ミックスファイトカフェのリングに再び2人の女が帰ってきた。1人は末広涼子、そしてもう1人はその末広涼子と大仁多厚の2人がかりで血の海に沈められた沖菜恵であった。かねてから恵が申し出ていた1対1のリベンジ戦を涼子が受け、フィクサーがマッチメイクしたのだ。主催者より発表された試合形式は60分フルタイム金網デスマッチ・・・試合をする2人が四方及び頭上まで覆われた金網の中に入り、ゴングが鳴った瞬間から60分間経過するまで扉にはタイマー式の錠が掛かり、戦っている選手はもちろん主催者側もその扉を開く事が出来ず、あらゆる脱出の手立てを奪われるといった過酷なものであった。その地獄の待つリングへと今夜2人の女は入っていった。沖菜恵は白いワンピース水着にくるぶしまでのレスリングシューズ、対する末広涼子は黒のTシャツに迷彩柄のアーミーパンツ、足元は編み上げの黒い皮のブーツといったいでたちで、その対比はベビーフェイスとヒールそのものであった。
「ふふふ・・・沖菜先輩、まさかホントにあたしともう一回やるとはね・・・」
身長にして155cmの恵と160cmの涼子・・・その差は5cmだが水着しか身に着けていない恵は更にもう一回り小さく見えた。それでも恵は怯む様子もなく、挑発していった。
「うるさい!1対1ならもう負けないわ!!」
「1つ教えてあげるわ!この60分フルタイム金網デスマッチを提案したのはあたしよ・・・この1時間はあたしにとっては一瞬よりも短い悦楽の時間、そしてあなたにとっては永遠よりも長い地獄の時間となるのよ!!」
「その台詞、そっくりお返しするわ!」
「上等!!」
カアァァァ・・・ン!!試合開始のゴングと同時に2人は意外にもオーソドックスに四つに組み合っていった。
「ふふ、アンタみたいなチビがそんな真正面からやって勝てると思ってんの?」
体格で勝る涼子が徐々に押していくと恵はさっと涼子の懐にもぐり込んでいった。
「なめるなぁぁっ!」ズダアァァァァ・・・ン!!
気合一閃!恵のダブルリストアームソルトが鮮やかな弧を描き涼子をマットに叩きつけた。
「痛ッ!・・・く、くそっ!!・・・」
油断からか、腰を強打し立ち上がるのが遅れる涼子に恵は次の責めの為の距離を取っていた。
「エェェェ・・・イッ!!」
コーナー一杯に距離を取り恵は前回の試合、一撃で大仁多をダウンさせたシャイニング・ウィザードを狙い飛び込んでいった。
「くっ!・・・そっちこそ、舐めるな!!」
それを察知した涼子は一瞬早く立ち上がり、カウンターのパワースラムに切り返していった。
ズダァァァ・・・ン!!「うぐっ・・・・かはっ!・・・・」
攻守を逆転されコーナー際でダウンする恵に今度は涼子がヤクザキック、しかも爪先での蹴りで襲い掛かっていった。
「死ねえぇぇぇ・・・・・!!」
「キャァァッ!」ズダアァァ・・・ン!!
涼子のキックは間一髪恵の肩口を掠めコーナーポストを震わせた。その振動は恵をそして観客席全体を凍りつかせた。
「な、何!?・・・あなた、その靴?・・・・卑怯よ!」
そう、涼子の履いてきた靴は工事現場や工場などで使われる安全靴と呼ばれる爪先に鉄板の仕込まれた、言わば凶器シューズであった。
「そうよ。何か文句あるの?・・・・今日はデスマッチよ!」
涼子は四つん這いのままの恵を見下ろし見得を切り更にキックで恵に襲い掛かっていった。低い態勢のまま辛うじてかわし続ける恵・・・しかし再び徐々にコーナーへと追い詰められていった。
「ふふふ、今日のために特訓してたって話だけど、鍛えたのは逃げ足?・・・けど、もう逃がさないわよ・・・」
「くっ・・・・」(あんなの喰らったら骨ごと壊されちゃう・・・・でも、逃げててもどうしようもないわ)
「さあ、死ねぇぇぇ・・・・っ!」
涼子のトーキックが恵の顔をコーナーとで押し潰さんとした刹那、恵はキックをすり抜けながら涼子の懐に潜り込んでいった。
「えっ?!・・・・クソッ!」
「とりゃぁぁぁ・・・っ!!」
気合一閃!恵の肢体は涼子の脚と首を捕らえたまま鮮やかな弧を描き涼子を脳天から叩きつけていった。
バアァァァ・・・ン!!「ぐはっ!・・・・」
恵の起死回生のキャプチュードで受身の取れないままマットに叩きつけられた涼子は軽い脳震盪から大の字となった。
「はぁ、はぁ、はぁ、・・・・・さあ、今度はあたしの番よ!!」
恵はコーナーポストに上り涼子が立ち上がるのを待ち構えていた。ダウンから恵を見失いキョロキョロと見回しながら立ち上がった涼子の後頭部に向かってコーナーポストの恵がミサイルキックで飛び込んでいった。
「それぇぇいっ!」ビシィィッ!!「ひっ!ああぁぁぁ・・・」
恵の渾身の一撃が涼子の後頭部を討ち抜いた。如何に恵が軽量とはいえ、鍛え様のない後頭部に2mの高さから全体重を浴びせられての攻撃は涼子を悶絶させるに充分であった。
「んぐぅぅぅ・・・・・ち、畜生!!」
続け様に頭部へのダメージを負い意識はあっても涼子の身体は痺れ、言う事を聞かない状態であった。
「どう?これでもまだそんなナメた口がきける!?」
「くう・・・・・・っ!」
恵は涼子を強引に立ち上がらせ、その背後に回りウエストに腕を廻した。
「さあ、いくわよ!・・・てえぇいっ!!」
気合とともに恵はブリッジを効かせたバックドロップを仕掛けた!
「さ、させるかぁぁぁぁ・・・・ッ!」(これ以上頭打ったら、ヤラレちまう!)
涼子は身体が浮き上がった瞬間、自らの脚を恵の脚に絡ませ河津掛けで押し潰していった。片足を払われバランスを崩しながら下敷きになる恵・・・その瞬間、恵のもう片方の足に激痛が走った。
グキィッ!!「きゃぁっ!・・・痛ッ!・・・・」
2人分の体重と自らの技の勢いが捻じれた状態の足首1本にかかり、恵の足首は捻挫してしまったのだ。激痛に歯を食いしばりながら耐える恵。
「い、痛ッ・・・・・くっ・・・・・」(痛ぁい・・・足くじいちゃった?でも、この女に気付かれたら突け込まれちゃう・・・足を庇って勝てる相手じゃないわ・・・気付かれる前に一気にカタをつけないと・・・・)
恵は負傷を気付かれないように涼子よりも先に立ち上がり、膝を突く末広の髪を掴んで更にロープへと飛ばし自らも痛む足に鞭を打ち逆方向のロープへと走った。そして跳ね返ってきた末広に恵は加速を付けるために痛めていない方の足で踏み切り、痛めた右足を思い切りロープから帰ってきた涼子の顎に叩きつけていったのだ。
「エェェェェイっ!!」バキィッ!!グシャッ!!
「うぐぅっ!!・・・はうっ!!」
恵の稲妻レッグラリアートが末広の喉を捉え、末広は勢いよくマットに叩きつけられた。恵にとってもその代償は大きかった。痛めていた足首の骨が砕ける音がレッグラリアートの衝撃音と重なり耳を衝いた。しかし体格とキャリアで劣る恵にとって勝機を見出すとすれば、飛び技しかなかった。
「うわあぁぁぁぁぁ・・・・っ!!・・・くぅぅぅ・・・・・・」
全身にあぶら汗を浮かべ激痛と闘いながらも足を引き摺り尚も涼子ににじり寄って行く恵・・・。しかし涼子もレッグラリアートの瞬間、恵の骨の砕ける音を聞き事態を把握していた。
「くっ!・・・・ちくしょう!沖菜みたいなアマちゃんがここまでやるなんて・・・」
「まだまだ!・・・痛ッ!・・・・うぅ、これでとどめよ!!うわあぁぁぁぁぁぁ・・・・・!!」
脳震盪で足に来ていながらも反撃の構えを取ろうとする涼子を恵はボディスラムの態勢に片足一本の状態で抱え上げ悲鳴にも近い気合と共にそのまま脳天からまっ逆さまにマットに串刺しにしていった。
ズダアァァァァ・・・ン!!恵がこの試合のフィニッシュにと用意していた必殺技みちのくドライバーUがモロに決まった。
「ぐああぁぁぁっ!!」
呻き声と共にリング上で大の字になった末広涼子・・・
「今だわ!」
恵は豹のような俊敏さで末広の首と右腕に自らの両脚を絡みつけていった。
「ぐはっ!・・・くっ・・・うぅぅ・・・・」(あ、あたしが・・負ける?・・・こんなチビに?!・・・・く、苦しい・・・・くそっ!・・・・え、血?あたしの・・・・)
末広の口元からは呻き声と共に血の混じった泡がこぼれ出した。三角絞めが完璧な状態で極められており、試合開始から15分が経過し観客達も早くも勝負が決せられたと思われた瞬間、技を極められている末広から低い、ややハスキーな笑い声がこぼれ出した。予想を遥かに超える恵の攻勢と自らの流す血が涼子のファイターとしての最後のリミッターを外す事となった。そしてこの後恵、いやその場にいた観客全てはこれまでに体験した事もない恐怖を味わうこととなる・・・。
「フフ、・・・フフフフ・・・・キャハハハ・・・!!」
右腕と頚動脈を絞められ苦しいはずの涼子から何と笑い声が響き始めた。
「な、何よ?!・・・・ハッタリもいいかげんにしてよ!苦しいなら苦しいって言えば!!」
涼子の予想外の行動に動揺しながらも、恵は絡みつけた脚に更に力を込めた。
「ふふふ・・・・あんまり調子に乗るんじゃないぜよ!!」
「な、何よ?!変な言葉使っても?!・・・・きゃあぁぁぁ・・・!!」
末広は三角絞めを極められたまま立ち上がり、何と信じられない事に恵を頭上高く持ち上げて見せたのだ。如何に恵が小柄で軽量とはいえ、涼子もそれほどの体格差があるわけではない。しかし現実に涼子は片腕一本で恵を持ち上げていたのだ。
「う・・・う・・そ!・・・・・・・きゃあっ!!」
涼子は恵をそのままコーナーポストに背中から叩きつけた。衝撃にうずくまりながら、涼子の信じられない反撃に茫然となる恵・・・瞳には怯えすら浮かび始めていた。対する涼子は明らかに目が据わっており、舌なめずりをしながら狼狽する恵を見下ろしていた。
「コラ、ようもやってくれたの・・・今のはちっとばかし痛かったぜよ・・・・・」
腕を振り首筋をさすりながらむくっと起き上がった末広の目は完全に据わっており、狼狽する恵を睨みつけていた。
「ようやく見れそうですね・・・・彼女の本当の姿が・・・」
リング下のフィクサーが笑みを浮かべながら悦に入った様子で末広涼子の攻勢を見つめていた。生まれ故郷の土佐・高知で喧嘩に明け暮れていた頃の本性が今剥き出しとなって、恵に襲い掛かろうとしていた。
「くっ・・・・何、この娘、化け物?・・・」
三角絞めまでの一連の責めに力を振り絞り使い果たした恵には今や戦闘力は殆ど残されてはいなかった。
「あんた・・・・足痛めとろうが?・・・ちゅうことは、もうチョコマカ逃げれんちゅうことじゃね!」
「くっ・・・足一本くらいあなた相手にはちょうどいいハンデよ!」
絶体絶命の中、恵は精一杯の強がりとしか言えないような台詞を返した。それを聞き余裕の笑みを浮かべる涼子。そしてノーモーションで信じられないほどのスピードで恵の腹にトーキックを叩き込んでいった。
ドスゥゥ・・・・ッ!!「んぐぅっ!・・・・かはっ!・・・・んあぁぁぁ・・・・・」
口をパクパクさせながら血反吐を吐き苦しみ悶える恵・・・。完全に切れてしまいリミッターが外された涼子の責めに対し足を痛め唯一の拠り所であったスピードを殺された恵にもはや避ける事など出来なかった。胃袋を鉄板入りのシューズで押し潰され脂汗を浮かべながら腹を押さえうずくまる恵の髪を涼子は鷲掴みにし、苦悶の表情を眺め愉しんでいた。
「ふふふ・・・精々、えぇ声で泣いてくれんね?」
涼子は更に恵を強引に引き摺り起こし、トップロープとセカンドロープに両腕を絡ませ、磔状態にしていった。
「うぅぅ・・・・痛ぁぁいぃ・・・」
恵は唯一動かせる片脚をばたつかせ、精一杯の抵抗を試みた・・・が、それを嘲笑うかのように涼子は恵の足首を捉え脇に抱え込んだ。
「ジタバタとうっとしい脚じゃね・・・そりゃぁぁぁっ!!」
涼子は恵の足首を掴んだまま一気にドラゴンスクリューを炸裂させた。
ビキィッ!!「キャアアァァァァァ・・・・・ッ!!」両腕を磔状態で固定されていた為、受身を取ることも衝撃を逃がす事も出来ずに恵の膝靭帯は完全に破壊され、靭帯の引きちぎれる音と恵の悲鳴が会場に木霊した。捻じれた状態のままの脚を自ら直す事も庇う事も出来ずに悲痛な呻き声を上げながら、その整った顔はあぶら汗と共に苦痛に悶えていた。だが、涼子の責めは尚も終わろうとはしなかった。
「あと一本の折れちょる方も、もろうとくぜよ・・・・」
涼子は恵のもう一本の足首を再び脇に抱え込んでいった。
「さあ、行くぜよ・・・」
「痛っ!痛ぁい・・・や、やめて・・・いやあぁぁぁぁ・・・・!!!」
「ほたえなやぁっ!!そりゃぁぁぁぁ!!」
恵の哀願など一切構わず涼子はドラゴンスクリューで恵のもう一本の脚を捻じ切っていった。
「ギャアァァァァァァ・・・・・っ!!痛ぁぁいっ!あ、脚がぁぁぁぁ・・・・・!!」
恵の両脚は足首、膝を不自然な形に捻じられ、これで恵の僅かに残されていた戦闘力は完全に奪い去られた。
「まだ時間はたっぷりとあるぜよ・・・たっぷりとな!!」
涼子は恵をロープから引き剥がし、髪を鷲掴みにしコーナーへと引き摺っていった。僅かに首を振りながら涼子の掌を懸命に振りほどこうとする恵だが、ズルズルと引き摺られコーナーを背にしたままコーナーポストに登った涼子に髪を捕まれたまま吊り下げられていた。
「いやぁぁ・・・・はなしてよぅ・・・・」
「ほたえなっちゅうとろうがっ!!」
涼子は恵が悲痛な呻き声を上げるのを、一切の容赦無く背後から恵の髪と右腕を両手で捉えた。激痛と屈辱に泣きじゃくる恵の顔を会場中に晒すと涼子は更に恐ろしい技に出ようとしていた。
「さあ、今からカーフブランディング(仔牛の焼印押し)ならぬ、牝ブタの焼印押しじゃあっ!」
通常のカーフブランディングは膝を相手の背中に押し当て一気に押し潰してゆくのだが、涼子のそれは膝を恵の肩から肘にかけての辺りに押し当てていた。このまま体重を浴びせ押し潰せば間違いなく恵の右腕は骨ごと砕かれてしまう・・・。
「いやあぁぁぁぁ・・・・!!やめ、やめてぇぇぇ・・・・!!」
懸命に残された力で抵抗する恵だが、既に脚を潰された今の状態での抵抗など涼子の嗜虐心のスパイスにしかならない。髪と腕を捕まれ宙吊り状態のまま恵は今更なる苛烈な責めの生贄になろうとしていた。
「そうりゃぁぁぁぁぁぁぁ・・・・!!」
涼子は勢いよくコーナーを蹴り、凄まじい勢いでマットへと恵の肩、腕をめり込ませていった。
バアァァァァァ・・・ン!!グシャァァッ!!「うわぁぁぁぁ・・・・!!あぁぁぁぁぁぁ・・・・・・うぅ・・・・」
落下の衝撃音と骨の砕ける鈍い音、そして恵の絞り出すような悲鳴が会場に響き渡った。うつ伏せに倒れたまま左腕で右腕を抱え込むように庇う恵を薄笑いを浮かべながら見下ろす涼子。そして涼子は笑みを浮かべたまま倒れ込んだ恵を無理矢理立ち上がらせた。
「さあ、どうしたんね?まだまだ時間は残っとるぜよ・・・さあ、立ちいや!!」
「いや・・・もう、ゆ、許して・・・・いやぁぁぁぁ・・・!!」
怯える恵のただ一つ残された左腕を涼子は苦も無く捻じり上げてそのまま一気に自らの肩に逆関節を極めたまま叩きつけていった。
バキィィッ!!「キャアァァァァァァ・・・・!!痛あぁぁぁぁぁぁいィィィ!!」
涼子のショルダーアームブリーカーが恵の四肢の残された一本をまるで小枝を折るかのように容易く破壊していった。両腕、両脚を潰されボロ人形のように呻きながら這いつくばる恵の姿に残虐なもの見たさで鳴るミックスファイトカフェの観客も静まり返ってしまっていた。しかし今回は金網のロックは1時間という時間の経過以外に開く術はないのだ。もはや戦うどころか片膝を突く事すら出来ない恵を涼子はヘッドロックに捉え、トップロープとセカンドロープに再び恵を磔にしていった。
「さあ、・・・・死刑執行じゃ!!そりゃあぁぁぁぁ!!」
ドスゥゥッ!!
身動きの取れない状態の恵の腹に涼子の膝蹴りが深々と突き刺さった。
「がふっ!・・・・かはっ!・・・ぅぅぅぅ、・・・・・・」
朦朧とする中、恵は僅かに口をパクパクさせ悲痛な呻き声を漏らしながらその端正な顔を苦痛と絶望に歪めた。
(何?こんな人に勝てるわけない・・・殺されちゃうの?)
そうした恵の心の内を見透かしたかのように涼子は勝ち誇りながら恵の前髪を掴み顔を近づけ、恵の苦しむ様を更に愉しみながらボディへと拳を突き刺していった。
ドスッ!!「きゃあっ!・・げふぉっ!・・・はうっ!・・・ぅぅぅ・・・・」
涼子の決して大きくはない体から放たれた責めは、しかし意外なほどの衝撃でロープを揺らし挟み込まれた恵の折られた腕の骨を締め付け、内臓を痛めつけていった。涙でその大きな瞳を潤ませ俯こうとする恵に涼子は髪を掴んだ手を離さず、尚も連打を叩き込んでいった。
「苦しいじゃろ?けどまだまだ時間はあるきにの!」
「うぅ!・・・はうっ!・・・げふぉっ!・・・はうっ!・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・がふっ!」
女の肉体を殴る鈍い音と恵の徐々に弱っていく呻き声とそれとは逆に嬉々とした表情で上げる涼子の声だけがホールに響き渡った。
「そりゃっ!どうしたんじゃ、さっきまでの元気は?・・・まだ時間はあるちゅうとろうがよ!」
「うっ!・・かはっ!・・・うえぇっ!!」
恵の口元からはビチャビチャと音を立て赤黒い胃液が零れ出していった。それをかわしながら涼子は恵の髪を掴み再び顔を近づけ微笑みかけた。
「おいおい、汚ちゃないんじゃ!・・・おまんが綺麗にせいや!」
涼子はロープに磔にしていた恵をはずすと恵の吐き出した血反吐に向かってうつ伏せに叩きつけた。
ベシャァァッ!
「うぅぅ・・・いやぁ・・・あぁぁ・・ん・・・・」
恵の頭を鷲掴みにし、涼子はマットに吐き散らかされた恵の吐瀉物を舐めさせるように擦り付けていった。恵の美しい顔が血反吐にまみれ、胃液の匂いが鼻を突いた。もはや両手両足を潰され抵抗するあらゆる術を失ってしまった恵・・・しかし徹底的に惨めさと敗北感を味合わせるために涼子は念入りに恵をマットに擦り付けていった。
「ほうれ、おまんが舐めてきれいにするんじゃ・・こうやってな!!」
「いやあぁぁぁ・・・ん・・・・・・・は、放してぇ・・・・・」
涼子は恵の髪を掴んだまま念入りに血反吐の海に泣き顔を沈めながら、顔を近付けながら囁いた。
「さあ、残り時間20分以上あるんじゃけど、おまん、自分で水着を脱いであたしに土下座するんなら、残り時間全裸でロープ磔の刑で許しちゃるぜよ。・・・断るんじゃったら、・・・・嬲り殺しじゃ!」
両手両足を折られ這いつくばる恵の顔を血反吐に押し付けながら、涼子は恵に最後の屈服を迫った。既に勝敗は誰の目にも明らかだった。勝者は傷つき為す術を失った敗者に鞭打つように全裸となり晒し者になることを強いた。
「うぅ・・・・・・ぁぁぁ、・・・・・」
苦痛と絶望、そして敗北感から呻き声を漏らすだけの恵・・・涼子はそのうつ伏せのままとなった恵の背中にドッカと跨り背後から腕を首に絡ませていった。キャメルクラッチとドラゴンスリーパーの複合技とも言うべき拷問技が恵の傷ついた肢体を蹂躙していた。
「クゥ・・・・、うあぁぁぁ・・・・・・・・」
「どうじゃ、苦しかろうが?・・・・このまま背骨と首、へし折っちゃろうかの!」
「んああぁぁぁぁ・・・・・!!」
恵の首と背骨がミシミシと音を立て反り曲げられていき、悲痛な呻き声が正に断末魔を予感させた。徐々にその声も途切れ出し恵の身体が小さく痙攣し始めると、涼子は首を絞めていた腕をあごに移動させていった。
「んああぁぁぁ・・・・!!げふぉっ!げふぉっ!・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・・・ぅぅ、・・・・・」
僅かな呼吸を与えられ、恵の遠のきかけた意識が再び苦痛へと引き戻されていった。涼子の嗜虐心は失神することさえ許さなかったのだ。
「まだ、お寝んねにははやいぜよ・・・・エエ、こらぁ!」
「くあぁぁぁ・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・キャアァァァァァ・・・・・!!」
そして更に恵の意識が激痛によって覚醒させられた。涼子は拷問技で恵を蹂躙しながら片手で恵の折れた右腕を捻じり上げ始めた。
「どうじゃ?痛いじゃろ?・・・早うあたしにワビ入れて素っ裸になったらんかい!」
「ぐああぁぁぁぁ・・・・・・っ!!!痛ぁぁぁぁぁいィィィィ!!」
涼子は恵の悲鳴を愉しむようにドラゴンスリーパーを仕掛けていた腕を恵の額にずらし、地獄の責め苦を味あわせていった。首、背骨、そして腕とビキビキと壊れ始める音を立てながらも恵は気を失う事も出来ず小さな身体で耐え続けることしか出来ない。
「そうら!そうら!そうら!・・・・もっと痛い思いさしちゃるぜよ!!それとも言う通りに裸でワビ入れるか!」
「あぁぁぁぁ・・・・・す、す・・え、ひ・・ろさん、・・・・あ、なた・・・・」
地獄の関節技に絞めつけられる恵の口元から途切れ途切れにか細い声がこぼれた。末広の凄惨な責めに言葉を失い静まり返った場内もその言葉に耳をそばだてた。誇り高い女優沖菜 恵が末広の底力の前に屈服する瞬間・・・・。涼子も僅かに力を緩め、その言葉に耳を立てた。
「さあ!早よぅ、お客さん皆に聞こえるように言うたらんかい!!・・・さぁ!」
「す、末広さ・・ん、あなた・・・」
「早よぅ!!そらっ!」
「あなた・・ワキ・・・臭いわよ・・・・」
「何じゃとぅ!・・・このチビ!!」
ビキィィィッ!!「ぎゃあぁぁぁぁ・・・・・・・・・・ッ!!」
涼子は一気に力を込め恵の折れた腕を捻じり上げていった。そして涼子は技を解き、放り捨てるように恵を蹴り転がした。
「んぐぅぅぅ・・・・・・!!ああぁぁぁ・・・・・・」
不自然な角度に捻じれた右腕を引き摺りながら立ち上がろうとする恵・・・・涼子は恵の水着の胸元を掴み、強引に引き起こしていった。
「ふふふ、ここまで舐めくさったんは、おんしが初めてぜよ!!あんた、もう終わったぜよ!!」
「うぅ・・はぁ、はぁ、はぁ、・・・あんたに許しを請うくらいなら死んだ方がマシよ!さあ、やれば!!」
「ふふふ、あたしも阿呆じゃないきに、殺しはせんよ・・。けどそれ以上の事、覚悟してもらうぜよ!!」
「な、何よ!・・・一体何する、ギャッ!」
涼子の拳が恵の頬に叩き込まれた。激痛と女優の命とでも言うべき顔を傷つけられた衝撃に打ちのめされる恵・・・しかしそれにお構いなく涼子の鉄拳が恵の頬、鼻、額、こめかみに次々と襲い掛かっていった。
「いや!・・顔は、や、やめ・・アァン!!がふっ!・・・痛ッ!!・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
無言のまま恵の顔を破壊していく涼子。腕でガードする事も出来ず足を使って逃げる事も出来ない恵は涼子に首根っこを捕まれた状態で殴られ続けた。先ほどまでの技を使った責めから一転して単純で原始的だが苛烈な責めは恵だけでは無く観客席までも恐怖に凍りついていった。
両者の足元には鮮血、そして折れた歯までが散らばり、その上を恵の涙が滴り落ちていった。
(あたしの顔が・・・・女優出来なくなっちゃう・・・・・・・)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そして程なくゴングの金属音と共に金網のロックが解除されミックスファイトカフェのスタッフにより両者が分けられた。
沖菜恵は両腕、肩、両脚、そして顔面と数十箇所の骨折によりその美しい容姿は見る影も失っていた。ミックスファイトカフェの誇る最高の医療スタッフをもってしても女優復帰に最低でも1年・・・・・・。恵のリベンジにかけた執念はあまりにも無残な形で幕を閉じる事となった。

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