キャットファイト大会マンティコア優勝者菊池麗子、22歳。
そのファイトに目を付けた地下プロレス団体から参戦のオファーが届く。
「ふーん、中々のファイトマネーね。面白そうじゃない!」
高額なファイトマネーに釣られ参戦を決意した麗子。地下プロレス会場は豪華ホテルの地下にあった。普段入ることのないようなホテルに入った途端麗子に黒服達が近づきエレベーターへ案内される。
「菊池選手ですね。お待ちしておりました。今から30分後本日のメーンイベントとしてタイトルマッチが組まれております。こちらの衣装に着替えて控え室でお待ちください。」
「私の事しってるのね?」
「もちろんです。菊池選手の強さは有名ですし美女ファイターとして今注目されてますから。」
控え室に通されコスチュームに着替えた麗子。
対戦相手は桜田由香里。この地下プロレスのチャンピオンで32歳とベテランだがテクニックとパワーは健在。
このプロレス団体への最初の参戦者は必ずチャンピオンとのタイトルマッチとなり勝てばチャンピオンの座と高額な金額が入るものの負けたら賞金は無し、さらにペナルティが待っている条件だった。
「相手はおばさんね。勝てばファイトマネーは倍、負けたら0か…やってやるわ!」
コスチュームに着替え気合の入る麗子。控え室のドアが空き時間を告げられると意気揚々と入場する。
「青コーナー!上から86、59、84!菊池ー麗子ー!」
エナメルのスポブラにホットパンツ姿の麗子が花道に現れるとたくさんの観客の視線が一気に麗子へと向けられる。
(こ、こんなにたくさんの観客がいるなんて…初めて…)
会場の雰囲気に飲まれ気味に入場を終えリングで待機する間も足が震えていた。
「赤コーナー!上から86、60、88!桜田ー由香里ー!!」
一方桜田は銀のスポブラにスカート姿。
桜田が現れると桜田コールが沸き起こりそのボルテージに麗子は完全に飲み込まれてしまった。
(何この歓声…体が動かない…まずい…)

マンティコアのリングと違いリング周りにはマットが敷かれそのすぐ後ろには観客が座っている。場外戦になれば観客は手を伸ばせばレスラーを触れる距離だ。

「この試合のルールを説明します。60分1本勝負、勝敗はギブアップ、フォール、koにより決着とし、60分を経過した場合は判定となります。ダウンした場合テンカウントでkoとみなします。またロープブレイクは3回でkoとなります。顔面への攻撃は張り手、キックのみ、拳での顔面への攻撃は禁止、凶器の使用も禁止となります。」

リングアナがルール説明を終えるとレフリーからボディチェックが行われた後両者リング中央へ。

「よろしくね、菊池さん。足震えてるわよ(笑)」
「う、うるさい!」

握手を求める桜田はボディチェックを受ける麗子の足の震えを見逃さなかった。軽く挑発されると握手を拒否しコーナーに戻るとこの行為に観客はヒートアップ。

カーン!!!

両者コーナーに戻ると試合開始のゴングが鳴らされた。

「さて、どう出るかしら?ほらほら!ビビってるの?」
「うるさいおばさんね!」

試合開始後リング中央にいる桜田の周りを麗子がステップを踏んでグルグルと周り続ける。緊張をほぐそうとする麗子を挑発すると麗子が接近し得意の素早いハイキックを放つ。

「さすがね!でもまだ遅いかな」
「なっ!?避けられた…マジ!?」

麗子の得意のハイキックを難なく避けるとスキの出来たところを見逃さず首相撲に持ち込み、両者とも膝蹴りの打ち合いとなる。

「ぐぅっ…くそぉ!げふっ…かはぁっ!!」

膝蹴り対決を制したのは
桜田。麗子のみぞおちに的確に膝を突き刺していく。麗子も反撃するが桜田のパワーに態勢を崩され威力のない膝しか打てず動きが止まってしまった。

「ぐぅぅ…」

苦悶の表情で両膝を付いて苦しむ麗子の髪を掴んで無理矢理立たせると腰投げで投げ飛ばしてフォールする桜田。気が付くと天井を見上げていた麗子は何が起きたか分からなかった。

「ワン、ツー!」

レフリーのカウントが入ると我に返りカウント2でフォールを返していく。
試合序盤、主導権を握ったのはチャンピオン桜田。

「よく返せたわね。でも…捕まえたわよ。あなたの得意技は打撃。でもこれじゃあ出せないわよね。」
「は、速い…マンティコアと全然違う…しまった!!いつの間に!?」


フォールを返しゆっくり立ち上がるも桜田を見失ってしまう麗子。突然背後から声がして腰回りをクラッチされてしまう。

「は、離してよ!おらぁっ!!!」
「その態勢からなかなかの威力ね。でも全然効かないわよ。さぁ!まずはこれよぉっ!!」
「くっ!?わぁぁっ!!」

背後に密着する桜田の腹部にエルボーを打ち込んで逃れようとする麗子だが密着しすぎて威力は激減。そして桜田のジャーマンスープレックスが炸裂。マンティコアでは受けたことの無い技。桜田はゆっくりとブリッジしてそのままホールドする。

「ワン、ツー…」
「あぁぁっ!!!」
「残念。決まらなかったか(笑)」

カウントが入ると麗子は必死に体を跳ね上げた。なんとか返したもののそれが精一杯。さらにジャーマンを解いた桜田は麗子の手を取りそのままロープを駆けて勢いをつけて麗子を投げ飛ばしてまたフォール。
これもカウント2で返すも桜田に立たされてボクシングでいうクリンチの態勢で両者リング中央で抱き合う。

「どう?おばさんの強さは?」
「はぁっ…はぁっ…はっ…」
「あらぁ?息があがってきたわね(笑)」

麗子の呼吸は早くも荒くなり始めていた。緊張、そしてフォールの連続を全力で返しているうちに消耗してしまったのだ。しかしこれも桜田の作戦。麗子の得意技は打撃と寝技。組み合うことで打撃を封じ、倒してすぐフォールすることで関節技に持ち込むのを防いでいた。一方の麗子は投げ技は苦手。打撃でダウンさせて寝技でギブアップを奪う展開でこれまで勝ってきた。
「離れて!離れてよ!!この!」
「ふふっ(笑)キャットファイトの女王も形無しね。」

クリンチの態勢から抜けようと脇腹にパンチを打ち、ボディに無理矢理膝をうちこもうとするも密着状態からはほぼ無意味。さらにスタミナを奪われるという悪循環に陥ってしまった麗子。
試合開始5分経過した。この後麗子はこの窮地を逆転できるか?それとも桜田の独壇場となってしまうのか?




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