「えぇ、プロレスですかぁ?」

事務所内に甘い声が響いた。今の声は人気グラビアアイドル、乙羽の口から出たものであった。周りからアニメ声と言われる声とは対照的に乙羽の瞳は緊張と恐怖に震えていた。地下プロレスというと、かつて乙羽は二田佳子とその息子高梁裕也の謀略により半殺しの目に遭っていたのだ。ミックスファイトカフェ医療団による完璧な治療で全身に受けた傷跡こそ癒えたものの、心に刻まれた恐怖は未だ拭い去れないままでいた。だが、その乙羽の気持ちを無視するかのように事務所の社長は言葉を続けた。

「そうだ。また君に是非出場して欲しいとミックスファイトカフェの方からオファーがあってね・・・。」

「そんなぁ・・・あたし、もうあんな目に遭うのはいやです!」

日頃は決して事務所の指示に逆らう事のない乙羽もさすがに今度ばかりは拒絶の意志を主張した。だが、社長は尚も乙羽を説得した。

「乙羽ちゃん、前は本当に災難だったと思うけどさあ、あれから君の仕事の方も順調にきてるのは、正直うちの事務所の力だけじゃ無理なんだよ。それに今度は相手も同じグラビアやってる女の子同士だし、おまけに今度は事務所対抗のタッグマッチだからさ、この間みたいなことにはならないよ。」

「本当ですかぁ・・・」

確かに乙羽の所属する事務所フィートは事務所としては小さく、乙羽がこれほどグラビアで露出している割には地上波でのレギュラーはまだ取れてはいないのが現状である。

「頼むよ!乙羽ちゃん!今までうちの事務所はさぁ、竹田久美子ちゃんとかが脱いで仕事を取ってきたようなランクだったのが、君の頑張りで生まれ変わることができるんだよ!」

「・・・・はい、いいです・・・・わたし、やります・・・」

社長の熱弁に押される形で再び乙羽のミックスファイトカフェへの参戦が決まった。

1ヵ月後・・・乙羽は再びミックスファイトカフェの扉を開いた。控室で事務所の用意したコスチュームへと着替えを急ぐ乙羽・・・既に今日のパートナーである事務所の先輩大原さおりは着替えを済ませ、花道の手前のスペースで乙羽を待っていたのだ。事務所がこの試合前ギリギリまでスケジュールを詰めていた為に会場入りの遅れた乙羽はたった1人でコスチュームに着替えていた。

「うわぁ・・・きついよぅ・・・・」

用意されたコスチュームは純白の光沢のある生地でハイレグの長袖レオタードにミニスカート上のフリルのついたデザインとなっており、丁度フィギュアスケートのコスチュームのようだったが、ただ胸元は乙羽の巨乳を強調するように大きく開いていた。小柄な乙羽が着ていても全身を締め付けるほどサイズが小さめのため、ただ立っているだけでもお尻は半分くらいはみ出し、一歩歩くだけでもきつく喰い込んでいく。ちょうど腰のフリルのすそから、お尻が剥き出しとなり、まるでミニスカートの下に何もはいてないように見える。とりあえず胸には自分で用意してきたニプレスを貼り、乳頭を目立たないようにしたが、それでも身体のラインは、まるでボディペインティングでもしたかのように、鮮明に浮き上がっていた。

「クスン・・・・やだなぁ・・・・恥ずかしいよぅ・・・・・」

乙羽はべそをかきながらもレスリングシューズの紐を結んでいった。だが、もう逃げ出すことも、そしてパートナーを待たせてわがままを言うことも出来ない事もよく思い知らされていたのだ。

「・・・・行くしかない、よね!」

自分に言い聞かせながら、乙羽は控室を後にした。再び地獄の罠の待ち受けるリングへと向かって。

 

「遅かったじゃない、乙羽!行くわよ!」

「は、はい!すみません!」

「まったくトロイんだから!」

花道の手前の窪んだスペースで大原が待っていた。白で統一した乙羽とは対照的に大原は黒のスポーツブラにジーンズにウエスタンブーツといったストリートファイターのような出で立ちであった。

「あら、あんたそんな格好で今日のデスマッチやる気?それともそうまでして自分の身体や肌を見せつけたいのかしら?」

「いえ、これは・・・事務所の人が・・・・」

「ふーん、まあいいわ。」

かつてはミニスカ刑事(デカ)のリーダーとしてブレイクし、乙羽がデビューするまでは事務所を1人で支えていたが、最近はバラエティーに時々お呼びが掛かる程度で後輩の乙羽に大きく水を開けられていた。

「今日の相手はちょっとシャレになんないんだからね。足引っ張るような事したら承知しないからね!!」

「はい!」

乙羽も大原が自分に決していい感情を持っていないことは気付いていたが、パートナーとして自分が認められるよう頑張るしかないと悲壮な決意を胸に決めていた。

「ただ今より、本日のスペシャルマッチを行います!」

ミックスファイトカフェ専属のリングアナ兼レフェリーの、よく透る声が満員の地下会場に響き渡った。

「赤コーナー、フィート所属、身長164cm、バスト95cm、大原さおぉぉりィィーっ!、続きまして身長157cm、バスト89cm、乙羽ぁぁぁ・・!」

現在のトップグラビアアイドル乙羽のリング登場に沸き返る観衆たち。ひとしきりの歓声が止むと相手チームのコールが行われた。

「青コーナー、イエロージャブ所属、身長166cm、バスト91cm、小池ぇぇ、暎子ぉぉぉぅ!!続きまして身長173cm、バスト88cm、佐藤ぅぅ、恵理子ぉぉぉ・・・・!!」

芸能界の誇る最強巨乳軍団の2トップの登場に、又しても観客席が沸き立った。

「え?うそ・・・・あの人たちが相手なの?」

驚く乙羽をよそに、イエロージャブの二人がリングへと姿を現した。小池、佐藤共に、事務所にちなんだレモンイエローのタンクトップに、同色のアーミーパンツに黒皮の編み上げブーツでも登場していった。しかし4人並ぶとただ1人生脚や肌を露出した姿ということもあり、明らかに乙羽の小ささが際立った。ただ1人見上げる視線の乙羽。観客席からも残酷な期待感が高まった。

「おい・・・乙羽ちゃんが狙われるな。」

「ああ、今日の生贄は決まったぜ。」

「他の皆んな、服着てんのに乙羽ちゃんだけあんな格好だもんな・・・・」

観客席の期待の中、レフェリーから試合のルールが説明されていった。

「本日の試合はタッグ・デスマッチとして行われます。尚ギブアップを奪った者には賞金として5000万円を、そして奪われた者には当ミックスファイトカフェのプロデュースする(全裸レイププロレス)への出場が強制されます!」

ウオオォォォォォ・・・・・・・ッ!!

この突然の発表に観客の興奮は頂点に登った。

「う・・・うそ?・・・・」

平然とする3人に対して、1人慄く乙羽・・・。だが気を取り直す間もなく唐突にゴングが鳴らされた。

カアァァァァ・・・・・ン!!

乾いた金属音と共に遂に死闘の幕が切って落とされた。先発はイエロージャブ側が小池暎子、対するフィート側は意外にも大原さおりが先発であった。

「乙羽、どいてな!・・・いくよ!」

「オラアァァァッ!このヤロウーっ!」

気合と共に小池と大原が四つに組み合った。身長166cmでバスト91の小池に対して、身長164cmバスト95の大原と迫力の組み合いとなった。

「大原さん、もう若くないんだから無理しない方がいいんじゃない?」

「うるさいわね!あんたこそ胸だけで芸能界生き残っていけると思ったら大間違いよ!!」

「はん!・・・あんたにだけは言われたくないわ・・・よっと!!!」

ゲスッ!!小池の組んだ状態からの膝蹴りがモロに大原の大きなバストに喰い込んだ。

「はうぅっ!・・・・・」

息を詰まらせながら崩れ落ちる大原・・・・しかし倒れ込む寸前で踏ん張り小池の股間に腕を差し入れ一気に抱え上げていった。

「トリャァァァ・・・・ッ!!」

「え?・・・何!?」

優勢だと思った自分の身体が大原の頭上に高々とリフトアップされ、小池はうろたえた。そしてそれを弄ぶようにリフトアップしたままリング内を一周し四方にアピールする大原。

「ふふふ・・・まだまだあんた達なんかに負けやしないのよ・・・そらよっと!!」

ズダアァァァァ・・・・ン!!観客に充分アピールした後、大原は小池をマットに放り捨てた。

「キャアッ!・・・・痛ッ・・・・ちくしょう!この馬鹿力め!!」

腰をさすりながら大原を睨みつける小池、そしてそれを悠然と見下ろす大原さおり。戦況をコーナーで見つめていた乙羽は息を飲んだ。

(す、凄い・・・大原先輩ってあんなに強かったんだぁ・・・・)

事務所の先輩の意外な強さに驚く乙羽に大原の声が飛んだ。

「さあ、乙羽!・・・来い!」

大原が小池の髪を掴んで無理矢理立ち上がらせ、自分のコーナーの乙羽の方に向けた。大原が掴まえた小池にコーナーポストからのミサイルキックを撃てという合図だった。

「は、・・・はいッ!!」

乙羽が小さな身体をひらりと浮き上がらせコーナーポストに駆け上がった。そして一気に小池に向けてミサイルキックを発進させていった。

「ええぇぇぇいっ!!」

乙羽の足先が小池の胸に突き刺さろうとした瞬間、どうした訳か大原の手が緩み小池がするりと身をかわしたのだ。

ビシイィィッ!!

「ぐはあぁぁっ!!・・・・・・痛っ・・・・・」

乙羽の渾身のミサイルキックはパートナーである大原の大きなバストに突き刺さった。悶絶しながら後ろに倒れ込む大原、・・・乙羽はそれを気遣い駆け寄った。

「大丈夫ですか?・・・す、すみません、すみません!!」

乙羽からすれば不可抗力の事態だったが、ただ大原を気遣う乙羽に先輩であるパートナーが返した言葉はあまりに惨い言葉であった。

「あんた・・・なんのつもり?」

「はぁ?!・・・いえ、あの・・・すみません!!」

「トロイことやってんじゃないわよ!!あんたみたいなのと組んで貧乏くじ引かされるのゴメンだからね!!」

「そんな・・・・すみません!けど・・・」

「けど、じゃないわよ!!あとはアンタ1人でやれば?」

そう言い放つと大原は乙羽を突き飛ばしエプロンに引っ込んでしまった。

「え・・・?何言ってるんですか?!・・・・はうっ!!」

リング上で突如孤立した乙羽に背後から佐藤恵理子のキックが襲い掛かった。

「見捨てられちゃったみたいね・・・強い先輩に。」

「んああぁぁ・・・・・っ!!」

無防備な状態でいきなり背骨にキックを喰らい、息が止まり苦しむ乙羽。這いつくばってもがく後輩を見ながらも大原は尚も動かない。

「さあ、たっぷりといたぶってあげるわよ・・・・おチビちゃん!!」

四つん這いに倒れ込んでいる乙羽に佐藤の長い手足が絡みついていった。

「はうぅ・・・・・苦、苦し・・・い・・・・・・」

乙羽の小さな身体が佐藤の胴締めスリーパーで完全に捕獲されていった。佐藤が自らの体格を生かし乙羽の胴を脚で締め付けながら、首をもチョークスリーパーで絞めつけていく。

「どう?苦しいでしょ?・・・・でも本当に苦しいのはこれからなのよ!!」

「・・・あぁ、・・・・んあぁぁぁ・・・・」

「フフフフ、可愛い声出すじゃない・・・・楽しくなっちゃうわ。」

佐藤の脱出不可能の拷問技に乙羽の顔色は徐々に蒼ざめ、口元からは泡立った涎が零れ落ち始め、観客も巨乳美少女(年齢的には佐藤達と変わらないのだが容姿的にはそのようにしか見えなかった)への責めに息を飲んだ。いよいよ乙羽の四肢から力が抜け失神寸前となった時、佐藤はスリーパーを解き乙羽をマットに転がした。

「まだまだ苦しいのはこれからだって言ったでしょ!!」

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・た、助けて・・・ください・・・・・」

朦朧としながらも大原が控える自軍コーナーへと這いずっていく乙羽・・・しかし後ろから乙羽の足を1本ずつ持ち佐藤と小池が又しても自らのコーナーへと引き摺っていった。

ズザァァァァ・・・・・ッ「ああぁぁぁ・・・ん!!」

「まだまだだって言ってんだろうが!!」

「そうだ、おうら!」

今度は小池が乙羽の横から腕を絡ませたまま髪を掴み倒れられないようにした状態で、もう片方の腕で鳩尾に強烈なパンチを打ち込んだ。

ドスッ!「はうっ!・・・んああぁぁ・・・」

乙羽の口元からは、か細い呻き声が漏れるが、小池は構わずに容赦無く連打を浴びせていった。

ドスッ!「あうっ!・・んあぁぁ・・・・」

息も出来ずに唇をパクパクさせ、空気を貪る乙羽。

ドスッ!「かはぁ!・・・・うぅぅ・・・・」

「ふふふ、アンタって本当に可愛い声で泣くのね・・・・最高よ!」

自分の腕の中で崩れ落ちてゆく乙羽を弄ぶように、尚も小池の責めは続いた。4発か5発目には早くも乙羽の口元からは赤黒い吐瀉物がこぼれ白いマット上を染めていった。先程までヒートアップしていた観客席もその凄惨な光景に息を飲み、静まり返っていた。30数発目にしてやっと小池は乙羽をマットに放り捨てた。

「げふぉっ!げふぉっ!・・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・・」

「どうしたの・・・もうお終いなの?ギブアップするならすれば?・・・まあ、そうしたらアンタのAV行き決定だけどね!」

屈服を迫る小池の言葉がうずくまり苦痛に悶える乙羽に突き刺さる。

(・・・うぅ・・・そうだ・・・ギブアップしたら・・あたしだけじゃなくて芸能界入りを応援してくれたお父さんやお母さんまで辛い思いさせちゃう・・・・絶対ギブアップだけは・・・・)

乙羽は懸命に力を振り絞り、立ち上がろうとするが四つん這いになるのがやっとの状態だった。

「どうしたの、もう立てないんだったら、あたしが手伝ってあげるわよ!」

コーナーで控えていた佐藤が乙羽を背後から両脇を抱えて無理矢理引き起こした。

・・・」

「ふふふ・・・アンタもいい胸してんじゃん。潰してやるよ、ソラっ!」

佐藤に後ろから羽交い絞めにされた乙羽に小池が今度は乙羽の丸い形のよい乳房に照準を定めた。まるでボクシングのパンチボールを叩くようにリズミカルなパンチが左右の連打で乙羽の胸を嬲り抜いた。

パンッ!パン!パン!・・・・・

「あぁん!・・・痛あぁい!・・・や、やめ・・あん!・・・・」

「キャハハハハ!柔らかぁぁい!・・・凄い気持ちいいわよ!!」

「あぁん!・・・はうっ!・・・痛ぁい・・・や、やめて・・・あぁん!・・・」

急所である乳房への責めに激痛に喘ぐ乙羽。小池の連打が乙羽の柔らかい乳房を嬲り抜き、乙羽のか細い声がこぼれる。小池、佐藤の2人がかりの責めにレフェリーの制止はなきに等しく、パートナーの大原もコーナーで戦況を見つめるのみで動こうとはしなかった。

「ねえ、暎子。あんまりヤリ過ぎて気を失ったりしても、賞金はもらえないわよ!」

「そうね。この娘の口からギブアップ言わせないとね。せっかく今日のファイトマネーは折半でいいって社長も言ってんだからね。」

襤褸人形のように放り捨てられ崩れ落ちる乙羽・・・。

「げふぉっ!げふぉっ!・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・・」

「さあ、誰が休んでいいって言ったのよ!」

「うっ!・・・はうっ・・・・・」

佐藤が乙羽の小柄な身体を軽々とカナディアンバックブリーカーに担ぎ上げた。ゆさゆさと揺さぶりながら乙羽の腰骨を肩口で責め抜いてゆく。

「ふふふ・・・・どう、ギブアップしないと背骨が折れて一生車椅子よ。」

「うぅぅぅ・・・・・い、痛あぁぁぁいィィィィ!!」

又しても乙羽の悲鳴が会場にこだましていった。しかしコーナーの大原はただ無表情に戦況を見つめるだけで相変わらず動く様子がない。もはや限界と思われる乙羽に救いの手を差し伸べることのできるのは今タッグを組んでいる大原しかいないのだが、見殺し状態のままであった。

「うぅぅ・・・・大原先輩・・・・・た、・・・たす・・・けて・・・」

「ふふふ、無駄だよって言ってんだろっ!!オラアァァァッ!!」

佐藤がバックブリーカーの揺さぶりから勢いをつけ、一気に乙羽を後頭部からマットに叩きつけていった。

「キャアァァァ・・・・・・ッ!!」ズダアァァァァン!!

サンダーファイヤー・パワーボム!衝撃音と共に佐藤の長身から一気にマットに後頭部から叩きつけられ乙羽の小さな身体がマットに弾んだ。

「あぁぁ・・・・・はぁ、はぁ・・・・」

痙攣を起こしながらマットに大の字になる乙羽・・・しかし全身が壊れてしまうほどの激痛と戦いながらも力を振り絞り立ち上がろうとしていた。脳震盪にふらふらしながら近くにあったロープに手を伸ばし辛うじて半身を起こす乙羽に今度は小池が突進してきた。

「いい根性してんじゃん・・・・おとなしく倒れてりゃぁいいのになっ!!」

ロープを背にする乙羽に小池のラリアートが迫ってきた。

「きゃっ!」(ダメ・・・・死んじゃうよぅ・・・・)

今まさにとどめが刺されようとした刹那、小池の懐に乙羽がスッと潜り込んだ。

「オラアァァァ・・・・ッ!!・・・え、何?」

既に死に体と思われていた乙羽の予想外の動きに、戸惑う小池・・・何より仕掛けた乙羽本人にも驚くような身のこなしであった。振り下ろすようなラリアートから逃げることなく逆に一歩踏み込んだ態勢で乙羽の掌底がカウンターとなって小池の顎を貫いた。

「えぇぇぇいぃぃ・・・!!」

乙羽の掌が小池の顎を力点として高速でその脳を揺らした。一瞬で首が捻じれ脳震盪状態となり崩れ落ちる小池・・・突然の逆転技にやられた小池、そして他のリング上の選手達、仕掛けた乙羽本人さえも信じられないと茫然としていた。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・うそ・・・あたしが小池さんを?」

「この、チビ!よくも暎子を!」

棒立ちとなった乙羽に素早く気を取り直した佐藤が襲い掛かって来た。

「きゃっ!」

佐藤の左フックが乙羽の顔面にヒットした、と思われた瞬間乙羽は佐藤の左腕を自らの右肩の上に乗せ(逆一本背負い)で佐藤を脳天から叩きつけていった。

ズダァァァン!!「ぐはっ!・・・・くぅぅ・・・・・」

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・また、あたしが・・・・」

(掌打)に(逆一本背負い)・・・共に乙羽がレポーターを務める真日本プロレスのレスラーである獣神サンダー・ガイラーと佐々木剣介の必殺技であり、男子レスラーとしては小柄な部類に入る2人から今回の試合が決まってから血の滲むような特訓の末に身に付けていたのだ。

「ぐううぅぅ・・・・!!」

土壇場で繰り出された乙羽の反撃に崩れ落ちたイエロージャブ組・・・だが、乙羽にも追撃するだけの力は残ってはおらず膝を突き、うずくまっていた。

「はぁ、はぁ、はぁ、・・・・立たないと・・・」

乙羽が懸命に力を振り絞り立ち上がろうとした瞬間、背後から声が響いた。

「オイ!乙羽、こっちへ来い・・・オイっ!」

今まで静観を決め込んでいた大原が乙羽の反撃に遂に動いたのだ。コーナーから声を飛ばしながら手を伸ばす大原・・・それを見た乙羽も自軍コーナーへと這いずっていった。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・大原・・せんぱぁい・・・・・」(大原先輩、あたしが頑張ったのわかってくれたんだ・・・)

イエロージャブの2人は脳震盪から未だ膝を突いた状態であり、ここでノーダメージで控えていた大原と替われば、いよいよ勝機が見えてくる・・・そう考えた乙羽は懸命に痛めつけられた身体に鞭打ちコーナーへと近づいていった。

「乙羽ぁ!・・さあ、早くしろ!」

「大原せんぱい・・・」

いよいよ2人の手が触れようとした瞬間、乙羽に悪夢が襲い掛かった。

「きゃあぁぁぁ・・・!!」

大原が乙羽に伸ばした手と逆の手で乙羽に白い粉状のモノを顔面に投げつけたのだ。不意の目潰しに目を押さえ転がる乙羽。

「うううう・・・目が!・・目がぁぁぁ・・・!」

「ふん・・・あんたが無駄なあがきするからよ。どう?特製目潰しの味は!」

冷たい目で乙羽を見下ろす大原・・・事務所の先輩の突然の裏切りにより目を潰され、いよいよリング上でたった1人ぼっちとなった乙羽に大原はリング内へと入り、語り始めた。

「あんたが入ってからあたしも随分貧乏くじ引かされちゃってるしね。そしたら丁度イエロージャブの野良社長から引き抜きの話が来たのよ・・・あんた潰すのに協力したら、移籍した後レギュラー番組も確約してくれるっていう話だし、こっちの方が事務所も大きいしね。」

目を押さえ苦しむ乙羽を髪を掴み無理矢理引き起こすと、大原は軽々と抱え挙げ、投げっ放しパワーボムで叩きつけた。

ズダアァァァ・・・・・・ン!!「はうっ!・・・・」

乙羽の小さな身体がマットに叩きつけられ大きくバウンドし、転がっていった。そしてその間にダウンしていた小池と佐藤も蘇生し、大原と共に乙羽に迫ってきた。

「フフフフ、あんた達もだらしないわね・・・・こんなチビにダウンさせられるなんて!」

「油断しちゃったのよ。大原さんこそ最初はビックリしたわ。あたし達に本気で向かってきたんじゃないかって・・」

「敵を欺くにはって言うでしょ・・・今から本当のショータイムの始まりよ!」

目も見えずうずくまる乙羽に小池と佐藤、そして大原の容赦ない打撃技が襲い掛かっていった。

「さあ、立ちな!」

大原が乙羽の髪を掴み無理矢理立ち上がらせると、待ち構える小池に向かって突き飛ばしていった。

「あぁん!・・・・はうっ!・・・・んああぁぁぁ・・・」

よろよろと前のめりに倒れ込んでゆく乙羽のボディに小池の重いミドルキックが叩き込まれた。

「ぐふぉっ!・・・・ぁぁぁ、・・・・・・」

赤黒い胃液を吐き散らしながら、腹を押さえ膝を突こうとする乙羽に今度は佐藤が脇腹へのフックを打ち込み倒れ込むことさえ許さなかった。

「ふふふ・・・ギブアップしちゃいなよ!」

「この試合は時間も無制限だから、誰も止めてくんないわよ!」

「あんたみたいなチビが、ウチら3人に勝てるわけないんだから!」

「うぅぅ・・・ひ、ひど・・・い・・・・・」

「キャハハハ!これでも喰らいな!」

目の見えない状態の乙羽を蹂躙するかのように、大原がベアハッグに捉えた。乙羽の両足が宙に浮きじたばたと空気を蹴り激痛にもがいた。

「い、痛ぁぁぁい・・・・!」

試合序盤で小池を軽々とリフトアップした大原の怪力で締め付けられ、ちょうど大原の95cmのバストと乙羽の89cmのバストとが支点となり一層乙羽の背骨が反り返り、めきめきと音を立て軋んでゆく。

「いやぁぁぁ・・・!!痛あぁぁぁい・・・・!!うわあぁぁぁ・・・・・!!」

激痛に泣きじゃくる乙羽を弄ぶ様に大原はゆさゆさと揺さぶりを加えさらに嬲り抜いてゆく。そして後ろからは佐藤が乙羽のコスチュームのミニスカ状のフリルを捲り上げていった。

「ふふふ・・・かわいい声で泣いちゃって。お尻にこんなに喰い込んじゃってるわよ!」

「どう?ギブアップしちゃいなさいよ?・・・さあ!」

小池が乙羽の髪を掴み、ギブアップを迫った。3人がかりでいたぶられ、泣きじゃくる乙羽・・・しかし、辛うじて首を振りギブアップだけは拒み続けた。

「結構しぶといわね!・・・なら、これならどうかしら!?」

小池がベアハッグに極められた乙羽の首を背後から腕を回し絞めつけていった。前から大原の怪力ベアハッグ、後ろから小池のドラゴンスリーパーで責められ、乙羽の腰はいよいよ折れんばかりにへし曲げられていった。

「ほうら、ほうら!!痛いでしょ?苦しいでしょ?」

「あぁぁぁ・・・・!!んあぁぁ・・・・・・・!!」

「さあ、あんまり無理すると本当に死んじゃうわよ!」

「・・・・あうっ!・・・・・・・・ぁぁ・・・・・・・」

首を絞められ、背骨を二人がかりでへし曲げられ、乙羽の口元からは血の混じった泡が吹き出していった。それを見た佐藤が大原に進言した。

「大原さん、このままじゃギブアップする前に死んじゃいますよ・・・・ねえ!!」

我を忘れ、乙羽をいたぶることに熱中していた大原と小池も力を緩め乙羽をマットに転がした。

「・・げふぉっ!・・・・はぁ、はぁ、はぁ、・・・・・・・・」

「もう、いいわよ!意地を張ったこと今からゆっくりと後悔させてあげるわ!」

仰向けに倒れこんだ乙羽にまず佐藤が足四の字を極めていった。

「んああぁぁぁ・・・・!痛あぁぁぁいッ!!」

両脚を襲う激痛から乙羽の悲鳴が搾り出された。佐藤は尚も腰を浮かせ体重を乗せて責め抜いてゆく。

「ふふふ・・・・まだまだよ!そらっ!」

「痛あぁぁいぃぃぃ!!・・・・いやあぁぁぁ・・・・っ!うわぁぁっ!!」

「うるせえよ、チビ!」

そして更に今度は小池の脚が乙羽の首に絡みつき首四の字で絞めつけていく。乙羽の小さな顔が小池の太ももに埋もれ、泣き声さえも押し潰していった。

「んぐぅぅ・・・・あぁぁぁ・・・・・」

最初はじたばたしていた乙羽の腕からも徐々に力が抜けていった・・・が、その瞬間小池は力を緩め乙羽の頬をピシャピシャと叩き、意識を取り戻させた。

「んん・・・・あぁぁ・・・・」

「まだお寝んねは早いんだよ・・・今からが本番なんだからさ!」

首と足を極められ地獄の痛みと苦しみの中、ようやく自らの涙で少し視力が回復した乙羽の瞳に更に恐ろしい光景が飛び込んできた。

「うぅ・・・お、大原・・・さ・・・ん?・・・・・」

試合開始の時には同じ事務所の先輩でありパートナーでもあった大原がコーナー最上段に上り詰め、今まさに瀕死の乙羽に最後のとどめを刺そうとしていたのだ。

「さあ、いくわよ!」

「んあぁ・・・や、やめ・・・て・・・・いやあぁぁっ!」

「そらあぁぁぁっ!!」

勢いつけて大原がコーナー最上段からダブルフットスタンプで飛び降りてきた。逃れる術のない乙羽の腹にジャンプを加え2M近い落差から大原の全体重がめり込んでいったのだ。

グシャアァァァッ!!「んああぁぁぁ・・・・・・・!!」

乙羽の口元からおびただしい血反吐が噴き出した。序盤からボディブローなどの腹責めで内臓にもかなりのダメージが蓄積していたのが、今のフットスタンプでそれが更に深刻なものとなったようであった。客席からもその凄惨な光景にどよめきが湧き起こり始めた。だが、佐藤、小池の二人とも乙羽への蹂躙を解こうともせず、又大原も再びコーナーへと上っていった。

「おい・・・これ以上はヤバイだろ?」

「ああ、死んじゃうぜ、乙羽ちゃん・・・」

観客席のそうした声にお構いなく3人の乙羽への死刑執行は尚も続行されようとしていた。そう、この試合はノーレフリーマッチ・・・誰も止める者がいないのだ。

「さあ!もういっちょ、いくよぉぉぉ!!」

大原が客席にアピールし、再びコーナーで見得を切った。乙羽は身動きできないまま、ゴボゴボと気味の悪い音とともに血反吐を吐き出していた。

「げふぉっ!げふぉっ!・・・・・」

「ふふふ・・・あんたがいなくなったら、ちゃんとその分あたし達が穴埋めしてあげるからね。」

「そうよ、だから念入りに潰してあげるわよ!」

「おりゃぁぁぁっ!!」

気合と共に大原のフットスタンプが再び乙羽に襲い掛かった・・がその瞬間、リングに疾風のように2つの影が飛び込んできた。

「な、何!?・・ぎゃっ!」ビシッ!

乙羽に今突き刺さろうとした大原をジーンズ姿の少女のドロップキックが撃墜したのだ。完全に不意を突かれ、もんどりうって倒れる大原さおり。突然の闖入者にあわてて乙羽への技を解き、立ち上がろうとする佐藤と小池に今度は別の小柄な美女が鮮やかな右フックとワン・ツーでダウンさせたのだ。

「あ、おまえは・・・?!」

ダウンしながらも体勢を立て直した3人は乱入してきた2人の顔を見て驚いた。グラビアアイドルの河村ひかると森友さやかであった。2人とも同じ事務所(コニーインターナショナル)の先輩後輩であり、尚且つひかるがボクシング、そして後輩のさやかもドラマ・原宿系女子プロレスで腕を磨いた、いわば格闘のこなせるアイドルである。そんな2人の突然の登場に観客席も沸きかえった。

「いいかげんにしな!あんた達、ちょっと汚すぎるよ!!」

「うるせえよ、このチビが!!」

河村が大原たちを挑発している間に森友が乙羽を介抱していた。

「ひかるさん!乙羽さん、早くお医者さんに連れて行かないと!」

「そうね・・・今日は引き上げるけど・・・あんた達、私たち2人がイエロージャブの好きにはさせないわよ!」

「大きく出るねえ・・・おまえら弱小プロダクションがなぁ!」

「そうそう・・・まあ、どっちみち乙羽の次にはおまえらコニーとかも潰してやろうと思ってたんだよ!」

尚も絡むイエロージャブ軍団に河村も睨み返した。

「上等よ・・・いつでもやってやるわよ!」

「よし、決まりだ!野良社長!来月のここのリング押さえておいてよ!」

リング下に小池がアピールすると、野良社長もマイクを持って答えた。

「よし、それなら次はメグミ!そしてもう1人は・・・尾野愛!おまえが行って潰して来い!」

「ふふふ・・・はい、社長。」

十代とは思えぬ程の不敵な笑みを浮かべメグミと尾野が頷いた。そして次回のコニーVSイエローのタッグマッチが決定した。

尚、医務室に運ばれた乙羽は内臓破裂・肋骨を初めとする骨折10数箇所等で全治2ヶ月・・・水着アイドルとして最も大切な夏を丸々棒に振ることとなった。

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