紀華の災難

 ここはラスベガスのとあるホテルのパーティー会場。会場は盛大なパーティーの真っ最中である。
 この日、ラスベガスで日本で大人気の格闘技「ケイワン」の興行が開催され、その打ち上げパーティーが行われていたのだった。

 「ケイワン」ラスベガス興行は大成功のうちに幕を閉じ、必然的にパーティーも盛り上がりを見せていた。そして激闘を繰り広げたファイターや番組スタッフ達が談笑する中に、女優の藤原紀華の姿があった。

 「どうもお疲れ様でしたー!」
 真っ赤なカクテルドレスに身を包んだ紀華がスタッフや選手にねぎらいの声をかけている。紀華は「ケイワン」のテレビ中継の司会を務めるためにラスベガスに来ていたのだ。胸の谷間も露わなドレス姿の紀華に目を奪われる参加者達。やがてパーティーが終わり、紀華が会場を後にしようとしたところ、スタッフの一人が紀華に声をかけた。

 「紀華さん、ちょっといいですか?」
 紀華に声をかけたスタッフの男は、パーティーの雰囲気にそぐわない青ざめた表情を見せている。その様子から紀華も何かただならぬ事が起こったのだとすぐに察することが出来た。

 スタッフの男に導かれるままにホテルの一室に招き入れられる紀華。そこには紀華が見たことの無い、現地の人間らしい二人の屈強そうな男の姿があった。紀華に声をかけたスタッフの男同様、部屋にいる男達も神妙な面持ちを見せている。一体何が起こったのかと不安げな表情を見せる紀華にスタッフの男が重い口を開き、話を切り出した。

 「実は…谷山さんが誘拐されたんです。」
 思いもかけないスタッフの一言に動揺を隠せない紀華。一瞬、ドッキリや冗談ではないかと言う考えが頭によぎったものの、その場の重苦しい雰囲気がすぐにそれをかき消してしまった。

 谷山とは格闘技評論家の谷山貞治の事である。ケイワンのイベントプロデューサーも努める谷山は、当然今回のラスベガス興行にも参加していた。

 スタッフの男の話では、谷山は大会が終わった後に今回の大会の現地プロモーターと会う約束をしていたのだが、目撃者の話によると谷山が会場を出たところで怪しい男達に囲まれ、あっという間に車で連れ去られてしまったのだという。

 「それでさっきホテルの方にこの写真と手紙が届いたそうです。」
 紀華が見せられた写真は、谷山が椅子に縛り付けられ、頭に銃を突きつけられている写真であった。その写真だけでも谷山がおかれた状況がただ事ではないことは容易に察することが出来た。

 「犯人は一体何を要求してるの?」
 紀華がスタッフの男にに尋ねると、さっきまで無言だったスタッフではない男がもう一枚写真を取り出して紀華に見せた。

 「これは…」
 もう一枚の写真に写っていたのは紀華本人であった。そして男のもう一人が手紙を見せながら、紀華に話し掛ける。
 「ミスノリカ、犯人はあなたに来るようにといっています。」

 全く予想外の犯人の要求に戸惑う紀華。今紀華に話し掛けた男と写真を見せた男は警察の人間だという。紀華は写真と一緒に送られてきたという手紙に目を通すが、確かに指定した場所、時間に紀華一人で来るようにと書かれている。紀華は全く不可解な犯人の要求に困惑を隠すことが出来ない。

 「ミスノリカ。犯人の意図はわかりませんが、人質の安全を第一に考えるとやはりあなたに行って頂かなければなりません。しかしご安心下さい。我々が必ず、ミスター谷山とあなたをお守り致します。」
 警察の男の言葉に、紀華はしぶしぶ頷くしかなかった。

 
 『谷山さん、大丈夫かしら…』
 紀華はホテルが用意した車で犯人の指示した場所に向かっていた。そしてすぐ後ろには先ほどの警察の男達がパトカーではなく、普通の乗用車で紀華の車を追走して来ている。紀華の胸中では谷山を心配する気持ちと、どうしてあんな男の為に私まで危ない目にという気持ちが複雑に絡み合っていた。


 紀華は以前、事務所の社長からの要請で地下プロレスのマットに上がっていた。美しい女性タレント達がリングで男性レスラーと戦うという、アンダーグラウンドの世界で紀華は、持ち前の運動神経の良さでチャンピオンにまでなる程の実力の持ち主であった。

しかし紀華と対戦する男性レスラー達は全て、紀華のダイナマイトボディを楽しむ事が目的で試合をしていたので、紀華は試合をするたびにいやな思いをさせられていた。その中でも一番嫌っていたレスラーが、今紀華が助けようとしている谷山であった。

 谷山は実力的には全く紀華の相手にはなっていなかったのだが、他のレスラーやレフェリーの手を借りては、紀華のダイナマイトボディを楽しんでいた。しかし地下プロレスはあくまでも裏の世界のモノであり、世間に知られることは御法度だった為、紀華は普段の仕事では普通に谷山に接していたが、心の中ではいつも嫌悪感を抱いていた。そして谷山の方もそれをネタに紀華にセクハラまがいの事をするような事はなく、ごく普通の仕事相手として接していたのだった。

 いくら嫌いな相手でも命にかかわる事だけに放っておく訳にはいかない、と必死で自分を納得させようとする紀華。そんな風に紀華が考えていると、信号待ちをしている紀華達の乗った車のすぐ横に黒の乗用車が二台止まり、中から大勢の男達が降りてきて、紀華達の乗った車を取り囲んだ。

 『何なの、一体?』
 車を取り囲んでいる男達をみて驚く紀華。後ろを振り返ってみると、後ろの車から警察の男達が引きずり出されて銃を突きつけられている。そして紀華の車を囲んだ男達が銃を取り出し、ドアを空けろというジェスチャーを見せる。それに運転手がしぶしぶ応じるようにドアロックを解除すると、助手席と後部席の両側のドアが開き、男達が車の中に乗り込んでくる。

 「車を出すんだ!」
 助手席に乗り込んだ男が運転手に銃を突きつけて指示を出し、紀華の車は警察の男達の車を置いてスタートしてしまった。

 紀華を乗せた車は怪しげな男達に乗っ取られたまま、谷山が拉致されている場所に向かっていた。助手席の男は運転手の即頭部に、紀華をはさむように後部座席に乗っている二人の男は両側から紀華の豊かなバストに、それぞれ銃を突きつけている。

 「ねえ、谷山さんは無事なの?」
 紀華は恐怖に怯えながらも、勇気を振り絞って男達に尋ねる。しかし男達は全く口を開こうとはしない。ただ紀華の右側に乗っている男だけが紀華のカクテルドレスから除く豊かな胸の谷間に視線を注ぎ、いやらしい笑みを浮かべている。一刻を争う事だけに、セクシーなドレスのまま車に乗り込んだ紀華だったが、この男の視線を見て着替えてこなかった事を後悔していた。

 紀華を乗せた車の後方には、先ほど紀華達を襲った二台の車が、ピッタリと後を付けている。どうやら警察の男達とは完全に分断されてしまったようである。そして紀華を乗せた車は目的地である古い建物の地下の駐車場に入っていった。

 駐車場に入るとすぐ、紀華は車から引きずり出されるように降ろされ、男達に取り囲まれる。
 「手を上げるんだ。」
 リーダーらしい男が紀華に銃を突きつけてそう言うと、周りの男達も一斉に紀華に銃をむけてくる。その横では運転手も同様に銃を突きつけられている。紀華がしぶしぶ両腕をあげると、リーダーの男は無言のままあごをゆっくり動かし、紀華についてくるように合図をする。男達に囲まれたまま紀華は古い建物の中に入っていった。

 紀華は相変わらず両手を上げて男達に囲まれたまま、薄暗い通路を歩いていた。一体自分はどこに連れていかれるのだろう?紀華がそう考えていると、リーダーの男がドアの前で立ち止まり、そのドアを開ける。
 「中に入るんだ。」
 リーダーの男の指示に従い、部屋に入る紀華。他の男達も紀華に続いて部屋の中に入り、さっきまでと同じように紀華を取り囲んだ。

 「服を脱ぐんだ。」
 リーダーの男の言葉に紀華の表情がこわばる。しかし男の指示に逆らえない事は紀華自身十分に分かっていた。男達がじっと見守る中、紀華は意を決してドレスの肩紐をずらし始めた。
 
 「オオーツ!」
 紀華が身にまとっていた真っ赤なカクテルドレスがストンと床に落ちるのと同時に
男達は感嘆の声を挙げる。88・61・89のダイナマイトボディの美女が下着姿で目の前にいるのだから無理もないだろう。しかしリーダーの男だけは下着姿の紀華に対して変わらず冷たい視線を送っている。

 「全部だ。」
 リーダーの男のその言葉を予想していたのか、あきらめたような顔で紀華は下着を外し始める。男達の視線が肌に突き刺さってくるのを感じながら、紀華はついに一糸まとわぬ姿になった。

 リーダーの男は仲間の一人に、紀華の下着とドレスを拾うように指示を出す。男は紀華の足元に落ちたドレスと下着を拾い上げながら、全裸になった紀華を足元から舐め回すように凝視している。その男の視線から逃れようと両腕でバストと秘部を覆う紀華。するとリーダーの男が他の男の一人に何かを持ってこさせる。

 「これを着るんだ。」
 リーダーの男がそう言いうと、男の一人が持ってきた箱を開け、その中身を取り出して紀華に見せる。

 『これって…』
 紀華が目にしたのはストリッパーやサンバの踊り子が着るような面積の小さいゴールドのマイクロビキニであった。水着というよりも紐に小さな布がくっついているといった代物で、紀華が地下プロレスのマットに上がっていた時のコスチュームと同じような形をしている。紀華はしぶしぶそのビキニを手に取り、自慢のボディに身につける。

 「ワオーッ!」
 「ワンダフル!」
 紀華の超極小ビキニ姿に、声をあげる男達。乳首と秘部以外ほとんど露わになったダイナマイトボディはある意味全裸よりも卑猥である。

 『これだったら何も着てないのとおんなじだわ…』
 場末のストリップ嬢のような格好にさせられ、言い難い屈辱感を覚える紀華。リーダーの男はそんな紀華に追い討ちをかけるような一言を放つ。

 「これから君には、お客様の前でステージを努めてもらう。」
 リーダーのこの言葉に紀華は眉をひそめ、強気に言い返す。
 「ステージですって?こんな格好で私にストリップでもやらせようって言うの?」
 「いや、もっと君にふさわしいステージさ。」
 リーダーはそういうと、他の男にまた別の箱を持ってこさせる。

 『今度は何なの?』
 目の前に二つの箱が置かれ、男達がその蓋を開けた瞬間、紀華はその中身を見た愕然とした。

 『まさか…』
 箱の中には紀華が今身に付けている極小ビキニと同じゴールドのガウンとリングシューズであった。
 「どうだ、一番君にふさわしいものを用意させてもらったよ。アクトレス、いや、アンダーグラウンドレスリングのチャンピオンである君に。」

 「どうしてそれを…」
 リーダーの男の予想外の言葉にショックを隠し切れない紀華。なぜこの男が自分が地下プロレスのリングに上がっていた事を知っているのか?
 「君にはこれからリングで戦ってもらう。相手はチャンピオンの君にふさわしい相手だ。退屈はさせないよ。分かっているとは思うが君に残された選択肢はイエスだけだ。君とあの男がここから無事に帰るためのね。」


 大勢の観客が見守る中、紀華はゴールドのガウンを身にまとい、ラスベガスの古い建物の中に設けられた特設リングの上に立っていた。リングの周りには紀華を拉致した男達がセコンドのように待機している。無論セコンドとしてではなく、紀華が逃げ出さないように待機しているのだが、紀華は自分と谷山の命がかかっているだけに、とっくに戦う覚悟を決めていた。

 『こうなったらやるしかないわ!』
 まだリング上に現れていない対戦相手に闘志を燃やす紀華。しかし観衆達はそんなリング上の紀華の心中を知るはずもなく、冷やかし混じりの歓声を送っている。最初の場内アナウンスで「日本の有名女優であると共に、地下プロレスのチャンピオンである」と紹介された紀華に、観衆達は興味深々の様子。そしていよいよ紀華の対戦相手が入場してくる。

 「皆さんおまたせしました。日本の地下プロレスチャンピオン、ノリカと戦う為に今夜この会場にやって来たのは、ボツワナの怪人、モンスターキマラ!」

 場内アナウンスと共に紀華の視線の先に姿を現したのは、身長200センチ、体重170キロを誇る巨漢の黒人であった。坊主頭に裸足、顔や体にペイントを施していて、リングタイツ代わりに腰蓑をつけたその姿はどこかの部族を彷彿とさせる。その並外れた巨体だけでもかなりのインパクトがあるのだが、それ以上にその異様ないでたちが得体の知れない恐怖感をかもし出していた。


 モンスターキマラと紹介されたこの男は、れっきとした元プロレスラーで過去に日本のマットにも参戦している。当時はモンスターキマラ1号として、同じメイクをしている1号よりも少し小さいモンスターキマラ2号とタッグチームを組んで暴れ回っていた。

 見た目はよく似ている二人だが、1号の方はレフェリーの言うことを全く聞かずにリング内外を暴れまわる怪奇レスラーだったのに対し、2号はどこか憎めない愛嬌のあるレスラーであった。その後2号の方はそのキャラクターが受け、日本人とタッグを組んだりして人気者になったのだが、怪奇レスラーの1号は日本のマット界では受け入れられず、消息不明となって日本のマット界からすっかり忘れ去られていた。

 それから月日が経ち、モンスターキマラ1号はアメリカの地下プロレス界に突如姿を現し、地下プロレスラーとして活動を再開。そして今回紀華の対戦相手として、ラスベガスの地下プロレスに登場したのだ。


 モンスターキマラはまるでジャングルから都会に迷い込んだゴリラのように、大きな目を見開き、辺りを見回しながら少しずつリングに近づいてくる。そしてその後ろからはキマラと同じような顔のお面をかぶったスーツ姿のセコンドらしき男がついてきている。さしづめキマラを操る猛獣使いといったところか。

 『こんな怪物みたいな人が相手なんて…』
 紀華は自分の何倍もあるような奇怪な黒人レスラーが対戦相手として現れたことに動揺を隠すことが出来ない。過去にも元レスラーと戦った事のある紀華だが、この男は見るからに人間らしい理性が感じられず、同じリング上にいたらどんな目に遭わされるかと考えただけで恐ろしくなってくる。しかもリングの周りには、自分を拉致した男達が取り囲んでいるだけに、逃げ出すことも不可能である。

 『あんな人とまともに戦うなんて無理だわ。』
 モンスターキマラがリングに近づくにつれ、紀華の不安はどんどん膨れ上がってきている。そしてリング下にやって来たキマラはすぐにリングに上がらず、まるで何かの儀式のように、リングの回りを一周する。その奇怪な行動をじっと見守る紀華。キマラはリング上を見上げ、今夜の獲物である紀華の姿を見るや否や、その巨体には似合わない素早い動きでリング内に入ってくる。

 紀華はキマラと目が合った瞬間、身にまとっているガウンの紐を解き、リングに入ってきたキマラに目掛けてガウンを放り投げる。

 「ウガアアッ!」
 紀華の投げたガウンがキマラの頭にかかり、視界を遮られたキマラは紀華を完全に見失っている。紀華はガウンを被ったままのキマラの背後に回りローキックを繰り出す。バシッ、バシッ、と乾いた音がする度に大げさな悲鳴をあげるキマラ。しかし紀華がローキックを止めた途端、キマラは体を反転させ紀華の方に腕を伸ばしてくる。

 『危ない!』
 キマラの指先が偶然紀華の肩口に触れ、紀華は慌ててキマラから離れる。いくら見えてないとはいえ、近づき過ぎると捕まってしまう危険がある。紀華はキマラの正面にまわり、自分の姿が見えていない事を確認すると、キマラのひざに低空ドロップキックを決める。

 「アアアアオッ!」
 ドロップキックをひざに受け、大声を上げるキマラ。巨漢レスラーは下半身が弱いというセオリー通り、紀華の攻撃が予想以上に効いている様子。しかもキマラは相変わらずガウンを被ったままで、紀華の事が見えていない。
 『今のうちに攻めないと…』
 紀華は素早くコーナーに行き、コーナーポストに上ると、モンスターキマラ目掛けてミサイルキックを放った。

 『あっ!』
 紀華の放ったミサイルキックは見事にモンスターキマラの背中辺りをとらえるが、170キロの巨体は50キロあまりの紀華を簡単に弾き飛ばしてしまい、紀華は受身を取りきれずにマットに叩きつけられる。

 『いったーい…』
 紀華が痛みをこらえて立ちあがろうとすると、目の前ではキマラのセコンドらしき覆面姿の男がリングに上がり、キマラが被っているガウンを取ろうとしている。それを見て紀華はキマラ達から離れようとするが、背後に立っていたレフェリーとぶつかってしまう。

 『ちょっと邪魔よ!』
 レフェリーの男はまるで紀華の動きを邪魔するかのように背後に立ったまま紀華にファイトを促している。レフェリーとはいえ紀華の一回り以上大きい男だけに、押しのける事もできない。紀華とレフェリーがもみ合う間に、セコンドの男がモンスターキマラが被っているガウンを剥ぎ取ってしまう。ようやく前が見えるようになったキマラは一目散に紀華に襲い掛かった。

 「ウガアアアッ!」
 キマラは奇声をあげて紀華に走りより、紀華の腕をつかむと力任せに自分の方に抱き寄せる。
 「いやあっ、離して!」
 2メートル、170キロの怪人に抱きつかれ、思わず悲鳴をあげる紀華。キマラは紀華を抱きすくめると、その美しい顔をベロベロとなめ始める。

 『んん、気持ち悪い…』
 紀華はキマラのざらざらした舌の感触に嫌悪感を示すが、全く身動きができない。キマラは顔を舐めまわすだけでは飽きたらず、紀華のボディを好きなように撫で回している。

 「やめて、離して!」
 身動きの取れない紀華は声を出して抵抗するが、当然聞き入れられるはずも無い。キマラは紀華をコーナーに連れていくと、のど輪の状態で紀華をコーナーマットに押さえつける。
 「苦しい…」
 キマラの大きな手でコーナーに押さえつけられた紀華。さらにキマラはもう一方の手で紀華の豊かなバストをもみ始める。

 「い・・や・・」
 紀華は抵抗できぬまま、自慢のバストをいじくりまわされている。キマラは紀華の大きなバストを包み込んでしまう大きな手で、その感触を楽しんでいる。ここでレフェリーが二人の方に近づいてきたので、紀華はブレイクさせに来たのかと思ったが、レフェリーは何を思ったかその場にしゃがみこみ、紀華の長い脚を撫で回し始める。

 『ちょっと何やってるのよ!』
 レフェリーの理不尽な行動に怒りを覚える紀華。さらにいつのまにか背後のエプロンにセコンドの男がやってきていて、レフェリーと同じように紀華のもう一方の美脚を撫で回している。

 『こんなの卑怯だわ!』
 キマラ一人相手にするのも無理があるのに、実質三人を相手している紀華。ようやく三人がかりのセクハラ攻撃が終わったと思いきや、キマラにリング中央に引きずり出され、ネックハンギングツリーにきめられる。

 「グッ…」
 リング中央、軽々とキマラに持ち上げられた紀華は苦悶の表情を見せている。紀華が苦しさのあまり足をじたばたさせていると、再びレフェリーとセコンドが近づき、両側から紀華の長い美脚に抱きついて、Tバックのヒップを撫で回す。

 『ちょっと何なのよ!』
 男達の卑劣な行動に紀華は眉をひそめるが、抵抗する事が出来ない。キマラは男達が紀華を抱えているのを見て、いったんネックハンギングを外すと、不安定な状態の紀華のバストを両手で鷲づかむ。

 「アアン!」
 紀華は男たちに抱えられ、宙に浮いた状態で自慢の88センチのバストをキマラの黒い手でこねまわされている。観衆達もそのエロチックな光景に興奮している。

 「お願い、離して、いやあっ!」
 紀華はキマラの手をどけようと必死に抵抗するが、所詮女の力ではどうする事もできない。紀華の両脚を抱えているレフェリーとセコンドは相変わらず紀華の卵のような真っ白いヒップを撫で回している。キマラは紀華のバストの感触をしっかり堪能した後、再びネックハンギングで紀華を持ち上げ、無造作に放り投げる。

 「ううっ!」
 マット上に落とされ、おもわずうめき声をあげる紀華。ネックハンギングで受けたダメージが大きく、倒れたままなかなか動く事が出来ない。キマラはそんな紀華のダイナマイトボディを血走った眼で舐めまわすように凝視している。身の危険を感じた紀華は何とか立ちあがろうとするものの、体が思うように動かない。そして紀華がようやく上体を起こそうとしたところ、キマラが近づいてきて紀華の背中に張り手を見舞う。

 『グッ…』
 バチーンという音が響き渡り、紀華の背中にはくっきりと手形がついている。あまりの衝撃で紀華は息も出来ない様子。キマラは動きの止まった紀華をひざの上に乗せると、まるで母親が小さな子供にそうするように、今度はその桃のようなヒップに平手打ちを連発する。

 「うっ!…あうっ!…ううっ!」
 あまりに強烈なスパンキング攻撃に、紀華はうめき声をあげながら苦悶の表情を浮かべている。ようやくキマラがスパンキングをやめ、紀華を一旦解放するが、紀華は背中とヒップの痛みでマットに崩れたまま動く事が出来ない。自分の三倍以上もある怪物を相手にしている以上、今の展開のままではやられるがままである

 『何とかしないとこのままじゃ…』
 ダメージを受けながらも反撃の方法を考える紀華。しかしそんな紀華をこれ以上休ませまいとばかりにキマラがゆっくりと近づいてくる。

 『はっ!』
 紀華はキマラが近づいてくるのに気づき、マットに両腕をついたまま動けないふりをする。そしてキマラが自分の正面に立ったところで勢いをつけて立ち上がり、キマラの急所目掛けて頭突きを見舞う。

 「ホーッ!」
 股間に衝撃を受けたキマラは叫び声をあげて悶絶する。全く予想外の攻撃だっただけに、かなりのダメージを受けた様子。紀華はよろよろと立ちあがると、股間を押さえているキマラに対し、浴びせ蹴りを見舞う。

 「アオーッ!」
 紀華の浴びせ蹴りは頭を下げていたキマラの耳の辺りにヒットする。しかも硬いかかとの部分が当たった為に、キマラは相当痛がっている。さらに紀華は、キマラの頭が下がったままなのを見てロープに走り、ジャンプしてキマラの後頭部目掛けてかかと落としをきめる。この紀華の連続攻撃でついにキマラがひざまづく。

 『今だわ!』
 紀華はひざまずいているキマラの肩をまたぎ、その腕を力いっぱい引き上げる。以前に元レスラーと対戦した時にギブアップを取った、得意技の腕固めだ。怪物レスラーとの攻防で神経とスタミナをすり減らした紀華はここぞとばかりに勝負をかける。

 「アアアーッ!」
 紀華に腕固めをきめられ大声を上げるキマラ。完全に油断していた為に、ほぼ完璧に技が入っている。勝利を確信し、渾身の力でキマラの腕をねじ上げる紀華。しかしここでキマラのセコンドが横から近づいてきていることに、紀華は気づいていなかった。

 セコンドの男は腕固めをきめている紀華の横に立つと、何か紐のようなものを紀華の首に巻きつけた。  
 「グウッ!」
 キマラに腕固めをきめていた紀華はいきなり首をしめられ、たまらず技を離してしまう。セコンドの男が持っていたのは、紀華が着ていたガウンの帯であった。男はそのままガウンの帯を引っ張り、紀華をキマラから離れさせる。

 『苦しい…』
 紀華は首に巻きついたガウンの帯に指をかけて苦しさを和らげようとする。ここでレフェリーがやってきて、セコンドの男に注意をするが男はガウンの帯を離そうとしない。

 『早く止めさせて!』
 紀華は声が出せないので、眼でレフェリーに訴えかけるが、レフェリーは事もあろうか紀華の無防備になっているバストに手を伸ばす。

 『ちょっと何やっているのよ!』
 紀華の抗議の視線にも構わずレフェリーは紀華のバストをもみ始める。一応口ではセコンドに注意を与えているものの、全く止めさせる気は無い様子。いくらレフェリーとセコンドとはいえ紀華よりも大柄な男だけに紀華はどうする事も出来ない。セコンドの男は紀華の苦しみ方を見てようやく手を緩め、レフェリーと同じように紀華のバストを揉み始める。

 「いやっ、離して!」
 紀華はまとわりつく二人の男に抗議するが、男達は紀華から離れようとしない。そして三人がもみ合っている間に、ダウンしていたキマラが息を吹き返す。

 キマラは立ちあがるとすぐ、二人の男ともみ合っている紀華に向かって突進する。
 「ウガアアアッ!」
 紀華がキマラに気づいた時はすでに遅く、170キロの体当たりを受けて弾き飛ばされてしまう。

 「ううっ・・・」
 マットに倒れている紀華をじっと見つめるキマラ。さらにキマラは巻き添えを食って倒れているレフェリーとセコンドに声をかけるとコーナーに向かい、コーナーポストを背にじっと待機している。そしてレフェリーとセコンドはふらふらしながらも、倒れている紀華を無理やり引きずり起こすと二人がかりで紀華をキマラの方に向かってホイップ。それと同時にキマラがダッシュし、紀華にカウンターの体当たりを浴びせる。

『うっ・・・』
二発目の体当たりで再びマットに叩きつけられた紀華は倒れたまま全く動く事が出来ない。そんな紀華の周りを三人の男達が取り囲み、そのダイナマイトボディを舐めまわすように鑑賞している。やがてキマラが紀華を無理矢理引きずり起すと、紀華をバックから軽々と抱えあげる。

 『ちょっとやだ…』
 アトミックドロップの体勢で抱えられた紀華は、自分の股間とヒップが丸見えの状態になっているのに気づき眉をひそめるものの、抵抗することも声をあげることもできない。そんな紀華の無防備な下半身をレフェリーは目を皿のようにしてじっと見つめている。
 そしてセコンドの男がキマラに対し、円を描くようなジェスチャーを見せると、キマラはその体勢のまま、周囲に見せびらかすかのようにリング内を歩き回る。

 『いやっ、降ろして!』
 恥ずかしい格好をさせられ、羞恥で顔を赤らめる紀華だが、体当たりのダメージが大きく、相変わらず声も出すことができない。
 キマラはリングを一周した後、ロープ際にやってきて紀華をトップロープの上に跨らせる。

 「はうっ!!」 
 ワイヤー製のロープが股間に食い込み、紀華は激痛でうめき声を上げる。そんな紀華にさらに追い討ちをかけるように、レフェリーがリング内から、場外に出たセコンドがエプロン下から紀華の美脚を掴んで引っ張り始める。

 「ぐっ、うっ!」
 股間にさらに負荷がかかり、苦悶の表情を浮かべる紀華。キマラは紀華の正面に回り、両肩を押さえつけながら紀華の顔をベロベロと舐め回している。レフェリーとセコンドも、紀華のスラリと伸びた肉付きのいい脚にしがみついたまま、その太ももやふくらはぎを同じように舐めまわしている。

 『いやっ、気持ち悪い…』
得体の知れない男三人に体中を舐めまわされ、たまらず身をよじる紀華だが、不安定なロープ上に三人がかりで捕まえられていては、ほとんど無駄な抵抗である。
 そして紀華の顔を舐めまわしていたキマラが、無防備になった紀華の88センチのバストをその無骨な真っ黒い手で揉み始める。

 「いやっ、あうっ、ふうっ!」
 紀華は男たちの卑劣な三人がかりの攻撃の前になすすべなくうめき声を上げるだけである。やがてレフェリーとセコンドが離れ、キマラが左手で紀華のあごを、右手でバストを掴み、そのまま持ち上げ変形のネックハンギングツリーを決める。

 「ううっ…」
 キマラに持ち上げられた紀華は抵抗することも声も上げることができず、もはやキマラのなすがままとなっている。キマラはそのままの体勢でリング中央に行き、チョークスラムで紀華をマットに叩きつけた。

 リング上、マットに背中を打ち付けた紀華が大の字になって倒れている。カバーに行けばカウントスリーが入りそうな状態にもかからわず、キマラや他の男たちは動く事のできない紀華の肢体に舐め回すような視線を這わせている。いくら地下プロのチャンピオンとはいえ、2メートル、170キロの怪物が相手では一対一でも到底かなわないのに、二人も相手に荷担しているのだからやられるのが当然である。
 しかし男達は日本人離れをしたダイナマイトボディの美人女優を目の前にして、まだまだ楽しみたいといった様子である。

 『まだこれ以上私をいじめるつもりなの…』
 朦朧としながら男達の動向を伺う紀華。パワーの差が圧倒的な上、自分が抵抗できない状態にある事が、紀華の闘争心を萎えさせている。しかしキマラはそんな紀華にも容赦なく欲望剥き出しの表情で襲いかかっていく。

 「はっ?」
 紀華はキマラが自分の顔を覗き込んでくるのを見て、何とか起き上がろうとするものの、片手で首を掴まれ、いとも簡単に押さえつけられてしまう。
 「あぐっ…」
 キマラにコブラクローのような体勢で押さえ込まれた紀華は両腕でキマラの手首を掴み、何とかキマラから逃れようとするが全く歯が立たない。キマラは紀華を左手だけで押さえつけると、空いている右手で紀華の体をまさぐり始める。

 「いやっ、やめ…」
 そのおぞましい手の感触に紀華は脚をバタバタさせて嫌悪感を示していた。紀華の色白の身体の上をキマラの大きな黒い手が這い回る様子は毒蜘蛛タランチュラを彷彿とさせる。そのタランチュラのようなキマラの手のひらが、呼吸に合わせて上下運動している紀華の弾力に満ちたバストに吸いついていく。

 「あっ、いやっ!」
 紀華は掴んでいたキマラの左手首から片手だけを外し、バストに食い込むキマラの芋虫のような太い指を引き剥がそうとするが、それも全く無駄な抵抗であった。キマラはそんな紀華の行動をうっとうしく思ったのか、いったんバストから手を離し、紀華のお腹にボディブローを叩き込む。

 「ぐふうっ!」
 ボディへの強烈な一撃に思わずうめき声を上げる紀華。さっきまでばたつかせていた長い美脚もぱったりと動きを止めてしまう。キマラは紀華が動けないのをいい事に今度は両手でバストを鷲掴み、その顔をベロベロと舐め回す。

 「んふっ、いやっ!」
 キマラの圧倒的なパワーを前に、もはやなすすべがない紀華。そんな紀華の様子を見て、さっきまで静観していたレフェリーとセコンドが無防備になっている紀華の下半身に手を伸ばしていく。

 キマラに押さえ込まれた紀華の両サイドにやってきたレフェリーとセコンドは、紀華の美脚をそれぞれ押さえつけると、その肉付きの良い太ももにほお擦りし始める。
 『!?』
 紀華は無警戒だった下半身に違和感を覚え、どうにか抵抗しようとするが、ただでさえキマラに上半身を押さえられているのに男二人がかりで押さえられてはどうする事もできない。さらに三人の男達は紀華の身体をうつぶせにしたり、脚を開かせたりしてバスト、ヒップを中心に様々な場所を手や舌でむさぼっていく。

 『ちょっと、いい加減にしてよ!!』
 いやらしい男達の責めにもはやされるがままの状態の紀華。ここでセコンドの男が紀華をコーナーに逆さ吊りにしようと提案。レフェリーとキマラも賛成し、キマラが倒れている紀華を引きずり起こすと、そのまま抱え上げてコーナーに向かう。

 「グエッヘッヘッヘ!」
 紀華を抱きかかえて気味の悪い笑い声をあげながらコーナーの前にやってきたキマラはそこで立ち止まり、紀華を逆さ吊りにしようとするが、紀華がその一瞬止まったところを見計らってキマラの耳に思いっきり噛み付いていった。

 「ウギャアアアー!!」
 耳をかまれたキマラはその激痛で悲鳴をあげ、たまらず紀華を手から放してしまう。レフェリーとセコンドも予想だにしなかった紀華の噛み付き攻撃に驚き、その場で立ち止まっている。ようやくキマラから解放された紀華は着地するなり、耳を押さえているキマラの股間を思いっきり蹴り上げる。

 「アオオオオオウ!!」
 紀華の急所攻撃を受け、再び奇声をあげるキマラ。さらに紀華は、キマラの動きが止まったのを見て、中腰になったキマラのひざを踏み台にして、シャイニングウィザードをきめる。

 「ギャアアアアッ!」
 紀華のひざがさっき噛み付かれた耳のあたりを直撃した為、キマラはたまらず声をあげてマットにひざまづく。これで勢いに乗った紀華は、振り返り様に今度はセコンドの男に急所蹴りをきめ、さらにその頭をつかんでDDTをきめる。この紀華の猛反撃にレフェリーも完全に圧倒され、二人を助けることも忘れ呆然と立ち尽くしている。

 「さあ、いくわよー!」
 完全に勢いに乗った紀華は反対側のコーナーに行き、対角線上のキマラをめがけて
ダッシュ。うずくまっているセコンドの男を踏み台にしてジャンプし、キマラに二発目のシャイニングウィザードを見舞う。距離をとってダッシュしたのと、セコンドの男が踏み台になった事で、一発目よりも威力が倍増したシャイニングウィザードをもろに食らったキマラはたまらずマットに崩れ落ちる。

 「もう、許さないわよ!!」
 完全に形勢逆転した紀華だが全く手を緩める様子は無く、コーナーにうずくまっているキマラの顔面を蹴り続けている。もはやキレた状態の紀華の迫力に圧倒され、キマラは怯えてしまっている。キマラが戦闘不能になっているのを見てレフェリーはついにゴングを要請。紀華の勝利が館内に告げられると、さっきまで紀華のやられる姿を喜んでいた観衆達も立ち上がり紀華に大きな声援を送る。

 しかし紀華はレフェリーの男に手を上げられても全く喜ぶ様子は無く、レフェリーの男にも急所蹴りをきめると、さっさとマットを降りてしまう。試合前紀華を逃がすまいとリングサイドを取り囲んでいた男達も、花道を引き返す紀華をただ黙って見送った。


 試合会場となった建物の一室に、今日の地下プロレスの仕掛け人である男の姿があった。その男とはラスベガスを代表する大物プロモーターで、実は「ケイワン」ラスベガス大会の仕掛け人でもある男だった。
 男は紀華の試合をこの部屋に設置したモニターで観戦した後、今日の地下プロレスのもう一人の仕掛け人を部屋に呼び寄せていた。

 「サンキュー、今日は君のおかげで思う存分楽しめたよ。ミスター谷山。」
 男が感謝の言葉をかけたのは、誘拐されたはずの谷山貞治であった。
 実は誘拐事件は偽装で、紀華を地下プロレスに引っ張り出す為にプロモーターと谷山が画策したものであった。

 大のキャットファイトマニアであるプロモーターが、今回の「ケイワン」の打ち合わせで同じ趣味を持った谷山と意気投合し、日本の地下プロレスの情報を聞き、それならぜひ紀華にラスベガスで試合をさせたいと谷山に協力を求め、紀華とまともに交渉する事は難しいという事で、現地スタッフ達を巻き込んで誘拐事件の芝居をしたのだった。当然警察や紀華を拉致した男達もプロモーターの側近達で、そうとは知らない紀華はまんまとこの二人の罠にはまったのだ。

「それにしてもヒドイ目にあったねえ。できることなら私が彼女と一戦交えたかったのだが、まさかあのモンスターに勝つなんて…君が言ってた通り相当なモンだねえ、彼女は。」
 「ええ、私もいつも青アザだらけですよ。でも彼女のアノ真っ白いむちむちしたボディを想像しただけで、どうにも我慢できないんですよねえ。」

 今日の試合でキマラのセコンドについていた仮面の男は実は谷山であった。紀華も最初は気づかなかったが試合中に感づいたらしく、試合後リングサイドにいた男達の一人に、
 『谷山さんに伝えといて。ふざけないで頂戴って!』
 と言い残して会場を後にしていた。

 「谷山君、ほんとに今日はいい夜だったよ。今度ラスベガスに来た時も是非、彼女と一緒にリングに上がってくれ」
 「その時は一緒にリングに上がりましょうよ!」
 「いや、私はこうやって影で見ているだけで十分さ。彼女を怒らせたらどんな目に遭うかって、想像しただけで鳥肌が立つよ。」
 「私はあのダイナマイトボディに触れるんだったら骨の一本や二本折れたって平気ですよ。」
 「ミスター谷山、君にはかなわないよ。(笑)」

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