水晶〜MISAKI〜第3章

闇に潜む悪魔の囁きなど耳に入る由もなく残された力を振り絞りヘンセンへと向かっ
ていく水晶。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・・げほっ!げふぉっ!・・」
ヘンセンをダウンさせたとはいえ水晶のダメージは浅くはない。グランドでのスタミ
ナの消耗、そして脇腹への連打が嘔吐感となって水晶を襲う。更に今痛めた膝のダ
メージは水晶の生命線ともいえるスピード、跳躍力を奪い取っていた。
(まだ、倒れるわけにはいかない・・・ここで弱みを見せるわけには・・・)
震える脚で立ち上がろうとしたその瞬間、突然リングを照らす照明が花道を照らして
いった。リング上のヘンセンよりもひと回り、ふた回り巨大な3つの影・・・新たな
敵の登場に水晶は身を震わせる。
「おい!起きな!・・・だらしねえ、こんなチビに!」
うずくまるヘンセンを抱え起こす男達のフードがめくれ落ち、その正体に水晶、そし
て観客席も驚嘆した。
北羽黒・・・かつて大相撲で頂点を極めながら、性格の粗暴さからその座を去り格闘
技界からもフェイドアウトしていき、そして安田忠雄・・・北羽黒と同期に大相撲に
入り、その後プロレス界に転進するもバクチ癖からやはり表舞台から姿を消した。更
にもう1人は外人、かつてオリンピックアマレスの超重量級の強豪として名を轟かせ
たマッド・ガファリが巨大な肉の塊を震わせながら元力士コンビの傍らについた。
「フン、女子プロレスラーでおまけにチャンピオンっていうから、どんなゴツイ女か
と思えば、まだガキじゃねえか!」
「ああ、けどチビのくせに身体はもう一人前だぜ」
巨漢3人はミサキを見下ろし、その幼い顔に不似合いな胸の膨らみに下卑た笑いを浮
かべる。
「ギャハハハ!ホントだぜ!」
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・」
「おい、イイこと教えてやろうか?」
「?」
水晶は既に勝ち誇る北羽黒達の顔を見上げた。
「お前の大切なデカ・・・あいつを半殺しにしてやったのは俺たちなんだよ」
「ギャハハハハ!」
「な、何で?」
「何でって?素直に吐かねえからよ!それどころか逆らいやがるから・・・だからあ
あいう目に遭うんだよ!」
「ひ・・・ひどい・・・・」
3人の巨獣に嬲り殺しにされる勇を思い、唇を震わせる水晶。しかし、それを少女の
怯えと見たか、巨獣達は水晶に屈服を強いる。
「どうだ、今のうちに俺らに許しを乞うか?『何でも言うこと聞くから、あたしだけ
は見逃してください』ってな!」
「ギャハハハ!そいつはイイ!」
完全に舐めきって響き渡る嘲笑、しかし少女は更なる巨獣達の脅迫を跳ね返す。
「ふ・・・ふざけんな・・・・・」
「んん?何だと?!」
「ふざけんな!・・・お前ら、束になってかかってこい!」
ボロボロの身体で気勢をあげる水晶、『ふざけんな!』・・・こんな台詞、プロレス
ラーになってからでも一度も言ったことはない、しかし言わずにいられなかった・・
・もちろん勝算など万に一つもない、けどここで逃げるわけにはいかない!
「ヒュゥ〜♪いっちょ前に吠えやがったぜ・・・ククク」
「面白れえ・・・ならタップリと楽しませてもらうか」
「ああ、こいつが俺らに完全に服従するまでな・・・こないだみたいなムサいデカよ
りもずっと愉しめる」
「じゃあ、いくぜ!」
コーナーにもたれる水晶にまずガファリが襲い掛かった・・・193cm170kg
の巨大な肉塊が既に満身創痍の少女に激突しようとした瞬間、コーナーへの自爆を狙
い水晶が横に避けようとした瞬間、何者かが足をすくった。
「キャッ!・・・はうっ!」
うつ伏せに倒れ込んだ水晶にガファリはタックルからボディプレスにスイッチし、勢
いつけて押し潰していった。
バアァァァァ・・・・・ン!!轟音が響き、水晶の小さな身体がガファリの巨体に覆
い潰された。
「かはっ!・・・・・・うぅ・・・・・・・・・」
朦朧とする意識の中リング下を歩く姿が目に入る・・・ヘンセン!インターバルの間
に先ほど水晶に喫したダウンから回復し、機をうかがっていたのだ。
「へへへ、キクダロ?・・・ケド、マダマダヨ」
「んうぅぅ・・・・・・かはっ!・・・・・・」
圧殺された水晶からガファリが立ち上がると、今度は安田が水晶の首を掴み強引に引
きずり起こし、水晶の痛めている右膝を折りたたむと高々と抱え上げ、自らのモモへ
叩きつけた。ニークラッシャー・・・194cm140kgの巨体をフルに使った脚
殺しの大技がプロレスラー水晶の命ともいえる脚を捕らえた。
「おらあぁぁ!」
「んあぁぁぁぁ・・・・・・・・・ッ!」
安田の怪力で右膝を叩きつけられ、水晶は声にならない呻き声を上げる。右膝を抱え
てうずくまる水晶、今度は北羽黒が水晶をうつ伏せにし、右ふくらはぎに160kg
の体重を乗せたニースタンプを落としていった。
ドスッ!バキッ!ドスッ!・・・1発2発3発・・・10発・・・か細い悲鳴と鈍い
音を立てながら、少女の肉体を破壊する音が場内に響き渡る。膝を落とされる轟音と
共に筋肉や腱が叩き潰される音が水晶の耳を衝く。
「はうっ!・・・ああ!・・んあぁ!・・・あ、脚が・・脚がぁぁ・・」
「へへへ、これでもう完全に抵抗できねえ」
「片足はかろうじて残してやったから、最後まで立てよ、ククク」
あくまで残酷な屠殺者達・・・ここまでの責めも水晶への公開拷問のための下拵えに
すぎないのか。安田が水晶の髪を鷲掴みにすると水晶は半ば無意識に左脚だけでよろ
よろと立ち上がる。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・・い、痛ぁい・・・・」
「へへへ、まだまだだぜ、チャンピオン?・・・そらよっと!」
「はう!」
安田が水晶を北羽黒へと突き飛ばす!よろよろと前のめりに倒れ込んでくる水晶の腹
を北羽黒のパンチが突き上げる。
ドスウゥゥゥゥ・・・・ッ!
「がふっ!・・・・・ぁぁぁぁ・・・・・・・」(い、息が・・・息ができない・・
・・)
ボディブローに吹き飛ばされた先に、今度はガファリが待ち構え、背中から飛んでき
た水晶の両脇を抱え、腰骨の辺りに又も巨大な拳を
叩きつける。
バキィィィィ!
「んあぁぁぁぁ・・・・・・・」
水晶の小柄な肢体が腰から逆にしなり又安田へと倒れ込んでゆく。激痛と苦しさに蹂
躙され今度は前のめりに崩れ落ちてゆく。こうして何周も倒れ込むことさえ許されぬ
まま腹を殴られ続ける少女・・・
しかし少女はここで奇跡を起こす。何周目かで安田へと殴り飛ばされた時、残ってい
るはずのない力を振り絞る。
「うわああぁ・・・・・・・・・・!」
力を込め腕を曲げ、エルボースマッシュの態勢で飛び込んでゆく水晶・・・しかしこ
の“奇跡”も残酷な結果しかもたらさない。水晶渾身のエルボーは安田の腹の辺りに
ポスッっと力なく当たって終わった。
「く・・・・・・・・」
傷だらけの少女の放つ一撃は何のダメージを与えることもなく、逆に巨獣達の嗜虐心
の絶妙のスパイスにしかならなかった。
「どうした、それで終わりか?まだ元気そうだな、なら続けるぜ、オラ!」
安田は水晶の羽交い絞めしてリング中央に寄った。194cm対157cmの体格差
に水晶の両脚は完全に宙に浮く。肉塊に磔状態の水晶を他のガファリ、北羽黒、そし
てリングに戻ってきたヘンセンがニヤニヤと見下ろす。
「へへへへ、さっきはよくも赤っ恥をかかせてくれたな、礼は百倍返しだぜ!」
ドスッ!ドスッ!ドスッ!・・・
「んぶっ!げふ!・・・はうっ!んう!・・・んあぁ!・・げふぉ!・・・」
「俺にもやらせろ!オラアァ!」
バキッ!グシャ!ドス!・・
「ウラアァァ!」
「んばっ!・・・・げふ!・・・ぁぁ・・・・ぅ・・・・・・・」
巨獣達の重いパンチが次々に水晶のボディを襲う。逃げることも和らげることも出来
ずにただ責めを喰らい続ける水晶の口元から血痰が溢れ出し白い水着の胸元を赤黒く
染めてゆく。たった1人の少女を4人の巨獣が奪い合うように嬲り続ける、この惨劇
に残酷モノ好きの観客達も息を呑む。その蹂躙の中、ぐったりとする水晶を安田が放
り捨てる。
「オイ、くたばっちまった・・・オイ!」
倒れ込む水晶の顔を踏みつけ、起こそうとする安田・・・そして苦しげな喘ぎ声を漏
らす水晶に悪魔の笑みを浮かべ北羽黒が抱え上げる。
「ケッ!寝てんじゃねえよ!気付けだ、・・・ウラ!」
「・・・・・・・・うぅぅ・・・あう!」
水晶を肩口に抱え込み両腕で頭と膝をガッチリと極める。アルゼンチンバックブリー
カー!柔軟な水晶といえど怪力で腰を捻じ曲げられた状態で背骨を反らされると身体
ごとへし折られる激痛が走る。
「んぐああぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・!」
激痛は朦朧とする意識を一気に覚醒させ、水晶に更なる責め苦を強いる。頭を掴ま
れ、水晶のポニーテールを結ぶ紐が切れ、セミロングの黒髪がばらりとほどけた。あ
ぶら汗でぐっしょりと濡れた顔に髪が張りつき苦痛に少女の顔が歪む。
「オラオラオラオラ!」
メキメキメキメキィィィ!
少女の背骨が破滅の音を軋ませ、口からは悲鳴と血の泡が零れ落ちる。北羽黒が揺さ
ぶるたびに鮮血が飛び散りマットに模様を描く。
「ぁあああああ!・・・・・・んあぁぁあぁぁあ・・・・ッ!」
「そおら、よっと!」
2mの高さからボロ人形のように放り捨てられる水晶・・・その身体はマットに叩き
つけられ弾んで、だらりとうつ伏せに倒れ込む。しかしその水晶をガファリが引きず
り起こす。正面から水晶を両腕ごと抱え込み、そのまま真後ろに投げていく。
「グフフフフ・・・・イヤアァァァ!」
「はうっ!」
バアァァァ・・・ン!
反り投げで叩きつけられた身体はマットで大きくバウンドした。
「はうっ!・・・・・・・・うぅぅぅ・・・・・・・」
「ほぉ、受身取りやがったか・・・なら!」
今度は安田が水晶の首を捕らえ逆さまにして垂直に持ち上げる。
ブレンバスター・・・水晶を持ち上げたままの状態で、リングを1周し観客にアピー
ルする安田・・・20秒、30秒・・・1分にもなろうとしたとき安田の巨体がぐん
と伸び上がり大きく倒れ込み水晶の身体をマットへ叩きつけた。
ズダアァァァ・・・・ン!
「がふっ!・・・・・ぁぁぁ・・・・・・・・・・・・ぅ・・・・」
背中を強打し息ができずに身を震わせる水晶にヘンセンが襲い掛かる。倒れた水晶の
右脚に絡みつきサブミッション膝十字固めにいった。
「ウラアアアアァァァ!」
ビキビキビキビキィィィィ!
「キャアァァァ・・・・・・・・・!痛あぁぁぁぁいィィィィィ!」
痛めた左膝を新たな激痛が襲う・・・水晶は激痛から我を忘れロープに手を伸ばす。
もちろん公開拷問であるこの闘技場でロープブレイクなどあるはずもない。しかし激
痛は少女の心をも潰していた。
「ああああああああ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ッ!」
必死に、そして懸命に手を伸ばす少女の姿をあざ笑う悪鬼達。泣き喚く少女の姿に観
客全てが興奮と歪んだ官能のるつぼと化している。地獄の責め苦に錯乱状態の水晶に
北羽黒が悪鬼の群れを代表して屈服を迫る。
「どうだ?痛いか・・・・ここらで言う気になったかぁ?」
「ああぁぁん!・・・・・・んああぁぁぁ・・・・・ッ!イヤアアァァァァ・・・・
・!」
「オイ、ヘンセン、ちょっと緩めてやれ!」
「OK」
膝十字を解かれうつ伏せのまま泣きじゃくる少女の姿にもはや凛としたプロレスラー
としての光は残されていなかった。勝ち誇り見下ろす4人の悪鬼達・・・この4匹の
巨獣達の責めをたった1人小さな身体で既に約1時間受け続け、そして耐え続けたこ
とこそ奇跡としか言いようがない・・・公開拷問もいよいよ終わりが来たと巨獣達も
観客達も感じていた。
「さあ、あの刑事から預かったモンはどこだ?」
「うぅぅぅ・・・・・・はぁはぁ、はぁ・・・・・・・刑事から・・刑事から預かっ
た・・・・?」
苦痛に未だ意識が朦朧とする水晶・・・北羽黒はしゃがみ込み水晶の髪を掴んで半身
を起こさせる。
「そう・・・あの刑事から何か預かってんだろが!」
「う、痛ッ!・・・刑事・・・勇兄ちゃん・・・・・・・」(そうだ、勇兄ちゃんが
・・・あたしがあれのこと言っちゃったら勇兄ちゃんが殺される・・・・)
痛みと共に勇を守らなくてはという心がよみがえる・・・。絶対に勝てない、けど負
けるわけにはいかない!この最も辛い選択肢を少女は選ぶしか出来なかった。
「さあ、言え!・・・・オラ!」
「・・はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・・バカな・・・・・・」
「ハァ?」
「はぁ、はぁ、はぁ・・・バカなコト言わないで・・・・・はぁ、はぁ、はぁ、あん
た達なんかに絶対に負けない!」
水晶の屈服への拒絶に一瞬巨獣達は呆然とするが、すぐにまだ拷問が続行される。
「貴様ぁ」
「まだ俺らが優しすぎたってコトみたいだな・・・オラ!」
「あうっ!痛ぁい・・・・・」
北羽黒が水晶の髪を掴んで引きずり起こすと、喉をトップロープへ通しつけ、更にセ
カンドロープを持ち上げ水晶の首を挟みこんでいった。
「んうぅぅ・・・・・・・・・・ぁぁぁ・・・・・・・・」
ロープの弾力で首が絞まり窒息死の危険が迫る。水晶は指をロープと首の間にこじ入
れ何とか呼吸を確保しようとするが弾力の強いロープに自力ではずすことは叶わな
い。そして更に呼吸の確保のため両腕がふさがった水晶のがら空きのボディに北羽
黒、ガファリ、安田、ヘンセンが代わる代わる突き上げるようなパンチを打ち込んで
ゆく。
ドスッ!バスッ!グシャ!・・・
「んぶっ!・・・・はうっ!・・・うぅ!・・・ぁ・・・・」
鮮血、血痰、胃液・・・この小柄な少女からこれほどの、と思わせるほどのありとあ
らゆる体液がエプロンマットにこぼれ落ちていく。おまけに腹を殴られ手の力が緩む
と首が絞まり、窒息の苦痛が水晶を襲う。
「ギャハハハハ!苦しめ・・・もっとなぁ!」
「はぐ!・・・げふぉっ!・・・んうっ!・・・・ぁぁ・・・・・」
次第にロープに掛けられていた水晶の手がだらりと垂れ下がってゆく・・・そのさま
にガファリがあわてて首からロープをはずす。
「オット・・・死ヌノイケナイ、ボスノ命令、苦シメロ、シカシ殺スナ!」
「・・・・・がふっ!・・・・うぅ・・・・・・・はぁ、はぁ・・・・」
「そうだったな・・・じゃあ、どうする?」
北羽黒が水晶の髪を鷲掴みにしたまま、まるで人形をぶら下げるかのように手に提げ
る。吊り下げられ、顔を下に向けたまま苦しげな声が僅かに漏れる水晶を更にいたぶ
り抜く悪魔の相談が続けられる。
「傷をつけずに苦しめる・・・か」
「ああ」
「なら首を絞めるっていうのは、どうだ?」
安田が皆に持ちかけるが、他の3人は怪訝な顔を向ける。
「え?あっという間に死んじまうじゃねえか?!」
「もちろん殺さぬようにだ・・・・頚動脈なんか絞めたら気持ちよく眠っちまうから
な、指で喉を押し潰すように絞める!ただし加減してな・・・そしてこいつが意識を
失いかけたら手を緩めて少し息をさせてやる」
「なるほど・・・それなら傷もつかねえし文字通り死ぬ苦しさを延々と味わうわけ
だ」
だらりとなったまま悪魔の責めを聞く水晶。もはや指一本動かす力も残っていない身
体を更なる地獄が待ち受ける。
「よし!まずは言い出しの俺からだ」
安田が窒息拷問一番手の名乗りを上げると、北羽黒、ガファリが水晶の髪と腕を両側
から掴んで立ち上がらせる。
「さあ、覚悟しろよ・・・・・クククク」
安田の巨大な掌が水晶の細い首に絡み、そして両親指が喉に喰い込んでゆく。
「・・・・・・・・・・・・ぃ、ぃゃ、・・・・・・ぁぁぁぁぁっ、・・・んぐ・・・・・・・」
水晶は力を込めてあごを引き首をかばおうとするが、北羽黒、ガファリに髪を掴まれ
無理矢理顔を上げさせられた。安田の巨大な掌は、ゆっくりと、しかし少しづつ力を
込めて絞めつけてゆく。水晶の首に絡みついた掌は、ねちねちといたぶり抜いてゆ
く。しかも、死という安楽への逃避さえも許さぬように、僅かに力を加減して、水晶
の命を掌の中で弄んでいった。
「へへへへ、たまんねえなぁ」
「ぅう・・・・・・・・・・・ぁぁぁ・・・・・・・・・」
口元からは血の混じった涎が伝い、安田の手からマットへと滴り落ちていく。
「・・・・・・・ぁぁぁ・・・・・・・・・・んぅ・・・・・・・・・・・・・・」
(く、苦しい・・・このまま、殺されるの・・・)
水晶の身体がびくんと震え全身の力が失せようとした瞬間、安田は掌の力を緩め、水
晶の体液まみれの水着の胸元を掴み軽く頬を張る。
「・・・・・・・・んぅ・・・・げほっ!げほっ!げふぉっ!・・・・はぁ、はぁ、
はぁ・・・・」
「オラ、寝ちゃ困るな・・・まだ試合は続いてんだぜ」
この場に及んで尚、試合という言葉で水晶を敗者として嬲り抜く安田・・・そして再
び水晶の喉に太い指が押し潰すように喰い込んでいく。
「んぐぅぅ・・・・・・・・ぁぁぁ・・・・・・・・・」
首の骨の軋む音とともに、地獄の苦しみと、激痛、そして死すら許されず嬲り殺しに
される自分の今の境遇に、心ならずも涙が溢れ出した。
 「ぅぅ、・・・・・・はぁ、ぁぁぁぁぁ、かはっ、・・・・・あっ、ぅうっ、・・・・・・・・」
 「どうだ、苦しいか!首を絞められたら、どんな奴でも小便や糞、垂れ流すらしい
ぞ!ガキのくせに強情張ったお前の水着が、グショグショになるところでも見てもら
うか?おら、どうだ!苦しいだろ、そぉら!そぉら!」
 「・・・・・・ぅぅ、・・・・・・うぅ、・・・・・・・ぁぁ、」
満身創痍、しかも両脇を巨漢に押さえられ全く抵抗する術もない少女に、この元力士
レスラーは尚も首を絞め続けてゆく。水晶の小柄な肢体が、いよいよ痙攣を起こし、
あとほんの僅かで絶命する、その刹那に又も安田は指の力を緩め、頬を張り、水晶を
尚も生き地獄へと引き戻してゆく。
「フハハハハ、コロスナヨ、ヤスダ!」
「おお、こんな面白れえコト、簡単に終わらすかよ!」
「んあぁぁぁ・・・・・・・・・・ぅぅぅ・・・・・・・・・・・」(一体いつまで
・・・・どれだけ、・・・・あたしを・・・・・)
何度も何度も繰り返される現世と黄泉との往復・・・扼殺死寸前まで首を絞められ、
意識を失いかけると頬を張られ又絞められる・・・この責めが延々と続けられる。そ
してリング上の生贄はヘンセンへと渡されるが、責めは全く同じである。
「ケッ!親指が痛てえ・・・・ぞッ!」
「んぶっ!・・・・・・んあぁぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
やはり両脇を安田と北羽黒に押さえられ、無理矢理立たされる水晶の首をヘンセンが
絞めつけていく。やはり気を失うことも許されない・・・意識が遠のきかけると、そ
の頬に張り手が飛ぶ。その打撃だけでも水晶の口の中はズタズタに切れてしまい、咳
き込んだ時にはおびただしい鮮血が口から飛び散っていく。
「・・・・・・がはっ!げほ!・・・んぶっ!・・・・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・
・・」

リングの上で終わることなく続けられる鬼畜の宴・・・・。昼の1時に開始されたこ
の“試合”も既に3時間が過ぎ、4時を回ろうとしている。3時間もの間、若干17
歳の157cmしかない小柄な少女が、4人の巨大な悪鬼の群れに嬲り殺しにされる
惨劇を、極上のショーとして観続けるVIPと呼ばれる観客達もまた鬼畜としかいえ
ない・・・。
陽が傾きかけた夕方5時、ようやくショータイムの終了が告げる観客へのアナウンス
が場内に鳴り響いた。

ある観客の証言より
「ああ、そりゃぁ惨かったってもんじゃなかったさ。腹をしこたま殴られて、もう何
も吐くものも無くなってんのに倒れ込んでる女の子を寄ってたかって無理矢理立ち上
がらせて首絞めてさ、気ィ失ったら引っぱたいたり水ぶっ掛けたりして何度でも起こ
してさ殴ってさぁ、もうあの娘、口からボタボタ血を吐いてやがんだぜ。そんなのが
大方4時間・・・さすがにこれ以上やったらヤバいって思ったんだろうな・・・、そ
こでGAME OVER!・・・え、また来週もあの娘出るの?オレ、絶対見に来
ちゃうよ・・・親父も来るよな?え、予算委員会?そんなのどうだってイイじゃん(
笑)」

初防衛戦を目前に謎の失踪をとげた川村水晶・・・あれから半年、伝説の美少女レス
ラーは今も闇のリングで戦い続けている・・・。

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