「引き続いて、アイドルビキニプロレススペシャルマッチ第二試合を行います!」
 
そのアナウンスに、先程までの春菜と寛子の一戦で興奮に包まれていた会場からは更なる歓声が起きていった。
 
「赤コーナー、T156B90W58H85、戸向〜っ、美奈子〜っ!」
 
コールと共に手を挙げてアピールしていく美奈子。その姿には先日の試合の様な殺気は無かったが、代わりに絶対に負けないという闘志が漂っていた。
 
「青コーナー、T157B89W58H85、乙〜羽〜っ!」
 
こちらも美奈子と同じ様に手を挙げてアピールしていく乙羽。前回の試合の様な脅えの影は微塵も無く、有るのは対戦相手の美奈子に対する闘志だけであった。
 
「容赦はしないわよ…この前全力を出し切れなかった分まで、今日は思いっきり戦わせて貰う!生憎だけど、美奈子ちゃんに勝たせたりはしないから!」
 
「勝たせてもらわなくったって…コッチから勝ちを奪ってやる!春菜ちゃんが勝てなかった分まで勝ってやるから!」
 
リング中央へ呼ばれた2人は早くも互いの闘志を激しくぶつけ合う。その姿はかつてグラビア界のツートップと呼ばれ、互いにライバル心を燃やしていた頃の姿そのものであった。
 
「どんな攻め方されたって、恨みっこは無しだからね!もう一度言うけど、容赦はしない!」
 
そう言って睨みつける乙羽に対し、美奈子も言い返す。
 
「言われなくたって、遠慮無く攻めさせてもらうつもりよ!今日という今日こそ…あなたと決着を付けてやる!」
 
先の春菜と寛子とは異なり握手の無いまま互いのコーナーへと戻る二人。2人にとっては既に試合が始まっている様な感じであった。
 
「美奈子ちゃん…自信を持って!今の美奈子ちゃんなら…乙羽さんに負けないはずだよ!」
 
セコンドについた春菜は美奈子の手を握りながらそう励ます。その手の温もりは美奈子を勇気づけていた。
 
「ありがとう…私…今日こそ絶対に…乙羽さんに勝つ!」
 
一方の乙羽もセコンドの寛子に話しかけていた。
 
「私にとって…美奈子ちゃんは特別な相手なんだ…絶対に負けられない、私のライバルなんだ!何があったって…私は勝ってみせる!」
 
先日の試合とは全く異なる、凄まじいばかりの闘志を見せる乙羽に寛子は驚きつつも励ましの言葉をかける。
 
「乙羽さんなら大丈夫です!戸向さんだって簡単な相手じゃないかも知れませんけど、乙羽さんは負けないはずです!」
 
その寛子の言葉に、言葉は無かったが、乙羽は笑顔を返していった。そして2人は試合開始に向けて体を動かしてウォームアップをしていく。その2人に対して観客の視線は動く度に揺れる2人の巨乳に注がれていた。先日の試合の事もあり、2人の裸が拝める事を期待している者も少なくなかった。
 
(負けない…この相手だけには負けられない!!)
 
しかし、観客の残酷な期待をよそに、美奈子と乙羽の互いの心中にはこの一つの思いだけが熱く燃え滾っていた。
 
「カァーンッ!!」
 
遂に決戦の火蓋が切られた。ゴングと共に美奈子はコーナーから飛び出すと、いきなりコーナー串刺しのラリアットを放っていくが乙羽は冷静にそれをかわし美奈子を自爆させるとその背中にストンピングを叩き込んで痛めつけていく。続け様に美奈子の髪を掴んで立たせるとその頬に張り手を叩き込んでいった。
 
バシィィィィン…
 
「くっ…」
 
しかし美奈子も開始早々ペースを握られてはまずいと思ったのか、乙羽のボディにパンチを叩き込んで反撃していくと乙羽も苦悶の表情を浮かべて後退していく。フラ付く乙羽の隙を突き、美奈子はロープへと飛び乙羽にラリアットを叩き込むと乙羽がダウンしていった。
 
「ほらほらっ…ダウンするにはまだ早いでしょ!」
 
そういってダウンする乙羽のバストをストンピングで痛めつけていく美奈子は数発ストンピングを叩き込むと乙羽のバストを踏みつけたまま観客にアピールしていく。そのアピールに観客からは美奈子に対して声援が送られていくが、乙羽もやられっぱなしてはまずいと考えたのかバストを踏みつける美奈子の足を払いのけるとリング下へとエスケープしていった。
 
「何よ!逃げるんじゃないわよ!上がってきて勝負しなさいよ!」
 
優勢に立った美奈子が挑発していくが、乙羽も言い返す。
 
「こういうやり方だってあるのよ!ただリングの上で戦うのだけが勝負じゃないんだから!」
 
「ふーん…じゃあどういう風に戦うのかを見せてみなさいよ!」
 
そういって乙羽を追いかける様にリング下へと降りていく美奈子。しかしその美奈子を待っていたかの様に乙羽が気勢を上げながらのエルボースマッシュを美奈子の顔面に叩き込むと美奈子がフラ付いていく。その美奈子のバスト目掛けて乙羽がドロップキックを放つと今度は美奈子がダウンしていった。
 
「立ちなさいよ!さっきはよくもオッパイを痛めつけてくれたわね…お返ししてあげるわ!」
 
そう言う乙羽は美奈子の髪を掴んで起こしていくと、何と近くの鉄柱に美奈子の頭をぶつけて行く。乙羽らしからぬラフファイトに観客や寛子は驚いていた。
 
「いやっ…痛いぃぃぃぃぃ…」
 
堪らず悲鳴を上げる美奈子だが、乙羽はそれに構わず美奈子を鉄柵に振って一気に叩き付けると、鉄柵に背をもたれる美奈子のバスト目掛けて再びドロップキックを叩き込んでいった。
 
ガッシャーン…
 
「きゃあぁぁぁぁっ…」
 
再度のバストへの衝撃に鉄柵と共に倒れこむ美奈子。バストと背中への衝撃でグッタリとしていた。その美奈子に乙羽が近づいていくが、美奈子がいきなり乙羽の股間目掛けて下から蹴りを放っていった。
 
バキッ…
 
「んあぁぁぁぁっ…」
 
当に奇襲ともいえる股間への一撃に今度は乙羽がダウンしていく。その隙を逃さんと美奈子がマウントポジションを取ると乙羽の顔面に往復ビンタを叩き込んでいった。
 
バシッ…バシッ…
 
「鉄柱に頭をぶつけてくれたお代は高いわよ…覚悟しな!」
 
抵抗する乙羽だが、美奈子は自らの足で乙羽の手をしっかりと封じており反撃もままならない。叩かれていく乙羽の頬が次第に赤みを増していくと、美奈子は乙羽を立たせてその柔らかいお腹にキチンシンクを叩き込んで再びダウンさせていく。そのダウンする乙羽を近くにあった客席のテーブルに乗せると、乙羽の頭を両足で挟みこみ逆さ吊りにしパイルドライバーを狙っていった。
 
「覚悟しなさい…鉄柱のお返しよ!」
 
その言葉と共に美奈子は飛び上がってジャンピングパイルドライバーを決めると、音を立てて机が真っ二つに破壊され、乙羽がグッタリとして倒れていった。
 
「プロレスなんだから、決着はちゃんとリングの上でつけてあげるわ!」
 
そういうとグッタリする乙羽の髪を掴んでリング上へと戻していく美奈子。しかし依然として乙羽はグッタリとしたままであった。その姿を見た美奈子はトップロープに上ると、観客にアピールしてから倒れる乙羽目掛けてフライングボディプレスを仕掛けていった。
 
「喰らえぇぇぇぇっ…!」
 
しかしそれこそ乙羽が狙っていた事であった。技が決まる寸前、乙羽が自らの膝を立てると、その膝は美奈子の股間に命中し、美奈子はマット上をのた打ち回る結果となってしまった。
 
「んあぁぁぁぁっ…」
 
「考えが甘かったわね…美奈子ちゃん!」
 
股間を思いっきり打ち付けてしまったのか、ジタバタしながら苦しむ美奈子。その美奈子の背中に乙羽がヒップドロップを落とすと美奈子は力無くうつ伏せに倒れていく。その美奈子の背中に座り、顎に手を回すと乙羽はキャメルクラッチを決めていった。
 
「あふっ…あぐぐっ…」
 
「ほらほらっ…苦しいでしょ?ギブすれば楽になるわよ!」
 
「ううっ…ぐうじくなんか…ないもん…」
 
「強情ね…だったらもっと苦しくしてあげるわ!」
 
そう言うと、乙羽は両腕を交差しクロスバストクラッチで美奈子のバストを痛めつけていった。
 
「きゃあぁぁぁぁっ…痛いっ…痛いっ…いやぁぁぁぁっ…!」
 
胸が千切れんばかりの痛みに殆ど悲鳴に近い様な声を挙げて苦しむ美奈子。その姿にレフリーがギブアップの確認をしていくが、美奈子はそれだけは頑として拒んでいった。
 
「ほらほらっ…意地張ってると大事なオッパイが千切れちゃうわよ!」
 
意地悪く言う乙羽であったが、それでも美奈子は頑としてギブしようとはしなかった。
 
「意地っ張りね!それならこれはどうかしら?」
 
そう言うと、美奈子の足に自らの足をフックして、更に美奈子の腕を取るとロメロスペシャルで吊り上げていく乙羽。揺さぶられる美奈子のバストがビキニから飛び出しそうになっていくと、観客からは大歓声が上がっていった。
 
「いやあぁぁぁぁっ…痛いぃぃぃぃっ…!!」
 
「ほらっ!痛いならギブしなさいよ!意地張るとオッパイが飛び出ちゃうわよ!」
 
「ううっ…こんな事でギブなんかしてたまるかっ…!」
 
その姿に業を煮やしたのか、乙羽は技を解いて美奈子を立たせると後ろから組み付いてバックドロップで美奈子をマットに叩き付けていくと、美奈子がグッタリとして横たわっていった。しかしそれに構わず乙羽は美奈子を立たせるとまたしてもバックドロップを見舞う。非情ともいえるバックドロップ2連発に美奈子は半失神状態となっていく。その攻めで美奈子のバストがビキニブラから飛び出しかけていた。
 
「いいぞぉ…乙羽〜っ!戸向のビキニを剥ぎ取ってやれ〜っ!!」
 
「美奈子ちゃんのオッパイ見せてよ〜っ!!」
 
飛び出しかけた美奈子のバストを見た観客からは残酷な期待を込めた声援が乙羽に送られていく。すると乙羽は意識朦朧とする美奈子を立たせ、背後から美奈子のビキニブラジャーに手を掛けると美奈子は必死に抵抗していく。
 
「何するのよ…水着に手を掛けるなんて…」
 
「お客さんへのファンサービスだって地下プロレスでは大事だって事知ってるでしょ?それにこの前のお返しもまだだったしね…美奈子ちゃんには悪いけど…覚悟しなさい!!」
 
「きゃあっ…」
 
そう言うと一気に美奈子のビキニブラジャーを剥いでいく乙羽。美奈子の90pの巨乳が観客達の目に晒されていった。
 
「ちょっと…卑怯な事しないでよ!正々堂々戦うんじゃなかったの!?」
 
トップレス姿の美奈子を見て思わず春菜が乙羽に叫んでいくが、乙羽は厳しい口調で言い返す。
 
「口を出さないで!これは私と美奈子ちゃんの戦いなんだから!」
 
そう言うと、乙羽はバストを隠そうとする美奈子にドロップキックを見舞い再びリング下へと落としていき、倒れこむ美奈子のお腹にフットスタンプを見舞っていった。
 
「グボッ…グエェェェェ…」
 
お腹への衝撃に堪らず反吐を吐き出し苦しむ美奈子。その美奈子の両手を掴んで動きを封じると乙羽は露わになった状態の美奈子のバストを観客席の方へ向けていった。
 
「いやっ…やめてよ…ちょっと…」
 
これから何をされるのかを悟ったのか、美奈子は動きを封じられながらも必死に抵抗していく。
 
「お客さんへのサービスタイムよ…楽しませてあげるのね!」
 
その乙羽の言葉と共に観客席から美奈子のバスト目掛けて一斉に手が伸び始める。どの手も凄い勢いで美奈子のバストを揉んでいった。流石に春菜が止めに入ろうとするが、この前と同様に黒服達がそれを遮った為に黙ってそれを見ているしかなかった。
 
「ああんっ…いやっ…やめて…お願い…触らないで…」
 
美奈子の哀願もバストを揉む事に夢中な観客達には全く届いている様子は無く、逆にその勢いは増すばかりであった。
 
「すげえっ…美奈子ちゃんのオッパイって…やっぱり大きい…」
 
「意外に弾力があるよなぁ…美奈子ちゃんのって…」
 
「美奈子ちゃんの乳首…段々勃ってきてないか?」
 
一向に止まぬその勢いに美奈子からは次第に喘ぐ様な声が発せられていく。
 
「ああんっ…ああっ…あはんっ…」
 
その声が更に観客達を興奮させたのか、次第にバストだけでは飽き足らなくなった一部の観客達がビキニの布地に守られた美奈子の股間にまで手を伸ばし始めた。
 
「いやっ…やめてっ…そこだけは…触らないで…お願い…」
 
刺激を加えられた股間が次第に湿っていた事に気付いた美奈子は言い様の無い恥ずかしさに襲われたが、バストに続き股間にまで刺激を加えられた事により美奈子はとても反撃できる状態になかった。しかしふと我に返った美奈子はどうにかしてこの状況を乗り切ろうと必死で動く足をバタバタさせていくと、それがカンガルーキックとなって動きを封じていた乙羽の股間を捉えていった。
 
「んあぁぁぁぁっ…」
 
突然の股間への衝撃にしゃがみこむ乙羽。両腕が使える様になった美奈子は自分の体をオモチャにしていた観客達の手を払いのけると、倒れこむ乙羽の顔面にサッカーボールキックを叩き込んでダウンさせていき、そのままマウントポジションを取って乙羽の顔面に怒りの鉄拳を叩き込んでいった。
 
「人の体をオモチャにするなんて…やってくれるじゃない…絶対に許さないわよ!」
 
そういって数発鉄拳を叩き込むと、美奈子も乙羽のビキニブラジャーに手を掛けていった。
 
「やめてっ…何するのよ…ちょっとぉぉぉぉ…」
 
「何するのじゃないわよ!これでおあいこっ!」
 
そう言うと、一気に乙羽のビキニブラジャーを剥ぎ取る美奈子。乙羽が悲鳴を上げていくが、美奈子は飛び上がって乙羽のお腹にヒップドロップを落として黙らせていく。すると観客からは意外な声が上がっていった。
 
「美奈子ちゃ〜ん!乙羽ちゃんのオッパイも触らせて〜っ!」
 
「乙羽ちゃんに仕返ししてやれ〜っ!」
 
その言葉に美奈子はニヤリと笑みを浮かべると、先程自分がやられたのと同じ様に乙羽の抵抗を封じ、トップレス状態の乙羽を観客席に近づけていった。
 
「ううっ…お願い…それだけは…」
 
先程自分が同じ行為をした事もあり、乙羽も覚悟していた様だが、それでもどうにか避けんと必死に抵抗していった。しかし美奈子がそれに構わず叫んでいく。
 
「さあ、今度は乙羽さんのサービスタイムよ!皆思いっきり楽しんでよね!」
 
その言葉と同時に先程同様、乙羽のバストに観客の手が集中していく。先程の事で既に興奮の坩堝にあった観客達のバストを揉む勢いは美奈子の時に増して乙羽のバストに襲い掛かった。
 
「きゃあぁぁぁぁっ…いやあぁぁぁぁっ…」
 
地下プロレスのキャリアは長い乙羽であったが、この様にバストを観客に揉まれる様な経験は始めての事だけに必死にこの状態を脱しようともがいていくが、美奈子がしっかりと動きを封じており只々バストを揉まれるだけになっていった。助けようとした寛子も春菜同様、あらかじめ立ちはだかった黒服によって事態を静観せざるを得なかった。
 
「おおっ…乙羽ちゃんのってすげえ柔らかいよ…」
 
「勿体無いよなぁ…グラビア卒業しちゃったなんて…」
 
「やっぱり乳輪大きいよなぁ…乙羽ちゃんって…」
 
相変わらず好き勝手な事を言いながら乙羽のバストを揉みまわす観客達。しかし乙羽を苦しめる手は観客のものだけではなかった。乙羽の腕を取って動きを抑える美奈子が片方の手で乙羽の股間を刺激し始めたのである。嗚咽を上げながら苦しむ乙羽。そのビキニの布地が次第に変色し始めた事に一部の観客が気付いていた。
 
「ああっ…ああん…ああんっ…」
 
「どう?私の気持ちが分かったでしょ?どうせならもっと気持ち良くしてあげよっか?」
 
「いやっ…許して…恥ずかしいよぉ…」
 
しかしここで涙を浮かべ始める乙羽を観客から引き離してリング上へと戻していく美奈子。観客からは残念そうな声も上がっていたが。しかしまだバスト揉みの刺激から立ち直れないのか、マットに横たわる乙羽の背中に美奈子はストンピングを叩き込んで痛めつけていく。ストンピングが叩き込まれる度に乙羽の巨乳がマットに押し付けられて変形していった。
 
「ああんっ…いやっ…痛いぃぃぃぃ…」
 
悲鳴を上げる乙羽に構う事無く美奈子がストンピングを叩き込んでいくが、乙羽もマットを転がりながらそれを避けて立ち上がって美奈子と睨み合う展開になっていく。すると、乙羽が打撃スタイルで構えていった。
 
「何よ…打撃は苦手なんじゃなかったの?わざわざ苦手な分野で戦おうとするなんて…何か策でもあるのかしら?」
 
「別に策なんてないわよ…この前殴ってくれたお返しっ!」
 
そう言うと踏み込んで美奈子の顔面にパンチを放つ乙羽。その一撃が顔面を捉え美奈子がふら付いて行くと続けざまにタックルで美奈子からテークダウンを奪った乙羽がマウントポジションを取り下になった美奈子は焦っていくが、乙羽も慣れないながらも美奈子の側頭部にパンチを叩き込んで美奈子の抵抗を鈍らせていく。
 
「うっ…くそっ…」
 
しかし美奈子も乙羽の腰辺りに自らの足をボディシザースの様に絡め、更に抱きつく様に顔への攻撃を避けようと露わになった乙羽のバストに顔を埋めていった。
 
「きゃぁっ…ちょっと…何するのよ美奈子ちゃん!」
 
美奈子の予想外の行動に一瞬攻撃の手を止めてしまう乙羽。その隙をついて美奈子が乙羽をひっくり返して体勢が入れ替わり。逆にマウントポジションを取った美奈子は乙羽の柔らかいボディに膝蹴りを見舞っていく。そして続けざまに苦しむ乙羽のバストをバストクローで力任せに握り締めていった。
 
「きゃぁぁぁっ…痛いぃぃぃぃ…やめてぇぇぇぇ…」
 
「柔らかい…乙羽さんのって…お餅みたい…どうせならお餅つきさせてもらいましょうねっ!」
 
そう言うと乙羽のバストへハンマーパンチを落としていく美奈子。拳が叩き込まれる度に変形する乙羽のバストに観客からも興奮の声が上がって行く。それに比例するかのように乙羽の悲鳴も大きくなっていった。
 
「いやあぁぁぁぁん…痛いよぉぉぉぉ…」
 
「痛かったら反撃してみな!泣き叫んでてもどうにもならないわよ!」
 
「ううっ…このおぉぉぉぉっ!」
 
そう叫びながら乙羽はバストを殴られつつも下から美奈子のバストに両手を掛けると美奈子と同じ様に思いっきり握り締めていった。
 
「痛いぃぃぃぃぃっ…」
 
堪らず悲鳴を上げて乙羽から離れる美奈子。その隙に乙羽が立ち上がると美奈子の両方のバストを握り締めたまま一気にロープへ押し込んでいった。
 
「美奈子ちゃんのだって柔らかいし、それに弾力もあるから…お餅つきにはピッタリよねっ!」
 
そう言うと先日のボクシングマッチの時と同じ様に美奈子のバストをパンチングボールにしていく乙羽。美奈子に劣らない勢いで殴りつけていく。
 
グニュ…グニュ…
 
「はううぅぅぅ…」
 
堪らず悲鳴を上げる美奈子。そのバストが赤みを帯びていくが、殴りつけられながらも乙羽のお腹に前蹴りを叩き込んで距離を置いていく。腕をロープに固定されたいなかった事が幸いし、美奈子は怒りの表情を浮かべ攻撃の態勢を整えていった。
 
「覚悟しな…打撃なら少なくともあなたより出来るわ!」
 
そう言うと、乙羽の太股にローキックを叩き込んでいく美奈子。痛がって怯む乙羽の脇腹に続け様にミドルキック、そして鳩尾に前蹴りを続け様に決めると乙羽が咳き込んで苦しんで後退していった。しかしそんな後退する乙羽を逃がさんとばかりに美奈子がパンチで顔面を狙っていった。
 
「逃げてるところを見ると、やっぱり打撃は苦手なのかしら?」
 
「くっ…このおぉぉぉ…」
 
不利な打撃戦を避けて組み合いに持ち込もうとする乙羽は至近距離からタックルを狙っていくが、美奈子のカウンターの膝蹴りが顔面を捕らえ乙羽の動きが止まると、フロントスリーパーの様に乙羽の首を捕らえるとDDTで乙羽の頭をマットに突き刺していった。うつ伏せになって倒れる乙羽を立たせると、組み付いてコブラツイストを仕掛けていった。
 
「ほらほらっ…戦えないならサッサとギブアップしなさいよ!」
 
「くっ…まだまだっ…ギブなんてしない!」
 
揺さぶりを掛けられながらも美奈子に対する意地か、必死にギブアップを拒んでいく乙羽。美奈子も業を煮やして技を解くと、2人はリング上で睨み合う展開になっていく。
 
「おらぁぁぁぁっ…」
 
気勢と共に乙羽に対し美奈子がエルボースマッシュを叩き込んで行くと、乙羽も一瞬痛そうな表情を浮かべたがお返しとばかりにエルボーを叩き込んで美奈子をフラ付かせて首相撲に持ち込んでいく。美奈子の柔らかいお腹に膝蹴りが連続して叩き込まれると美奈子が咳き込んで苦しむが、今度は乙羽のヘッドバッドが美奈子の顔面を捉えた。
 
「んあぁぁぁぁっ…」
 
堪らず美奈子はその可愛らしい顔を鼻血で赤く染めてダウンしていく。顔面を抑えてうずくまる美奈子に容赦はしないとばかりにストンピングで美奈子のバストや顔面を攻めていく乙羽。防戦一方の美奈子の顔面を踏みつけて観客にアピールしていった。
 
「ほらほらっ…私だってこういう攻め位出来るわよ!」
 
乙羽はそういって今度は美奈子の股間に爪先蹴りを入れると、美奈子が悲鳴を上げてのた打ち回っていく。何時に無いラフファイトを展開する乙羽の姿に観客からは歓声と共に驚きの声も上がっていた。
 
「でも一応はプロレスなんだから、プロレスらしく戦わないとね!」
 
そういうと美奈子の両足を抱え込むと、ジャイアントスイングで美奈子を振り回そうとする乙羽。それ程パワーがある様には見えない乙羽がこの技を仕掛けようとするのに美奈子も驚いて言い返していった。
 
「何よ!あなたにそんなパワーがある様には見えないけど?出来ない事は無理にしない方が良いんじゃない?」
 
「出来ないかどうかは…やってみないと分からないわ!」
 
そういうと乙羽は持てる力の全てを振り絞る様に叫び声を上げながら美奈子を振り回していく。成す術無く美奈子は、その露わになったバストを左右に揺らしながら見事なまでに振り回されていった。
 
「いいぞぉ…乙羽ちゃん!もっと回せ〜っ!」
 
その観客の声に後押しされる様に、乙羽は美奈子を力の限りに振り回していく。結局、10回転したところで美奈子はマットに投げ捨てられたが、大技を見事に決めた乙羽には会場から拍手が送られていった。
 
「うっ…くそっ…」
 
流れが乙羽に傾いている事に焦りを感じ始めた美奈子は、視点が定まらない状態ながらもどうにか立ち上がって反撃の為に体勢を整えようとするが、乙羽が隙を与えずラリアットを叩き込むと再び美奈子はダウンしていった。
 
「まだまだよ…タップリと痛めつけてあげる!」
 
そういうと、美奈子の足を取り交差させてその身を反転させるとサソリ固めを極めていく乙羽。堪らず美奈子はマットを叩いて苦しんでいった。
 
「ぎゃあぁぁぁぁっ…痛いぃぃぃぃっ…いやぁぁぁぁっ!」
 
「ほらっ…この技って効くでしょ?プロレス勝負なら私の方が強いんだから…」
 
乙羽は更に技を極めていくが、美奈子が意地になってギブアップを拒んでいくと技を解いて立ち上がると、続け様に美奈子の頭部にニードロップを落としていくと殆ど半失神状態になる美奈子であったが、その手が自らのビキニショーツの中に伸びていた事に乙羽は気付いていなかった。
そして美奈子の髪を掴んで立たせていく乙羽であったが、ビキニショーツに伸びていた手が口にいったかと思うと次の瞬間、美奈子の口から緑色の毒霧が乙羽の顔面に吹き付けられていった。
 
プシュウゥゥゥゥ…
 
「きゃあぁぁぁぁっ…」
 
「地下プロレスではこういう攻めも許されるのよね!油断してるとこうなるのよ!」
 
そう言うと美奈子は、視界を失ってもがき苦しむ乙羽のお腹に前蹴りを叩き込んでから組み付き、ブレーンバスターを狙っていった。
 
「さっきのジャイアントスイングのお返しをしてあげるわよ!喰らえぇぇぇぇっ!」
 
そう言って高速のブレーンバスターで一気に乙羽をマットに叩き付けていく美奈子。叩き付けられた乙羽は一瞬息が止まりそうな衝撃に襲われていった。仰向け状態で大の字になっている乙羽の露わになったバストにエルボードロップを落としていくと、続け様に乙羽に馬乗りになると、その頬に往復ビンタを叩き込んでいく。叩かれる乙羽の頬が次第に赤みを増していくと、今度はコブラクローで乙羽の喉元を絞めていった。
 
「ほらほらっ…苦しいならギブしなさい!意地張るならもっと絞めるわよ!」
 
「ううっ…うぐっ…」
 
喉元を絞められている為思う様な声が出ないながらも、乙羽は首を振ってギブアップを拒んでいく。その乙羽をうつ伏せにしていくと、今度は背中に座り込んでキャメルクラッチを仕掛け、更には乙羽の鼻の穴に指を突っ込んで豚鼻状態にしていった。
 
「ふがっ…ふががが…」
 
「ほらっ…ひどい顔になってるわよ!」
 
乙羽の羞恥心を刺激してギブアップを迫ろうとする美奈子であったが、一向にギブしようとしない乙羽の姿にもう少し痛めつけた方が良いと悟ったのか、技を解いて髪を掴んで立たせていくと乙羽の額にパンチを連続で叩き込んでいき、続け様に膝蹴りを入れようとするが、それよりも早く乙羽のパンチが美奈子の股間に命中した。
 
「んあぁぁぁぁっ…」
 
堪らず股間を押さえて苦しむ美奈子に、乙羽はキチンシンクを叩き込んでふら付かせると、続けてバストにドロップキックを叩き込んで再びリング下に落としていき、自らも美奈子を追って降りていった。そして美奈子を鉄柵に振り、倒れこむ美奈子の顔面にケンカキックを叩き込んで黙らせると、客席からパイプ椅子を持ち出すという思いも寄らぬ行動に出た。
 
「ホントならこんな事したくないけど、さっきの毒霧のお返しっ!」
 
そう言って美奈子の脳天にパイプ椅子を叩き付ける乙羽。堪らず倒れこむ美奈子の背中にも容赦なく椅子を叩きつけていった。思わぬ展開に観客からの驚きの声が上がっていった。
 
「きゃあぁぁぁぁっ…」
 
悲鳴を上げて苦しむ美奈子のバストに椅子を押し付けて揺さぶりを掛ける乙羽。しかし美奈子も乙羽の股間目掛けて下から蹴りを放ってフラ付かせると、逆に乙羽が手放したパイプ椅子で乙羽の事をメッタ打ちにしていった。
 
「痛いっ…痛いぃぃぃぃ…いやぁぁぁぁっ!」
 
「甘えた事言わないの!元々はあなたが仕掛けてきた攻撃でしょ!」
 
流石にこういうラフファイトでは美奈子に分があったのか、仕返しをするつもりだった乙羽は逆にやられる格好になってしまった。グッタリして倒れこむ乙羽にストンピングを叩き込んで更に痛めつけていく美奈子は髪を掴んで立たせていくが、乙羽が股間にアッパーを叩き込んでいくと今度は美奈子がしゃがみこんでいく。そして本部席から持ち出したゴングを美奈子の脳天に叩き付けていった。
 
「ぎゃあぁぁぁぁっ…」
 
悲鳴を上げて倒れこむ美奈子。しかし、堪らず抑えたその頭から流れている血が美奈子の怒りに火をつけた。
 
「この野郎ぉぉぉぉっ!!」
 
そう叫びながら立ち上がった美奈子は、鬼気迫る表情で乙羽に殴りかかっていく。その勢いに気圧される乙羽の顔面に美奈子の拳が叩き込まれると、乙羽の顔面から鼻血が吹き出しその愛くるしい顔が真っ赤に染まっていった。
 
バシィィィィン…
 
「んあぁぁぁぁっ…」
 
乙羽も堪らず顔面を抑えるが、その抑えていた手に付いた血が美奈子同様に乙羽の闘志を爆発させた。
 
「よくもおぉぉぉぉっ…」
 
そして乙羽もまた美奈子目掛けて拳を振り上げていく。その拳が美奈子の顔を直撃すると、美奈子も怒ってまたも乙羽の顔面に拳を叩き込んでいくと、先日のボクシングマッチの時の様な壮絶な殴り合いが展開されていく。
 
バキッ…バキッ…
 
「ほらほらっ…このままだとテレビに出られない顔になっちゃうわよ!それでもいいの?」
 
そう言って殴り続ける美奈子に、乙羽が言い返す。
 
「…そんな事…どうでもいい!あなたに負ける位なら…その方がよっぽどマシよ!」
 
「…分かったわ!だったらシッカリと決着を付けてあげる!叩きのめしてあげるわよ!」
 
もはや覚悟を決めた様な2人。その姿を見た春菜と寛子も心配して声を荒げる。
 
「何やってるの!ただ殴り合ってたってラチあかないわよ!」
 
「乙羽さん!冷静になって下さい!」
 
しかし春菜の声も寛子の声も2人には全く届いていなかった。今の2人はただ目の前の相手を倒すという一念のみに突き動かされて戦っていた。そして乙羽は不意に殴りかかってくる美奈子の腕を取ると脇固めを掛けて極めていった。
 
「ぎゃあぁぁぁぁっ…痛いぃぃぃぃっ…!!」
 
思わず絶叫しながら倒れこむ美奈子。乙羽が更に極めていくと、それは美奈子の腕に確実にダメージを与えていった。ダメージを与えた事を確信した乙羽は技を解くと、倒れこんだ美奈子の髪を掴んで立ち上がらせリングへ戻していく。
 
「決着はやっぱりリングの上でつけないと、お客さんも納得しないでしょ!」
 
そう言うと乙羽は美奈子をコーナーポストへ振るとコーナー串刺しのジャンピングニーパッドを美奈子の顎に叩き込んでいく。倒れこむ美奈子をストンピングで痛めつけた後、倒れこむ美奈子の足を取ると乙羽はアキレス腱固めを掛けていくが、美奈子もヒールキックで反撃し乙羽の顔を抉っていく。堪らず足を離す乙羽のボディに今度は美奈子が足を潜り込ませるとボディシザースで締め上げていった。
 
「ほらほらっ…ギブしなっ!」
 
「ううっ…誰がギブなんかするかぁぁぁぁ…!!」
 
そう言って締め上げる美奈子の足を叩いて抵抗していく乙羽。美奈子も乙羽の髪を引っ張ってギブアップを迫っていった。その状態が続き、業を煮やした美奈子は技を解き、ボディスラムを決めようと乙羽を持ち上げようとするが、乙羽が投げられまいと踏ん張って堪えると逆に美奈子をボディスラムでマットに叩き付けていった。
 
「ぐはっ…」
 
叩き付けられた美奈子は一瞬呼吸が止まりそうな衝撃に襲われていく。乙羽はその美奈子を立たせていくとフルネルソンで締め上げて揺さぶりを掛け、その態勢からドラゴンスープレックスで一気に美奈子を叩き付けてそのままフォールに入った。
 
「んあぁぁぁっ…」
 
脳天への強烈な衝撃に美奈子は失神寸前に追い込まれながらも、ほとんど本能でこれを返していった。しかし返したものの美奈子は殆ど意識を失いかけていた。
 
「やるじゃない…流石は美奈子ちゃんね…ならもっと痛めつけてあげる!」
 
そう言って乙羽は美奈子を無理矢理立たせると、今度はダブルアームスープレックスで背中から叩きつけていく。今度こそグロッキーに追い込んだかと思われたが、美奈子はまるでゾンビの様にしつこく立ち上がって来た。乙羽も美奈子の執念に半ば呆れながらも立ち上がろうとする美奈子のバスト目掛けてミドルキックを叩き込んで更にふら付かせると、続け様に美奈子の顔面目掛けてハイキックを放っていった。
 
「覚悟なさい!これで終わりにしてあげるっ!」
 
しかしそのハイキックが放たれた瞬間、春菜が絶体絶命の美奈子に向かって叫んでいった。
 
「美奈子ちゃぁぁぁぁんっ…!!」
 
その声を聞いた瞬間、美奈子の朦朧としていた意識が一気に戻ってきた。そして放たれた乙羽の足を取るとドラゴンスクリューで乙羽を捻り倒していった。
 
「んあぁぁぁぁっ…足がぁぁぁぁっ…」
 
足に思わぬダメージを受けた乙羽は悲鳴を上げながら倒れていく。美奈子はその乙羽のお腹にダブルニードロップを落としていった。
 
「ぐぼっ…うげぇぇぇぇぇっ…」
 
その一撃に乙羽の口から胃液が一気に逆流していく。美奈子は目も虚ろな乙羽の頭を足で挟み込むと、乙羽を逆さ吊りにするとジャンピングパイルドライバーで乙羽を脳天からマットに叩き付けていった。
 
「ふぐうっ…」
 
小さく悲鳴を上げてマットに横たわる乙羽。すかさず美奈子がフォールに入るが乙羽もカウントギリギリのところで返していく。その乙羽の執念に美奈子も半ば呆れていた。そして乙羽が立ち上がると両者は再び睨み合う展開となっていく。お互い既に体は限り無く限界に近い事を悟りながらも一向に退かないその姿にお互いに心の奥底から不思議と喜びの様な感情が湧き上がり、2人は自然と笑みを浮かべていた。
 
「…もう…しつこいんだから。相手するコッチも辛いんだからさ、早くギブしてくれない?」
 
「…美奈子ちゃんが先にギブするなら、ギブしてもいいわよ。」
 
「…無理な注文ね。私は乙羽さんがギブするまではギブしないって決めてるんだから。」
 
「体はかなりキツそうだけど。無茶しない方が良いんじゃない?」
 
「お生憎だけど、今まで散々無茶してきたから、こんなのどうって事ないの。乙羽さんこそ、もう限界が近いんじゃないの?」
 
「…確かに限界は近いみたい。でも美奈子ちゃんに負ける事を思えば、不思議と限界が遠のくのよね。何か変な感じ。」
 
「…まったく。そんな人を相手にしなきゃいけないコッチの身にもなってよね。」
 
言い合いながら笑みを浮かべる2人の姿に、観客も、春菜も、寛子も不思議そうな表情を浮かべていた。それは戦っている二人にしか分からないものであろうから無理もない話ではあった。
 
「…笑ってるって事は、まだ戦えるって事よね?」
 
「…勿論。勝負はこれからなんだから!」
 
「…分かったわ。遠慮はいらないみたいね!今度こそ決着をつけてあげる!」
 
「臨むところよ!」
 
そう言うとお互いに近づいていくと、どちらからともなく張り手を入れていく2人。お互いが意地になって張り手合戦となっていくと2人の顔が赤みを増して行く。ここまで来るともはや本当に意地の勝負であった。
 
「このおぉぉぉぉっ…」
 
「何よぉぉぉぉっ…」
 
お互いの頬が赤くなるにも係らず張り合う2人であったが、乙羽がとっさに美奈子の顔面に拳を叩き込むとフラ付く美奈子の側頭部に乙羽が右のフックを叩き込んでいくと、美奈子が態勢を大きく崩した。チャンスとばかりに乙羽が更に殴りかかろうとすると、突然乙羽の鳩尾を衝撃が襲った。
 
(えっ!?何?一体…)
 
乙羽の鳩尾に襲い掛かった衝撃。それは態勢を崩したかに見えた美奈子が放った渾身のアッパーであった。態勢を崩しながら、それでも美奈子は攻撃の手を緩めていなかった。そしてその一撃が乙羽に生まれた一瞬の隙を見事に付いたのであった。
 
「ぐふうっ…」
 
鳩尾への突然の衝撃に今度は乙羽が怯む展開になっていく。その乙羽の顔面にお返しとばかりに拳を叩き込む美奈子。その一撃に態勢を崩す乙羽。そして美奈子は止めとばかりに、乙羽の顎にアッパーを放っていった。
 
「喰らえぇぇぇぇっ!!」
 
その叫びと共に放たれた美奈子の渾身のアッパーは、乙羽の顎を綺麗に打ち抜いた。
 
バシイィィィィン…
 
「ぐふっ…」
 
小さく悲鳴を上げる乙羽は次の瞬間、仰向けにマットに倒れ伏した。しかし美奈子も先程の乙羽のフックで受けたダメージが残っており、マットに膝をついてしまう。激闘を繰り広げた2人にも今度こそ限界が訪れようとしていた。
 
「ううっ…」
 
美奈子の攻撃に意識朦朧となりながらも、勝利への執念と美奈子への意地だけでその身を必死に起こそうとする乙羽。その乙羽に這い蹲りながらも必死で近づいていく美奈子を倒そうと乙羽がパンチを叩き込むが、美奈子も倒れそうになりながらも乙羽の顔にパンチを放っていく。その一撃に倒れこむ乙羽のバックを取ると首に腕を回してチョークスリーパーで締め上げていった。
 
「はうっ…」
 
「…ハァ…ハァ…乙羽さん…覚悟してよね…今度こそ決めてあげるわ…。」
 
既に限界を超えている体に残された力で乙羽を締め上げていく美奈子。締め上げる腕で乙羽の喉を潰そうとするが、乙羽も意地になってギブアップを拒んでいく。
 
「ううっ…まだ…やれる…もん…ギブなんて…しない…から…」
 
その姿に美奈子は更に乙羽のお腹に両足を絡めると、アナコンダスリーパーを完成させていく。喉に加えてお腹まで潰され、もはや乙羽のギブアップは時間の問題であった。
 
「乙羽さん…お願い…ギブして…もういいでしょ…もう十分でしょ…」
 
「うぐっ…まだ…よ…まだ…ま…け…な…い…」
 
口ではそう言う乙羽だが、既にその目は虚ろになっていた。美奈子もマットに横たわりながらも必死に締め上げていく。そして長い激闘に決着が付く時が来た。抵抗していた乙羽の腕がダラリと落ち、その体から力が抜けていくのを美奈子は感じていた。
 
「カンカンカンカン…」
 
乙羽の失神が確認されたのか、打ち鳴らされたゴングが会場内に響いていく。締め続ける美奈子をレフリーが乙羽から引き離していくと、美奈子もそのままマットに横たわっていった
 
「美奈子ちゃん!」
 
「乙羽さん!」
 
ゴングを聞いた春菜と寛子がリングに入っていくと、倒れる美奈子と乙羽に駆け寄っていく。しかし全ての力も使い果たした2人は完全に意識を失っていた。2人の呼びかけにも応じない2人はリングドクターに診られ担架で乗せられてリングを後にする。そして退場する2人を称えるかの様に観客からは大きな拍手が送られていった。
 
 
 
2人が医務室へと運ばれ診察を受けている間、春菜と寛子は心配しながら2人を待っていた。
 
「…全く…凄い執念よね…あれじゃ殆ど喧嘩みたいものじゃない。」
 
半ば呆れた様に言う春菜に、寛子が答える。
 
「それだけ意地があったんだよ、乙羽さんにも戸向さんにも。お互いが絶対に負けられない、負けたくないっていう思いがね。殆ど思いの戦いだったんじゃないかな。私達には分からない様な思いが2人にはあったんだよ。」
 
「私達には分からない思い、か。そう言えば美奈子ちゃん、乙羽さんに勝てば自分の中で何かが変わるかもしれないって言ってた。もしかしたら美奈子ちゃん、乙羽さんだけじゃ無くて自分に対する意地もあったのかもしれないな。」
 
「自分に対する…意地?」
 
「そう。美奈子ちゃん、この前の試合で自分がした事を情けないって言ってた。強くなったように見えて、本当は全然強くなってなかった、それが情けないって。だからこそその情けなさを振り払いたかったんだと思う。その為にもう一度乙羽さんと戦って勝つ必要があったんじゃないかな。」
 
「…それはおそららく、乙羽さんも同じじゃないのかな。乙羽さん、この前の試合で脅えて逃げてた事を凄く後悔してた。だからこそ、今度はちゃんと戸向さんと戦いたいって思ったんじゃないかな。どんな展開になっても最後まで戦うって、心に決めてたんだよ。」
 
「そっか…凄いな、2人共。私達には真似出来ることじゃないわね。」
 
「でも私達だってもしかしたらいつか乙羽さんと戸向さんみたいになるかも知れないわよ。最も、もうなってるのかも知れないけどね。」
 
そう言って微笑む2人。その時医務室のドアが開き、中から体をタオルで覆った美奈子が出てきた。
 
「美奈子ちゃん!体の方は大丈夫なの!?」
 
そう言って心配する春菜に美奈子は微笑みながら答える。
 
「…うん、大丈夫。疲れが一気に来て気を失ってただけだって。入院の必要もないってさ。」
 
「そっか…良かった。あ、まだ言ってなかったね。おめでとう、美奈子ちゃん。」
 
「…ありがとう、春菜ちゃん。春菜ちゃんが助けてくれたお陰よ。私がピンチになった時、春菜ちゃんの声が私を助けてくれたんだもの。」
 
その言葉に、春菜の目に少し涙が浮かんでいた事に美奈子は気付いた。
 
「ちょっと…何泣きそうになってるのよ春菜ちゃん…」
 
「だって…この前の試合で私…美奈子ちゃんを助けてあげられなかったから…今日は美奈子ちゃんの役に立てたんだって思って…。」
 
「もう…分かったわよ。分かったから泣かないの。言ったでしょ。春菜ちゃんが力及ばなかった分まで私が頑張るって。私はその通りに頑張っただけよ。」
 
そう言って春菜を慰める美奈子は、それを見ていた寛子にも声を掛けていく。
 
「寛子ちゃん…乙羽さんの事なら心配ないわよ。私と同じで、ただ気を失っただけだそうだからさ。」
 
その言葉に、寛子もホッと胸をなでおろした。
 
「そうですか…良かった…。」
 
「寛子ちゃん…ゴメンね。あなたの先輩にまたひどい事しちゃったね。」
 
謝る美奈子に、寛子が答える。
 
「…気にしないで下さい。何があってもリングの上では恨みっこ無しだって乙羽さんも言ってましたから。戸向さん、おめでとうございます。」
 
寛子の祝福に、美奈子も照れながら答える。
 
「ありがとう…寛子ちゃん。早く乙羽さんのところに行ってあげて。ちゃんと先輩についてないとダメよ。」
 
「…はい。ありがとう。戸向さん。」
 
そう言って寛子は医務室の中に入っていった。そして美奈子は春菜に言った。
 
「春菜ちゃん、私シャワー浴びてくるわ。少しだけ待っててくれる?」
 
「分かった。ここで待ってる。でもあんまり待たせないでよね。」
 
 
一方、医務室の中の乙羽もようやく意識を取り戻していた。丁度そこに寛子が入ってきた。
 
「乙羽さん…!良かった…」
 
「寛子ちゃん…ゴメンね。心配かけて。私、負けちゃったみたい。」
 
「いいえ…気にしないで下さい。体の方も気を失っただけだって戸向さんが言ってましたよ。」
 
「そっか…それで、美奈子ちゃんは?」
 
「先に意識が戻って、外で春菜ちゃんと話してますよ。戸向さんも、何とも無いみたいです。」
 
それを聞くと、乙羽は体を起こして立ち上がろうとする。
 
「乙羽さん!まだ無理しない方が…」
 
「大丈夫。私、美奈子ちゃんに話があるの。ちょっと美奈子ちゃんに会って来るね。」
 
そう言うと、露わになったままのバストをタオルで覆い立ち上がる乙羽。
 
「分かりました。でもあまり無理しないで下さいね。」
 
「分かってるって。心配する事無いよ。」
 
 
一方、美奈子はシャワーを浴びながら傷だらけの体を見ていた。乙羽と殴りあった顔は赤みを帯び、自慢のバストも所々黒く変色していた。
 
(イテテッ…全く…思いっきり殴ってくれたんだから…こりゃ治るのには少し時間掛かるかな?)
 
シャワーを浴び終わった美奈子がシャワールームから出ようとすると、丁度そこに乙羽が入ってきた。暫し無言のまま見つめ合う2人だが、程無くしてどちらからとも無く笑みがこぼれた。
 
「…オッパイ位隠したら?パンティ一枚なんてみっとも無いわよ。」
 
「…こんな格好にしたのは誰だっけ?それに乙羽さんだってオッパイ丸出しのクセに。」
 
そう言って美奈子が乙羽のバストを隠しているタオルをずらすと、乙羽のバストも露わになっていった。そして美奈子はいたずらっ子の様な笑みを浮かべるとそのバストをおもむろに揉み始めた。
 
「きゃっ…もう…何するのよ!」
 
「やっぱり大き〜い…それにお客さんが言っていた通り柔らか〜い。」
 
「も〜。やめてってば美奈子ちゃん!」
 
しかし美奈子は揉むのを止めようとしない。それに揉まれる乙羽の顔にも怒りでは無く笑みが浮かんでいた。
 
「私…こうやって一度乙羽さんのオッパイ揉んでみたかったのよね〜。」
 
「もう!それなら私だって〜!」
 
そう言うと、乙羽も負けじと美奈子のバストに手を伸ばて揉み始めた。
 
「きゃっ!」
 
「凄〜い。昔と全然変わってない。寧ろ大きくなってる感じよね〜。ホントお餅みたい。」
 
「や〜ん!くすぐった〜い!」
 
まるで子供の様にじゃれ合いながら互いのバストを揉みあう2人。すると美奈子の口から次第に喘ぐ様な声が出始めた。
 
「ああん…ああっ…」
 
「あれ〜美奈子ちゃん感じてるの〜?そういえば何か乳首が立ってきてるみた〜い。」
 
「この〜ぉ!負けないわよ〜!だったら乙羽さんも感じさせてやる〜!」
 
そう言うと、美奈子は乙羽のバストを捏ね繰り回していく。すると乙羽も次第に喘ぎ始めた。
 
「ああん…あはんっ…」
 
「へぇ〜乙羽さんもそういう風な声出すんだ。ふ〜ん。」
 
「もう!やったわね〜。だったらこうだぁ〜!」
 
そう言うと乙羽はバストを揉む片手を美奈子の股間に当てていった。
 
「やっ…ちょっと…何処触ってんのよ〜!」
 
「試合中に私に同じ事したでしょ?そのお返しよ〜。」
 
そう言うと、乙羽は美奈子の股間にも刺激を与え始めていった。
 
「やん…そこはやめて〜。」
 
「だったらギブする〜?それなら離してあげるわよ〜。」
 
「ギブするくらいなら…こうだぁ〜っ!」
 
遂には美奈子も乙羽の股間に手を当てて刺激を与え始めていく。
 
「ほらほらっ…意地張ってるとホントに感じちゃうわよ!早いトコギブしなさいよ〜!」
 
「い〜や〜!絶対にギブしないも〜ん!!」
 
お互い試合の時の様に意地になっていく2人だが、やはりこの手の攻めに関しては美奈子に分があったのか(?)、遂に乙羽が根を上げた。
 
「美奈子ちゃ〜ん!手離して〜!このままだと変になっちゃう〜!」
 
「え、それってギブ?ギブアップって事?じゃあちゃんとギブって言ってよね〜!」
 
そう美奈子が意地悪く言っていくと乙羽が堪らず手を離してギブアップしていく。
 
「ギブっ!ギブアップします〜!もう許して〜っ!!」
 
乙羽がそう懇願していくと、美奈子もようやく手を離した。
 
「カンカンカンカン…また私の勝ち〜!」
 
美奈子は堪らずしゃがみ込んだ乙羽にそう言った。
 
「感じちゃった?」
 
「も〜!私こんな攻め慣れてないんだから〜手加減してよ〜。」
 
「だって〜乙羽さんのオッパイ見ると思いっきり揉みたくなるんだもん。」
 
そう言って2人はまた微笑み合った。そして立ち上がった乙羽は美奈子を抱き寄せた。
 
「これでホントのホントにおあいこだね。一勝一敗一分け。」
 
「ううん。私の二勝一敗一分けよ。だって私今も勝ったもん。」
 
「え〜今のは無し〜。ノーカウント!」
 
「だーめ!今のも含めるの!悔しかったら同じ勝負で私に勝つのね〜。」
 
「もう!だったらいつか私も腕を磨いて美奈子ちゃんにギブって言わせてやる〜。」
 
「それはいいけどさ、とりあえずオッパイが当たって苦しいからそろそろ離れてよ〜!」
 
「あっ…ゴメンゴメン!」
 
そう言って美奈子から離れる乙羽は、美奈子の目に涙が浮かんでいるのに気が付いた。
 
「美奈子ちゃん…泣いてるの?」
 
その言葉に、美奈子は浮かんだ涙を拭いながら答えた。
 
「だって…私、ようやく乙羽さんとまともに戦えて…それで勝てたって思ったら…何か凄く嬉しくて…」
 
「私だって…嬉しかったよ。美奈子ちゃんが必死になって向かってくるのを見たら、私も負けたくないって思って頑張れた。結果的には負けちゃったけど、こんな風に熱い気持ちで戦えたのってすごく久しぶりの事よ。ありがと。」
 
2人はまた顔を見合わせて笑った。
 
「美奈子ちゃん…おめでとう。強くなったね。これは私からのお祝い。」
 
そう言うと、乙羽は美奈子の唇にキスをした。突然の出来事に顔を赤らめる美奈子。
 
「…ありがとう、乙羽さん。こうやって、また勝負してくれて…嬉しかった。」
 
しかし礼を言う美奈子に、乙羽が付け加えた。
 
「でも、今度は私が美奈子ちゃんに勝負を挑む番よ。私もこう見えて結構執念深いんだから。いつかリベンジさせてもらうわよ。」
 
顔を赤らめていた美奈子も、乙羽をからかう様に言った。
 
「リベンジって、プロレスマッチ?それとも…」
 
「どんな形式でも!」
 
思わずムキになる乙羽に、美奈子は今度は声を立てて笑うのであった。その姿に乙羽もつられて笑みがこぼれた。
 
「あっ…いけない…春菜ちゃんの事待たせてるんだった!も〜多分凄い怒ってるよ〜乙羽さんのせいだから一緒に謝ってよね!」
 
焦る美奈子の姿が、乙羽にはたまらなく可笑しかった。
 
「分かった分かった。一緒に謝ってあげるから、慌てないの!
 
 
 
そして、それから数ヵ月後。とあるジムのリングの上でスパーリングを展開する2人のアイドルがいた。そしてそれを見守る者が一人。
 
「おりゃぁぁぁぁっ…」
 
その気勢と共に蹴りを繰り出すのは春菜。そしてその蹴りをガードし、逆に踏み込んでパンチを狙うのは寛子である。
 
「何々…人気アイドル乙羽、今夏には結婚か…仕事も恋も順調って事か…」
 
手にした週刊誌に目を通しながらそう呟くのは美奈子である。
 
「ちょっと!週刊誌に気取られてないでちゃんと見ててアドバイスしてくれないと!」
 
「ゴメンゴメン!ちょっと気になる記事があってさ…」
 
謝る美奈子を春菜がリングの上から睨みつける。
 
「全く…週刊誌の記事と後輩のトレーニングとどっちが大事なのかしら…」
 
「まあまあ。私達が無理にお願いして付き合ってもらってるんだからさ。そう怒らない。」
 
むくれる春菜に寛子が宥めるように言っていく。そう、春菜と寛子は今日一緒にトレーニングをしようという事でジムに来ていた。先日の試合以来仲良くなった2人はその後メールのやり取りをしたり、一緒に出かけたりする様になっていた。そして今日のトレーニングには美奈子と乙羽にも付き合って欲しいと思った春菜と寛子は2人にそう願い出ていた。無論、美奈子と乙羽もそれを了承したのだが、乙羽だけ仕事の都合で途中から合流する事になっていた。
 
「ゴメンね2人共。今度はちゃんと見てるから、さあ続けて。」
 
「そう言えば、乙羽さんはあとどの位で来れそうだって?」
 
「あ、うん。さっきメール来て仕事終わって今コッチに向かってるってさ。」
 
「そっか。じゃあ4人揃ったらご飯でも食べに行く?」
 
「ちょっと。今日はトレーニングに付き合って欲しいって理由で呼んだんじゃないっけ?」
 
「それはそうだけどさ…何かお腹空いて来ちゃって…」
 
笑いながらそう言う春菜に、寛子がたしなめる様に言う。
 
「お腹空いたって…まだ空く程トレーニングしてないでしょ。さ、続きしましょ!」
 
「はーい。全く…寛子ちゃんは融通利かないんだから。」
 
その光景に美奈子は可笑しくなって笑った。
 
(あの2人、結構良いコンビね。)
 
そして春菜と寛子はリング上で向き合うと、スパーリングを再開していく。そしてそれから程無くしてジムのドアが開いた。
 
「ゴメン!すっかり遅くなっちゃった…」
 
そう言いながら入ってきたのは乙羽であった。それを見た美奈子は一瞬、乙羽を睨んだ。
 
「もう!遅い!待ってたのよ!」
 
「ゴメン!仕事長引いちゃって…」
 
謝る乙羽に、美奈子は今度は微笑みながら答える。
 
「分かってるって。ほら、寛子ちゃん頑張ってるわよ。」
 
「うん。でも一緒にトレーニングするなんて、2人共随分仲良くなったものね。最初はあんなにいがみ合ってのに。」
 
「それはさ…ほら、一回大喧嘩した後で凄く仲良くなる事があるじゃない。2人共一度思いっきり戦って分かり合ったんじゃない?私達と同じね。」
 
「そっか。でも…私達は三回も大喧嘩してようやくだったけどね。」
 
「三回か…考えてみれば、凄い大喧嘩だったよね。大勢の人の前でオッパイ丸出しにして、挙句の果てには素っ裸になって殴り合いまでしてさ。」
 
「ホント。でも今思い返してみると、結構良い思い出になったかもね。」
 
2人はそう言って笑い合った。
 
「出来れば乙羽さんとは、これからもずっと喧嘩してたいな…何度喧嘩しても…最後には笑い合える様な、喧嘩友達でさ。」
 
「喧嘩友達か…私達には一番しっくりくる関係かもね。良いわよ。美奈子ちゃんが相手なら、いつだって喧嘩してあげるわよ。」
 
その言葉に微笑む美奈子だったが、ふと寂しそうな表情を浮かべながら言った。
 
「でも…乙羽さん、もうあまりリングに上がる機会も無くなるんじゃないの?」
 
「えっ?それどういう事?」
 
すると美奈子は、先程まで目を通していた週刊誌の記事を乙羽に見せた。
 
「これ!もうすぐ結婚するんじゃないの?何か順調みたいだし。」
 
それを見た乙羽は恥ずかしそうに週刊誌を取り上げて言った。
 
「ちょっとぉ!鵜呑みにしないで!確かに仕事ではお世話になってる人だけど、結婚なんて…」
 
「本当〜?いきなり『人気アイドル乙羽、結婚と共に芸能界引退、専業主婦に』とか新聞に出ちゃったりして〜!せめて結婚式には呼んでよね〜。スピーチ位は引き受けるからさ。」
 
「も〜!勝手に話を進めないの〜!!」
 
ムキになる乙羽の姿が、美奈子にはたまらなく可笑しかった。そして、乙羽が言葉を続けた。
 
「それにさ…もし私が結婚して、しかも子供が出来たとしても、もしかしたら私はリングに上がり続ける事になるかも知れない。末広涼子さんとか、沖菜恵さんとか、雛形明子さんとか、結婚してもリングに上がってる人はいる訳だし。それに子供を持つと、女性はすごく強くなるって言うじゃない?もし私が母親になったら、その強さを真っ先に美奈子ちゃんに見せてあげる。」
 
「その前に結婚でしょ!話が飛びすぎてるんだから〜。」
 
そうツッコミを入れる美奈子に、乙羽はムッとして言い返した。
 
「もう!元々は美奈子ちゃんが乗せるからからでしょ〜!!」
 
しかしその時、リングの上から綺麗にハモった二つの声が聞こえてきた。
 
「うるさーい!!!!!いい加減にしろーーーーー!」
 
その声に驚いて2人がリングを見ると、春菜と寛子が怒りの視線がそこにあった。
 
「頼んでる身で言いたくはないけどさ、もうちょい静かにしてくれない!?」
 
「そうですよ!こっちが真面目にやってるのに、これじゃ集中出来ません!」
 
「ゴメン…春菜ちゃん、寛子ちゃん。」
 
バツが悪そうに謝る乙羽と美奈子に、春菜と寛子は仕方無いといった感じの表情を浮かべた。
 
「言い合う元気があるならさ、美奈子ちゃんと乙羽さんもスパーリングしたら?」
 
春菜の言葉に、寛子も続く。
 
「そうですよ。喧嘩友達なら喧嘩友達らしく、リングの上で勝負したらどうですか?」
 
「寛子ちゃん…聞いてたの?」
 
「…はい。実は私も春菜ちゃんもずっと聞いてたんです。ね?」
 
「そう。2人がどんな話してるのか興味深くてね。」
 
春菜も寛子も、笑って答えた。
 
「何よ〜。2人とも真面目にスパーリングしてたんじゃなかったの〜。」
 
「まあまあ。それよりさ美奈子ちゃん、折角2人が言ってくれてる事だし、私達もスパーリングしましょ。良いでしょ?」
 
その乙羽の提案に、美奈子は少し間を置いて答えた。
 
「…いいわよ。受けて立とうじゃない。」
 
そして、程無くしてリング上ではスポーツビキニの上からTシャツを羽織った美奈子と乙羽が準備運動とばかりに体を動かしていた。その姿を春菜と寛子が見守っている。
 
「何かさ…戸向さんと乙羽さんを見てると、喧嘩する程仲が良いってのがホントだってのが分かる気がするな。」
 
「喧嘩友達なんだから、当然じゃない。それにあの2人の喧嘩って、結構見物なのよね。コッチの想像を超えた事やってくれるから。」
 
春菜と寛子には、美奈子と乙羽の言っていた『喧嘩友達』と言う関係が羨ましく思えている様であった。
 
「美奈子ちゃん、乙羽さん、準備は良い?」
 
「良いわよ。いつでもOKよ。」
 
そしてリング中央で向かい合う美奈子と乙羽。
 
「スパーリングとは言え、手加減する気は無いからね。思う存分喧嘩しましょ。」
 
「臨むところよ。この前の借りもあるしね。簡単にギブアップしたら許さないわよ。」
 
リング上でお互いの視線を激しくぶつけ合う2人を寛子と春菜が応援する。
 
「乙羽さん、頑張って!」
 
「美奈子ちゃん!負けんじゃないわよ!」
 
そして美奈子と乙羽がそれぞれのコーナーに戻ると、春菜の手でゴングが打ち鳴らされていった。
 
「カァーンッ!」
 
2人はコーナーから勢い良く飛び出していく。
 
「行くわよ!」
 
「掛かってきな!」
 
飛び出した2人はガッチリと組み合って、微笑んだ。
 
 
 
-「因縁の死闘」〜「決戦の刻(とき)」シリーズ-(完)
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