梨沙は学校の帰り、中年の男に呼び止められた。

「君が吉塚梨沙さんだね。ちょっと話をきいてほしいのだが・・・・。」

 とある名のある大手プロダクションの専務という肩書きの名刺をみせながらその男は言った。最近の悪夢
のようなできごともあって最初は半信半疑になりながらも、肩書きを信じて話を聞いていくうちに、アイド
ルという夢が現実味を帯びていくのを感じながら、その男についていってみる決心を固めた。

 連れて行かれたのは大手プロダクション直営のスタジオだった。言われるがままに着替え、写真に撮られ
ながら梨沙は自分の夢がかなえられていく実感を味わっていた。

 男は紳士的であり、ビジネスライクであるとも言えた。次回の約束をし、スタジオから開放されて、梨沙
は何枚かもらった自分のポラロイドの写真、夢の中で変身したかのような自分の写真を見ながら、それが現
実であることを何度も確かめていた。

 *  *  *  *  *  *  *  *  

 少し時間をさかのぼったある日、例のビデオ製作会社の一室に紳士的な中年の男はいた。男は自分の名刺
を配り一通りの自己紹介を終えるとやおら話を切り出した。

「実はひとつ提案があるんですが、おたくの例のドミネーションビデオにでている娘、吉塚梨沙といいまし
たっけ、私はピンときました。彼女は大化けする可能性があります。そこでですが、ひとつ私共と組んでみ
ませんか。」

「具体的にはどのような提案ですが?」

「私共で彼女をグラビアアイドルとしてデビューさせます。おたくの方では引き続き彼女を使ってドミネー
ションビデオを製作してください。そこで私共のほうで『かくかくしかじかのアイドルがキャットファイト
に出ている』というような噂をネットを中心に流します。その辺は私共のほうでうまいこと手配させていた
だきます。必ずやおたくのビデオは大きな話題になるはずです。」

「我々にとっておいしすぎる話に聞こえますが、そちらのメリットは?」

「もちろん私共にとっても商売です。ご存知の通り私共ではゴシップ系の雑誌や写真週刊誌を出しておりま
す。こちらのほうでも大きく取り上げていきたいと考えております。しょせんアイドルとしてはどんなに金
をかけてもどう転ぶかはわかりません。それより話題づくりで総合的に儲けていこうと考えています。」

「なるほど、その話ぜひこちらとしてもすすめさせていただきたいと思います。・・・・・・」

 もちろんこの話は梨沙の知るところではなかった。

*  *  *  *  *  *  *  *  *

 とある日、梨沙はいつものように呼び出された。

「さあ、また仕事だ。はやく着替えて準備をしてきなさい。」

 厭も応もなかった。梨沙はしかたなく例のスケスケ極小紐ビキニに着替えると、ガウンをはおり、不安に
おののきながら準備運動を始めた。

 しばらくして呼び出され、梨沙は足取り重くリングの設けられた撮影スタジオに向かった。そして言われ
るがままにいくつかのシーンの撮影を終えると、リングのコーナーで対戦相手を待った。

「今日の相手はこれが初めての試合だ。つまり梨沙ちゃん、君が先輩になる。せいぜいお手柔らかに相手し
てやってくれ。もちろん君がヒロインで相手が悪役という設定だ。今日は思う存分かっこよく見せてやって
くれ。」

 男のそんな言葉に少し気が楽になったのもつかの間、姿を見せた対戦相手を見て慄然となった。

「今日の相手の伊勢田照代だ。」

 紹介されリングに上がってきたのは、なんと身長180p、体重は100kgはあるかという巨漢女だった。短
く刈った金色に染めた髪、剃った眉に細く切れ上がった目、ジーンズ系のコスチュームに身を包んだ姿は経
験はともかく見た目は悪役の女子プロレスラーそのものだった。

「そ・・そんな・・・殺されちゃう・・・・で・・でも・・負けられない・・・」

 コーナーに立ちすくむビキニ姿の小柄な美少女。しかし梨沙は恐怖心を必死に押さえ、闘争心を高めてい
った。

カーーーン!!!

 ゴングがなる。照代が両手を大きく広げて近づいてくる。

「ケッ! なんだい! こんなお子様が相手かい! 馬鹿馬鹿しい! ケッ! ガキのくせに生意気な格好
しやがって!!」

「ガキガキってうるさいわね!このデブ!あんたみたいなブスにとやかく言われる筋合いないわよ!!」

 闘争心に火がついた梨沙も負けてはいない。

「くそ生意気なガキだねえ! ちったあ痛い目にでもあって反省しな!」

 大きな腕を振り回し、梨沙を捕まえようとする照代。梨沙はすばしっこくかいくぐり照代の後ろに回る。
「ほらこっちよ! たいしたことないじゃない、このデブ!」

さすがに4試合目にもなるとリングの上で何とかしないことには自分が痛い目に会うということが身にし
みた為か、梨沙の動きも様になってくる。

「そんなこと言ってられるのも今のうちだけだよ。」

 にやりと笑う照代は再び大きく腕を広げて梨沙を捕まえようとする。しかし相変わらずスローモーな動き
に、梨沙はするりと身をかわし、再び照代の後ろに回る。

「捕まったら最後・・・・何とか素早く動きまわって先制攻撃をしなくては・・・・」

 意を決した梨沙は照代の背後から飛びつき、照代の首にしがみつくと、自分の体重をかけて照代を引きず
り倒そうとした。バランスを失い倒れ落ちる照代の巨体。全体重をかけ引きずり倒しながら巧みに体をひね
りマウントポジションに移行しようとする梨沙。しかし梨沙の思い通りにはならなかった。愚鈍と思われた
巨漢の照代は、実は想像以上のボディコントロールテクニックをもっていた。落下しながらも位置を入れ替
えようとする梨沙の動きを巧みに封じ、結果的に梨沙の身体にのしかかる形でマットに落下した。

「きゃあああああ!!」

 身体を入れ替えるつもりが、逆に100kgもの巨体をもろに受けてマットに押しつぶされる梨沙の悲鳴が響
き渡る。照代は信じられないような身軽さで反動をつけると、仰向けにマットに横たわった状態の梨沙のお
腹をめがけてエルボーを打ち込む。

「あああぐううう・・・・」

 重い衝撃が梨沙の無防備なお腹を襲う。照代は梨沙の髪の毛を掴み引き上げると投げつけるかのように梨
沙の身体をロープへ振り、返ってきた梨沙の首もとへ強烈なラリアートを食らわす。そして吹っ飛ぶように
マットに仰向けに叩きつけられた梨沙のお腹をめがけて、再び全体重をかけたエルボーを打ち込んだ。

「ぐはあっ!!!ああああああん!!!!」

 口から痰を噴出して悶え苦しむ梨沙。照代は再び梨沙を立たせてロープにもたれかかせ、腕をロープに絡
めて固定すると。梨沙のお腹をめがけてパンチの連打を浴びせ掛ける。

ドスッ! バスッ! ドスン! ドスウッ!! バシッ!!

「ああ!・・・ああん!・・・うぐうっ!!・・・・あああ・・・・・・いやあん!!」

「ガキのくせに・・・・そのへそが目障りなんだよ!!!」

「あ・・・ああ・・・お腹が・・・・・ああ・・・・お腹が・・・・」

 照代の大きな拳は、梨沙のちょうどおへその部分ばかり、まるで梨沙の細い身体を突き破るかのように何
発も何発も突き刺さっていく。
 これまでの試合でもお腹は集中的に狙われていた事もあって梨沙もだいぶ腹筋などで鍛えてきたつもりで
あった。が、所詮俄仕込み、激しい攻撃にかなうはずもなく、梨沙の白いお腹は徐々に赤から紫に染まり、
動きが止まっていく。

 ぐったりとロープに寄りかかった状態の梨沙。照代はおもむろに梨沙のビキニブラジャーを掴む。

「ほらほらお嬢ちゃん・・・・あんたそんな貧乳のくせにそんな生意気なビキニなんか着ちゃって・・・・
そんなに見せびらかしたいの?・・・・ガキのくせに露出狂?」

「そ・・・そんな・・・・いや・・・・やめて・・・・」

 しかし照代は梨沙のビキニブラを思いっきり引き千切った。梨沙の小ぶりながら形の良い乳房が露にされ
る。

「い・・・いやああああ・・・・・」

「あらあら、可愛らしいこと。ほんとにお子様だね、・・・・・ケッ・・・くそ生意気な!!」

 照代は怒ったように梨沙の乳房をめがけて重たいパンチの連打を浴びせ掛ける。見る見る間に梨沙の白い
乳房が赤く染まっていく。

「ああああ・・・いやああ・・・おっぱいが・・・・痛い・・・・・痛いよう!!・・・・」

 激しい乳房への集中攻撃に泣き叫ぶ梨沙。照代は梨沙の髪の毛を掴み引き寄せるとコーナーめがけて振り
飛ばす。

「ああう・・・」

 露にされた胸からコーナーバックルに激突し、ぐったりとしなだれかかる梨沙。間髪いれず照代は勢いを
つけて走りこむと梨沙に体当たりをくらわした。

「あああああああ!!!・・・・・」

 100kgの巨漢が直接ぶち当たる衝撃に加えて、固いコーナーバックルがちょうど乳房とお腹のところに食
い込むように突き刺さり、あまりの痛みに半失神状態の梨沙。照代は梨沙の身体を回転させ、今度はリング
の中へ向くように腕をロープに固定すると、再び中央から勢い良く走りこみ、全体重をかけて梨沙に体当た
りを喰らわす。

「ああぐううううっっ!!!!!」

 あまりの激しい衝撃に完全に気を失ってしまった梨沙。照代は貼り付け状態の梨沙の乳房やお腹をめがけ
て、容赦なく張り手やパンチを何発も何発も喰らわした。重い拳が何発も何発も梨沙の裸の身体に突き刺さ
る。

バスッ!! ドスッ!! ズボッ!! ドスウッ!!

「・・・・・・・・・・」

 完全に気を失ったままサンドバッグ状態の梨沙。やがてロープに絡められていた腕が外れると、崩れ落ち
るようにマットに倒れこむ。しかし無情にもゴングはまだならない。照代は梨沙の背中に足を乗せると、勝
ち誇ったかのように腕を上げてポーズをとる。その時、信じられないことに梨沙の頭がゆっくりと上がり始
める。

「こ・・・こんどこそ・・・ま・・負けたくない・・・・」

 精神力だけで必死に立ち上がろうとする梨沙、しかし勝負は無情だった。照代は梨沙のお腹を蹴り上げて
うつ伏せから仰向けにひっくり返すと、自らコーナーへ上り始め、そしてトップロープの上に仁王立ちにな
る。

「・・・・・・・」

 気を失ったままならまだしも、逆に意識を戻したことが梨沙にとって残酷な状況になった。トップロープ
から自分をめがけて降ってくる巨体、避けようにも全く言うことをきかない身体、

「・・・・い・・・いやあああああああ!!!!!!!!」

 巨体が梨沙の小柄な身体を押しつぶす。可愛い顔を歪め、口から泡を吹きながら白目をむいて再び失神す
る梨沙、股間からも液体が流れ出す。

「ケッ! このクソガキがっ!! 汚ねえんだよっ!!」

 照代は梨沙のビキニパンティの左右の紐の結び目を解いた。

「くそっ!何で私があんたみたいなお子様のおもらしの後始末をしなくちゃなんねえんだよ!!」

 そう言うと照代はまるで汚物でも扱うかのように梨沙のビキニパンティを摘み上げ、放り投げた。梨沙の
まだ薄い毛と幼い割れ目があられもない姿で晒される。

「こんなお子様の裸のどこが面白いんだろうねえ・・・」

 照代は梨沙の大事な部分を蹴り上げると、吐き捨てるかのように言いながらリングを降り引き上げる。後
には無残にも失神したままの全裸の梨沙だけが残され、しばらくカメラが回されていたが、やがて担架で運
ばれていった。

*  *  *  *  *  *  *  *  *

「まずは彼女の表の顔の売り出しをかけます。その後、順次例のプロジェクトを進めてまいります。」

「よろしくお願いします。」

 そのような言葉が交わされていることなど、梨沙には知る由もなかった。

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