第1話〜深夜の決闘〜


都内某所の女子プロレス団体の合宿所。
今そこに、何も知らずに忍び込もうとする高校生が一人いた。

「へへへっ・・・何だか女ものの下着が沢山ありやがるけど・・・一枚くらいいいだろう?」

何も知らず、ただ女性ものの下着に興味をもったのが運の尽きだったが、まだこの高校生は知る由もなかった。
この高校生、名前は滝本秀昭といって、男子高に通うプロレス好きな高校生であった。

「えっ・・・リング・・・それに女の下着・・・・・・・」

秀昭が何気に周りを見渡すと、薄暗い中にプロレスのリングが見えてきた。
これには驚く秀昭。しかしパンティを手にして興奮気味なのか、プロレスが好きと言っても気にせずに下着を物色していた。

パッ・・・・

「何っ・・・」

薄暗い合宿所・・・道場がいきなり明るくなって驚く秀昭。

「誰っ・・・何してるのよ!」

そう、道場の明かりのスイッチを入れたのは、この道場を使っている団体の、新日本女子プロレスのアイドルレスラーの、広末加奈だった。

「えっ・・・何って・・・・」

いきなり見つかったと言う衝撃に、秀昭は驚きとマズイと言う気持ちで動揺していた。
だが、目の前に居るのは女子プロレスラーと言っても女。その気持ちが秀昭を落ち着かせた。

(そう言えば・・・アイツ・・・プロレスラーだったよな?)

すると、秀昭が加奈に近づいて言い出した。

「プロレスラーの広末加奈さん?・・・いい身体してるけど、所詮は女なんでしょ・・・それに、プロレスなんてショーだしね!」

いきなり強気になる秀昭。その言葉を聞いて加奈も言い返す。

「何言ってるのよ、この変態っ!・・・そんなに女って馬鹿にするなら、私とそのリングで勝負してみる?」

加奈の挑発に、秀昭は加奈の身体を見つめていた・・・。
そう、上はTシャツに下はジャージ姿だったが、身長が162センチに、上から87・58・89と言うタレントとしてもイケそうな体格の加奈の姿に、秀昭は少し興奮しながら言い返した。

「上等だよ!・・・俺様だって男だ!プロレスラーって言っても女だって事を解らせてやるぜっ!」

そう言うと、学生服姿の秀昭は、上半身を裸にして臨戦態勢になっていった。
すると、Tシャツ姿の加奈に言い放った。

「俺だってプロレスの格好になったんだ。オマエも水着になって試合が出来るように準備しろよ!」

その言葉に、加奈は黙ったままTシャツとジャージを脱ぐと、下から白いワンピース水着が顔を出していった。

「これでいいかしら?・・・プロレスオタクのカワイイ坊や?」

ニヤリとして挑発していく加奈。

「プ、プロレスオタク?・・・だったら、俺が勝ったら水着を剥ぎ取ってやるから覚悟しろ!」

威勢よく加奈に殴りかかっていく秀昭。
しかし加奈がフットワークを使って避けると、バランスを崩して秀昭が怒り出した。

「よ、避けやがって・・・・まぁ、女だからって手加減してやったけど、今度はその顔をトマトみたいに潰してやるぜ・・・プロだしな!」

そう言いながら、秀昭が拳が加奈の顔を狙っていくと、今度は加奈も反応していった・・・。

シュ・・・バシィィィィィィ・・・・・

「ぐわあああぁぁぁぁ・・・・・・・」

そう、加奈は秀昭のパンチを見切って背負い投げのようにして、秀昭をマットに背中から叩き付けていった。
すると、背中への激痛に一瞬息を詰まらせる秀昭。
その秀昭を見て加奈が距離を置いて二コッとしてから言い放った。

「怪我しないウチに返りなさい・・・。プロレスラーと闘って勝てる訳ないでしょ?」

その言葉に、少しは現実味を帯びてきた事に焦ってはいたが、秀昭は立ち上がると、加奈に近づいていった。

「くっ・・・何がプロレスラーだっ!・・・所詮は女ってことだろう?」

秀昭も負けずに言い返すが、加奈が白い水着姿で距離を詰めてくると、焦っている様子が伺えた。
だが、秀昭が殴りかかると、加奈が寸前で避けると、仕方ないと言う表情を浮かべて打点の高いドロップキックを叩き込んだ。

バシッ・・・

「ぐわあぁぁぁぁ・・・・・」

たまらず倒れ込む秀昭。女だからと馬鹿にしていたのに、加奈の威力あるドロップキックに驚いていた。
だが、加奈は一気に勝負に出ようと、倒れた秀昭に組み付くと、首4の字固めを仕掛けていった。

グイッ・・・

「どうするの・・・・ギブする?・・・ギブアップすれば許してあげてもいいわよ!」

加奈が問いかけるが、秀昭は苦しい状態だが、意地があるからとギブアップを拒むと、加奈の太股に力が入っていく。

グググッ・・・・

「うぐっ・・・うっ・・・・・」

時折呻き声みたいな声を発する秀昭。しかし、顔が紅潮してくると、次第に動きが鈍くなってきていた・・・。

そして・・・。

ガクッ・・・・

秀昭が加奈の足4の字の前に、遂に失神させられてしまった・・・。

「うっ・・・ううっ・・・・・」

加奈に蘇生してもらい、意識を取り戻した秀昭。
リングで倒れている事に、驚いていたが加奈が横には立っていた。

「どう・・・女だからってプロと素人では差があるって事がわかったかしら?」

その加奈の言葉に、秀昭は悔しさから黙って加奈を睨み付けていた。

(畜生・・・いつか復讐してやるぜ・・・この女・・・・)

秀昭は、いつかリベンジしてやるとばかりに、しばらくして合宿所を後にするのであった。
そして、加奈も今夜の事はお仕置きだと思い、この後は黙ってこの日は終わりを告げていった。



第2話 アイドルと対戦?!

それからしばらくして、加奈の元に変な仕事が入ってきていた。
事務所に呼ばれて、加奈は渡されたペーパーを見て笑っていた。

「何ですか、コレっ・・・」

そう、その企画書にはイベントで、グラビアアイドルとリングでプロレス勝負する事が書かれていた。
当然、グラビアアイドルとプロレスだなんて結果は見えていたが、今回の申し出は面白く、ファン達の前でグラビアアイドルにプロレスの厳しさを教え込んで欲しいとの芸能事務所側からの依頼でもあった。

「悪いが、いってもらえないか・・・。次回大会が終わったらな・・・」

フロントから言われ、加奈はその企画に参加する事となった。

それから1ヶ月後、加奈は都内某所のイベントホールにいた。
リングが置かれた会場には、抽選で選ばれたファンなどが多数詰めかけてきていた。
最近、タレントがプロレスなどへ挑戦する事はあったが、今回のプロレス挑戦は明らかに舐めているものだった・・・。

「プロレスなんてショーなんでしょ?・・・私、痛いのはイヤだから・・・」

早くも控え室では、グラビアアイドルの大向美奈子がマネージャーに色々と言っていた。
156pの身長に、上から90・59・88と言うグラマラスな身体を、今回は何とビキニに着替えてのプロレス挑戦だったが、美奈子は完全に今回の企画を舐めているようだった。
一方、今回プロレスラーとして登場の加奈は、早くも純白の競泳水着みたいなリンコスに着替えると、主催者側から説明を受けていた。

「今回は、相手のグラビアアイドルの悲鳴をあげたり、痛がるシーンを期待しているイベントですので、関節技などは怪我をしない程度に痛めつけてもらって結構ですから・・・。」

その言葉に、まだ相手の美奈子を見ていない加奈は、少々痛めつけてあげればいいのかと思っていた・・・。しかし・・。

時間が迫り、遂にイベントが始まっていくと、まずは前座的にキャットファイトが始まっていくと、遂にメインイベントでもある現役グラビアアイドルと、現役アイドルレスラーのプロレス勝負が始まろうとしていた。

『それでは皆さん、メインイベントを行います!』

その主催者側のコールに会場内が騒がしくなると、その歓声の中を加奈がリングに向かって歩き出していった・・・。
早くも歓声に包まれていく加奈。しかし美奈子のファンからすると、ブーイングを送る者もいた。
しかし、純白のリングコスチュームに身を包んだ加奈の姿には、美奈子のファンたちも驚いていた。

『あれで女子プロレスラー?・・・』
『プロレスラーなんてやらなくても、グラビアアイドルで通用するじゃん、カワイイし・・・・』

たしかに、162pの身長に87・58・89のボディ、これならばいけると言われてもおかしくはなかった。
加奈が自分のコーナーに立っていると、そこへ美奈子も歓声に包まれながらリングに向かって歩き出していた。

『うほっ・・・美奈子ちゃんはビキニでプロレスかよ?』
『脱げないかなぁぁ・・・期待しちゃうぜ・・・』

グラビアアイドルらしく笑みを浮かべて手を振る美奈子。
しかし、ビキニにリングシューズ姿とは、プロレスファンが見たら頭に来るのも当然である。
当然、プロレスファンは加奈に声援を送りだしていた。

『そんなグラビアアイドル、リング上でストリップにしちゃえぇぇぇぇ・・・・』
『プロレスを舐めるなぁぁぁ・・・・広末ぇぇぇぇ、ボコボコにしちゃえぇぇぇぇぇ・・・』

そのプロレスファンの声に、美奈子のファンも応戦していくと、主催者側から静かにするようにと指示が出るほどであった。

『それでは、試合を開始します・・・青コーナー〜、現役グラビアアイドル〜大向〜美奈子〜っ!』

そのコールに、美奈子は両手を振ってファン達に笑顔を振りまいていた。

『赤コーナー〜、現役アイドルレスラー〜広末〜加奈〜っ!』

そして加奈がコールを受けると、観客席に向かって一礼をしていった。
すると、美奈子が加奈に向かって歩き出して一言言いだした・・・。

「プロレスでも可愛さでも負けませんから・・・・」

その挑発的な言葉に、加奈が笑みを浮かべて流すが、更に言い出した。

「今夜は美奈子だってプロレスで頑張ります、皆さん応援よろしく!」

そのマイクアピールに美奈子へ声援が送られるが、加奈が言い返した。

「プロレスはいいけど、そのビキニだったら脱げてもしらないわよ・・・」

加奈が一応は忠告すると、美奈子が突然張り手で奇襲攻撃をしていった。

バシィィィィ・・・・
「脱げないようにプロレスしますよぉぉぉ〜だ!」

張り手をしてから舌を出して挑発する美奈子。アイドルとしての行為としては許されるが、リング上で張り手までしては、加奈だって頭にくるのも無理はなかった。
その次の瞬間、ゴングが鳴らされていった。

『カァーン!!』

ゴングと同時に加奈が仕掛けていった。

バシッ・・・
「あうっ・・・・」

加奈がプロの意地でローキックで攻めると、美奈子が悲鳴をあげてフラついた。
しかし、美奈子は痛いのを我慢して言い返すのだった。

「こんな技、痛くないわよ!」

その美奈子の言葉にファン達が狂喜して歓声をあげていった。
しかし、加奈が続けてドロップキックを自慢のバストに叩き込むと、美奈子は転がるようにしてリング下に落ちていった。

バシィィィ・・・・
「きゃあぁぁぁぁぁ・・・・・・」

リング下で胸を押さえて苦しむ美奈子。今のは効いているようで、リング下でビキニブラジャーを直しながら息を整えていた。
そのビキニを直す仕草にも、美奈子のファン達は歓声をあげていくが、美奈子も内心は焦りだしていた。
舐めていた女子プロレス挑戦の企画、しかし始まったら技は痛いし、着てきたビキニは脱げるのではと心配で、どうしようかと悩んでいた。
だが、背後にはファン達の声、目の前には対戦相手の加奈。逃げ出す事は出来なかった。

(続く)

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