女優3 最終話 〜決着〜






全く予想外であった黒樹メイサの登場に、会場は騒然となっていた。


そしてリング上の結衣やOTKのメンバー達も、メイサの登場に驚きを隠せなかった。




「メイサさん・・・・」


えりかの登場にも驚いた結衣だが、まさかこの舞台でメイサと対峙する事になるとは予想もしていなかった。


リングに上がったメイサはOTKのメンバー達には目もくれず、じっと結衣の事だけを睨みつけている。




「おい・・・一体どういうつもりだ・・・・」


メイサはマイクをとるなり、明らかに不機嫌な表情で結衣に向かってそう呼びかけていく。


結衣はただただ唖然とするだけで、メイサの怒りの理由を量りかねていた。




「この前・・・・ワタシのところにオファーが来た・・・・A−1王座に挑戦しないかって・・・・」


結衣の次の防衛戦の相手としてメイサにオファーがかかっていた事は、奈々子からも聞かされていた。



「だけど、ワタシは辞退した・・・トーナメントで負けたからな・・・アイツが出れなくなったから、その代わりにって・・・“はあ?ふざけんな!”って思ったよ・・・」


アイツとは、メイサがトーナメントで敗れた井上真緒の事である。


試合内容では完全にメイサが圧倒していたとはいえ、敗戦という結果は他の人間が思っている以上に、メイサの心に重くのしかかっていたのだ。



「ワタシは、アイツに借りを返したかった・・・だけど、アイツはもうリングに上がらないって・・・まんまと“勝ち逃げ”されたって訳だ・・・」


「勝ち逃げって、真緒さんは・・・」


「勝ち逃げだよ!!・・・アイツの事情なんて、知ったこっちゃねえ・・・ワタシから言わせれば、“勝ち逃げ”だ・・・」


メイサの発した“勝ち逃げ”という言葉に腹を立てた結衣は、たまらずメイサに言い返そうとしたが、そんな結衣の言葉を遮るようにメイサは語気を荒げていた。



「実行委員会からも言われたよ・・・アイツはもうリングに上がらないからって・・・だからそうなった以上、ワタシが一番挑戦者にふさわしいって・・・それで『ハイ、そうですか』なんて言えると思うか!?・・・負けたヤツの次の試合がタイトルマッチだなんて、A−1のタイトルってそんなに軽いモンなのか!?・・・・」


「メイサさん・・・」


声を荒げて感情を露わにするメイサのマイクアピールに、結衣は完全に圧倒されていた。


そしてこの「部外者の乱入」という事態にも関わらず、観客達もいつの間にかメイサのマイクアピールに引き込まれていた。



「そう思ったからワタシは、タイトルマッチを辞退した・・・アイツに借りを返せないのなら、また一から出直して、誰にも文句言わせない位の実績積んで・・・・お前に挑戦しようと思ってた・・・・」


「!!!」


この時結衣はようやく、メイサの本心を理解した。



「それなのに・・・・『王座返上』だとぉ!?ふざけるな!!お前までワタシから逃げるのか!!?」



結衣は、自分に向かって声を荒げるメイサの表情から、単なる怒りだけではなく、何ともたまらない悔しさがにじみ出ているのを感じていた。



よくよく考えれば、確かに結衣は王座返上を言い出したものの、先に結衣との対戦を蹴ったのはメイサの方である。


しかしそれは決して「結衣との対戦を望んでいなかった」という事ではない。


真緒に借りを返す事が第一だったメイサと、宿敵真緒との再戦が叶わなかった結衣。


それ故に二人が出した結論が「タイトルマッチの辞退」と「王座返上」だったのだ。


まるで対戦を避けるかのような行動をとった二人だが、「真緒との対戦を臨んでいた」という点は同じであった。



『メイサさん・・・・』



結衣はこの時、トーナメントでメイサの試合を見た時の事を思い出していた。


客席にいた結衣は、一回戦の相手である永倉奈々を完膚無きまでに叩きのめしたメイサと眼が合った時に、『自分の相手はメイサになるのでは?』と、メイサとの対戦を予感していた。


しかしメイサはトーナメントに敗退し、タイトルマッチも辞退、そして結衣も王座を返上する事になった。


まるでお互い交わることの無い道を歩んでいたはずの二人なのに、A−1とは違う別の舞台でまたこうやって対峙している。



トーナメントを優勝した宿敵真緒との対戦は叶わぬ夢となった。


しかし今目の前にいるメイサとは、いずれは戦う事になる運命なのかもしれない。



結衣がそんな事を考えていると、それまで事態を静観していたOTKの秋本才加が、いきなり乱入したメイサに向かっていった。





 バシイィーーーッ!!!




乾いた打撃音がリング内に響き渡り、メイサはその場に崩れ落ちてしまう。


その傍らには、特殊警棒を握り締めた才加が怒りに身体を震わせながら佇んでいた。



「おい、お前何様のつもりだ・・・・ワタシらにボコボコにされたチビに負けたようなヤツが、でかいツラしてこのリングに上がるんじゃねえ!!」


才加は吐き捨てるようにそう言うと、手にした警棒で再び倒れているメイサを殴りつけていく。



 
 バシイィッ!バシイィッ!バシイィッ!!・・・・・



才加は完全に頭に血が上っている様子で、狂ったようにメイサに対し警棒を何度も振り下ろしていく。


自分達が主役であるはずのこの興行で、結衣とえりかというたった二人の相手に追い込まれてしまった事に、才加は冷静さを失っていた。


そんな中、自分達のボスである秋本靖が連れてきたにも関わらず、さらに登場した部外者メイサの出現に、抑制が効かなくなってしまったのである。



『真里ちゃんも、他のみんなもやられた・・・でもワタシがOTKを守る!これ以上部外者にでかいツラさせてたまるか!・・・・』





「メイサさん!!」


結衣は、才加になすすべなく警棒で殴られ続けているメイサの姿を見て、自分のダメージを省みずに助けに行こうとするが、えりかが結衣の腕を掴んでそれを引き止める。



「えりかさん!?」


「荒垣・・・お前に助けてもらってアイツが喜ぶと思うか!?」


「!?」


えりかの言うように、メイサは結衣にケンカを売ってきた相手である。


そんなメイサが結衣に手を差し伸べてもらおうなんて思っているはずもない。



「でっ、でも・・・・」


それでもメイサの身を案じる結衣が、えりかの手を強引に振り払って助けに行こうとした瞬間、メイサが警棒で殴られながらも、ゆっくりとその場で立ち上がった。



「!!!」



立ち上がったメイサは警棒で殴られながらも、右手で才加の喉元を掴み、強引にその動きを止めていた。




 うううぅ・・・・うおおらあああーーーーっ!!!



メイサは大声で雄たけびを上げると、何と片手で才加の身体を持ち上げ、豪快なワンハンド・チョークスラムで才加をマットに叩きつけていく。




 ドオォーーーン!!!!



誰もが予想しなかったメイサの反撃に、会場は大きなどよめきに包まれている。


才加とほとんど身長の変わらないメイサが、才加の事をまるで赤子のように扱っていた。



『な、何なんだコイツは・・・』


マットに叩き付けられた才加は、メイサの規格外のパワーを体感し、完全に動揺してしまっていた。


さらにメイサはよろよろしながらも、倒れた才加を引きずり起こすと、スリーパーホールドをきめて才加の身体を振り回し始める。




 うおおおぉぉーーーーっ!!!



メイサ得意のスイング・スリーパーが炸裂し、メイサがあげる雄たけびと共に、会場のどよめきは一段と大きなものに変わっていく。


そして観客だけでなく結衣やえりか、OTKの他のメンバー達もメイサの驚愕のパワーを目の当たりにして言葉を失っていた。




 ダダアァーーン!!!



まるでハンマー投げのハンマーのように才加はキャンバス上に放り出され、技をきめたメイサも警棒で散々殴られたダメージからその場でよろめいている。


しかしメイサは倒れずにどうにかその場に踏みとどまると、「どうだ!」と言わんばかりにキャンバスに放り出された才加を睨みつけた。




『な、何でコイツが・・・あのチビに負けるんだよ?・・・・・』



才加は完全にメイサという存在に圧倒されてしまっていた。


しかし真緒に敗れてしまったように、えりかや結衣と比べれば、メイサはレスラーとして決して完成されているわけではない。


それでもこの才加とのわずかな攻防だけで、メイサは会場にいる全ての人間に、その存在を十分過ぎるほどアピールしていた。



そして会場がこのメイサのワンマンショーのような展開の余韻にどよめく中、突如試合終了を告げるゴングが打ち鳴らされる。





 カンカンカンカン!!!!



ゴングが鳴った瞬間、あまりに突然の事に会場は何ともいえないざわめきに包まれた。


そんな雰囲気の中、場内に試合結果を告げるアナウンスが流れ始めた。





 ただいまの勝負・・・・乱入した黒樹メイサ選手が『A−1王座』管理下の選手である為・・・・A−1王者チームの反則負け・・・OTK38チームの勝利となります・・・・・




裁定はメイサの乱入を無理矢理理由にしてこじつけただけの、滅茶苦茶な裁定であった。


一応形の上ではOTK38の勝利にはなったものの、OTK38を応援しているはずの観客達からは一切歓声は上がらなかった。


そしてリングに上がったメンバーや、試合を見守っていた他のメンバー達の表情にも、勝利の喜びは見られなかった。





「おい、ワタシらの負けだってよ・・・・」


結衣にそう声をかけたえりかは、滅茶苦茶な裁定にも関わらず全く怒っている様子はなく、その表情には笑みさえ浮かんでいた。



「そういや初めてだなあ・・・試合で負けたのは・・・・」


無敗で防衛を続けて王座を返上したえりかにとって、これが初めての敗戦であった。


しかしそうつぶやきながらも、えりかの表情には「敗戦のショック」は微塵も感じられなかった。


そして一方、タイトル防衛中の現王者である結衣にとっても、形の上とはいえこれが初めての敗戦である。


しかし結衣もえりか同様、この試合の敗戦という結果に、ショックを感じる事はなかった。




敗戦を全く意に介する様子のない王者チームと、勝利を告げられたにも関わらず皆一様に沈んだ表情を見せているOTK38のメンバー達。


その対照的な表情が、この試合の全てを物語っていた。




試合の裁定が下り、会場は熱気にあふれていた試合中と打って変わって静まり返っていた。


するとここで、メイサと共に会場に現れたOTK38のプロデューサー秋本靖が静かにリング上に上がった。




秋本がリングに登場した事で、静まり返っていた観客は再びざわめき始めていた。


そしてOTK38のメンバー達は皆、ボスの登場にその表情を強張らせている。


しかし秋本はそんな周りの状況を全く意に介する事無く、スピーチを始めた。




「会場にお集まりの皆さん、本日はOTK38興行へのご来場、誠にありがとうございます。」



そう挨拶した秋本は観客に向かって深々と頭を下げた。


そして秋本は、今度はリング上の結衣とえりかに向かって深々と頭を下げた。



「佐和尻さん、荒垣さん・・・・本当に素晴らしいファイトを見せていただきました。このリングに上がってくれた事を感謝します。」


秋本はそう言うと、再びえりかと結衣に向かって深々と頭を下げていた。


この業界の大物の謙虚な態度につられるように、えりかと結衣も申し訳なさそうに頭を下げていた。



「お二人にとっては不服な裁定かもしれませんが、OTK38の興行という事で、その非礼を御許しいただければ、と思っています。それに・・・お集まりいただいた観客の皆さんも、ここにいるOTKのメンバー達も、自分達の心の中で、裁定を下していると思いますから・・・」


ボスである秋本の言葉は、メンバー達の心に深く突き刺さっていた。


それは、自分達が決して勝者ではないという事を感じている証でもあった。




「そして今日は、黒樹メイサさんにもこの会場に来ていただきました。」


秋本がそういってメイサを右手で指し示すと、こういう雰囲気が苦手なのかメイサもえりかや結衣と同様、ぎこちなく頭を下げた。



「実はメイサさんに来てもらったのは・・・・OTK興行への参戦、つまりアーティスト・ワン王座への挑戦をお願いするために、この場所に来てもらいました。」



このまさかの秋本の発表に会場は大きくどよめき、OTK38のメンバー達も全くの「寝耳に水」といった感じで戸惑いの表情を見せている。


そして結衣も、OTKのメンバー同様に、メイサの「a−1挑戦」というニュースに驚きを隠せなかった。



「皆さんもご存知の通り、メイサさんは女優というだけでなく、アーティストとしても活躍されています。現在は『アクトレス・ワン』のリングに上がっているメイサさんですが、『アーティスト・ワン』の活性化につながると思い、ワタシから声をかけました。」



秋本が言葉を続けているにも関わらず、観客達のざわめきは収まる気配が無かった。


あまりに強烈なメイサのパワーを目の当たりにした後だけに、メイサの挑戦が実現すれば、OTK38からa−1のタイトルが無くなってしまうのでは、と思っているのである。


そんな観客達が抱いている不安は、OTK38のメンバー達にも伝わっていた。



「メイサさんは二つ返事で会場に来てくれるといいました。『戦いたい相手がいるから』って・・・でも、どうやらそれは、OTKのメンバーの事ではなかったようです・・・・」



秋本はそう言いながら、視線を結衣の方に向けていた。



『えっ・・・・』



秋本と目が合った結衣は、ふとメイサの方を振り返った。


結衣に見つめられたメイサは、気まずそうに目をそらした後、秋本に向かって声をかけた。



「秋本さん・・・ワタシ・・・」


すると秋本は右手をメイサの方に差し出して言葉を制すると、メイサの気持ちはわかっているとばかりに頷いた。



「メイサさん・・・アナタがどのリングに上がっても、ワタシはアナタを応援しています。そしていつか、機会があれば、ワタシのプロデュースした選手と戦って下さい。」


秋本にそう言われたメイサが、申し訳なさそうに頷くと、このやりとりを見ていた観客達から自然と拍手が沸き起こる。


しかしそこにはメイサを応援する気持ちというよりも、メイサのa−1挑戦が流れた事に対する安堵感が感じられた。



「ただ、皆さん・・・やはりワタシは、このままOTKの中だけで争っていても、アーティスト・ワン王座の未来はないと思っています・・・近いうちに、外部からの挑戦者を受け入れる事になるでしょう・・・」


この秋本の発言により、落ち着きそうになった会場が再びざわめき出し、メンバー達の表情にも緊張の色が走り始める。



「でもその前に、我々にはやらなければいけない事があります・・・・大島!!いるんだろ!?」


「!!!」


客席の後ろの方で試合を見守っていた大島裕子は、突然名前を呼ばれた事に驚き、その場で固まってしまう。


この時裕子は試合から逃げ出してしまった事、えりかにコスチュームを貸して乱入の手助けをした事、その自分がやってしまった事の重大さを改めて感じていた。



『そうだ・・・ワタシにはもう、a−1王者を名乗る資格なんてないんだ・・・』



どんな処分を下されても仕方が無い。


裕子はそんな覚悟をきめてリングに向かった。




裕子がリング上に姿を見せると、会場は何ともいえないどよめきに包まれた。


そして他のメンバー達は裕子に対する怒りや気遣い等、色々な感情が入り混じった複雑な表情を見せている。



「今のa−1王者は、この大島裕子です。ワタシは外部からの挑戦者を受け入れるといいましたが、それは決してOTK38からこのタイトルが無くなっても構わない、という意味ではありません。・・・・このタイトルを守るためにも、OTKの中で本当に一番強いメンバーが、王者でなければいけません。」


秋本のこの言葉を聞いて裕子や他のメンバー、観衆の頭には篠田真里子の名前が浮かんでいた。


リング上の真里子は結衣の強烈なニーリフトでダメージを受けたわき腹を押さえ、ロープに寄りかかるようにして立っていた。



『やっぱり王者は真里ちゃんが一番ふさわしい・・・ワタシは所詮、偽モノの王者なんだ・・・・』



裕子が寂しげな表情を浮かべながらも、何かふっきれた様子であった。


OTKのメンバーで一番強いのは、少なくとも自分ではない。


秋本がはっきりと自分に引導を渡してくれたと思ったその時、



「OTKで一番強いのは誰か・・・次回のOTK興行で、“王者”大島裕子と、挑戦者篠田真里子によるタイトルマッチを行います!!」



『えっ!!?』



秋本のタイトルマッチ宣言に、会場から大きな歓声が沸き起こる。


しかし裕子はこの秋本の発言に大きな戸惑いを感じていた。


試合から逃げ出してしまった自分が王者として防衛戦を行う資格なんてないと思っていたからである。



「待って下さい!!・・・秋本さん、ワタシはリングから逃げ出したんです!そんなワタシに、王者を名乗る資格なんて無いんです!それに・・・試合なんてしなくても、真里ちゃんの方が強いって、みんなわかってます・・・・」


涙目になりながらそうつぶやく裕子に、他のOTKのメンバーも困惑の表情を浮かべている。


内心自分達も「真里子がメンバー最強」だと思っているので、裕子をフォローする声をかけることが出来ないのだ。



「大島、君は王者なんだ・・・例えどんな結果が待っていようと、君には戦う義務があるんじゃないのか・・・・」


そんな裕子を見て秋本がかけてきた言葉は全くの正論だと、裕子自身も思っていた。


しかし、完全に心が折れてしまった裕子は、もはやボス秋本の言葉にも素直に従うことが出来なかった。



「でっ、でも・・・」


ボスの命令にも関わらず、裕子は「ハイ」という返事が出来ずに、涙を流して黙り込んでしまっている。


この裕子の態度に秋本さえもが困ったような表情を見せていると、その沈黙が意外な人物によって破られる。




「おい、チャンピオン・・・・」


「・・・・」


「お前だよ!!お前!!!」


「!!!」


涙ぐんでいた裕子が顔をあげると、黒樹メイサが鬼のような形相で裕子を睨みつけていた。



「お前もチャンピオンのクセに逃げ出すのか!!?」


『メイサさん・・・』


裕子は自分に対し感情を露わに怒鳴りつけてくるメイサに驚いていた。



先ほどメイサの圧倒的な強さを目の当たりにした裕子は、自分がa−1王者である事も忘れてその姿に羨望の眼差しを向けていた。


ひょっとするとメイサは真里子や結衣よりも強いのではないか?


仮に自分がメイサと戦うことになったら、全く歯が立たないんじゃないだろうか?


しかしそんなメイサが、仲間達にさえ王者としてダメ出しをされた自分をチャンピオンと呼び、さっき結衣にアピールした時と同じように本気で怒鳴りつけている。



『何で・・・こんなチビで弱虫のワタシに、あんなに強い人が・・・・』


裕子がそんなメイサの言動を理解しかねていると、今度は結衣が裕子に向かって声をかけた。



「裕子ちゃん・・・ワタシは別に逃げ出したりなんかしてない・・・でも、今はタイトルを返上した事、後悔してる・・・裕子ちゃん、ワタシに言ったじゃない。『タイトルが欲しい』って。がんばって獲ったタイトルなんでしょ?それを簡単に手放しちゃダメだよ・・・」


『結衣さん・・・』


結衣の言葉を聞いた他のメンバーは、結衣と裕子に接点があった事を知り、驚きの表情を見せている。


しかし今の状況では、その事はもはや大した問題ではなかった。



『でも、ワタシは・・・・』


メイサと結衣の言葉を聞いても、裕子の心は揺らいでいた。


するとそんな裕子に対し、ここまで事態を静観していたえりかが驚くべき発言を口にする。




「よお・・・お前もしかして、対戦相手があのネエチャンだっていうのが不服なんじゃねえのか?」



『!!?』



えりかはそう言うと、ゆっくりと裕子の方に歩み寄っていく。


その後方には鋭い眼光でえりかの事を睨みつけている真里子の姿があった。



「だったら・・・ワタシが挑戦者になってやろうか!?」


「えっ、えりかさん・・・・」


えりかのまさかの発言に、会場はたちまち大きなざわめきに包まれていく。


そして裕子だけでなく、結衣や秋本、それに他のOTKのメンバー達も一様に驚きの表情を見せている。




「一応これでもアーティスト活動やってるし、チャートで1位も獲ってんだよ・・・・挑戦者の資格は十分あると思うんだけどなあ、秋本さん・・・・」


「い、いや・・・それは・・・」


さすがの秋本も、このえりかの申し出には困惑の表情を隠せなかった。


確かに「元A−1王者」の肩書きを持つえりかは、秋本自身がいう「a−1王座の活性化」には申し分の無い、下手をすればメイサ以上の「ドル箱的存在」となるだろう。


しかしえりかは散々世間を騒がしたトラブルメーカーでもあるだけに、逆に大きなリスクも伴う事になるだろう。



そしてえりかから挑戦状を叩き付けられた裕子は、その秋本以上に動揺が隠せなかった。


結衣に挑戦状を叩き付けられた時も驚いたが、今度の相手はもはや業界で伝説化している最凶王者である。


そんな凄い相手を挑戦者に迎えて、自分が王者として防衛戦を戦うなんて、おこがましいにも程がある、と裕子は思った。



「へえ〜、アナタそんなに小さいのにチャンピオンだなんて、凄いですね〜!!!」


突然聞こえてきた場の空気に全くそぐわないのんきな声に裕子が振り返ると、エプロンサイドに結衣とえりかのセコンドについていた上野朱里が立っていた。



「朱里さん・・・」


「あれ〜、チャンピオンなのに、何でそんな自信なさそうな顔してるんですか〜?」


「チャンピオンだなんて・・・ワタシに、そんな事いってもらう資格は・・・」


「どうしてですか〜?メイサさんも、ガッキーさんも、えりかさんも、アナタがチャンピオンだって、言ってますよ〜!!」


『!!!』



裕子が再びリング内に目を向けると、メイサ、結衣、えりかの3人が自分に向かって熱い視線を贈っている。


その光景はまるで、OTKのメンバー達にダメ出しされた裕子に、3人が何か大きな力を与えようとしているかのように見えた。


王者である事の厳しさを知っている結衣とえりか、実力者でありながらタイトルを手にしたことのないメイサと朱里。


4人それぞれが現a−1王者である裕子に対し、特別な感情を抱いているのであろう。



そして裕子が再び朱里を振り返ると、朱里はニコニコと笑いながら裕子に向かって親指を立てた。



『みなさん何で・・・ワタシなんかの為に・・・』


裕子がそんな事を思っていると、えりかが裕子に近づいていき、朱里の方を振り返っている裕子の胸を、拳でトンと軽くつく。



『!!!』


胸をつかれて振り返った裕子は、すぐ前にえりかが立っている事に驚いていた。



「おい・・・チャンピオンが下向いてんじゃねえよ・・・」


「えっ!?」


「お前を偉そうに怒鳴りつけたアイツ(メイサ)も、お前の他の仲間も、タイトルは持ってないんだ。荒垣もタイトル返上したって言ってる。ワタシだって、“元”王者だ・・・つまり、今このリングででかい顔できるのは、お前だけって事だ・・・・」


「・・・・・」


「いいか・・・お前は王者なんだ。思う存分でかい顔してろ!そうすれば、負ける訳にはいかなくなる・・・でかい顔する事が、お前を強くするんだ・・・」


「えりかさん・・・」


ここでえりかは、手にはめていたメリケンサックを外すと、裕子の手をとってそのメリケンサックを握らせた。



「これ・・・」


「やるよ、お前に。」


「えっ!!?」


「お前、チビだから自信ないんだろ?だったら勝てる方法を考えろ!・・・凶器を使おうが勝ちは勝ちだ。“相手が凶器を使ったから負けた”とか、“自分は凶器を使わず、正々堂々戦って負けた”とか・・・そんなモン、ただの“負け犬の遠吠え”だ・・・」


「・・・・」


「だけど、コレ使って負けたら、もっと恥ずかしいからな。言い訳も出来ない・・・でかい顔するのと一緒だ。ワタシはそうやって、タイトルを守ってきた・・・」


「えりかさん・・・・」


「お前がコレを試合で使うか、使わずに御守りにでもしとくかは自由だ・・・でも、どう使おうがきっと、それはお前の力になる。ワタシの力にもなったモンだからな・・・その力を、お前にくれてやる・・・・」


えりかはそう言い残して裕子に背を向けると、結衣に声をかけた。



「荒垣ぃ、帰ろうぜ!」


「えっ!?」


「もう用は済んだだろ!!」



確かにえりかの言う通りだと思った結衣は、戸惑いながらもリング内にいる秋本靖に向かってペコリと頭を下げた。


その姿には試合中に見せたA−1王者のオーラはカケラも無く、秋本は微笑ましい表情でその様子を見守りながら、結衣に向かって一礼した。




「えりかさん!!!」


メリケンサックを手渡された後、しばらく無言でその場に立ち尽くしていた裕子は、結衣とともにリングから立ち去ろうとしているえりかを、思わず大声で呼び止めていた。



「あの・・・どうして、こんな大事なモノをワタシに・・・」


振り返ったえりかは、問いかけてきた裕子にこう答えた。



「理由なんてないよ・・・今日会場に来て、たまたま会ったのが、お前だった・・・それが理由だ・・・」


「えっ・・・・」


「タイトルは、一番強いヤツが獲れるとは限らない・・・だからって誰でも獲れるモンでもない・・・お前は自分を弱いと思ってる・・・でも、今タイトルを持ってるのはお前だ・・・他の誰でもない・・・それが事実だ。」


「えりかさん・・・・」


「じゃあな、チャンピオン・・・」


えりかは裕子にそういい残して、結衣とともにリングから降りた。




『えりかさん・・・・』


裕子はリングから去っていくえりかをじっと見守っていた。


するとそんな裕子を見て、秋本は安心したように声をかけた。



「大島・・・」


「・・・はい・・・」


「タイトルマッチ、やってくれるな・・・・」


「・・・ハイ、頑張ります!」


秋本の問いかけに、裕子は力強く頷いた。



「裕子・・・」


名前を呼ばれた裕子が振り返ると、そこには鬼のような形相をした真里子の姿が。



『真里ちゃん・・・』


「・・・・本気で潰しにいくから・・・覚悟しときな・・・・」



そうつぶやく真里子の目からは、並々ならぬ気合が感じられた。


それは厚子にタイトルを明け渡した時の真里子ではない。


タイトルマッチに出てくるのは間違いなく、a−1王座決定トーナメントを圧勝し、この日A−1王者結衣を追い詰めた「OTK最強」の真里子だろう。



この時裕子は、ある意味、今回実現しなかった結衣とのシングルマッチ以上の恐怖を感じていた。


もしかすると自分は全く真里子の相手にならないかもしれない。



『でも、ワタシはチャンピオンなんだ・・・もう逃げたりしない・・・絶対タイトル守ってやる・・・・』


自分に勝算があるわけではない。


それでも裕子は、タイトルの防衛を固く心に誓っていた。






リングを降りた結衣は、パートナーとして戦ってくれたえりかの背中をじっと見つめていた。


自分よりも小柄なえりかだが、結衣の目にはその背中はとても頼もしいモノに映っていた。



『今日もし、えりかさんがいなかったら・・・』



A−1王者の力を見せる為に、そしてOTK38にこの世界の厳しさを教える為に、この日のリングに上がった結衣。


しかしえりかがいなかったら、その目的を達成することは出来なかっただろう。



「えりかさん・・・今日は、本当に・・・」


「面白かったぜ!荒垣!!」


「えっ!?」


「久しぶりの試合だったけど、面白かったよ・・・」


「えりかさん・・・」


結衣はえりかに礼を言いたかったのだが、まるでそれを遮るかのようにえりかが声をかけてきた為、それ以上何も言えなくなってしまった。


感謝の言葉を拒否された結衣はそのまま黙り込んでしまうが、ここでえりか同様、結衣の窮地を救ってくれた朱里が声をかけてくる。



「ガッキーさん、気にしちゃダメですよ〜!きっとえりかさんは、照れくさいんです〜!!」


図星ともいえる朱里の言葉を聞いたえりかは、振り返って朱里を睨み付ける。



「ひゃ〜、えりかさん、そんな可愛いカッコで睨まないで下さいよ〜!!」


「なっ・・・」


朱里がそばにいた結衣を盾にして身を隠しながらえりかを冷やかすと、えりかはその言葉で我に帰り、自分がOTKのコスチュームに身を包んでる事を思い出す。



『ったく・・・』


苦手とする朱里のツッコミに、さすがのえりかも何も言い返す事が出来なかった。



するとここで、結衣達と一緒にリングを降りたメイサが結衣と朱里の脇を通り過ぎていくと、結衣達の少し手前で急に立ち止まった。



『あっ・・・』


メイサが立ち止まったのに釣られて、結衣が思わずその場に立ち止まると、メイサは結衣の方を振り返らずにポツリとつぶやいた。



「荒垣・・・・」


「・・・はい・・・」


名前を呼ばれた結衣が返事をすると、メイサは結衣に背中を向けたまま言葉を続けた。



「・・・王座返上・・・取り消せないのか?」


「えっ・・・・」


「もし、取り消せるんだったら・・・そうして欲しい・・・」


「メイサさん・・・・」


「・・・頼む・・・」



メイサはそれだけ言い残して、其の場から立ち去っていく。



王座に挑戦する為に、一から出直すといったメイサ。


つまりメイサの頼みは単に王座返上を取り消して欲しい、というだけでなく、自分が挑戦する時までタイトルを守っていて欲しい、という意味である。



メイサの「頼む」という言葉が、結衣の胸に深く突き刺さっていた。





メイサと結衣が話している間、えりかはなぜかリングサイドに陣取っていたカメラマンに声をかけていた。



「なあ・・・今出回ってる写真・・・お前があの写真撮ったのか?」


「えっ・・・いや、その・・・・」


悪名高き“最凶王者”に詰め寄られたそのカメラマンはしどろもどろになっていた。


えりかが言う「出回っている写真」が何の事か、そのカメラマンはよく理解していた。



「おい、勘違いすんな・・・別にその事でお前をどうこうしようって訳じゃねえよ・・・」


「えっ!?」


「ちょっと頼みがあるんだ・・・お前に・・・・」






カメラマンと話し終えたえりかが花道を引き返そうとすると、そこには何故かメイサが待ち構えていた。


メイサは花道を引き返そうとした時に、カメラマンと話しているえりかの姿に気づき、そのやりとりが気になって様子を見ていたのである。


そしてメイサの後から来ていた結衣と朱里は、朱里が試合でダメージを受けた結衣を病院に連れて行こうとしていて、えりかの事に気づかず既に花道を引き返していた。



「佐和尻さんよぉ・・・・」


メイサは自分を無視して通り過ぎようとしたえりかを呼び止めた。



「噂に聞いてた“えりか様”ってのは、随分優しいんだな・・・」


メイサが挑発的な口調で語りかけると、えりかはフッと鼻で笑った。



「お前こそ・・・何であのおチビちゃんにハッパかけたんだ?・・・お前だったら楽勝でアイツに勝てるだろ?自分より弱いくせにチャンピオンだなんて笑わせるな、なんて、ホントは思ってんじゃないのか?」


えりかに逆に問いかけられたメイサはしばらく黙り込んだ後、えりかに向かってこう言った。



「・・・・アンタの言った通りだよ・・・・・」


「?」


「アイツがワタシより強いなんて、これっぽっちも思っちゃいない・・・でも、アイツはタイトルを持っていて、ワタシは持っていない・・・それに・・・・」


「それに?」


「・・・“チビ”には痛い目に遭ってるからな・・・・」


「・・・なるほどな・・・」


実感のこもったメイサの言葉に、えりかは思わずそうつぶやいた。







「ガッキーさんが心配なんです〜!!」


激闘を終えた結衣のマンションには、何故かセコンドを勤めてくれた朱里の姿があった。


試合後朱里に付き添われて病院に足を運んだ結衣は、額の流血や様々な挫傷はあったものの、入院の必要はないという事であった。


本来ならそこで朱里と別れるはずだったのだが、怪我をしている結衣を一人で帰らせるわけにはいかないと、朱里が半ば強引に押しかけたのである。


女優としても先輩であり、しかも今日の試合で助けられた事もあって、結衣も朱里の申し出を無下に断る事ができなかったのだ。



しかし心配とはいいながらも、朱里はどうやら結衣と酒を飲みたかったらしく、結衣が怪我しているのも構わずに夜を明かして大騒ぎした。


結衣も最初戸惑ったものの、朱里の天真爛漫なペースに引きずり込まれ、いつの間にか最近では記憶にないほどの大笑いしていた。


「王座返上への後悔」や、「メイサからの挑戦」など、様々な悩みを抱えていた結衣だったが、その事を知ってか知らずか無理矢理おしかけてきた珍客、朱里のおかげで束の間の楽しい一時を過ごす事が出来たのだった。





一夜明け、二日酔いの結衣を現実に引き戻す連絡が事務所から入った。


それはA−1王座関係者の立会いの下、結衣が独断で行った王座返上、OTK興行への参戦に関する事情聴取を行うというもので、其相応の処分も覚悟して置くように、という事も告げられた。





それからさらに一夜が明け、結衣は事情聴取の為に所属事務所を訪れていた。


そして「王座返上」「OTK興行への参戦」という単独行動をとった結衣に対する処分の内容が明らかになった。




「えっ?」


事務所から告げられた処分は、結衣にとって予想外のものであった。



それは「A−1王座実行委員会は、現王者荒垣結衣からの王座返上届けを却下する」という、まるで処分とはいえない決定事項であった。



話によれば、やはり委員会として結衣の勝手な行動を無視する訳にはいかない、という意見もあったのだが、委員の一人である松島奈々子が「挑戦者決定トーナメントを優勝した有力選手である井上真緒が処分を受けてプロレス引退をしたばかりなのに、ここで現王者結衣にまで何らかの処分が下ればA−1王座の運営に多大な支障を来たす事になる」と、結衣の処分に猛反対したのだという。


そしてさらにはあの秋本靖までもが直々にA−1実行委員会に出向き、「結衣の参戦を勝手に了承した我々a−1王座サイドにも責任がある」と、結衣に対して寛大な措置をとるように求めていた事が分かった。






『奈々子さん、秋本さん、ありがとうございます・・・』


事務所を後にした結衣は、自分の為に尽力してくれた2人に感謝していた。


結局のところ、宿敵だった真緒はプロレスから引退したが、自分はまだまだ王者として戦いを続ける必要があるという事なのだろう。


以前奈々子が言っていた通り、真緒もきっとその事を望んでいるに違いない。


そしてその真緒と同じように、結衣が王者である事を望んでいるメイサといつか、最高のファイトが出来れば・・・・




『あーっ!!そういえば“アレ”返さなきゃ!!!』







「はあーっ・・・」


井上真緒のマネージャーは浮かない表情で、真緒が入院している病院を訪れていた。


真緒の怪我自体は順調に回復し、退院も間近に迫っているものの、肝心の真緒自身が元気を失っているからである。


リハビリにしても、退院後予定されている仕事の打ち合わせにしても、真緒はとても真面目に、一生懸命に取り組んでいた。


しかし会話している時の声のトーンや、時折ふと浮かべる寂しげな表情が、真緒の心にぽっかりと穴が開いてしまっている事を、否が応でも感じさせていた。


そしてその原因が何なのかも、マネージャーはよく理解していた。






「どう?調子は・・・」


病室を訪れたマネージャーが声をかけると、真緒は「うん」と素っ気無く返事をするだけで、それ以上何も言わなかった。


入院してからずっとこういう調子なので、マネージャーも特に気にする事もなかったのだが、これまでと違い、真緒の表情が心なしか少し明るくなったように感じられた。



『少しは元気になってくれたのかな・・・・』


マネージャーは希望的観測と思いつつも、そんな事を考えながら、真緒と退院後の仕事の打ち合わせを始めた。




「それじゃあ・・・」


打ち合わせが終わり、マネージャーが立ち上がると、真緒は来た時と同じように「うん」と素っ気無い返事を返していた。


打ち合わせの間中も真緒は相変わらずで、仕事の話には熱心に耳を傾けていたものの、どこかその表情には陰りが感じられた。



『何をしてあげれば、元気になってくれるんだろう・・・・』


真緒の心の陰りを感じながらも、何も出来ない自分に苛立ちを感じながら、マネージャーは病室を後にしようとしていた。


そしてマネージャーがドアノブに手をかけた瞬間、真緒がポツリとつぶやいた。



「マネージャー・・・」


呼び止められたマネージャーが振り返ると、真緒はしばらく間をおいてから、ゆっくりと口を開いた。



「ワタシ・・・がんばるから・・・仕事・・・がんばるから・・・・」


真緒はそれだけ言うと、口元に微かな笑みを浮かべた。


決して力強い口調では無かったのだが、真緒の言葉と笑顔は、マネージャーがこれまで感じていた不安を、まるで魔法のように一瞬で消し去っていた。






マネージャーが帰った後、真緒はベッドの上で一枚の写真を眺めていた。



この日真緒の元に、数枚の写真が届けられていた。


それは先日行われたOTK興行の模様を収めた写真で、真緒の宿敵である荒垣結衣が、OTKのメンバー達と激闘を繰り広げている様子が収められていた。


しかし真緒が手にしている写真は、結衣が闘っている写真ではなかった。


まだ試合が始まる前の、その日対戦する予定だった大島裕子の入場をリング上で待っている結衣の姿を写したものだった。




写真の中で気合十分の表情でニュートラルコーナーの前に立っている結衣の頭には、真緒にも見覚えのあるバンダナが巻かれていた。

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