「はぁっ…あぁっ…はぁっ…はぁっ…」

クリンチの態勢を抜けだせずそのままコーナーに押し込まれた麗子。桜田は少し離れると前蹴りを突き刺した。
「ぐぇっ…うぅぅっ…」

コーナーを挟んで前蹴りは麗子にとって相当なダメージとなった。うめき声を上げながらペタンとお尻をマットに落として崩れ落ちてしまう。

「ワン、ツー、スリー…」

これをダウンとみなしたレフリーのカウントが始まる。テンカウント以内に立てなければ桜田の勝ちとなる。

「くっそぉ…苦しい…でも立たなきゃ!!」

ロープを掴みながらかろうじて立ち上がるも体をくの字に曲げかなり苦しそうにしている。お腹の痛みに耐え構えるとカウントがストップし試合続行。ko負けを免れた麗子だが立っているのが精一杯、気力だけで踏ん張っている感じだ。

「はぁぁっ…はぁっ…」

ボディがかなり効いているのか口を大きく開け肩で息をする麗子。桜田は自分のコーナーに戻り仁王立ちして手招きをしている。

「かかってきなよ!ほら!強さを見せるんでしょ?」

「う…ぅ…」
(打撃も凄いし組んでもダメ…強い)

無防備の桜田だが前に出られない麗子。マンティコア大会の時の打たれてもガンガン前に出る麗子とは別人になっていた。
「意外に簡単に折れたわね。もっとできると思ったのに(笑)」

前に出られない麗子を見るとがっかりした表情で挑発する桜田。しかし麗子はそれでも出られない。しびれを切らした桜田が麗子に組み付いてリング中央でコブラツイストを極める。

「うあっ!!うわぁぁぁっ!!!」

麗子の悲鳴が会場に響き渡ると観客はヒートアップ。脇腹を痛めつけると今度は簡単に倒してキャメルクラッチを極めにきく。

「んあぁぁぅ…ぎゃぁぁ…」

キャメルクラッチを強くしたり弱くしたりして痛めつける。されるがままになってしまう麗子。

「菊池!ギブアップ?菊池!」
「ノ、ノォォ…」

レフリーがギブアップか問いかけるが麗子はギブアップを否定。負けず嫌いの麗子はギブアップだけはしたくなかった。

「そう簡単に負けられても困るわ。さぁ!みんないくよ!!」

ギブアップを拒否した麗子をみるとクラッチを解く。うつ伏せに倒れたままの麗子の背中を片足で踏みつけると観客にアピールすると麗子を立たせてスタナーをお見舞いする。

ガァァン!!

顎を強打しそのまま倒れこむ麗子。初めての衝撃に意識が朦朧としてしまう。桜田に立たされるとよろけてしまいそのままロープへ飛ばされる。

「あぐっ!こ、これがプロレス…キャットと全然違う…」

ロープへ飛ばされるとセカンドロープの上から顔を出してぐったりしていると突然歓声が大きくなる。

「さっくらだ!さっくらだ!さっくらだ!!」

桜田コーナーに戸惑っていると後ろから足音が聞こえた。かと思うと目の前には桜田の両足が見えた。次の瞬間麗子はリング中央で大の字になっていた。桜田の十八番619が炸裂したのだ。

「菊池ダウン!!ワン、ツー、スリー、フォー!」

2回目のダウンを喫した麗子。何が起きたのか全く分からなかった。

「いったぁ…私ダウンしたの?立たなきゃ…」

状況を飲み込めぬままカウントがセブンで立ち上がるも両膝がガクガク震え宙に浮いているような感覚に陥る。

「どうして…こんなの初めて…」

キャットファイトでは味わうことの無かったダウン。それを僅か10分で2回も喫した。さらにインターバルのあったキャットと違い60分間インターバルは無し。
麗子もスタミナは自信があったがそれはインターバルでの回復があったため。連続で10分以上攻撃を受け続けてはスタミナは回復しなかった。

「はぁっ…はぁぁっ…苦しい…息が…できない」

試合開始15分経過。余裕の桜田に対してスタミナの切れた麗子。観客の興味は麗子があと何分耐えられるかになっていた。

「菊池!簡単に負けるなよ!こっちは金払ってまにきてるんだからな!」
「まだ15分だぞ。始まったばっかりだ!」

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