「ラウンド3、カァーンッ!」

「おらぁぁぁぁぁっ…」

3Rの開始が告げられると、二度目のダウンを奪わんとする美奈子がコーナーから気勢
を上げながら乙羽に向かっていく。しかし、春菜の罵倒の様な言葉に苛立ったのか先
程に比べ少し冷静さを欠いている感じであった。

「いやぁぁぁぁぁっ…もう許してぇぇぇぇぇ…」

トップレスにされ、そのバストを大観衆に晒された事で殆ど戦意を喪失している様子
の乙羽。彼女に少し開き直る位の根性があれば美奈子の攻めに対処する事も可能だっ
たかもしれないが、闘争心が殆ど欠如した彼女に出来るのはただ悲鳴を上げながら後
退するしか無かった。そんな情けない乙羽に対し、セコンドの寛子も半ば呆れた様な
視線を送り、観客から早くヌードを見せろという声が起きていく。

「ふん…つまんないわねぇ…これじゃあリベンジのし甲斐も全然無いし、早いトコ終
わらせてあげる…でも壊せる所はシッカリと壊しておきましょうねっ!」

そう言い放つと、後退する乙羽をまたしてもロープへ追い込み、露わになったバスト
へパンチの連打を叩き込んでいった。まずはバストを完全に破壊しておこうというの
が美奈子の狙いであった。

グニュ…グニュゥゥゥゥゥ…

「やめてぇぇぇぇぇ…オッパイが本当に壊れちゃうよぉぉぉぉぉ…許してぇぇぇぇ…
お願いぃぃぃぃぃ…」

乙羽の悲鳴は次第に泣き声へと変わっていく。只でさえ先程の攻めで傷ついていた彼
女のバストは赤みを帯び、そしてその赤みは次第にどす黒い痣へと変わっていく。

「ああぁぁぁぁぁっ…私の…私のオッパイがぁぁぁぁぁ…」

完全に傷物になってしまった自らのバストをみて絶望したのか、乙羽の目からは涙が
流れていく。その光景に観客や春菜から美奈子に対して乙羽を早くダウンさせろとの
声が起きていく。美奈子自身もその声にそろそろダウンを奪わんと今度は顔面にフッ
クの連打を叩き込むと乙羽はロープにその身を持たれかけていくがまだダウンとは認
められなかった。

「ふふふっ…オッパイの方も無惨な形になっちゃったし、今度はあんたの大事なとこ
ろを拝ませてもらうわねっ!」

そう言い放ち、ロープにもたれ掛かった乙羽の顎をアッパーカットで一気に打ち抜い
ていくと血反吐と共にマウスピースを吐き出しながら乙羽が二度目のダウンを喫して
いった。

「ぶべぇぇぇぇぇっ…」

そのダウンと同時に観客からは最大級の歓声が巻き起こった。アイドルの全裸が決定
したのだから無理もない事であったが、その光景に呆れた視線を送っていた寛子も流
石に残酷だったのか目を背けていた。

「只今乙羽選手が二度目のダウンを喫しました。よって乙羽選手にはビキニショーツ
も脱いでいただく事になります!」

全裸が決定した事を悟っていたのか、横たわる乙羽の目には溢れんばかりの涙が浮か
んでいた。しかしそれに構う事無く黒服が再び乙羽の動きを抑えに掛かると、乙羽は
狂った様に抵抗していく。

「お願いっ…お願いだからヌードだけはっ…許してください…お願いです…」

その姿に観客からもブーイングが起きていく。

「乙羽〜っ!みっともねーから大人しくヌードになれ〜っ!」

「モタモタしてないで早くアソコ見せろよ〜っ!」

観客の声にも関わらず抵抗する乙羽。しかしその乙羽の股間へ美奈子がいきなり爪先
蹴りを叩き込んでいった。

「うぎゃぁぁぁぁぁ…」

「いつまでも赤ん坊みたいに駄々こねてんじゃないわよ!ほらっ、素直に脱げば良い
だけの話でしょ!」

そう言い乙羽のビキニショーツに手を掛ける美奈子。流石に寛子も止めに入ろうとす
るが、先程の事もありあらかじめ黒服に動きを取り押さえおり不可能であった。

「やめて…お願い…それだけは…」

もう泣きながら哀願するしか手の無い乙羽だったが、美奈子が容赦なくビキニショー
ツを剥ぎ取っていくと、遂にヘアヌード状態になった乙羽の姿に観客からは溢れんば
かりの声が上がった。

「うわぁっ…乙羽ちゃんのヌードだよ…すげぇっ…!!」

「いいぞぉっ…乙羽ちゃん!コッチにもよく見せて〜っ!!」

もはや観念したのか抵抗も無く、ただただ涙するだけの乙羽。その姿を見た美奈子は
嘲りの様な言葉をぶつける。

「ふふっ…これだけの人の前でヌードを晒した気分はどう?どうせならもっとファン
サービスしてあげるといいんじゃない?ほらっ、こういう風にねっ!」

「いやぁぁぁぁっ…何するのよぉぉぉぉぉっ…」

何と美奈子は乙羽の足を掴んでマングリ返しの様な状態にして乙羽のアソコを観客達
によく見える様にして晒していく。

「はははは!いいざまねっ!自分のアソコを見られてる気分はどう?」

乙羽の羞恥心を刺激する様な言葉をぶつけ、更には足をつかんだまま乙羽の顔面を踏
みつけ、更に屈辱を与えていく美奈子。

「ううっ…こんなの…こんなの酷い…どうしてこんな事するの…」

「言ったでしょ?これは私のリベンジなの…あんたには私以上の屈辱を味わってもら
わないと気が済まないのよね…」

しかし、美奈子のなすがままに無惨な姿を皿晒し続ける乙羽の姿に、押さえ付けられ
ていた寛子も遂に怒りが爆発したのか、黒服の手を振り解いて美奈子にタックルを仕
掛けて突き飛ばしていくと、倒れた美奈子に馬乗りになって殴りかかっていった。

「この人でなし!調子に乗るのもいい加減にしなさいよ!」

「くっ…アンタの出る幕じゃないっていったのが聞こえなかったの…あんな腑抜けな
んか構わないで引っ込んでなさいよ!」

言い返す美奈子に構う事無く殴りかかる寛子だったが、その後ろから春菜が後頭部に
ケンカキックを決めると、溜らずダウンしていく寛子。しかし春菜は隙を与えずスト
ンピングを叩き込んでいった。

「あんたの相手は私よ!下手なチャチ入れられない様にブッ潰してあげるから、覚悟
するのね!」

「ブッ潰すですって…やれるものならやってみなさいよ!この人でなしの前にアンタ
を叩きのめしてやる!」

もはや美奈子と乙羽に負けず劣らずの憎悪を漂わせながら乱闘を展開する寛子と春
菜。ストンピングをかわして立ち上がり、春菜の顔面にパンチを叩き込んでフラ付か
せると首を抱え込んでDDTで春菜を脳天からマットに突き刺していく。うつ伏せに
なって倒れこむ春奈であったが、寛子の本気の攻めにキレたのか、続けざまのストン
ピングをかわして水面蹴りで逆に寛子を倒すと、馬乗りになって容赦なく顔面に鉄拳
を叩き込んでいった。

バキッ…バキッ…バキッ…

まるでヤンキーの様な雰囲気を漂わせながら寛子を殴り続ける春菜。殴られる寛子の
口からは血が流れ始めていたが、春菜はお構い無しに寛子を立たせ、ふら付く寛子の
着ているTシャツの首辺りに手を掛け一気に引き千切ると、寛子の身につけていたブ
ラジャーが露わになっていった。

「ちょっと…何するのよ…こんな事して恥ずかしくないの!?」

「ふん…ちゃち入れるアンタが悪いの!恨むなら自分と、そこの腑抜けの先輩を恨む
のね!」

「この野郎!!」

いつもは元生徒会長ということもあり優等生キャラの寛子であったが、先輩に対する
美奈子の仕打ちへの怒りと、目の前の春菜との間に生まれた因縁とで怒りが頂点に達
しているようであった。尚も殴りかかろうと突っ込んでくる春菜に対してカウンター
とばかりの前蹴りを春菜の股間に叩き込んでいった。

「うぎゃぁぁぁぁぁっ…」

溜らずダウンする春菜。先のお返しとばかりにダウンする春菜の着ているシャツを掴
み引きちぎって自分と同じ様にブラジャー姿にしていくと、尚も春菜の股間をストン
ピングで攻め続ける寛子。人気グラビアアイドル2人のブラジャー姿を思いがけず拝
めた事で観客達からはキッチリと決着を付けろという声が飛び交っていくが、本来の
試合で無い乱闘がこれ以上ヒートアップするのは不都合だという判断から黒服達が中
に割って入り2人をコーナーに戻していく

「ちょっと…どいてよ!調子に乗りやがって…ぶっ殺してやる!」

「離してよ!あの娘と決着つけさせてよ!ここまでされて引き下がれっていうの!
?」

互いにブラジャー姿になりながらも完全に憎悪剥き出しにしていがみ合う2人だった
が、黒服が2人に怒鳴っていく。

「離れろっ!お前達2人に試合の権利はないんだっ!そんなに戦いたいのなら今度試
合を組んでやるからそこで決着をつけろっ!」

その言葉に不満そうな表情を浮かべながらもコーナーへ戻る2人。そのコーナーでは
先にコーナーに戻されていた乙羽と美奈子がそれぞれ2人を迎えた。

「春菜ちゃんのお陰でかなり休めたわ…疲れたでしょ?早いトコ試合を終わらせてあ
げるからまあゆっくり見物しててよ…」

乙羽を痛めつけて晒し者にした事で大分満足していたのか、はたまた勝利を確信した
のか、余裕を含んだ様な言い方の美奈子。しかし大分苛立っていた春菜にはその言い
方が感に障った様であった。

「当たり前よ!早くあの腑抜けを倒して試合を終わらせなさいよ!そしたら今度は私
があの生徒会長女とぶっ殺してやる!」

もはや春菜にとっては乙羽と美奈子の試合など頭に無く、あるのは寛子を倒す事だけ
の様であった。

「分かったわよ!今度こそ試合を決めてあげるから、少し冷静になりなさいよ!」

血気立つ春菜に呆れたのか、美奈子も宥めるように言っていく。そして試合再開に備
えてマウスピースを入れていった。

一方、美奈子の手で観客の前で晒し者にされた乙羽はタオルでそのボディを隠しなが
ら未だに泣いていたが、その乙羽のそばにブラジャー姿にされ、口から血を流した姿
の寛子が戻ってきた。

全裸にされて涙する乙羽の姿を改めて見た時、寛子は自分の中でこみ上げていた怒り
が次第に引いていくのを感じた。そして代わりにこみ上げてきたのはどうしてこうな
らない様に先輩を助けてあげられなかったのかという後悔の念であった。

「乙羽さん…ごめんなさい…私しか乙羽さんの事気にかけてあげられないのに…それ
なのに我を忘れて乱闘起こしたりして…自分が情けないです…」

そういう寛子の目からうっすらと涙が浮かんでいる事に気づいた乙羽もまた彼女の姿
を見て、本来は戦う必要のない寛子が自分の為に無惨な姿にされた事に責任を感じて
いた。そしてルールや美奈子の憎悪を恐れて戦意を無くし掛けていた自分を責めてい
た。

「寛子ちゃん…謝らなきゃいけないのは私の方だよ…私が最初から戦っていれば寛子
ちゃんをこんな姿にする事もなかったのに…情けないね私って…」

涙を拭いながら寛子にそういう乙羽は尚も続ける。

「私…このままじゃ終わらない…私の為に飛び出してってくれた寛子ちゃんの為に
も…美奈子ちゃんに勝ってみせる!」

そう言う乙羽の目からは先程まであった恐怖の色は消え、その代わりに闘志が宿った
事を寛子は感じていた。寛子もまた、涙を拭い笑顔で乙羽に励ましの言葉をかける。

「大丈夫です。乙羽さんが勝つって信じてるって試合の前にも言ったじゃないですか
!」

その言葉に微笑みながら、乙羽も試合再開に備えていった。そしてレフリーが2人を
中央に呼び寄せると、乙羽は全裸状態である事も気にせずに堂々と中央へ出た。

「ふふっ…情けない姿…これ以上惨めな思いをしない様すぐ終わらせてあげますから
ね…」

勝利を確信した様に余裕の表情で言い放つ美奈子だが、乙羽も言い返す。

「あと一回ダウンしなければ試合は終わらないわ!でも私はこれ以上ダウンしない!
少なくともあなたが3回ダウンするまではね!」

「ふん!今更強がり言っても遅すぎるのよ!大人しく負けたほうが身のためよ!」

言い合う2人を煽る様に試合が再開されていく。

「ラウンド4.カァーンッ!」

4Rが始まると、いきなり美奈子が乙羽の顔面目掛けてフックを仕掛けるが、乙羽は
それを冷静にかわし、逆に美奈子のボディにパンチを叩き込む。

「ぐふっ…」

先程とは別人の様に冷静な乙羽の動き。カウンターのボディを喰らって怯む美奈子は
ボディのガードを固めるが、乙羽はがら空きとなった顔面にストレートを叩き込む。

バキィィィィィ…

「げふぅぅぅぅぅ…」

思わぬ顔面への衝撃に後退する美奈子であったが、しかしその一撃にキレたのか態勢
を立て直すと気勢を上げて乙羽に殴りかかっていく。

「調子にのるなぁぁぁぁぁぁ…!!」

しかし乙羽はその美奈子のパンチを左手のパンチで払い落としていく。

(しまった…!!)

そう美奈子が思った時、既に美奈子のこめかみの辺りに乙羽の右手が迫っていた。

バシィィィィィン…

こめかみにフックを叩き込まれた美奈子は次の瞬間、その身を大きくリングに横たわ
らせた。試合再開して間もない出来事に寛子も春菜も、そして観客も暫し言葉を失っ
ていたが、程無くして会場からは美奈子のダウンに対し大きな声援が送られていっ
た、。

「只今、戸向美奈子選手が一度目のダウンを喫しましたので、ルールによりビキニブ
ラジャーを外して頂きます!」

そうアナウンスされると、横たわる美奈子は黒服によって動きを抑えられてビキニブ
ラを外されそうになるが、今度は乙羽が黒服を制止して美奈子に近づいていくと、美
奈子のビキニブラジャーを掴んでいった。

「こういうのは好きじゃないけどルールはルールだし、さっきまでのお返しの意味も
あるからね!覚悟しなさい!」

「くっ…」

美奈子のビキニブラジャーを一気に剥いでいく乙羽。乙羽程ではないにせよ、美奈子
も思わぬダウンとトップレスにされた事で、動揺の色を隠せないでいた。そしてそれ
を見ていた寛子は、乙羽が完全に戦意を取り戻した事を悟り、笑みを浮かべて頷い
た。

(乙羽さんから恐怖心が消えてる…これなら逆転できるかもしれない…)

一方の春菜は思わぬダウンを喫した美奈子をみて苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべ
ていた。

(何やってるのよ…あそこまで追いつめておきながらダウンするなんて…情けなくな
いの!?)

そして乙羽はトップレスになった美奈子に対し言い放つ。

「まだ試合は終わってないのよ!あなたが調子に乗るのもココまでよ!今度は私が
タップリお礼をしてあげる!」

「ふん!調子に乗ってるのはそっちでしょ!一回位ダウンを奪ったからっていい気に
ならない事ねっ!」

そしてまた、試合が再開されていく。

「ファイッ!」

(くっ…ここまで来て逆転されてたまるか!)

再開と共にフックを連続で繰り出し果敢に攻める美奈子であったが、思わぬダウンを
奪われた事で内心焦りを感じ始めていた。その焦りも手伝ったのか、先程までに比べ
て美奈子の攻めには隙が多く見てとれるようになり、乙羽には上手くかわされてしま
う。まだ明確にはなっていないものの、試合の流れは徐々に乙羽に傾き始めていた。
攻める事に気を取られてガードが甘くなった美奈子の柔らかいお腹にアッパーを叩き
込むと、美奈子は苦悶の表情を浮かべるが意地になって乙羽の顔面にストレートを叩
き込んで反撃していく。

「ぐふぅぅぅぅぅ…」

顔面への衝撃に唾を吐き散らしていく乙羽であったが、もうこれ以上ダウンできない
という意地が彼女を支え反撃を促していく。既に一糸纏わぬ姿なのにも係らず反撃す
る乙羽のその姿は美奈子に無言のプレッシャーとなって襲い掛かっていた。そしてそ
の姿は先程まで残酷な声援を無責任に送っていた観客達の心をも動かし、次第に乙羽
コールが多くなっていった。

「行けるぞ〜乙羽〜そのまま攻めろぉ〜」

「一気に決めて戸向をヌードにしてやれ〜っ!」

その声援に後押しされたのか、乙羽は更に果敢に攻めていくと、次第に殴り合いの主
導権を握っていく。美奈子のストレートを叩き落し、逆にカウンターのストレートで
美奈子の顔面を捉えると、美奈子の鼻からは夥しい鼻血が吹き出て行った。

「んあぁぁぁぁぁっ…」

溜らず後退する美奈子であったが、乙羽は容赦なく美奈子を追いつめる。露わになっ
たバストに先程のお返しとばかりにジャブの連打を叩き込むと、美奈子のバストも赤
みを帯びていった。

「ああっ…ああんっ…」

先程までの攻めが嘘の様に追いつめられる美奈子。そんな美奈子に対し春菜はコー
ナーから罵声の様な激を飛ばした。

「何やってるの!ここまで来て負ける気!?少しは根性見せなさいよ!」

(うるさいわよ!言われなくたって分かってる!やっと…やっと巡ってきたチャンス
なんだ…今日こそ…今日こそコイツを…)

次第に劣勢に追い込まれていく美奈子であったが、その心の中の乙羽に負けたくない
という思いは薄れていなかった。かってはグラビア界のツートップとして君臨し、地
下プロレスでは共に痛め付けられ役として幾度と無く酷い目にあっていたが、K-1グ
ランプリでの直接対決以来、勝利した乙羽はそのままK-1グランプリ優勝、初代ジュ
ニアヘビー王座に着き、表舞台でも一気に人気タレントの仲間入りをし、片や敗れた
自分はその後もずっと噛ませ犬、更に次々と素行の悪さを暴露され伸び悩み、しかも
グラビア界でも次々と現れる後輩達に抜かれていくという現実は美奈子にとっては屈
辱以外の何者以外でもなかった。全てはあの時乙羽に敗れた時に決まってしまったと
いっても過言ではなかった。それなら乙羽へのリベンジを果たせば何かが変わるかも
しれない。その為にも美奈子はどうしても勝ちたかった。

(あと…あと一回ダウンを奪えば勝てるんだ…負けてたまるかぁぁぁぁぁっ!)

バストを傷つけられながらも決死の思いでクリンチに持ち込む美奈子。レフリーに
よって引き離されていくと再びフックで果敢に攻めていくが、乙羽も冷静にかわして
いく。そして美奈子の左フックをかわした乙羽は美奈子の側頭部にカウンターを入れ
ようとするが、タイミングが狂い、放ったカウンターのフックは美奈子の左肩を直撃
すると、次の瞬間会場内に美奈子の悲鳴が響き渡った。

「うぎゃぁぁぁぁぁっ…」

悲鳴をあげながらダウンすると、グローブをつけたままの右手で左肩を庇いながらう
ずくまる美奈子。思わず春菜が美奈子のそばに駆け寄る。

「美奈子ちゃん!どうしたの!?大丈夫!?」

春菜の呼びかけに答える事の出来ない美奈子。その状況にリングドクターがリングに
上がり美奈子を診察すると、どうやら乙羽の一撃で肩を脱臼したらしかった。もう左
手は使い物にならず、試合続行は不可能だというリングドクターであったが、美奈子
はドクターストップを拒んでいく。

「冗談じゃないわよ…ここまできて引き下がれないわよ…まだ右手は使えるわ!右手
だけだってやってやるわよ!」

あくまで試合を続けようとする美奈子であったが、春菜は引き止める。

「美奈子ちゃん…無理だよ!そんな状態で戦うなんて…出来る訳無いよ!」

「黙ってて!私は…私は…絶対に乙羽さんを…」

息も絶え絶えになりながら必死で試合続行を訴える美奈子。そんな美奈子に黒服が答
える。

「試合を続行するしないはお前の自由だ。しかしお前は二度目のダウンを喫した。続
行するなら全裸で戦う事になるが、それでもいいのか?」

「構わない!今までだって散々酷い目に遭って来たんだから…全裸なんてどうってこ
と無いわ!ここで引き下がるよりずっとマシよ!」

そういうと、黒服の手を借りて自らビキニショーツを脱いでいく美奈子。美奈子の思
いを知らない春菜は何故ここまでして戦おうとする美奈子が理解できないでいた。そ
してそれは乙羽も、寛子も、観客達も同じであった。そして美奈子は脱臼した左腕を
庇いながらも試合再開してよとばかりに乙羽に向かっていく。その額からは油汗が流
れ始めており、何とも痛々しい光景であった。

「さあ、試合を再開するわよ!あんたの言うとおり、どちらかが三回ダウンするまで
試合は終わらないんだから…」

「美奈子ちゃん…本当に続ける気なの?そんな姿になってまで…どうして?」

「あんたには…あんたには分からないわよ…分かって欲しくも無いけどね…全てはア
ンタに勝つためよ!覚悟しな!」

「…分かったわ…あなたが倒れるのが先か、それとも私が倒れるのが先か…決着を着
けましょう!」

その光景を見た黒服からレフリーに試合再開せよとの合図がなされていく。そして戦
いは遂にクライマックスを迎えようとしていた。

「ラウンド5、カァーンッ!」

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