谷邑奈南の受難 其の二

 現在は新世代セクシーディーバと呼ばれる谷邑奈南にも、デビューまでの辛い時期はあった。その中には、今思い出しても怒りが噴き上がるエピソードが幾つかある。
 これは、奈南の振り返りたくもない回想録の一つである。

 奈南が今度オーディションを受けようとする会社は、応募書類の一つに健康診断書が必要だった。奈南は近くにある個人病院に行き、健康診断を受けることにした。

 奈南が訪れた個人病院は外壁にヒビが入り、外装も内装もボロく、奈南の他には患者が誰もいなかった。奈南も、健康診断の料金が安いという条件がなければこんな古臭い病院に来ることはなかっただろう。
「健康診断ですか? どのコースを受けます?」
 奈南は受付の男性から説明された、身体測定と検尿の後レントゲンを取り、最後に問診だけで終わるという一番簡単なものを希望した。

 身体測定と検尿を終えた奈南はレントゲン室へと案内された。
 カーテンの奥でTシャツ姿になってブラを外し、次は機械の前に立つ。ノーブラなのが気恥ずかしい。
「はーい、このままの状態で動かないでくださいね」
 男のレントゲン技師(さっきの受付と同一人物だった)が、奈南の背中をぐいぐいと押してから離れる。そのせいで機械に潰されたバストが痛い。
(そこまでしなくてもいいじゃない)
 思わずむっとなった奈南だったが、息を吸って止め、撮影を待った。

「谷邑さん、胸に影があるんですよ。診療費はいらないので、MRI(※磁気を利用し、人体を輪切り状に撮影できる)を取りましょう」
「え? 突然そんなこと言われても」
 いきなりの医者の言葉に、動揺するなというほうが無理だろう。
「下手したら手術が必要になるかもしれないんですよ。さ、あちらで取ってきてください」
 若い医者は先程のレントゲン技師を呼び、奈南をMRI室へと追いやった。

「それじゃ、下着以外は全部脱いでくださいね。あ、ブラは外してくださいよ。準備できたらこれ着てください」
 検査服に着替えさせられた後、奈南は検査薬を飲まされた。
「それじゃ、動かないでください」
 奈南は気をつけの状態で台に乗せられ、まるで棺桶を思わせる機械の中へ少しずつ少しずつ呑み込まれていった。

「はーい、お疲れ様でした」
 漸く解放されたものの、二十分近くも機械の中に詰め込まれ、奈南は精神的に疲れていた。ブラを着けた後、少しふらつくような感じを覚えながら、再び診療室へと戻っていった。

「ここです。この辺りに影があるんですが、わかりますか?」
 医者から見せられたMRI写真だったが、正直どこが悪いのかまったくわからない。
「では、今から触診します。服を脱いでください」
「・・・はい? 触診って、触るんですか!? 私の胸を!?」
「病巣を探すには、触診が一番なんです。それとも、私を疑っているんですか?」
 医者から強く出られれば、医学知識がない奈南が不安になってもしょうがなかった。仕方なく検査服の前をはだけ、ブラを外す。
「さ、手をどけてください。そうしないと見えないし、触れないですから」
 幾ら医者の言うこととはいえ、男性に乳房を晒すのは恥ずかしい。躊躇する奈南だったが、医者から再三促され、諦めて両手をバストからどけた。恥ずかしさに目を背けた奈南は、医者が生唾を飲んだことにも気づかなかった。
「そ、それでは触診しますよ。動かないように」
 裏返った声で奈南に注意し、医者は奈南の乳房を両手で掴んだ。
「ふむふむ、ほぉ〜なるほど。うんうん」
 医者は何事かを呟きながら、奈南の乳房を揉む。その手つきはとても医療行為には思えなかった。
「せ、先生、もうわかったんじゃないですか?」
「いやいや、まだまだ。触診はね、触ってすぐわかるものでもないんだよ」
 鼻息も荒く、医者は乳房を揉み続ける。それだけでは済まず、医者の指は乳首までも弄りだした。
「やめてください!」
 これには奈南も医者の手を乱暴に振り払う。検査服の前を閉じ、医者を睨む。
「どう考えても、今のは検査じゃないでしょう? 職権乱用よ! 弁護士に・・・いえ、警察を呼ぶわ。警察を呼んで、から、そ、れ、か・・・ら・・・」
 奈南は、椅子から床へゆっくりと倒れていった。

「やっと薬が効いてきたね。普通はMRIの中で寝てしまうのに」
 奈南がMRI検査の前に飲まされたのは検査薬などではなく、実は睡眠薬だった。
「それじゃ、全身をじっくりと検査するとしよう」
 医者は何かを準備した後でレントゲン技師に手伝わせ、奈南をベッドに横たえた。検査服の前を開け、先程まで触っていた乳房を再び露わにする。
「よし、スイッチを入れて、と」
 医者は準備したビデオカメラの電源を入れて撮影モードにすると、奈南のバストに手を伸ばす。
「やはり大きいな。しかも横たわっているのに形が崩れてない」
 医者は大きさを確かめるように奈南の巨乳を撫で回す。
「これくらい大きいと、Fカップ、いや、Gカップかな?」
 暫く撫で回していた医者だったが、柔らかさに堪えられなくなったようでGカップバストを鷲掴みにする。
「やっぱり凄いな。大きいだけじゃなくて感触もいい。ずっと触ってたいくらいだよ」
 乱暴な手つきで巨乳を揉み続ける医者だったが、奈南の身体は寝ていながらも反応し、少しずつ乳首を固くしていく。
「ふむふむ、寝ていても乳首は固くなる、と。感度もいいようだ」
 医者は乳首を摘み、暫く弄った後押し潰すようにして刺激する。直接弄られることで奈南の乳首も硬度を増し、更に高く立ち上がっていく。

 医者の乳房責めは五分以上に渡った。それまでもぞもぞしながら黙って見ているだけだったレントゲン技師も、とうとう口を挟む。
「せ、先生、僕も触って、じゃない、触診してもいいですか?」
「そうだね、君にもいい勉強になるだろう。私はこれから下を調べるから、君は胸を調べなさい」
「は、はい! ありがとうございます!」
 レントゲン技師は奈南の巨乳に飛びつくようにして捏ね回し、その感触を堪能する。医者は下着の上から奈南の秘部に手を這わせ、秘裂に沿って指を前後させる。
「せ、先生、なんというか、柔らかいのに指が弾き返されます!」
「うむ、こっちも下着越しだっていうのに柔らかい。もっときちんと検査する必要があるね」
「じゃあ、僕はこっちを一生懸命検査します!」
 レントゲン技師は嬉しそうに奈南のGカップバストを揉み、医者は更に大胆に秘部を触っていった。

「それじゃ、そろそろ目視もしないとね」
 医者が奈南のパンティの両サイドを掴み、ゆっくりと脱がしていく。股間の翳りも露わとなり、男達の視線も吸いつけられる。どちらともなく生唾を飲み込み、気まずくなって空咳をする。
「よ、よし、それじゃ性器の具合を調べるぞ」
 パンティを足から抜いた医者は奈南の足を持ち、恐る恐る広げていく。薬で眠る奈南はなんの抵抗もなく、あっさりと股を開く。医者もレントゲン技師も、奈南の露わになった秘部に目を奪われる。
「・・・いかんいかん、ただ見ているだけだと検査にならない。よし、触診を開始する」
 医者はまだ閉じている奈南の花弁を擦り、感触を確かめる。
「さすがにまだ愛液は出ないか」
「せ、先生、僕もそっちを触りたいです」
「まだ駄目だよ。ほら、胸部の触診を続けて」
 医者はレントゲン技師の要求を退け、自分だけ秘部を弄り続ける。
「先生ずるいんだからなぁ。でも、こっちもかなり気持ちいいから我慢しますけど」
 レントゲン技師は口を尖らせながらも奈南の巨乳を揉み続ける。
「後で代わってあげるから、そんなこと言わない。ん? 少し濡れてきたか」
 男達の乱暴な愛撫にも応え、奈南の花びらが綻び、潤みを湛え始めていた。それを確認した医者はベルトを外し、ズボンを下ろす。
「そ、それでは、私の検査棒で谷邑さんの性器を検査する。これは医療行為だからね、わかってるね?」
 医者の自己正当化の発言に、レントゲン技師も食いつく。
「その前に先生、僕にも谷邑さんの性器を触診させてください!」
「・・・そうだな。私が二回出したら交代してもいいぞ」
「二回ですか・・・あの、中には・・・」
「そんな危ないことはしないよ! いいから、少し我慢するんだ。こんな美人、二度と抱けないかもしれないんだから」
 医者の言葉に、レントゲン技師も渋々引き下がる。
「ビデオはセットしてるね? よ、よし、それじゃ・・・」
 奈南の腰を持って自分のモノを埋め込もうとした医者だったが、突然下腹部を襲った痛みに絶叫を放つ。
「人が寝てる間に色々してくれたみたいやな・・・センセィ、寝てる女の子に厭らしいことしようやなんて・・・根性悪いで!」
 地の関西弁で話し掛けながら、そのまま更に握り込む。医者は口から泡を吹くとベッドから崩れ落ち、床の上で痙攣する。
「あんたも同罪や! 覚悟せい!」
 ベッドから降り、レントゲン技師に殴りかかる。所詮素人、あっさり殴り倒せると思ったのだが・・・
「!?」
「危ないなぁ。乱暴はよそうよ」
 レントゲン技師は奈南の右ストレートを掌で受け止め、涼しげな顔を崩さない。
「ん? もしかして青っちろいモヤシ野郎ならあっさり勝てる、とか思った?」
「くっ」
 距離を取り、技師の顔を睨む。
「恐い顔しないでよ。美人が台無しだよ? 僕ね、実はこう見えてボクシングやってるんだ。今位のパンチなら余裕だね」
(予想外やったわ。しかも、逃げるにしてもこんな格好じゃ・・・)
 ブラは脱衣カゴの中でパンティはベッドの上にあり、加えて出口は技師の後ろ。奈南は覚悟を決め、ファイティングポーズを取ってステップを踏む。
「凄いね、胸がぽよんぽよん跳ねてるよ」
「うっさいわ!」
 牽制のジャブも届かない。それならばと放ったローキックも軽いバックステップでかわされ、蹴り足を戻したところで
「えぐっ!」
 ボディを打たれ、膝から崩れる。
「大丈夫かい? ほら、心臓マッサージしてあげる」
 技師は奈南の背後に回り、脇の下から手を入れて乳房を揉む。
「な、なにが心臓マッサージや!」
 後ろに肘を入れようとしたときには、既にそこにはいない。
「人の親切を無にしないでよ。ま、また触ればいい話だけどね」
「ふざけるなぁっ!」
 怒りのため大振りになったパンチをかわされ、乳首を弾かれる。
「んぁっ!」
「ふふっ、いい声で鳴くんだね。今から君を抱くのが楽しみになってきた」
「・・・あんたなんかに抱かれてたまるかっ!」
 渾身のハイキックも、技師の軽いスウェーでかわされてしまう。
「そんなに足を上げていいのかい? 丸見えだよ」
「!」
 自分が裸に検査服を羽織っただけの格好だったことを思い出し、顔を真っ赤に染めて股間を隠す奈南。そこで生まれた隙に技師のアッパーを食らい、ベッドの上に倒れこむ。
「おっと、強くし過ぎたかな? ほーら、気付けの電気アンマ」
「あぅぅぅっ! や、やめぇっ!」
 技師は奈南の両足首を持ち、股間を踏みつけて振動を送る。
「やめえ? それって命令? 命令は聞けないよ」
 技師はなおも股間へ振動を送り続ける。
「うるさい、やめぇ言うたらやめ・・・あぁぁっ! だ、駄目やて、そんなんしたら駄目ぇっ!」
「命令は聞かないって言ってるだろ? やめて欲しければお願いしなきゃ」
「だ、誰があんたなんかに・・・うぁぁっ!」
 奈南の態度に、技師の電気アンマが強くなる。
「いやっ、あぅっ、はぅぁぁっ!」
「これだけやっても諦めないんだ。君ってマゾだね?」
「誰がマゾや・・・あぅぅっ!」
 容赦なく女の急所を責められ、奈南の口から悲鳴が洩れる。
「あぁぁぁっ! も、もうやめてぇっ! お願いやぁっ!」
 奈南の「お願い」を聞いた技師は、漸く電気アンマをやめ、両足を離す。奈南はぐたりとベッドに横たわり、技師はにやりと笑みを零す。
「やっと諦めた? それじゃ、君の身体を頂くよ」
 奈南に圧し掛かろうとした技師だったが、奈南の太ももが首に巻きつき、三角締めに極められる。
「ボクサーやいうのを最初にばらしたのは失敗やったな。寝技は苦手やろ!」
「うぐぇ・・・」
 逃れようともがく技師だったが、がっちりと極まった三角締めから逃れるどころか、更に絞め上げられていく。最後には口から泡を吹き、脱力する。
 技師が完全に落ちたことを確認すると、奈南はブラとパンティを身に着け、私服に着替えた。
 そして医者と技師を自分が着ていた検査服で縛り上げ、警察へと連絡し、自分は面倒を恐れて(羞恥の経験を聞かれることが嫌で)姿を消した。自分を撮影したと思われるテープは持って、であるが。
「ったく、とんだ健康診断やったわ!」
 今度はきちんとした病院で健康診断を受けよう、そう決めて、家路を急いだ。

 後日、この病院に患者への性的暴行、並びに不正受給の疑いで警察の捜査が入った。病院から逃げ出していた医者は自宅で捕まったものの、どうやら技師は逃げおおせたらしい。
 医者の自宅からは、医者自身が撮影したと思われる女性のレイプビデオが多数見つかった。病院に訪れた若い女性に睡眠薬を飲ませて撮影し、そのテープを闇市場に流すことで利益を得ていたらしい。
「医者は捕まったからまあいいとしても・・・あんのクソ技師、今度見かけたらボコボコにするだけじゃ済まへんからな」
 朝食のパンをパクつきながら、奈南は今日のオーディションへと気持ちを切り替えていった。

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