可憐なる大和撫子、壮絶に散る……
『脱出』(第1話)

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薄暗い部屋で男が少女に話し掛ける。ボロボロのシャツとパンティだけという姿の少女。足枷で拘束されたその
少女は、催眠にでもかかったような虚ろな、しかしどこかすがり付くような表情で男を見つめる。

「お前はここから出たいか? いよいよお前にもここから出るチャンスが巡ってきた。どうだ、出たいか?」

虚ろな表情でうなずく少女。

「今度の試合で勝つこと。それだけがお前がここを出られる条件だ。いいか、次の試合で勝つこと。負けることは
許されない。もし負けたら次のチャンスは当分先、いつになるかはわからない。それまでは再び地獄の日々が続く
ことになるだろう。いいか、勝つことだ。絶対に負けるな。勝つ以外に道はない。」

少女はすがりつくように、きっと目を見張って何度もうなずいた。

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中城沙織 17歳 H151 B80 W55 H83
VS
アンドレア・ロドリゲス 26歳 H185 B102 W78 H99

たった2行だけ書かれた一枚の紙、会場の観客達はこの一枚の紙を手に、そこに記された二人の登場を今や遅し
と待ちつづける。
中央にはスポットライトに照らされたリング、そのリングをテーブルのついたゆったりしたソファーが取り囲み、
見るからに紳士淑女然とした観客がワインやカクテルで喉を潤しながら、思い思いに、しかしどこか人目をはばか
るかのようにくつろいでいる。

やがてスポットライトが会場の一角を照らし出す。歓声の中、アンドレアがゆっくりとリングに向かって歩を進
める。見るからに南米系の堀の深い顔、パーマのあたった褐色の髪。やや長めの黒色のタンクトップにメタリック
グリーンのトランクス、そして黒のリングシューズ。首に掛けた長いタオル、手には黒のグローブをつけ、不敵な
笑みを浮かべながら一直線にリングへと進んでくる。

そして今まさにアンドレアが上がろうとするリング、一辺だけロープが離されているが、残りの3辺が尋常では
なかった。通常のロープに絡み付くように有刺鉄線が巻き付けられ、さらに色とりどりのコードのようなものが巻
き付けられ、何とも不気味な物々しさを醸し出している。そしてアンドレアは入場のためあえて外されている一辺
に設けられた梯子から軽やかにリングにあがると、ぴょんぴょんと跳ねながらウォーミングアップを開始する。跳
ねるたびにタンクトップの下で上下にゆれる巨乳に観客の目も釘付けになる。

アンドレアが動きを止め会場の一点を凝視する。スポットライトが照らされ開いた扉から会場に現れる小柄な少
女、沙織もゆっくりとリングに向かい歩を進める。後ろに束ねた黒い髪、二重の大きな瞳に整った顔立ちの美少女
は口元を一文字に引き締め、緊張した面持ちである。さらにそのコスチュームに観客が沸いた。何と胸と股間を最
小限のみ覆ったピンク色の小さな三角の布以外は紐で首、背中、腰を結んだだけのビキニ姿、その健康的な身体を
最大限露出した裸同然の姿に白のリングシューズを履き、同じく白のグローブを着けた、ボクシングの試合をする
とは思えない沙織の色っぽい姿に、観客の視線が釘付けにされる。
沙織は動ずること無く一直線にリングに到着すると、ロープの外された一辺からリングに上がる。そして相変わ
らず厳しい表情のまま、一方のコーナーに立ち、反対側のコーナーに立つアンドレアを睨み付ける。一方腕を組み、
小馬鹿にしたような笑みを浮かべて沙織を見つめるアンドレア。その間に空いていた一辺にも有刺鉄線やコードが
巻き付けられたロープがすばやく張り巡らされる。

にやりと笑ったアンドレアが首に掛けたタオルをスルスルと解き、ロープへ向けて放り投げる。次に起こった口
径に観客は歓声を上げる。

バチバチバチッ!!!

タオルがロープに触れた瞬間、激しい音を立てて火花が散り、噴き出した白い煙の中をひらひらと舞い落ちる。
驚いた表情で息を呑む沙織、しばらく焦げ目のついたタオルを凝視していたが、やがて意を決するかのように口元
を引き締めると、再びアンドレアを睨み付ける。

「試合の説明をいたします。この試合はボクシングではありますがラウンド制はとりません。デスマッチ形式で行
ないます。試合開始のゴングが鳴った後は、どちらかが続行不可能となるまで終了のゴングは鳴りません。また、
この試合はノーレフリーで行ないます。試合続行不可能、これが唯一の判定となります。」

アナウンスが響き渡り、残酷な期待で観客も盛り上がる。口を一文字に引き締めて睨み付ける沙織、余裕の表情
で笑みを浮かべるアンドレア

カーーーーーン!!!

ゴングが鳴り響く。中央へと足を進める両者、じりじりと小刻みに動きながら様子を窺いつづける。さすがに通
常と異なる凶器そのもののロープの存在を気にしてか、背面を気にしながらリング中央付近での動きとなっていた。

バシッ!

一発目を繰り出したのは沙織だった。軽いジャブをアンドレアの顔面を目掛けて繰り出す。軽いフットワークで
ガードするアンドレア。アンドレアも様子を窺うかのように沙織に向けて軽いワン・ツーを繰り出す。沙織もよく
パンチのラインを見ながらガードする。

「あん、あうっ……あん」

しばらくそれぞれ相手のボディ中心にパンチの応酬が続く。二人とも軽い動きでガードするが、それでも何発か
は互いのボディにヒットし、その度にリング上に声が漏れる。それにしてもアンドレアはその大柄な身体に似合わ
ず、小柄な沙織に合わせるかのように縮こまった動きに終始し、むしろスピードに勝る沙織のほうが手数、ヒット
ともに優勢に見える。
2分ほど経過、さすがに開始から動きつづけた沙織が肩で息をしはじめる。そして中央で二人が近づいた瞬間、
打って変わって大きな動きの強烈なアンドレアのパンチが沙織を襲う。必死にガードし、ぎりぎりボディへのヒッ
トは逃れたものの、重く激しい勢いに思わずよろめいた。

「うう…はあ…はあ…はあ……」

姿勢を低くしガードを固める沙織、アンドレアは右横からの強烈なパンチを沙織のボディに叩き込む。必死にガ
ードするものの一瞬及ばず、強烈なフックが沙織の裸の横っ腹に突き刺さった。

「あ・・あああ・・あうう・・」

思わずよろけるところへ、さらに下から強烈なアッパーが沙織のお腹へと突き刺さる。沙織の小さな身体が一瞬
浮き上がり、そのままガクンとマットに跪いた、

「ううう・・で・・でも・・負け・ら・れ・ない・・」

必死に歯を食いしばり、お腹を押さえながらヨロヨロと立ち上がる沙織、立ち上がって相手を睨もうとした瞬間、
アンドレアの強烈なストレートが沙織の左胸、ピンク色の薄い布地に覆われた形の良い膨らみに突き刺さった。

「ああああん!!」

勢いに押されそのままドシンと尻餅をつく沙織。アンドレアは余裕の表情で『立て』というようなゼスチャーで
沙織を挑発する。必死に立ち上がる沙織、しかし立ち上がって構えた瞬間、今度は激しいラッシュが沙織のボディ
を目掛けて打ち込まれる。

バシュッ! バシッ! ドスッ! バシィ!!

「ああ・・ああん・・あうう・・ああん・・あああ・・」

じりじりと押されるように後ずさる沙織。ロープへと沙織の背中が近づいてくる。その瞬間、沙織の頭の中を、
ロープに巻き付けられた有刺鉄線の鈍い輝きと、バチバチと激しい音をたててスパークするタオルの画像が駆け巡
る。

「いやあああああ!!!!」

必死に堪える沙織。押し出すかのように猛烈なラッシュでたたみかけるアンドレア。何発ものパンチが沙織のお
腹を中心に胸や肩、横っ腹、太股などに叩き込まれる。恐ろしいロープに触れることだけは避けようと必死に足を
止め堪える沙織。動きが止まったかと思ったのもつかの間、足は必死に止めるものの上半身が段々反り返っていく。

「ああああ・・いやあああああああああ!!!」

沙織の裸同然に剥き出しになった背中が徐々にロープに近づいていく。あと数cmのところまで近づいく。身体を
震わせながら必死に耐える沙織。しかし最も強烈なアッパーが沙織のお腹に突き刺さった瞬間、沙織の口から血の
滲んだマウスピースが勢いよく飛び出すのと同時に、必死で堪えていた両足の力がふっと抜け、小さな身体が浮か
び上がるかのようについにロープへと投げ出された。

バチバチバチバチバチバチバチバチ!!!!!!
バーーーーーーーン!!!!

「いやあああああああああああああああああ!!!!」

ものすごい音を立てて火花が散り、爆発音と共に一面が白い煙に包まれる。白い煙の中から浮かび上がるかのよ
うにビキニ姿の小柄な少女の身体が現れると、そのままバッタリとマットに崩れ落ちた。

「うぉおおお!!!」

あまりの激しさに観客も驚きを隠せない。しかし次に起こった光景に観客は息を飲んだ。相当なダメージを負っ
たはずの沙織の小さな身体が小刻みに震えると、何とゆっくりと持ち上がってきたのだった。

「ぜ…絶対に……負けない…………」

腕を振るわせながらゆっくりと上半身を起こす。頭を上げようとした瞬間ガクンと力が抜け崩れ落ちる。しかし
再び必死の力を込めて起き上がり、頭を上げアンドレアを睨み付けながらゆっくりと立ち上がる。

「ま…まけ…た…く…な…い…」

フラフラになりながら必死の形相で睨み付け、ファイティングポーズを取る沙織。感心したような表情で始終を
見ていたアンドレアも表情を引き締めファイティングポーズを取る。そしてフラフラの沙織とは対照的に軽いステ
ップを踏むと、目にも止まらぬ速さで沙織のお腹へのアッパー、そして続けて右胸へ強烈なストレートを打ち込ん
だ。

「ああああん!!」

沙織の小さな身体はパンチの勢いに簡単に吹っ飛ばされ、今度は何の抵抗も無く沙織の剥き出しの背中が恐怖の
ロープに押しつけられる。

バチバチバチバチバチバチバチバチ!!!!!!
バン!!ババーーーーーーーン!!!!

「いやあああああああああああああああああ!!!!」

悲鳴と白い煙に包まれた沙織の小さな身体が、一歩、二歩と前にでるとそのまま前のめりに崩れ落ちる。沙織の
裸同然の白く美しい背中の柔肌は、見るも無残にボロボロに焼けただれ、傷つけられて変色している。

「ああ…ああ…あ……」

驚くべき事に沙織の身体が動き出すと、ゆっくりと起き上がってくる。両腕で上半身を起こし、四つんばいにな
り、片膝を立て、小刻みに身体を震わしながら、本当にゆっくりと必死の力を振り絞って立ち上がり、まるで何か
に取り付かれたかのようにファイティングポーズを取っていく。

「うぉおおおおお!!!」

観客席から拍手と歓声が沸き起こる。アンドレアは不思議とばかり肩をすくめると、合わせるかのようにファイ
ティングポーズを構える。しばらくファイティングポーズのままにらみ合いが続くと、じわじわと間合いを詰めた
アンドレアが左右から軽いフックを沙織のボディに叩き込む。アンドレアの身体に倒れ込むようになりながら必死
にクリンチに逃れようとする沙織。しかしアンドレアは沙織の右腕を掴むかのようにしながら沙織の身体を反転さ
せると、そのまま押し出すかのように沙織を振り払い、たたみかけるように沙織の背中にストレートパンチを打ち
込んだ。そして沙織の小さな身体は飛び跳ねるかのようにそのまま前向きに恐怖のロープへと突っ込んでいった。

バチバチバチバチバチバチバチバチ!!!!!!
バババーーーーーーーン!!!!

「いやああああああああああああああああああああああ!!!!」

今度は前向きに突っ込んだ沙織。小さなビキニブラに包まれただけの沙織の乳房、そして剥き出しになった全く
無防備な沙織のお腹が恐怖のロープに触れ、一度に有刺鉄線と電流と火薬の餌食となり、悲鳴と爆発音と白い煙に
包まれる。そしてショックで跳ね上がった沙織の小さな身体が半回転して、うつ伏せにマットに崩れ落ちた。バッ
タリ倒れた姿に両腕を上げてポーズを取るアンドレア。

「あ…………あ………うう……」

信じられないことにもはや完全に息の根を止められたと思われた沙織の身体が動き出す。激しく震える腕で必死
に上半身を起こそうとするが、何度も力尽きて崩れ落ちる。しかしそれでも繰り返す。何度目かについに上半身が
起き上がり、ゆっくりと尻も上がって四つんばいになる。ゆっくりと頭が上がる。アイドルとしても通用しそうな
可愛い顔を歪めながら、必死に歯を食いしばる。徐々に徐々に上半身を起こしながら膝立ち状態へ。ビキニブラの
薄い布には焦げ跡が付き、胸やお腹の白い柔肌も無残にもボロボロに傷ついている。すぅーと崩れ落ちるように両
手をつき再び四つんばいへ、しかしもう一度片膝立ち状態からゆっくりと立ち上がる。

「ま………け………な………い……」

もちろん意識は朦朧、足元もおぼつかない、それでも条件反射のようにファイティングポーズを取る沙織。アン
ドレアは大きく両手を挙げ、2、3度頭上で拳を合わせると、沙織に体当たりを食らわせる。弾き飛ばされるよう
に沙織の小さな身体は吹っ飛び、背中からロープに激突する。

バババリバリバリバーーーーーーーーン!!!!!!

激しい爆発音と電流の火花の中、アンドレアはぐったりとした沙織に向かってラッシュを掛ける。ボディに対し
て激しいパンチのラッシュ。ストレート、フック、アッパーが何発も何発も沙織の乳房やお腹、そして股間に鈍い
音を立てて突き刺さる。ボロボロに傷ついた沙織の柔肌から血飛沫が上がる。パンチの勢いでロープに触れるたび、
有刺鉄線と電流、そして火薬が容赦なく沙織を襲う。

「あ………あ………」

アンドレアは完全にコントロールする力を失った沙織の身体を反転させ、今度は前向きにロープへと押し付ける。
胸の膨らみの先端がロープに押し付けられ、激しい電流が沙織の全身を襲う。有刺鉄線が沙織の乳房やお腹を容赦
なく突き刺し、さらに傷つけていく。アンドレアは沙織の身体をロープに押し付けるようにしながら、今度は横向
きに引きずるようにずらしていく。

バリバリバリバチバチバチ!!!!
バンババーーーン!!!!

「いやあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」

有刺鉄線が横一文字に沙織の柔肌を切り裂いていく。ビキニブラも引き裂かれ、露になった美しい胸の膨らみも
無残に切り裂かれ、激しい電流が襲う。そして散発的に爆発音が響き渡り沙織の身体を確実に傷つけていく。響き
渡る断末魔の悲鳴……。

アンドレアは沙織の腕を引っ張るかのようにリング中央に引き戻す。スローモーションのように回転しながらマ
ットに崩れ落ちる裸の沙織。そのままうつ伏せにマットに倒れ落ちる。

しばらくの静寂、しかしもうさすがに沙織が起き上がることはなかった。ゴングが鳴らされ、アンドレアは両手
を挙げて観客に応えると、やがてロープが外された一角から引き上げていく。そして無残な姿の沙織も担架に乗せ
られて運ばれていった。

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