のお手元の操作によって試合形式・時間、中止・継続・終了、他のすべてが委ねられる。閣下からの「戦え」という指示に従わぬ場合は試合放棄とみなされる。尚、闘技場での戦いの結果によって以下のポイントが加算、もしくは減点される。


ギブアップ勝ち            ・・・ +30pt

KO 勝ち              ・・・ + 5pt

タイムアップによる引き分け     ・・・ + 1pt

ギブアップ負け           ・・・ −50pt

KO 負け              ・・・ −20pt

試合放棄・無気力試合        ・・・−100pt

尚、対戦相手を死亡、もしくは再起不能へと陥らせた者は、厳罰に処するものとする。

累計ポイントが+100に達した者は、将軍閣下の御慈悲により、闘技場への解放を認めるものとする。又累計ポイントが−100に達した者はその者及びそれに所縁ある者を極刑とする。

つまりここに書かれている規則によると、ここ地下闘技場で和美は巨大な悪鬼のような相手と立ち向かい、その責めに耐え続けなければ和美と妹・綾美の命をも奪われてしまうということであった。しかもこのポイントルールだと、相手は和美に失神さえも許さずギブアップを口にするまで責め続けることだろう。

「そ、そんな・・・・無茶です!」

この規則によるポイントを加算してゆくとKO負け5回で和美達姉妹の死が宣告されることとなる。当然、和美はこの紙を渡した諜報員に猛然と抗議した。が、男の口からは尚も淡々と補足説明が加えられた。

「貴様が戦いを途中で放棄せずに最後まで立っていれば何の問題もないことだ。途中で気を失うようなら我等闘技場の官吏が何度でも起こしてやる。ましてや貴様はこの将軍閣下の一番のお気に入りだ。相手には殺しはせぬように申し伝えてある・・・が、情けや容赦もならんと言ってあるがな。もし貴様が試合を放棄したり、又不幸にして命を失うことがあれば、そのときは貴様の幼い妹が地下闘技場の生贄として捧げられることとなる。せいぜい頑張るんだな!」

「・・・やるしかない・・・の?・・・・・」

もはやあらゆる逃げ場を失い追い詰められた少女にとってここで戦うことしか道はなかった。

採寸から1週間後、和美の下に完成したコスチュームが届けられ、試着を命じられた。男の前での着替えに恥らうが今の和美に逆らうことは許されない。係の者に命じられるまま和美は着替えを始めた。

爪先が足袋状に分かれている薄い白のニーソックス、そして同じく白いビキニタイプのハイレグショーツにベアトップのブラ、その上から青地に白い縁取りの付いたミニの忍者装束・・・・・といってよいのだろうか、袖は半袖で丸く膨らみゲームの設定よりも更に短い膝上20cmの丈に加え、腰のところから両サイドに大きくスリットが入りアンダーのビキニショーツが丸見えになる・・・・・を羽織る。ショーツなどはかなりのハイレグでほとんどTバックの状態で穿かないと、尻の割れ目が上からはみ出してしまう。

「やだ・・・何これ?」(・・・だからヘアの脱毛までさせたのね・・・・・・)

上から更に青の手甲と足には同色のレガース状のすね当てを装着された。生まれて初めて着る露出の多いコスチュームを試着し和美は恥じらいの声を上げるが、男は何の反応も示さない。ここにいる和美は既に将軍閣下の所有物であり、その和美にあらぬ感情を抱くことさえ国家に対する反逆という思想が徹底されているのだろう。今着ている青いコスチューム以外に白地に赤の縁取りの入った、ノースリーブタイプのものも用意されていた。この2種類とその予備を含めて10数着が和美に手渡された。これをあつらえた係の者によると、このコスチューム1着を作るのに、この国の平均賃金の約半年分を費やしているとのことであった。又地下闘技場の建設費及び、和美とこれから闘技場で戦う者たちにも当然コスチュームが用意され下層階級の民衆が凍え飢えている中、この国の指導者は自らの歪んだ欲求を満たすために、莫大な金を投じていた。

「サイズはいいようだな・・・貴様のデビューが明日の夜7時と決まった。」

「え?・・・相手の人って誰なんですか?」

「それは当日閣下がお決めになられる・・・今から闘技場へ案内してやる。今日からそこにその姿のまま泊まってもらうぞ。」

有無を言わせぬ口調で男は和美をついて来させた。上からコートを羽織ることだけを許可され、その格好のまま車に乗り込む和美・・・。

車で小1時間といったところで到着した場所は、この国の首都郊外にあった。入り口には衛兵が構えていたが、和美を先導する男に敬礼をすると中へ通された。

「・・・・すごい・・・・・・」

門をくぐると中は各種の石工細工で飾られ、広さはちょっとした大学のキャンパスくらいあるだろうか・・・圧倒される和美に男は顎でこっちへ来いと促した。数百m歩き、ようやく屋敷に入ると中から執事を始め大勢の召使が更に奥のエレベーターと案内する。男とエレベーターに乗り込むと、地上4階地下2階までの表示が見える。どの階を押すのか和美が見ていると男は突如ふところから鍵を取り出し、鍵穴に差し込んだ。

「?」

すると行き先を示すデジタル表示が、あるはずのない地下4階を示した。

「一体・・・?」

「ここには選ばれた者しか入ることは出来ない・・・そして貴様の名は今から“霞”だ。」

いよいよ近づいてきた危険に身を震わせる和美に男は言い聞かせた。そしてエレベーターの扉が開くと、そこは白い光に包まれていた。

「あ・・・・眩しい・・・」

四方に設置された大型の投光機が地面を白く照らしていた。直径20m程の闘技場となっており、闘技場を取り囲むように直径約50cmの石柱が立てられている・・・これは柱としてよりもむしろ装飾としてのオブジェだろうか。又地面には黒土が一面に敷かれており片側の地上5m程のところに幅10m程の大型モニターが、その反対側同じく地上5m程のところに強化ガラスに包まれた観覧席が設けられていた。

「・・・・・」

「あそこに閣下がお座りになられる・・・そして閣下がモニターを通じて操作されるままに貴様はここで力尽きるまで戦うのだ。」

「・・・・・・・」

ただ自分の運命を受け止めるように無言で唇をかみしめる和美。男は更に続けた。

「閣下がお楽しみになられる時間は、閣下のお心のままとなる。ただし貴様が逃げ回って時間を稼ぐようなことをすれば、それは試合放棄とみなされる・・・それがどういうことかは、説明したな。」

「・・・」

言われるまま静かにうなずく和美。

「よし、では明日の7時まで休むがよい。」

奥を指差す男・・・奥には5坪程の部屋が用意されていた。そこへ入り明日の試合(と言っていいのだろうか…)を待つ少女。間もなく、その扉が開かれようとしていた。

一夜が明け、いよいよたった1人の独裁者のためのコロッセオが開かれようとしていた。SPおよび秘書と思われるものに連れられ、その小柄な男は観覧席に腰を下ろした。

「ふふふ、待ちかねたぞ、この日を・・・」

「ええ閣下、準備は既に整っております。どうぞ閣下の御手元のボタンをお押し下さい」

「うむ・・・・」

将軍がボタンを押すと、これまで薄暗かった地下闘技場に一斉に灯りが灯された。まばゆい光の中、二つの扉のうちの一つからコスチュームに身を包んだ和美、いや霞が登場した。霞として長い三つ編みの黒髪を黄色いリボンでまとめたその肢体は156cm47kgと小柄だが、まだ幼さを残しながらも均整の取れたプロポーションと端正な顔立ち、露出の多いコスチュームからのぞく透き通るように白い肌に将軍は息を呑んだ。しげしげと嘗め回すように見つめる将軍に側近が次の操作を促した。

「さあ、閣下、相手はどれになさいます?お手元のボタンで御随意に・・・」

将軍の手元に据えられた液晶画面には例のゲームに登場する様々なキャラクターの絵とプロフィールが映し出されていた。

「うぅん・・・・まずはこれでいくか・・・」

将軍の操作により霞の相手が決定された。和美が登場したのと反対側の扉から・・・・白人の巨漢がその姿を現した。

「私の霞・・・“レオン”を相手にどう戦うかな・・」

そう霞の初めての相手は“レオン”であった。コマンドサンボの使い手とされる大男が今霞の前に対峙していた。金髪をオールバックにまとめ、タイトな黒のタンクトップを破らんばかりに隆起した胸と霞のウエストほどもありそうな太い腕、そして下半身はカーキ色のアーミーパンツに編み上げの黒いブーツとゲームそのままのいでたちで現われた。

身長156cm体重47kgの霞と身長192cm体重128kgのレオン、ゲームの設定とほぼ同じ2人が向かい合うと、その体格差は残酷でさえあった。

「ずいぶんとサイズが違うものだな。」

「はい、閣下のお申し付け通りの者供を集めましたので・・・ただし、あの男は、残念ながらイタリア人ではないのですが元はソ連で軍人として、そしてペレストロイカ以降はコマンド・サンボの使い手として各地でバーリ・トゥードマッチやプロレス等を転戦していた者です。ただ残酷な性格が災いして、ある興行で対戦相手のプロレスラーやその女子マネージャーまで大怪我をさせて干されていたところを、我等が拾ってやりました・・・さあ閣下、スタートを」

「ふむ・・・それでは試合時間は、とりあえず30分で、と・・・ふふふ、持ちこたえてくれよ」

満足げに手元のコントローラーを操作する将軍・・・。いよいよ、“生か、死か”その火蓋が切って落とされた。

Ready・・Fight!』

機械的な開始の声と同時にレオンがじりじりと霞に向かって距離を詰めていった。

「へへへへへ・・・とっととお嬢ちゃんにはギブアップしてもらって、国へ帰らせてもらうぜ、たっぷりと大金を頂いてな!」

この男も又地下闘技場のポイントを得るためにこの戦いに挑んでいた。ただし霞が妹のために戦うのに対し、レオンは莫大な賞金を得るために、その身をここに寄せているのだが・・。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・」(つかまったら、終わっちゃう・・・)

慎重に空手流の構えを取る霞とは対照的に、レオンは余裕を見せつけるように両手を下げ、ノーガードの態勢をとっている。

「くっ・・・・」(完全にあたしが飛び込んでくるのを待ってる・・・けど、このまま何もしないでいたら試合放棄を取られちゃうし・・・)

「どうした、ジャップ?痛い目に遭う前にギブアップするか?」

「くっ!・・・・セイヤァァァァ!」

覚悟を決めた霞は、距離を詰めレオンの鳩尾へ正拳を打っていった。

ドスッ!・・・・霞の小さな拳がレオンの腹にヒットした、がレオンは呻き声ひとつ漏らすことなくその表情には笑みさえこぼれていた。

「どうした、今のはマッサージか、んん?」

「う、うそ・・・全然効いてない?・・・この!」

尚も霞は回し蹴りをレオンのわき腹へ叩き込んでいった・・・が、一瞬早くレオンの掌がそれを掴み片足立ちになる霞。

「クククク・・・、元気がいいな、たっぷりと楽しませてもらうぜ!」

「は、離して!・・・きゃぁ!」

レオンは霞の足を掴んだまま、もう片方の足を払い寝技に持ち込んだ。128kgの体重を霞の華奢な身体に乗せ、袈裟固めを極めていった。

「うぐぅぅ・・・・・」

肩と首をきめられた上に、体重を掛けられ呼吸が出来ない霞。レオンは少女の苦しげな喘ぎ声を楽しむように、じわじわと締めを強めてはいたぶっていった。

「どうだ、苦しいか?・・・貴様にギブアップの声を上げさせれば、200万ドルの賞金をいただいて、ここからオサラバ出来るって話だからな・・・殺したり、気を失わせるなんてもったいなくて出来ねえよ・・・なあ!」

「んぐぅぅ・・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・・」

早くも意識を朦朧とさせる霞の長い三つ編みの髪を引っ張って気を失わせないように揺さぶっていった。

「・・・あうっ!・・・うぅ・・・・・・」

「くくく、寝てんじゃねえよ、ジャップが!」

レオンが一旦霞から袈裟固めを解き、髪を掴み無理矢理立ち上がらせた。早くも霞のコスチュームは汗で濡れ、闘技場の黒土がその美しい肢体を汚していた。それを見て、舌なめずりをしながら笑みを浮かべる将軍の姿・・・。そして、その哀れな少女戦士の姿を将軍に見せつけると、レオンは霞の髪を両手で掴んだまま、首相撲の態勢から膝蹴りをその細いウエストに叩き込んでいった。

「フン!・・・フン!・・・・フン!・・・フン!・・・・」

ドスゥゥゥッ!・・・ドスゥゥゥ!・・・ドスゥゥ!・・・ドスゥゥ!・・・

「はうっ!うぇぇ・・げふぉっ!・・あうっ!・・んあぁぁ!・・あぁん!・・・」

少女の肉を打つ鈍い音が宮廷地下に何度も何度も打ち続けられていく。髪を掴まれているため、後ろにも前にも倒れることも出来ず、地獄の責め苦を味わう霞・・・。“レオン”と名づけられたこの男は、自らの胸ほどもない小柄な少女に容赦ない責めを打ち続けた。もちろん、気を失わせず致命傷を負わせることもせぬようにだが・・・。

「んぐぅ、げふぉっ!・・・」

霞の唇から赤黒い胃液がビチャビチャとあふれ出した。それを嫌い、レオンは霞をぼろ人形のように放り捨てた。

「ちっ!・・・汚らしいジャップが!」

「うぅぅ・・・あぁ・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・・」

うつ伏せのまま、倒れ込む霞・・・。土で汚れた青のコスチュームは尻のところが巻くれ上がり、白いショーツに包まれた形のいい霞の尻は丸出し状態となっていたが、もちろん今の霞にそんなことを気にする余裕などなかった。本来ダウンカウントが入るはずだが、それはすべて将軍の裁量の範囲となっている。

「ふん、実際には女では歯が立たぬか・・・まあ、その方が楽しめるというものだがな・・・」

観覧席で最上級のワインを口に含みながら笑みを浮かべる将軍。

レオンが倒れたままの霞の白い襟首を掴み、強引に立ち上がらせ、屈服の言葉を詰問していった。

「おら、ギブアップ?・・・ギバーップ?」

「げほっ!げほっ!・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・くっ!」

「痛ッ!・・・何?!」

意識が朦朧とする中、霞がレオンの手首と甲を掴み一瞬に捻り上げると、完全に気を抜いていたレオンの肘がテコの原理でひねられ、その巨体が一回転していった。

ズダァァァァァン!!

「グハァァ・・・・ッ!」

小手返し投げ・・・空手道場で“和美”が、力の劣る女子への護身術として授けられた合気道の技が、無意識の技として放たれた。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・今だ・・・・」

霞は一瞬何が起こったのか把握できないまま倒されたレオンの顔面に、残った力を振り絞って廻し蹴りを打ち込んでいった。

バキィィィィィィ・・・・・・・!!

霞の足の甲がレオンの鼻に痛烈にめり込んでいった。鼻から血飛沫を飛ばしながら、レオンの巨体が今度はゆっくりと後ろに倒れ込んでいった。

「や、やった?」

これまで感じたこともないような手ごたえに霞自身も膝から崩れ落ちた。霞の目の前に大の字に倒れ込んだ巨体・・・。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・」(やった、これで綾美に一歩近づけたんだ・・・)

しかし霞のこうした願いとは裏腹に、霞のウイニングコールはおろか、レオンへのダウンカウントもコールされなかった。それどころか足元より霞に低い笑い声が響き出した。

「ククククク・・・・・」

「な、何?・・・・」

霞は未だ倒れたままのレオンに再び立ち向かった。しかし会心の奇襲さえも通じなかった今、残された20分足らずは霞にとってこれまで以上の地獄を約束されたも同然であった。

「ククク・・・、やるじゃねえか、お嬢ちゃん。ジャップの分際で俺に血を流させるとはなぁ・・・けどこのオイタは高くつくぜえ!」

レオンが鼻から滴る血を拭いながら、ゆらりと立ち上がった。そして、これまでのノーガードと違いアップライトの構えを取り霞に近づいてゆく。

「くぅ・・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・・・」

相手が突っ込んでこない上に、掴みかかってくることもなければ返し技やカウンターを打つこともできない。レオンはそれを見越して霞との距離を詰め怒りを逆上ではなく冷酷に変え、霞との距離を詰めてゆく。

「クククク・・・さあ、さっきみてぇにこの俺を投げてみろよ・・・さあ!」

レオンは威圧しながら、ゆっくりと霞の首に大きな掌を巻きつけていった。

「んぐぅ・・・・ぅぅ・・・・」

蛇に睨まれたかのように、霞の細い首にレオンの大きな掌が絡みついていった。そして男の太い親指が少女の喉をじわじわと押し潰してゆく。頚動脈を絞め気を失わせる格闘技の技ではなく、少女を苦しめる拷問技・・・。霞の口がぱくぱくと酸素を貪ろうとするが、叶わずに地獄を彷徨うばかりである。

「どうだ?・・・んん、苦しいか?苦しいか?!」

「・・・んうぅぅ・・・・・ぁぁ・・・・ぅぅ・・・」

苦しみと戦いながら霞の両手が自らの首を絞めるレオンの両手を掴み、必死に引き剥がそうとする・・・が、圧倒的な力の差の前にびくともしない。いよいよ力尽き、霞の華奢な身体が痙攣を起こし、その指先がレオンの両手から滑り落ちようとした時、レオンがその右腕を自らの懐に巻き込んでいった。

「クククク・・・まだまだ眠らせんよ!貴様を殺しては元も子もないからな・・・」

「んぐぅ!・・・・あうっ!痛あァァァァァいィィィ!」

レオンは霞の右腕に脇固めを極めていった。先ほどまでの絞め技から腕への逆関節技への移行・・・。苦痛に慣れさせぬようにポイントを変えて責めてゆく・・・その非情の責めに霞はもがき苦しむしかなかった。

「クククク・・・・たまらんな、女の呻き声というのは・・・」

「んあぁぁぁぁぁぁ・・・・・っ!」

霞の細い腕が弓のようにしなり、へし曲げられてゆく。ビキビキと気味の悪い音が霞の耳を衝く。

「痛あぁぁぁぁいィィィィ!!うわあぁぁぁぁぁ・・・・・!!」(痛い、腕がちぎれちゃうよぉ・・・でも、ギブアップだけは絶対に・・・・)

「よくしなる腕だ・・・それでは、もう5ミリいくか?」

「んぎゃぁぁぁぁぁ・・・・・・・・ッ!」

レオンが、そこから更に霞の腕を曲げていくと、少女の悲鳴がもう1オクターブ上がる。将軍席真正面の大型モニターには苦痛に歪む美少女の顔がアップになって映し出され、それを眺めては悦に入る将軍。

「この辺が限界か?・・・ギブアップか?」

もちろんこのまま霞の腕を折ることなど、この巨漢にとっては容易いことだがそれはこのゲームの中では許されなかった。が、それは逆に折れる寸前の地獄の痛みを延々と、この少女に強いることにもなる。

「そうら、痛いか・・・あと、ほんのちょっと俺が力を入れれば、お前の腕など2度とまっすぐにならぬほど破壊してしまうぞ・・・さあギブアップしろや、さあ!」

「んあぁぁぁぁぁ・・・・・・・っ!いやあぁぁぁ・・・・!」

ぐりぐりと捻じる様に霞の腕を弄ぶレオン。霞の悲鳴が独裁者の耳をくすぐる。

「くっ・・・結構しぶといぜ!これ以上やると折っちまうからな」

脇固めを解くと、レオンは霞の痛めた右肩をぐりぐりと嬲るように踏みつけてゆく。わずかに足をばたつかせるのが、やっとの霞・・・。

「んうぅぅ!痛あァァァい!」

「どうだギブアップか?・・・おら!」

ドスゥゥ・・・ッ!

「がふっ!・・・・げほっ!げほっ!」

レオンの硬い爪先が霞の脇腹を蹴り上げた。もんどりうって土の上を転がる霞。だが、この情け容赦ない男は又もうつ伏せに倒れた霞の腰に馬乗りになり、今度はキャメルクラッチを極めていった。

「ちっ!もう、あと5分かよ・・・・将軍様のご要望どおりお前に傷ひとつつけずに地獄の苦しみを味あわせてやるぜ・・・おりゃ!」

「あぐっ!・・・んああぁぁぁ・・・!」

190cmを超える巨漢が、150cm台の16歳の少女に馬乗りになり、あごを持ち、後ろへ反り返っていく。霞の背骨と極められた首がミシミシと軋む音を立て、苦悶の声が漏れる。

「んくぅぅ・・・・・ぅぅ・・・・・」

「どうだ?・・・ギブアップか?・・・どうなんだよ?!」

レオンがわずかに力を緩め、霞に詰問する。

「うぅぅ・・・・」(死ぬ?・・・あたし、ここで死んじゃうの?・・・・でも、あたしが・・・)

もちろん霞も、この巨漢を相手に勝ち抜くことなど不可能であることはわかっていた・・・しかし、今の自分に出来ることはこの責め苦に耐え抜いて、1分でも長く妹を守ることだけ、ということも固く心に誓っていたのだ。

「やっぱりこれじゃ物足りねえか・・・なら、これでもまだ強情張るか?」

「んぐぅ!・・・・んん!」

レオンはその大きな掌で霞の顔の下半分をふさいだ。鼻と口を同時にふさがれ呼吸の出来ない霞・・・。

「んんん!・・・・ぅぅ・・・」

足をばたつかせ懸命に抵抗する霞だが、徐々に力を失ってゆき気を失いかけた刹那、レオンは手を離しうつ伏せになった霞の三つ編みを掴んで意識を取り戻させていった。

「んうぅぅ・・・・・げほっ!げほっ!げほっ!・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・・・」

「誰が寝ていいって言った?・・・あぁ?」

そう毒づくとレオンは再び霞から呼吸を奪っていった。

「はぐぅ!・・・・・・ぅぅ・・・・」(く、苦しい・・・・・死ぬ?!・・・・綾美・・・・・・・)

息が出来ず、又気を失うことも許されないまま霞は、ただ耐え抜いていった。休むことなく続けられる責めと、相手との圧倒的な力の差の前に何も出来ない自分があまりに情けなく、霞の瞳からぼろぼろと涙を流れだした。

「けっ!ガキが泣き出しやがったか・・・それでお情けでもかけてもらえるとでも思ってんのか!?」

手を濡らす涙にレオンが更に嗜虐心を煽られ、霞の上体を反らし、いたぶってゆく。

メキッ、メキッ、メキッ、メキッ!

「んうぅぅ・・・・ぁぁぁぁ・・・・・・」

霞の身体が地面にほぼ垂直にまで曲げられ、その細い腰からは骨の軋む音が響く。柔軟な身体を持つ霞だが、腰を128kgの巨体で押し潰され固定された状態で呼吸も出来ないままでの背骨折りはあまりにも過酷であった。そんな中、レオンが霞の口元から掌をはずし、屈服を迫っていった。

「さあ、ギブアップか?・・・それとも、まだ痛え目にあいてえのか!とっととギブアップしろや!」

「んぐぅぅ・・・・あぁ・・・・ぃゃ・・・絶対にいやぁァァァ!」

力を振り絞った霞の声は、レオンだけではなく将軍の観覧席にも響き渡った。まだこれだけの声が出せるほどの気力が残っていたことに驚かされるレオンと将軍。これまでの技と責めを否定されたかのようなレオンは霞をキャメルクラッチから解放し、霞を円柱に押しつける形で強引に立ち上がらせた。

「・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・・んうぅぅ・・・」

「けっ!コケにしやがって・・・・このガキが!」

虚ろな目で辛うじて気を失わないように意識を繋ぎ止める霞を喉輪で柱に押しつけると、レオンはもう片方の拳を握り締めた。

「・・・?!」

「オラァ!」

ドスゥゥゥゥ・・・・ッ!!

「んぐぅぅ・・・げふぉっ!げふぉっ!うえぇぇぇ・・・!!」

その巨大な拳が一撃で霞の薄い腹筋を貫き内臓にまで喰い込んでいった。口を開けたままパクパクと動かしているが一向に空気を吸い込むことも出来ず、逆に身体の奥から血と体液が逆流し溢れ出していった。少女の血反吐がビチャビチャと巨大な悪鬼の手を汚すが、悪鬼はお構い無しに2発め3発目を霞の腹に振り下ろしてゆく。

「オラアァァ!!」

ドスゥゥゥ・・・!!

「んげふぉっ!・・んああぁぁぁ・・・・うげぇ!」

ドスゥゥゥ・・・ッ!!

「はうっ!・・・ぁぁぁ・・・あぐっ!」

・・・・・・・・・

霞へのボディブローは尚も続けられた。胃袋、わき腹(肝臓)、胸、乳房・・・と女の苦しむところ、急所を休むことなく責め続けてゆく・・・。残り時間が大型モニターに『02:00』(残り2分)と映し出されていた。だがそれにも構わずレオンの霞へのボディブローは続けられてゆく。

「フン!フン!フン!・・・・」

「・・・ぁぁ・・・ぅぅ・・・・」

もう100発近いパンチを受け続けた頃、唐突に試合終了のブザーが鳴り響き、闘技場が暗転した。

ウオォォォォォ・・・・・・ン!

「ちっ!」

レオンは手を離したが、霞は円柱にもたれかかったまま倒れ込むことを拒んでいた。

「うぅぅ・・・・げふぉっ!げふぉっ!・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・」(・・うぅ、終わったのね・・・これで何とか綾美を助けてあげられる・・・)

タイムアップによる引き分けにより、わずか1ptではあるがポイントを勝ち取ることが出来た霞・・・。もちろん先は途方もないほど長いが、KO負けの−20ptに比べれば天と地の差がある。悔しがるレオンとは対照的に霞に安堵の心が浮かんだ。暗闇の中ボロボロになり、血反吐を吐きながらうずくまる霞を更に絶望に叩き落すアナウンスが流された。

「モード変換!TAG BATTLE MODE! 霞、ザックVSバース・アームストロング、ティナ・アームストロング!」

闘技場に照明が灯されるとともに、霞がこのままゲーム上に残され、新たな“キャラクター”が闘技場に登場した。霞の後ろに身長180cmくらいで上半身裸でいかにもバネのありそうな筋肉質の肉体の黒人(ザック)、そして反対側の入場口からはロングヘアをなびかせたブロンド美女といってもよいだろう、身長が175cmくらいで大柄だが3サイズのメリハリが利いたボディの持ち主、(ティナ・アームストロング)、その後に入場してきたのは先ほどまでのレオンよりも横も縦も1回りは大きい巨漢(バース・アームストロング)。当然だが156cmの霞など彼らから見れば子供同然であった。しかも、パートナーであるはずのザックの言葉は傷つき力尽きようとしていた霞に更に鞭打った。

「オイ、ベイビー、俺は将軍からこの試合手を出すなって言われてるからな・・・お前1人であの2人を相手にするんだな!」

「え!?・・・・・・はぁ、はぁ、はぁ、そ、そんなぁ・・・」

力尽き、四つん這いのまま崩れ落ちる霞・・。しかし容赦ない言葉が観覧席から飛ぶ。

「どうした?立て、立たんか!・・・試合放棄とみなしてよいのか?!」

「くっ!・・・」(試合放棄なんかしたら・・・綾美を守ってあげられない!・・・そんなの絶対にいや!)

霞はその華奢な肢体に鞭打ち、地獄のハンディキャップ・マッチへと再び立ち上がった・・・。

「うぅぅ・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・21?」

円柱を支えに、よろよろと立ち上がる霞。光沢のある青の忍び装束は汗を吸い黒土にまみれ、純白のニーソックスも泥まみれになっていた。対するティナ・アームストロングは黒いデニム地のセパレートの水着に皮のベストを羽織り、足元はシルバーのウエスタンブーツ…そして後ろに控えるバース・アームストロングと名づけられた大男は顔の下半分に髭を蓄え、髪は黒のバンダナで覆われていた。その巨体は先ほど対戦したレオンよりもう二回りは大きく、2m160kgの巨体を見せつけるようにバンプアップした上半身を無造作に両袖を切り落としたTシャツに包み、その上からティナと揃いのベストを羽織り、下半身は黒のジーンズに茶色のウエスタンブーツと、かつてのアメリカの暴走族ヘルス・エンジェルスを彷彿とさせた。

片や、本来霞のパートナーとされるザックは、というと所在無さ気に奥で座り込み、ブランデーのボトルをラッパ飲みして傍観者を決め込んでいた。

 

「フフフ・・・レオン相手によく頑張ったわね」

「お嬢ちゃん・・・今度は俺達がタップリと可愛がってやるからな・・・こんな娘相手に遊ばせてもらって200万ドル・・・・おいしすぎるビジネスってもんよ!」

霞の命がけの戦いも、相手にとっては“遊び”であり、彼らにとっては、自分と妹の命の対価が200万ドルという巨額の富となって欲望をくすぐっていた。

「くぅっ・・・うぅ、負けるわけにはいかない・・・・」

気力で、立ち向かう霞の目に大型ビジョンの表示が飛び込んだ。

『PLAY TIME 99:59』

ビジョンに大写しにされた試合時間・・・二桁までしか表示のないビジョンの最大時間数が気力だけで立つ少女に鞭打った。散々打たれ、絞められ、そして嬲られ、いたぶられたボロボロの身体で先程の3倍以上の時間、2人がかりの責めを受け続けなければならない・・・こうした非情な数字がそこに映し出されていた。

「たっぷりと楽しみましょうね・・・お嬢ちゃん?」

「・・・・ぅ、うそ・・・・・」

呆然と立ち尽くす霞・・・。それとは逆に愉悦の笑みを浮かべるティナとバース。今まさに将軍の手元のコントローラーによって、試合開始の火蓋が切って落とされようと思われた瞬間、意外にも『待った』の声が掛けられた。

観覧席にて将軍が側近に何やら耳打ちをすると、その側近が闘技場スタッフに指示を出した。

「おい!」

「・・・・・え?!」

黒い上下の服に身を包んだ男が円柱にもたれかかり辛うじて立っていた霞に背後から声を掛けていった。

(・・・もしかして、少しは休ませてもらえるの?・・・・・・・・)

少女のあまりに淡い期待はすぐに打ち砕かれた。

「将軍閣下が着替えろ、とのことだ!リセットしたはずが、その薄汚い格好では興醒めする、とおっしゃられておられる・・・すぐに着替えろ!」

「一体・・・一体、何なのよ?!・・・・」(どれだけ痛めつければ気が済むっていうの・・・)

そう、この権力者は霞を休ませるためではなく自らの嗜虐妄想のためにインターバルを取ったのだ。5分以内との指示で裏で着替えを命じられた霞は、用意されたコスチュームに着替え始めた。今度は白のノースリーブタイプで、青のタイプよりも丈が短く、一層肌が露わとなった。ショーツとブラはそのままでニーソックスと白地に赤の縁取りの忍び装束を上に羽織り、足にはニーソックスの上から今度は白のレガース状の足甲そして手には手甲と二の腕から手の甲までを覆う光沢のある白く長い手袋のようなものをつけられた。ノースリーブのコスチュームはアームホールが大きく取られ、わきから霞の白いブラがのぞいた。

「痛あいっ!・・・・痛ッ!うぅ・・・・」

着替えで身体を動かしたり、曲げたりするだけで霞の小さな身体は激痛で悲鳴を上げた。このわずかなインターバルがかえって、先ほどまで緊張と気力で押さえ込んでいた疲労や痛みといったダメージを噴き出させていった。

・・・絞められた首の周りに青黒く残った掌の痕、…腹、胸、わき腹も殴られ蹴られた青あざが白い肌を侵食しており、極められた右腕は着替えで動かすだけでも軋んで悲鳴を上げる。しかし少女の痛々しい姿に同情する様子もなく闘技場女性スタッフによって乱れた三つ編みも再び整えられていった。

「うぅぅ・・・・み、水・・・」

霞が着替えを終えると傍らに与えられたペットボトルの水を口に含むが、腹をしこたま殴られ内臓を痛めたせいか、水さえも喉を通らずに咳き込み、吐き出してしまう。

「げふぉっ!げほっ!・・・うぇ・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・・・」(こんなんで、さっきよりもずっと長い時間耐え切るなんて・・・ううん、やるしかないんだ・・・さっきも、あたしを殺したり骨を折って立てなくしたりはできなかったみたいだから、あたしがどんなに苦しくてもギブアップさえしなければ、いい・・・)

闘技場裏で幾たびも嘔吐を繰り返す霞・・・。もはや胃の内容物はおろか胃液さえも吐き尽くし、赤黒い大量の血の混じった体液が霞の口からあふれ出していた。

「うぐぅ・・・・はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・」

喘ぐ霞の口元をスタッフが無表情のままタオルで拭っていった。この行為さえも霞を思い遣ってではなく、霞のコスチュームを汚した場合の将軍からのお咎めを恐れてのことだろう。

こうして霞にとって永遠ともいえる99分59秒の地獄の第2ラウンドの刻がいよいよ始まろうとしていた。

 

薄闇の中、霞が既にスタンバイし待ち構えていたティナ、バース・アームストロングと対峙した。着替えを終えた霞の肢体は照明を受け白く輝きを放ち、まだ幼さを残した顔には艶かしささえ感じさせ、将軍も思わず息を飲んだ。

「・・・・さあ、又今度も耐え切れるかな・・・・・」

将軍がはやる気持ちを側近に気取られぬように、ワインを口に含むといよいよコントローラーのスイッチを押した。

『READY・・・・・・・FIGHT!』

薄暗い闘技場に一斉にライトが灯され、機械的なアナウンスが響き渡り、いよいよ今度こそTAG BATTLE MODEの火蓋が切って落とされた。

相手方はまずティナが先発をしてきた。

「フフフ・・・・16歳?11、2歳くらいにしか見えないわね、楽しませてもらうわ」

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・」(逃げて時間稼ぎも出来ないんだ・・・戦わないと・・・・)

既に肩で息をしながら、霞はよろよろとティナへと向かっていった。

「いい度胸ね、逃げないなんて・・・・っていうよりもクレイジーね!」

ガキィッ!

ティナが真正面から霞と四つに組んでいった。霞の両肩にティナの掌が重圧となって重く圧し掛かる。

「んぐぅぅ・・・・・痛っ!」(すごい力!・・・肩が・・・・)

必死にこらえる霞だが、その重圧に踏ん張った足がブルブルと震え出す。それに加えレオンにワキ固めで痛めつけられた肩にも激痛が走った。重圧に潰され膝を突きそうになるが、霞は、その小さな身体で懸命にこらえた。

「結構がんばるじゃない・・・・おチビちゃん?」

156cmの霞にとって175cmのティナが相手では首ひとつ近く違う。同じ女ながらも体格とパワーの差の前に少女は崩れ落ちようとしていた・・・が、もし倒れたら2度と起き上がれないのでは?その不安が霞の傷だらけの身体に鞭を打った。

「うぅぅ・・・・・・・」

「頑張るじゃない・・・これでも喰らいな!」

ズダァァァ・・・・ン!!

「きゃぁっ!・・・・うぅぅ・・・・」

ティナの、至近距離からのドロップキックが霞の胸を打ち抜き、その華奢な身体は後ろに大きく吹き飛んだ。

「どう、プロの技の味は?」

「げふぉっ!げほっ!げほっ!・・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・・・」

胸を押さえ、咳き込む霞に勝ち誇るティナ・・・。ティナは霞の三つ編みを掴み、無理矢理立ち上がらせると、朦朧とする霞の頬に力任せのビンタを打った。

パアァァァァ・・・・ン!

「あうっ!・・・・痛ッ・・・」

一撃で口の中を切り、霞の口に鉄の味とともに痛みが意識を強引に覚醒させた。

「ほら、休んでる暇なんかないわよ・・・・まあ、とっととギブアップしてあたし達に200万ドルを献上してくれるっていうんだったら話は別だけどさ」

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・・」

唇を噛み締め、ティナを睨みつける霞。

「フフフ・・・やっぱりそんなタマじゃないっていうことね。いいわ、その方があたしも楽しめるってもんよ・・・カモーン、バース!」

ティナは霞の髪を掴んだまま、パートナーのバースを呼び寄せた。

「イエェェェッ!待ってたぜ・・・」

約2mの巨体が霞の前に姿を現した。

「さあ、行くよ!・・・・そらァァァっ!」

ティナが霞の片腕と髪を掴み、バースの方に突き飛ばした。

「はうっ!・・・・」

よろめきながら、ふらふらとバースの方へつんのめっていく霞。

「ヨッシャァァ・・・・・!!」

ドスゥゥゥゥ・・・ッ!!

待ち構えていたバースのビッグフットブーツがカウンターのキックとなって霞の胸を蹴り上げた。霞の小さな身体はいとも簡単に浮き上がり、上体を大きく仰け反らせながら再びティナの方へと返された。

「あうっ!・・・・げほっ!げほっ!げほっ!・・・はぁ、はぁ、はぁ・・うぅぅ・・・」

ティナは吹き飛んできた霞の両脇を背後から抱え、受け止めていった。

「どうしたの、あんたは倒れちゃいけないんでしょ?・・・・ほら、立って!」

ティナが霞を後ろからチキンウイングに蹂躙し、生贄を捧げんとばかりにバースへと向ける。

「んうぅぅ・・・・・ぁぁぁ・・・・」

自力で立てない霞はがっくりと顔をうなだれ、長い髪が垂れ下がった。汗のにじんだ白いコスチュームは、早くも黒土にまみれ哀れさを一層誘った。

「へへへへ・・・可愛らしいジャパニーズ・ドールを嬲ってビッグマネー・・・悪かねえぜ!」

ティナに蹂躙された霞の前髪を鷲?みにし持ち上げ、その苦痛に喘ぐ顔を堪能するバース・アームストロング。

「さあ、これでも喰らいな!」

ドスゥゥゥッ!

「はぐっ!・・・んあぁぁぁ・・・・」

バースの拳が霞の腹に叩きつけられた。ピンクの帯の上からとあって拳が喰い込むことこそなかったが、超ヘビー級のパンチの衝撃はいとも容易く霞の薄い腹筋を貫き、内臓を苛んだ。

「クククク・・・苦しいか?んん・・・・もうギブアップか?」

「・・・・んぐぅぅ・・かはっ!うえぇ・・・・・・・・」

赤黒い胃液を吐きながら、口をパクパクさせる霞。しかしバースは容赦なく追撃の拳を撃つ。

ドスゥゥゥゥ・・・・!!

「はうっ!・・・・うぅぅぅ・・・痛ぁぁぁいィィィ・・・・・・!」

今度は抉るような左フックがレバーブロー(肝臓打ち)となって霞のわき腹に打ち込まれた。肋骨を避け、軟らかい霞のわき腹に拳が突き刺さると、新たな激痛が霞を襲う。胃袋・横隔膜を押し潰されるボディブローで呼吸の出来ない苦しみを味わい、今度は肝臓を抉られる激痛が霞の朦朧とする意識を覚醒させるバースの巧みな責めに悶絶する霞。

「はぁ、はぁ、はぁ、・・・げほっ!げほっ!・・」(痛い・・・・もうやめて・・・もうお腹、殴らないで・・・・・)

苦痛に顔を歪ませ、ティナの腕の中でぐったりとする霞・・・。その霞をティナは、又バースへと突き飛ばした。

「さあ、まだまだ時間はあんのよ!・・・バースにもうちょっと遊んでもらいな!」

突き飛ばされた霞はよろよろとバースへとしがみついた。

「あうっ!・・・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・」

「おっと!まだまだだって言ってんだろ・・・BABY!」

ダン!

「はぐっ!・・・・ぁぁぁ・・・・」

バースは霞を軽々と抱え上げ、ボディスラムで地面へと叩きつけた。土の上とあってプロレスのリングのような派手な音こそないが、その衝撃は霞の全身を軋ませる。

「かはぁっ!・・・・・ぁぁぁ・・・・・」(い、息が・・・息が出来ない・・・・)

「どうしたの・・・もう立てないの?」

「もう終わりか?・・・・立たねえんなら、貴様の負けっていうことでいいんだな!」

仰向けのまま全身を痙攣させる霞にティナとバースが見下ろしながら、言葉でも嬲り抜いていく。

「くっ!・・・・・・うぅぅ・・・・・」(立たないと・・・・)

10数秒の後、懸命に力を振り絞り、よろよろと立ち上がる霞・・・。すると、それを見計らったようにバースとティナが霞をはさんで距離を取った。そして霞がようやく立ち上がった瞬間、2人は霞めがけて突進してきた。

「オラァァァァァ・・・・ッ!」

「イエァァァァァ・・・・・ッ!」

バキィィィィ・・・・ッ!!

「ぐはぁ!・・・・・あぐぅ・・・・・・・」

サンドイッチ式ラリアート!・・・元となったゲームでも使われるティナとバースのツープラトン攻撃が霞の小さな身体を押し潰すように直撃した。2人は身を屈め、霞の胸元を狙い、プロレスラーの豪腕をブチ込んでいったのだ。

「ぁぁぁ・・・・・」

又も膝から崩れ落ちる霞・・・。手加減があるとはいえ、2人がかりでの責めはあまりにも惨すぎた。しかし血を吐きながら倒れ込む霞をティナは無理矢理引き摺り起こすとその傷ついた肢体を軽々と抱え上げ、そのまま自らの膝にシュミット式バックブリーカーで叩きつけていった。

バキィィィ・・・ッ!

「んあぁぁぁぁ・・・・・!」

霞の細い腰を支点に、ティナが両腕に力を込めじわじわと反り曲げてゆく。レオン戦でキャメルクラッチなどで痛めた腰骨がミシミシと鈍い音を上げていった。

「フフフ・・・痛いでしょ?・・・でも、まだまだよ!」

ティナは霞の膝に掛けていた手の位置を、股間の秘部へと移していった。

「あふっ!・・・・い、いやぁ・痛あぁぁぁぁぁい!・・・・・・・」

腰を責めながら、ティナの中指が霞の小さな白いショーツに包まれた割れ目に捻じ込まれていった。

「ホント・・・・可愛い声出しちゃって、16歳って言ってたけど、まさかまだヴァージン?」

「うぅぅぅ・・・・!!いやぁ、やめてぇぇぇ!」

ボロボロの身体を嬲られ、少女としての心までも踏みにじられていきながら、ただ耐える霞。あごに掛けられた手を何とか振り解こうとするが、この大型女子プロレスラーの手はびくともしない。

「小さくって可愛くて、おまけにウブで健気・・・・フフフ、あたしが一番いじめたくなるタイプだわ・・・・こんな風にね!」

「あぐっ!・・・・んんん!!」

ティナは霞のあごに掛けていた手で霞の首を絞め始めた。膝で痛めている腰を責め、左手で秘部をいたぶり、右手で首を絞める・・・地獄の三所責めに、少女の肢体がしなる。

「んぐぅぅ・・・・かはっ!・・・・・ぁぅぅぅ・・・・」

霞の口元から呻き声とともに、口元から血の混じった涎が糸を引き、瞳からこぼれた涙が闘技場の土を濡らした。その涙に更に嗜虐心を煽られ、ティナとバースの責めは凄惨を極めていく。

「グハハハハ・・・俺にも楽しませてくれや!」

バースはティナの膝の上で蹂躙される霞の無防備な腹に、Wアックスハンドルを落としていった。

バスゥゥゥッ!!

「んかはぁ!・・・・がふっ!・・・・ぅぅ・・・」

そり曲げられ全く衝撃の逃げ場のない状態での霞の腹に、両手を組んだバースの巨大な拳が振り下ろされた。衝撃は内臓を押し潰し、おびただしい喀血が霞の口元から溢れ出していった。

「がふっ!・・・んあぁぁぁ・・・・・」

赤黒い液体がビチャビチャと闘技場の土を濡らしていき、その様子にティナも一旦バックブリーカーを解き、霞を放り捨てた。

「やり過ぎたか?」

「フン・・・大丈夫よ・・・・多分ね」

ティナとバースが見下ろす中、霞は腹を押さえうずくまり咳き込みながら血を吐き続けた。

「げふぉっ!げほっ!げほっ!・・・・・うえぇ・・・・ぁぁぁ・・・・・」

ついにうずくまった体勢のまま気を失った霞・・・ティナが反応を見ようと後頭部を踏みつけるが霞はわずかに呻き声を洩らすだけであった。

「チッ!」

舌打ちをするとティナが傍らで座り込んでいるザックへと近づいていった。そしてザックからウイスキーのボトルをひったくると、その中身を霞の顔にぶちまけた。

ビシャアァァ!

「・・・うぅぅ・・・はうっ!・・・げほっ!げほっ!」

霞は頭から浴びせられた冷たい液体と、強いアルコールの臭気で意識を引き戻された。が、度数の強いウイスキーが目に染み、目を開けることが出来ない。

「はうっ!・・・痛あぁい・・・・うぅぅ・・・」

「オラ、目が覚めた、お嬢ちゃん?こいつは結構高い酒なんでな・・・あんまり手をかけさせんなよ!」

舌打ちをしながらザックがティナからボトルを取り戻し、脇へと下がっていった。目が見えないまま四つん這いのまま目をこする霞・・・。

「んぐぅぅ・・・ぅぅぅく・・・・・・ぅ・・・」(うぅぅ、そうだ・・・立たなくちゃ、綾美が・・・)

這いつくばったまま懸命に身体を起こそうとする霞・・・しかし既に1時間以上にわたって嬲られた身体は言うことを聞かない。

「あら、立てないの?・・・しょうがないわね、手伝ってあげるわ」

「はうっ!」

ティナは霞の髪と腕を掴み、強引に立ち上がらせフルネルソンに捕らえた。ティナとの体格差から霞の両足は宙に浮き、まるで十字架に磔にされた生贄さながらであった。ティナは女子離れした怪力で霞の両肩・首を絞り込むように締め上げていった

「あぁん、痛あぁぁぁぁいィィィィ!!」

「フフフ、なぁ〜んだ・・・まだイイ声で泣けるじゃない?・・・もっと、もっと楽しませてもらうわよ!」

視線で合図を送るとバースが磔状態の霞の前に寄ってきた。

「さあ、バース!」

「OK!ティナ!」

バースが霞の無防備なボディに、尚もその巨大な拳を突き刺した。

ドスゥッ!

「はぐっ!・・・んああぁぁ・・かはっ!・・・・・」(またお腹?・・・もう死んじゃう・・・・)

その衝撃はフルネルソンに固めたティナごと後ろにずれるほどであった。少女の肉を殴る鈍い音が地下闘技場に重く響き渡った。今度は帯を避け、みぞおちの辺りに喰い込んだバースの拳は霞の内臓に深々とメリ込んでいった。そしてバースもその感触を楽しむように拳を引かずに、更にグリグリと捻じ込んでいく。

「グフフフ・・・イイ感触だぜ!どうだ苦しいか?痛てぇか?」

「んあぁぁぁ・・・・・!!」

「ちょっとバース!殺しちゃダメよ!・・・潰さずに苦しめ屈服させる・・・それがプロってもんよ!」

「わかってるさ、こいつもホンの気付けみたいなもんさ・・・それにこのお嬢ちゃん、結構しぶといことだしな・・・・そらよっと!!」

ドスゥゥッ!

「はうっ!・・・かはぁっ!・・・・ぅぅ・・・」

バースが拳を抜き再び霞の腹に突き刺した。すると又も霞の口元からおびただしい鮮血があふれ出し、霞の白いコスチュームの胸元から前垂、ニーソックスまで紅く染められた。ティナがフルネルソンを解くと霞は、人形のように前のめりに倒れ、僅かに喘ぎ声を漏らしながら痙攣を起こしていた。

「んぐぅぅぅぅ・・・・・ぁぁぁぁ・・・・・・・・・・・」

「あぁ〜あ、だから言ったじゃないの!もう腹責めは限界みたいだよ」

「チッ!・・・責めを変えりゃいいんだろ!」

バースがうつ伏せに倒れこんだ霞を軽々と仰向けに返し、霞の尻と首筋を持ち自らの頭上へとリフトアップしてみせた。

「・・・ぁぁ・・・・ぅぅ・・・・」(な、何?・・・)

晒しもののように3m近い高さに持ち上げられ、喘ぐ霞・・・。

「ほらよっ!喰らいな!」

バキィィィィッ!!

「んあぁぁぁぁ・・・・・・・っ!」

バースが霞の腰骨を自らの脳天に叩きつけたのだ。通常のアルゼンチンバックブリーカーと違い霞の背骨にモロにバースの脳天が食い込み、腰を支点にそり曲げられる肢体・・・。さっきまでのレオン戦も含めて、この悪鬼たちは霞を死もしくは失神に至らせぬように頭部は責めずに、各関節・呼吸器を責め続けていた。レオンにもキャメルクラッチなどでいたぶられた腰が、更に巨大な相手バースにより悲鳴を上げていた。

メキ、メキ、メキ、メキィィィィ!

「うわぁぁぁぁ・・・・・・っ!」

「グフフフフ・・・どうだ?腹筋は伸びたか?・・・んん?」

「うぐぅぅぅぅ・・・・・・・・っ!!んあぁぁぁぁぁ・・・・!」

バースは霞の両足首と三つ編みを掴み、じわじわと弄ぶように少女の身体を痛めつけていく。もちろん死なせることなく気を失わせることもなく、この2m160kgの巨体の持ち主は、156cm47kgの少女に極限の苦痛を強い続けた。

「はぁぁぁ・・・・っ!」(うぅぅ、あたし・・・死んじゃう?・・・いっそこのまま死なせてくれたら・・・うぅん、あたしが死んだら綾美が・・・・)

メキメキメキメキ・・・・・・・・・ッ!!

今やこの少女にとっては死さえも甘美な憧憬といえたが、もちろんこの地下闘技場で許されることはなく、又霞自身も自らの心に鞭を打ち続けた。

「どうだぁ?・・・・ギブアップか?」

バースがわずかに力を緩め、頭上の霞に屈服を迫る。

「あぁぁ・・・・・・ぅぅ・・・」

「あぁん?聞こえねえぞ!?」

「そうよ、はっきり言ってちょうだい!」

ティナが霞に近づき耳を当てた。力を緩めたとはいえ霞の肢体は、そり曲げられたまま、ひとときの休息さえも与えられずいたぶられ続けていた。

「おらぁ!・・・・どうなんだよ?」

「・・・・・・・ぃ・・ゃ・・・・・・・・」

消え入りそうな声ではあったが、ティナ、そしてバースの耳に霞の明らかな拒絶の声が聞こえた。

「ああ?!・・・・上等だな、このガキ!」

それに逆上したバースが霞の背骨をへし折らんと勢いをつけた瞬間、ティナが制止した。

「待ちな!アタマを冷やしなって言ってんだろ!」

「んん?」

「こいつを潰しちまったら、あたし等もあの将軍にどんな目に遭うか、わかってんだろ!・・・・それにまだまだ痛めつけ方が足らなかったっていうことさ・・・・ねえ、お嬢ちゃん?」

霞の顔を覗き込み、笑みを浮かべるティナ・・・。

「ぅぅぅ・・・・・」

「バース!ベアハッグを極めてやんな・・・アタシがこの娘にイイ思いさせてやるよ!」

「クク、何か思いついたな・・・・よっしゃ!」

バースが霞のくびれた腰を豪腕で、締め上げた。

メキ、メキ、メキ、メキ・・・!

「んあぁぁぁぁ・・・・・!」

痛めた腰への圧力に呻く霞・・・。バースの腕廻りほどしかない霞のウエストがミシミシと軋み、悲鳴を上げる。そして、その悲鳴を搾り出すようにバースは締めては緩め、その肢体を嬲り抜いていった。

「へへへへ・・・・気を失うんじゃねえぜ、まだティナのお仕置きが残ってんだからよ!・・・・なあ、ティナ?」

「んくぅぅ・・・・はぁぁぁぁぁぁ!・・・・・・んうぅ・・・・」

「そうよ・・・今までに感じたことのない地獄を味あわせてあげるわ」

そう言いながらティナは背後から霞のわきの下に手を回し、コスチュームのノースリーブの両側の穴から手を突っ込んでいった。

「はうっ!・・・・あぁん・・・・・いやぁ・・・・・・・」

ティナの両手がコスチュームの中のビキニブラの中まで突っ込まれ、霞の両乳房を鷲?みにしていったのだ。

「あら・・・ガキかと思ったら結構イイもん持ってんじゃない?」

「あぁん・・・・いやぁ・・・・やめて・・・・・・・」

背骨への責めと戦いながら、苦悶する霞。しかしティナの責めは尚も苛烈を極めた。もちろんティナに比べれば小ぶりだが、霞の84cmEカップでお椀型の美乳はティナの掌の中で嬲られ続けた。

「ほうら、まだ揉まれたコトなんかないんでしょ?こんな風に・・・ね!」

「ぎゃぁぁぁぁぁ・・・・・っ!!」

女子ながらも70kgを超える握力で霞の乳房を握り潰すティナ。霞の絶叫が地下にこだました。ベアハッグで蹂躙されているため、逃れるすべなくただ耐えるしかない霞に乳房への責めは尚も続く。

「さあ、もっとイイ声で泣いてちょうだい・・・・それともギブアップしちゃう?」

「んぎゃぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・っ!!痛あァァァァァァいィィィィィィ!」

 

大型モニターには2人の悪鬼に嬲られ苦痛に泣き叫ぶ霞の表情が大写しになっていた。

175cmで骨太の現役女子レスラーと2mの超ヘビー級レスラーが、既に1試合を終え傷ついた156cmしかない小柄な16歳の少女を2人がかりでいたぶり抜く・・・。その凄惨な光景に将軍はこれまで以上に身を乗り出し息を呑んだ。

 

「さあ、もうアンタも堪能したでしょ?・・・そろそろさぁ、ギブアップって言ってくんないかなぁ?」

ティナが詰問のために力を緩め、霞の耳元で囁いた。

「うぅぅ・・・はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・うわぁぁぁぁぁ・・・・・・っ!!」

黒髪は苦痛のあぶら汗で、顔にぴったりと貼りつき霞はただ喘ぎ声を漏らすだけだった。だが、そのわずかな詰問の間も、休むことなくいたいけな少女を嬲り続ける2人の悪鬼達・・・。

「ホント、しぶといわね・・・なら、もう一段階上の責めをしてあげるわ・・・・・残り時間いっぱいね!」

ティナは両手の指先で霞のまだ幼さの残る乳頭をつまんでいった。

「あ!・・・・はくっ!・・・・いやぁぁ・・・・・・・痛ぁいィィィィ!」

霞の柔らかい乳頭に硬い爪を立てて喰い込ませ、ティナはぐりぐりといたぶってゆく・・・。

「どぉお?・・・・これでもまだ強情張る気?」

更に力を強め、爪を喰い込ませるティナ・・・霞は激痛に頭を振り、懸命に耐え続けた。

「んああぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・!!!ぎゃあぁぁぁぁぁ・・・・・・・っ!」

少女の、これまで以上の絶叫が地下に響き渡る。しかし、ティナの責めは休むことなく続けられていった。まるで乳房の先をもぎ取らんばかりに爪を喰い込ませ、乳頭を引っ掻いたまま後ろへと引っ張っていった。

「さあ!・・・ギブアップって言ってくれたら、やめてあげるわよ・・・・このままじゃ、アンタの可愛いオッパイ・・・先っぽが取れちゃうよ?!」

「うわあぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・・っ!!いやぁぁぁぁ・・・・・・っ!!」

気丈で健気な少女が今肉体を破壊されていく中、半狂乱となって、もがき苦しみ続けていた。霞のコスチュームの胸の辺りからは白い布地を透して鮮血が滲み出していた。べアハッグに捕らえるバースも、この惨劇に笑みを浮かべ少女の苦悶を楽しんだ。

「クハハハハ・・・いいぞ、その悲鳴、泣き顔、・・・このままだとティナに本当に乳房ごと?ぎ取られるぞ!?」

「いやあぁぁぁぁぁ・・・!うわあぁぁぁ・・・・・・・・・・!ひいぃぃぃぃ・・・・・・・・・・・・・っ!!」

髪を振り乱し、泣き叫ぶ霞・・・。激痛と共にコスチュームの中で血が胸を伝う感触が霞を正体なく泣きじゃくらせた。気丈な少女の、幼女のように泣き叫ぶ声がティナ、バースそして将軍の耳をくすぐり悦楽のボルテージを上げていった。

「クククク・・・・もっと泣け!わめけ!」

「はぎゃあぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・っ!!痛あァァァァいィィィィィィ!!」

時間を忘れ、嗜虐に耽る悪鬼達。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そしてついに時計が(99:59)を示した。ようやくすぎた時間・・・・霞にとっては永遠よりも永く、悪鬼達にとっては刹那よりも長い時間がひとまず終わりを告げた・・・。

苦悶の声さえ絞り切り、声さえ出せずボロ人形のように打ち捨てられた少女と、それを見下ろす巨漢と巨女そして歪んだ権力者。霞はこの後、将軍直轄の医療センターにて最新の治療を受け、ひとときの休息を得る事となる。将軍が外遊、公務を終える2週間の間に少女の傷が癒えるはずもないのだが・・・・。

 

<エピローグ>

この日の霞に降りかかった惨劇は映像に収められ、マルチアングル・ノーカット版がDVDとして将軍のコレクションに加えられた。

又この後、地下闘技場での映像は将軍の指示によって情報局で若干の修正が加えられ、国営放送で流されることとなった。その中で“霞”はアメリカの理不尽な暴力に立ち向かう愛国心と将軍への忠誠心あふれる将軍直属の美少女戦士として紹介された。某国情報部によって編集されたこの映像には現地女優によってアフレコまでなされ、そのラストシーンはこう結ばれていた。

 

(バース)「さあ!とっとと我がアメリカに服従しな!」

(ティナ)「ああ・・・さもないと、もっと痛い目に遭うよ!」

>>2人がかりで嬲られながら、詰問される霞の表情がアップで映される

( 霞 )「うぅぅ・・・・いやです!どれほどの暴力で踏み躙られようとあたしの、いえ!・・・あたし達の愛国心と将軍閣下への忠誠心はびくともしないわ!」

>>きっぱりと言い切った霞の表情のアップで(完)のマークが入る

 

国営放送によって放送されたこの“ドラマ”は、視聴率90%を超えたという・・・。



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