「カァーン!!」



ゴングと共にコーナーから飛び出そうとする曜子。しかしその目に映ったのは気勢の
声と共にジャンピングニーパッドを仕掛けてきた美沙子の姿であった。

「たあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

その奇襲とも言うべき美沙子の先制攻撃は見事に曜子の顎を捉え、コーナーポストに
もたれかかるようにダウンしていく曜子。そんな曜子に美沙子は容赦無くストンピン
グを叩き込んでいく。

「うっ…くっ…」

予想だにしない美沙子の攻めに曜子は圧倒されていく。そして首投げで一気に曜子を
リングに叩きつけ、間髪を入れずにその自慢のバストにストンピングを入れる美沙
子。デビュー戦、しかも雰囲気からは想像も付かない様な美沙子の攻めに観客達の表
情にも驚きの色が現れていた。

(多分曜子ちゃんの攻撃を喰らったらウチにはかなりこたえるのは間違いない…出来
るだけ攻撃を喰らわんようにせんと…ペースをつかまれたら今のウチにはめっちゃ不
利やし…曜子ちゃんにペースを掴ません為にも出来るだけ攻撃を続けんといかん
わ…)

その思いが形となった美沙子の先制攻撃は確かに形となって現れた。曜子の出鼻を挫
いた事、観客の驚きを考えればそれは十分過ぎる結果だった。

(強い…美沙ってば、私が想像していたより練習積んで来てる…油断してたらこっち
がやられちゃう…負けてられない!!)

開始から美沙子に押されていた曜子も冷静さを取り戻し、ストンピングからニード
ロップを狙ってきた美沙子をかわして自爆させていく。

「んあぁぁぁぁっ…」

膝をマットに打ち付けて苦しむ美沙子。その美沙子に対しお返しとばかりにストンピ
ングを叩き込む曜子。美沙子の想像通り、その一発一発は美沙子のスレンダーなボ
ディにはかなり堪えるものであった。そして美沙子を抱え上げ、曜子はボディスラム
でマットに叩き付けていった。

「ぐはあっ…」

勢いよく背中から叩き付けられその衝撃に苦しむ美沙子。覚悟していた事とは言え、
曜子のパワーには驚きを隠せなかった。それでもまだまだ根を上げる訳には行かず、
立ち上がって曜子との距離を置いて様子を伺っていく。

(組み合ったら不利なのは間違いない…常に距離を置かんと…)

そう考える美沙子は、曜子の動きを警戒しながらローキックで牽制していく。曜子も
またそれをガードしながら美沙子の出方を伺っていく。互いに決定打が出せないまま
2人が睨み合う状況が続いたが、痺れを切らした様に曜子が美沙子の頬に張り手を叩
き込んでいった。

バシィィィィン…

「きゃっ…」

思わず悲鳴をあげる美沙子であったが、負ける訳にはいかないと、お返しとばかりに
曜子の頬に張り手を叩き込んでいくと、お互い意地になって張り手の入れあいになっ
ていく。

バシィィン…バシィィン…バシィィン…バシィィィィィン…

お互いの頬が赤くなるのも構わず叩き合う2人。しかし、次第に力の差が出始めたの
か、美沙子の方が叩かれる回数が多くなっていく。優位に立った曜子は美沙子の隙を
付いて首相撲に持ち込むと美沙子のお腹に膝蹴りを入れていく。

「ぐはっ…げほっ…げほっ…」

初めて味わうお腹への膝攻撃に苦しむ美沙子。それでも必死にパンチで反撃するが、
曜子はそれに構わず美沙子の首を抱え込み一気にDDTで美沙子の脳天をマットに突
き刺していった。

お腹に続く頭部への衝撃にグッタリして横たわる美沙子。対する曜子は観客に両手を
挙げてアピールしていくと観客からも残酷な期待を込めて声援が送られていく。

「熊多〜っ!保田にもっと悲鳴あげさせてやれよ〜っ!!」

「美沙子ちゃんの水着剥ぎ取ってヌードにしてやれ〜っ!」

そんな観客の期待に答えるかの様に、美沙子の両足を抱え込んで逆エビ固めを決めて
いく曜子。ダメージから立ち直れない美沙子にとっては更なる苦しみであった。

「きゃぁぁぁぁぁっ…いやぁぁぁぁぁっ…痛いぃぃぃぃぃ…堪忍してぇぇぇぇぇ…」

「甘い事言わないの!こんな事まだまだ入り口みたいなもんなの!遠慮せずに掛かっ
て来いって言ったのは美沙でしょ!覚悟を決めてリングに上がったなら、少しでも抵
抗してみなさいよ!」

そう言うと更に揺さぶりを掛けていく曜子。その攻めの前に美沙子は何も出来ず、た
だ悲鳴を上げるしかなかった。最も、観客の歓声は美沙子の悲鳴に比例する様に大き
くなっていたので観客へのアピールと言う点では大きかったが。そして曜子は仕方な
いとばかりに技を解いていく。

(まだまだ終わらせる訳には行かない…美沙には悪いけど、もっと皆にアピール出来
る様な技を見せないと…)

そう考える曜子は美沙子の髪を掴んで立たせていく。しかし、美沙子もダメージを負
いながらも渾身のアッパーを曜子の股間に叩き込んでいった。意外な反撃に今度は曜
子がダウンしていく。仰向けに倒れる曜子に馬乗りになり、今までのお返しとばかり
に平手打ちを曜子の頬に連続で叩き込んでいく美沙子。この果敢な攻めに今度は美沙
子に向かって声援が送られていく。必死に張り手をガードしようとする曜子だが、マ
ウントポジションを取られた状況では上手くガード出来ず貰う張り手の方が多くなっ
ていった。

「おおっ…美沙子ちゃんもやるじゃん…!!」

「いいぞ〜っ!!保田ぁ〜…そのまま攻めろぉ〜…」

観客の声援を受けて勢いづいた美沙子は、しかしここで曜子も、そして観客も予想だ
にしない行動に出ていった。

「曜子ちゃんには悪いけど、少しはお客さんを楽しませんとね…」

「ちょっと…美沙っ…!何してるのよ一体っ!!」

そう曜子が声を上げたのは、何と美沙子が曜子の自慢のバストを揉み始めたからで
あった。美沙子のキャラを考えると、まさに予想だにしない攻撃なだけに、仕掛けら
れた曜子だけでなく観客からも驚きの声が上がっていたが、これは美沙子が考えた観
客に対するアピールの一つでもあった。

「きゃあああっ…やめてよぉぉぉぉ…ちょっとぉぉぉぉ…」

必死で返そうとする曜子だが、美沙子は左手で曜子の右手を、更に自分の右足を乗せ
て左手を封じ、曜子が抵抗出来ない様にしていた。だがそれ以上に曜子を抵抗出来な
くしたのは自らのバストに対する刺激であった。

「ああんっ…いやっ…やめてっ…ああんっ…」

曜子の悲鳴が次第に喘ぎ声に変わっていくと、それに比例する様に曜子の抵抗も静か
になっていく。それは美沙子の攻めに曜子自体も感じていた為であった。

「ああっ…ああんっ…ああんっ…」

曜子の声が完全に喘ぎ声だけになると、代わって観客の声が興奮を帯びたものに代
わっていった。

「すげぇ…!!熊多の喘ぎ声だよ…!!いいぞぉ〜っ!!保田っ!!」

「保田ぁ〜っ!!もっと刺激与えて熊多をイカせてやれ〜っ!!」

その声を聞いた美沙子は、内心は曜子にしている行為に対し罪悪感を覚えていたが、
ここは観客の期待に応えた方がアピール出来ると考えあえて心を鬼にし、今度はビキ
ニブラの上から乳首に刺激を集中させていった。次第にその乳首の突起がハッキリブ
ラの上に浮かび上がって来ると観客からは水着剥ぎを期待するコールも出てきたが…

「あはんっ…ああん…ああんっ…いやっ…お願い…やめて…美沙っ…」

次第に曜子から哀願の声が出て行く。その目にも涙がうっすらと浮かんでいるのをみ
た美沙子は、やはりその性格から鬼になりきれず、思わず曜子の動きを封じていた手
の力を緩めてしまう。その美沙子の隙を突き、体の持てる力の全てを振り絞ったブ
リッジで美沙子を返していった。

「きゃぁっ…」

曜子のパワーに思わず体制を崩して倒れこむ美沙子。立ち上がった曜子は、しかしそ
の乳首はくっきりと浮かび上がったままで、観客の視線はそこに集中していた。しか
し曜子はお構い無しに立ち上がろうとする美沙子のバストにミドルキックを叩き込ん
でフラ付かせ、続けて顔面にハイキックを叩き込みダウンさせると、顔面への衝撃に
のた打ち回る美沙子の首にギロチンドロップを叩き込み、一気に美沙子の両足を抱え
込んだ。

「やってくれたわね…このお礼はタップリとしてあげるから、覚悟してよね!」

そう叫ぶと、曜子は観客にアピールしていくと、何とジャイアントスイングを決めよ
うとする。美沙子も回されまいと抵抗するが、先程までの攻めで曜子の怒りも溜まっ
ていたのか、物凄いパワーで美沙子を振り回していった。

一回転…二回転…三回転…四回転…アイドル同士の試合では珍しいこの技に観客から
も回転数のカウントの声が聞こえていた。美沙子もこの状況ではどうする事も出来ず
ただ回されるしかなかった。結局、美沙子は合計で15回も回される事となり、マット
に振り捨てられた時には既に意識朦朧という状態であった。しかし曜子の怒りはこれ
で収まらずフラつく美沙子を背後から捕らえ、今度はバックドロップで後頭部を叩き
付けていくと美沙子は四肢を脱力させたような格好でマットに横たわっていた。曜子
の逆襲の前に勝負は決まったかに見えたが、当の曜子はまだまだ試合を終わらせるつ
もりは無い様であった。

「ほらほらっ…美沙もお客さんを楽しませてあげないと…」

そう言うと、美沙子の背中に座り込み、キャメルクラッチでその上半身を反らしてい
く曜子。体がCの字になる位に反らされると、美沙子は背骨が折れる様な激痛に涙を
浮かべていた。

「うぐっ…ぐうっ…ぐうじいぃぃぃぃぃ…」

顎をシッカリと両手で固定されている為、声を挙げようにも声になっていない美沙
子。すると曜子は更に美沙子の鼻の穴に指を突っ込んでいくと、豚鼻の様な顔にして
精神的な苦痛も与えていった。

「はご…ふががが…ほんなんひや…ひょうこひゃん…ひゃんにんひてぇぇぇぇ…」

「なに言ってんの!さっき私にした事を忘れた?皆の前で思いっきり恥ずかしい目に
遭わされたんだから、お返ししなきゃ割合わないでしょ!」

曜子の攻めの前に、無様な姿を晒すだけの美沙子。しかしそんな姿になりながらも、
美沙子はレフェリーのギブアップの意思確認を頑なに拒んでいく。しかし、技を解い
た曜子が次に手を掛けたのは何とビキニブラの結び目であった。美沙子もそれに気づ
き抵抗する。

「ああっ…何するの…それだけは堪忍してぇぇぇぇぇ…」

「いい、地下プロレスってこういう攻めも当たり前なの!美沙も今後の為に慣れてお
いた方が良いんじゃない?ほらっ…!!」

「いやぁぁぁぁぁっ…」

美沙子の悲鳴と同時にそのバストを包んでいたビキニブラが剥ぎ取られていく。決し
て巨乳ではないものの、形の良い美乳とも言うべき美沙子のバストが観客の目に晒さ
れていった。露わになったバストを手で必死に覆い隠そうとする美沙子だが、曜子は
容赦無く美沙子を立たせて羽交い締めにした状態で観客席の方に向けていくと、観客
の視線は露わになった美沙子のバストに注がれていった。

「いやあぁぁぁぁっ…見んといてぇぇぇぇぇぇぇ…」

しかしそんな美沙子の羞恥心を更に刺激する様に、曜子が背後からその綺麗な形のバ
ストを揉み始めていくと次第に喘ぎ声を上げていく美沙子。

「どう?さっきの私の気持ちが分かった?皆の前で喘ぐのって恥ずかしいでしょ?」

そう意地悪く言っていくと、先程の美沙子同様乳首にも刺激を与えていくとその突起
がはっきりとしていく。先程と異なり美沙子はトップレス状態になっているだけに観
客にもそれが一層ハッキリと見て取れた為、観客の興奮も一層大きくなっていた。

「いやっ…こんなん酷い…何で此処までされんといかんの…」

尚も美沙子のバストを攻め続ける曜子。しかし必死に逃れんともがく美沙子が放った
蹴りがカンガルーキックとなって曜子の股間を捉えた。

「ふぎいっ…」

無防備の股間への一撃にバストを揉んでいた手を離してフラつく曜子。そして苦しさ
が残る美沙子も曜子の攻めにキレたのか、フラついている曜子のビキニブラに手を掛
けていくと一気に剥ぎ取っていった。

「ああんっ…」

美沙子に続き、曜子の92cmの見事なバストも観客の視線に晒されていく。美沙子よ
りキャリアがあるとはいえ、曜子もトップレスにされるという事には免疫が出来てい
た訳では無く恥ずかしさを隠し切れなかった。思わずバストを隠そうとしてがら空き
になったボディに美沙子がキチンシンクを叩き込むと、フラついて膝をつく曜子の隙
を逃さず、ロープに向かって駆け出しその反動で勢いを付け曜子目掛けて走り出す
と、曜子の膝を踏み台にしその顔面にシャイニング・ウィザードを叩き込んだ。

「ぐはあっ…げふうううううっ…」

その一撃に鼻血を噴出しながらマットにその身を横たえていく曜子。トップレスに顔
面を血に染めてダウンという痛々しい状態の曜子だが、先程までの攻めの怒りも手
伝って美沙子はその攻撃の手を休めようとはせず、露わになったバストにニードロッ
プを落とすとコーナーの最上段に上り観客に向かってアピールすると、横たわる曜子
のお腹目掛けてコーナー最上段からのフットスタンプを叩き込んでいった。

「ぐはっ…げぼっ…うげぇぇぇぇぇ…」

美沙子の両足が叩き込まれると、そのお腹への衝撃に口から血混じりの反吐を噴き上
げ、目も虚ろな状態で横たわる曜子。怒りに任せた状態だった美沙子も曜子の姿を見
て流石に罪悪感が沸いてきたのか、そろそろ勝負を決めんと再びエルボードロップを
曜子のバストに落とすと三角締めを仕掛けていく。

「うぐっ…くっ…」

しかし曜子もダメージこそ大きかったが、負けたくないという執念、そして地下プロ
レスの先輩としてもデビュー戦の美沙子に負ける訳には行かないという思いが相まっ
てその長い足を必死にロープに伸ばした。美沙子もまだ未熟な為か、完全に技を極め
られずどうにかロープに逃げる曜子だったが、やはりダメージが大きく立ち上がる事
が出来ない。レフリーによって技を解く美沙子もここまで追い込まれてもギブしよう
としない曜子の執念に驚いていたが、もうお互いに十分見せ場を作った事であるしそ
ろそろ勝負を決めてしまった方が良い、その方が曜子の為にもなると思い今度こそ勝
負を決めようと再びコーナーポストに上っていった。

(曜子ちゃん…もうええでしょ?…お互いもう皆には十分アピール出来た事やし…ウ
チの勝ちで決めさせてもらうわ!)

そう思う美沙子は観客に腕を挙げてアピールしてから倒れる曜子目掛けて何とムーン
サルトプレスを仕掛けていく。観客へのアピールの為にと美沙子が練習を重ねていた
技で観客もデビュー戦、しかも美沙子がこの技を繰り出した事に驚きを隠せないでい
た。綺麗に回転しながら曜子に覆いかぶさろうとしたその瞬間、美沙子のお腹に衝撃
が襲いかかった。

「んああぁぁぁぁぁっ…うぎゃぁぁぁぁぁっ…」

悲鳴を上げながらマット上でのた打ち回る美沙子。美沙子が覆いかぶさろうとした瞬
間、曜子が膝を立てた為に美沙子は自らのお腹をもろに曜子の膝に打ち付けて自爆し
てしまったのだった。

「ぐふっ…げほっ…げほっ…うげっ…」

思いも寄らぬお腹への衝撃と続け様に込み上げて来た嘔吐感の苦しみから立ち上がる
事の出来ない美沙子。その姿に反撃のチャンスとばかりに立ち上がった曜子は横たわ
る美沙子の無防備なお腹へ飛び上がってヒップドロップを叩き込むとそのお腹への
ヒップの圧力に美沙子がどうにか堪えていた嘔吐物が一気に口から噴出されていっ
た。

「ごはっ…げぼぉぉぉぉぉ…」

堪えていたものを全て戻した様な美沙子。虚ろ目の状態で倒れ伏すが、曜子はお構い
無しに髪を掴んで立たせていくと空いている右手で美沙子の額にグーパンチを連続で
叩き込んでいった。

バキッ…バキッ…

(くっ…ここまで来て…負けるなんて絶対に嫌や…!)

再び曜子優勢になっていく中で、美沙子の心には勝ちたいという気持ちが確かな形に
なって現れ始めていた。試合前、曜子には倒すつもりで行くとはいったものの、曜子
相手ではデビュー戦の自分の勝算は低いものである事を美沙子は理解していた。何よ
り自分を気遣ってくれる曜子と本気で戦う事等到底出来なかった。それならば負ける
にしてもせめて自分なりにアピール出来る様にしよう、その思いで美沙子は戦ってい
た。しかし実際にリングに上がり曜子と戦う中でその気持ちは勝利への気持ちへと変
わり始めていた。そして今、美沙子の中にあるのは曜子を倒す、その一心だけであっ
た。その気持ちが曜子の顔面へストレートを叩きこませていくと今度は曜子がフラつ
いていく。思わず後退する曜子に自らの思いを声にしたような叫びを上げて殴りか
かっていく美沙子。もはやそこにはいつもグラビアで見せる様な清楚でおしとやかな
美沙子の姿はどこにも無く、ただ目の前にいる曜子を倒すのに一心不乱な美沙子の姿
がそこにあった。

「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ…」

(くっ…凄い気迫…この子が本当に美沙なの!?)

普段からは想像も出来ないような気迫を見せる美沙子に気圧される曜子。しかしその
美沙子がみせた気迫によって曜子の中でもまた、勝ちたいという思いが確実なものに
なっていった。美沙子の決意を受け入れたとは言え、曜子はリングに上がっても尚、
美沙子と戦う事への抵抗を完全に振り切れた訳では無かった。今まで幾度と無く仕事
を共にしてきた美沙子は自分にとってはパートナーでもあり、そしてまた友達でも
あった。事務所の為とは言え、その美沙子と戦わなければならないという現実は曜子
にとっては受け入れ難いものであったのだ。しかしトップレスにされながらも自分を
追いつめ、更なるダメージを負いながらも挑んで来る美沙子の姿に、彼女が本気で自
分を倒しに来ている事を本能的に理解し始めていた。ならば私も本気で戦わなけれな
らない…そうしなければ私は負ける…負けたくない…勝ちたい…絶対に勝ちたい!例
え相手が美沙であっても!その気持ちが曜子の闘志を爆発させた。殴りかかって来る
美沙子を容赦無く殴り返していく曜子の姿はいつものグラビアやバラエティでは見る
事の出来ない、獲物を狩るのに全力を挙げる獣の様な鋭い眼光を宿したものであっ
た。

「おらあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ…」

お互いに声にならない叫びを上げながら殴り合う2人。人気グラビアアイドルが互い
に感情剥き出し、しかもトップレス状態のまま殴り合いを展開する光景に、先程まで
歓声を上げていた会場内の観客達も声を失ったかの如く試合を見守るしか無くなって
いた。

バキッ…バキッ…

とてもアイドル同士が展開するとは思えない殴り合いが続き、互いの顔が赤みを帯び
て口からは出血までする事態となっていくが2人とも一向に引く気配を見せない。も
はや相手が倒れるまでは倒れまいとする本能のみが二人を突き動かしていた。しかし
曜子が放ったパンチの一発が偶然にも美沙子のバストを捕らえると、女性の急所とも
言うべきバストへの突然の衝撃に美沙子が怯んでいく。その隙に曜子が美沙子を捕ら
えるとフロントスープレックスで後方へ叩き付けると、美沙子は大の字になって横た
わっていく。

「ぐはっ…げほおっ…」

背中への強烈な衝撃に美沙子の目が再び虚ろになっていく。曜子は今度こそ勝負を決
めんと横たわる美沙子の喉元に強烈なギロチンドロップを叩き込んでいくと美沙子の
体が一瞬小さく跳ね上がった。そして再び美沙子の体を捕らえると両足で美沙子の頭
を挟み込みジャンピングパイルドライバーを叩き込んだ。

「ふぎいっ…」

そう小さく悲鳴を上げると脳天から叩き付けられた美沙子の動きが無くなっていき、
曜子がフォールに入る。今度こそ勝負は決したかに見えた、美沙子も持てる力を振り
絞り直前で返していくと静かになっていた観客からも大歓声が上がる。その執念に驚
きを隠せない曜子だったが美沙子を黙らせんと三度美沙子を捕まえ、再びジャンピン
グパイルドライバーの体制に移行しようとする。

(美沙…悪いけどこれで勝負を決めさせてもらうわ…これで終わりよ!!)

しかしここで思わぬ事態が起きた。体制を崩そうとする美沙子のもがきがヘッドバッ
ドとなり曜子の股間へ思わぬダメージ与えていったのだ。

「うぎゃぁぁぁぁぁ…」

股間への一撃に今度は曜子がしゃがみ込んでいく。美沙子も先程までの攻撃のダメー
ジで反撃出来るだけの体力は殆ど残っていなかったが、自分に残された最後のチャン
スである事を悟ったのか、倒れそうな我が身を奮い立たせた。

「うわあぁぁぁぁぁ…」

殆ど悲鳴に近い様な叫びを挙げていくと、美沙子は膝をついた曜子の顔面にハイキッ
クを叩きこんでダウンさせると、横たわった曜子のお腹へ自分の全体重を乗せたダブ
ルニードロップを落としていった。

「ぐはっ…げぼぉぉぉぉぉっ…」

再度のお腹への衝撃に、先のフットスタンプの時と合わせて自分の胃の中の物を全て
出し尽くした様な曜子。その目は完全に虚ろでもはや失神状態に近くなっていた。し
かし美沙子がフォールに移ると曜子も意地で返していく。互いが勝利への意地を見せ
るが、美沙子はフォールを返したままうつ伏せの曜子を起こすと、今度は胴締めス
リーパーで締め上げていく。

「うぐっ…うぐぐっっっっっ…」

必死でロープまで手を伸ばそうとする曜子。しかし美沙子もこれを返されたら終わり
とばかりに持てる力の全てで喉元とお腹を締め上げていく。

(曜子ちゃん…お願い…お願いやからギブしてや…もう…もうええでしょ…?)

そう思いを込め必死に締め上げる美沙子。曜子も必死でロープまで行こうとするが、
その抵抗が次第に無くなっていくのを美沙子は感じていた。そしてその抵抗が完全に
なくなるのに時間は掛からなかった。

「カンカンカンカン…」

ここで曜子の失神が確認され、ゴングが打ち鳴らされるとレフェリーが美沙子を離し
ていく。ここに『梁山泊』プロデュースによるエキシビジョンマッチは美沙子のまさ
かの勝利で幕を閉じたのだった。この結果に観客達もその大半が曜子の勝利で終わる
と予想していただけに暫し言葉を失った状況にあったが、程なくして激闘を繰り広げ
た2人に対して惜しみ無い拍手が送られていった。しかし美沙子はトップレス状態で
失神している曜子の姿にいくら試合だとは言え、いたたまれなくなりその目には涙が
溢れ始めた。剥ぎ取ってしまったビキニブラを拾い、失神する曜子のバストにそれを
当てると美沙子は語りかけた。

「曜子ちゃん…堪忍なぁ…ウチ…ウチ、ホンマに酷い事してしもうて…」

涙しながら語りかける美沙子に、意識の戻った曜子が応える。

「美沙…泣かないでよ…これは勝負なんだから…それに私だって美沙に酷い事し
ちゃったしさ…美沙の勝ちたいって気持ちが私より強かったから美沙が勝ったんだ
よ…ほらっ…勝ったんだから皆にアピールしなきゃ…」

なおも泣く美沙子を諭すと美沙子の手を借りて立ち上がり、美沙子と同じ様に剥ぎ
取ったビキニブラを拾うと露わになった美沙子のバストに着けて行く曜子。そして美
沙子の手を取るとその勝利を祝福する様に掲げてやるのだった。

「おめでとう美沙。ほらっ、いつまでも泣いてないで皆に挨拶しないと!」

その言葉に涙を拭って観客にアピールする美沙子。その光景に観客からも2人に向
かって惜しみない拍手が送られていく。

「曜子ちゃん…ありがとう…曜子ちゃんがおらんかったらここまで皆を喜ばす事出来
んかったよ…ホンマにありがとう…」

そう言うと美沙子は曜子にしがみついた。未だに泣き止まぬ美沙子を、曜子は黙って
抱きしめてやるのだった。





曜子と美沙子の死闘は地下プロでは珍しいクリーンな形で決着を見る事となったが、
それぞれの粘りに加え、互いにトップレスになってまで戦った事や、胸揉みによる喘
ぎ声等が評価され観客や地下プロの幹部達へのアピール度は高かった様で、曜子と美
沙子が目標としていたアピールは十分に達成されたと見て良かった。そしてその2人
の頑張りの結果は2人を初めとし、相良のり子、夏河純、海江多純子、石河夕紀、松
崎百子ら『梁山泊』所属のタレント達合同による写真集の出版という形となって現れ
たのだった。そしてその結果をもたらした曜子と美沙子のコラボがその写真集のメイ
ンを飾る事になった。



「何か夢見たいやわ〜曜子ちゃんと一緒の写真集出せるなんて。ホンマ嬉しい
わ〜。」

写真集の撮影の合間、そういって喜ぶ美沙子。

「それもこれも、美沙が頑張ってくれたからだよ。正直、美沙が勝っちゃうなんて皆
予想してなかったんじゃない?事務所の皆も驚いてたよ。最も、一番驚いたのは私だ
けどね。」

曜子も笑みを浮かべながらそう返す。

「でも一番驚いたのは、美沙がこんな風に攻めてきたって事よねぇ〜。」

そう言うと曜子は後ろからビキニの包まれた美沙子のバストに手を当てて軽く揉んで
いくと、驚いた美沙子は小さく悲鳴を上げた。

「きゃあっ…もう!何すんの〜恥ずかしいわ〜。」

「美沙ってオッパイ刺激すると良い表情しますよ〜カメラマンさん、撮ってみません
?」

「もう〜曜子ちゃんだってオッパイ刺激されると良い表情するクセに〜。」

今度は美沙子がビキニに包まれた曜子の乳首を突付くと、曜子も思わず赤面する。

「あ〜曜子ちゃん顔赤くなってる〜めっちゃ可愛い〜。」

そのやり取りに、2人の間からどちらからとも無く笑みがこぼれる。

「美沙の照れた表情だってすごく可愛いよ。どうせなら一枚位ブラ取ったままで取っ
てもらったら?」

「え〜っ!?ヌードだけはお願い、堪忍してぇ〜。」

今度は美沙子が顔を赤らめていくが、そんな美沙子を曜子がからかう。

「冗談だよ、冗談。美沙ったらすぐムキになる〜。」

「も〜曜子ちゃんったら冗談キツイわぁ〜。」

そう言うと曜子に抱きつく美沙子。その美沙子を曜子は笑顔で抱き寄せた。撮影して
いたカメラマンも思わず笑みを浮かべながらそのやり取りをシャッターに収めた。そ
して、そこにはあのリング上の死闘の時とは違う、仲の良い友達である2人の姿が写
し出されていたのだった。

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