準決勝第1試合

2回戦で蒼木裕子との戦いでパワー不足がわかった濱崎あゆみは自分の不甲斐なさにイライラしていた。
歌手あゆにとってコンサートで歌を伝えるスタミナは日頃からトレーニングしていることもあって問題なかったが、歌手には関係ないパワーをトレーニングすることはなかった。
準決勝の相手は中澤優子である。2回戦で加藤愛を相手に元ヤンキーぶりを披露した優子にあゆは考えれば考えるほどいらついていた。
優子の控え室では優子がストレッチングをして身体をほぐしていた。
「(なるようにしかならへんだろうな・・)」あゆの過去2戦を見た優子はなにも考えずにひたすらとストレッチを続けていた。
『これより準決勝第1試合を行います』
『赤コーナー、アジアの歌姫〜、T156B80W53H82〜、濱崎〜あゆみ〜』豹柄ビキニのあゆが頭を下げて観客にあいさつをする。
『青コーナー、元猛娘リーダー、T158B80W60H88〜、中澤〜優子〜』あゆと同じ豹柄のワンピースを着た優子があゆと同様に頭を下げて観客にあいさつをした。
「(なんか、ムカつく・・)」コーナーで大人らしい挨拶を続ける優子を見て、あゆはイライラしていた感情がかわったのである。
カーン!試合開始のゴングであゆと優子がリングの中央に対峙する。
「こんにちは。よろしゅうに、あゆちゃん」優子があゆに声をかけた。
「こんにちは。最近、中澤さんっていろんなことしてますね〜」あゆが答える。
「ソロとして猛娘を辞めたって言ってましたけど、ソロシンガーを目指すンじゃなかったのかな〜」あゆが続ける。
「歌手より女優業の方が忙しいみたいだし。それに猛娘を辞めたとか言いながらまたいっしょにやってませんでしたっけ?」思ったことを言う。
「歌手はいつでもメインだと思ってる。猛娘とのユニットはつむくさんの考え方や」素直に答える優子。
「つむくさんって言えば、つむくさんと肉体関係があるとか。猛娘におばさんでもいられるのも納得なんだよね〜」あゆは優子を逆上させるために言っているのではなかった。
ムカついた結果なのである。
「なんやて?」さすがの優子もあゆの言葉に怒った。
「へえ〜。怒ったんだあ。ってことは本当だったのかな〜」なおも続けるあゆ。
「そんなことないっ!あゆちゃん、なにゆーとるんかわかってる?」あゆに近寄る優子。
「他の子もそうなのかなー。でも、中澤さんの場合、ヘロープロジェクト初のAV出演もありそうだねー」自分の言ったことに笑うあゆ。
「ええかげんにしときなっ!」胸座を掴む変わりにあゆのビキニの肩紐を両手で掴む優子。
観客には見えないが、あゆと優子にあゆの乳房が見えている。
「なっ・・なにすんだよっ!」ビキニを押さえて優子を突き飛ばそうとするあゆ。
「自分の言ってることがわかっとんかって聞いとるんよっ!」突き飛ばされずに踏ん張ってからあゆの水着を引く力を強める優子。
「放せっていってるのがわかんねぇ〜のかよっ!おばさんっ!」優子の顔に唾をかけながら怒鳴るあゆ。
「おばさん・・?たいがいにせーよっ!」片手をあゆの水着から放すとあゆの顔を平手で打つ優子。
パシーン!「きゃっ・・てっめーっ!」ほほに平手打ちを食らったあと、優子を睨むあゆ。
「ふ〜ん・・ええ度胸しとるんやね・・覚悟せなっ」あゆの水着を放し、両手であゆをどつく優子。
「あんたとは違ってね、こうも売れると度胸なんて嫌でもつくわ」後ろにバランスを崩すものの、すぐに立ち直りビキニブラを直しながら言い返しすあゆ。
「さっきからピーチクパーチクと・・。ひとのこと貶して自分のこと褒めとるなんてガキやね」優子の目尻が上がる。
「売れない人のひがみ?悔しかったらあゆぐらい打ってみたらどうなの?」勝ち誇ったつもりのあゆ。
「はいはい。あゆさんは売れてますね。私はぜんぜん売れません。私の負けです。・・これで満足?超人気歌手の濱崎さま」顔色を変えずに淡々と答える優子。
「なにそれ。超ださ・・」むっとするあゆ。
「私は派手好きで超ダサイです。超人気歌手の濱崎さま」動じない優子。
「さっきから、ムカつくんだよっ!」あゆがはじめにキレて優子に殴りかかったが優子に受けとめられ腕を掴まれた。
「悪いんやけど、喧嘩なら昔から慣れてるんよね」受けとめた逆の手であゆの顔を殴る優子。
バギっ!「きゃっ」拳で殴られたあゆの口から声があがる。優子はあゆの腕を放さない。
「前に仲良うしたからって、今回もなんて思わへんことねっ!」あゆの顔を再び殴る優子。
バギっ!「ぎゃっ」殴られたあゆのほほが赤くなる。
「そんな気はぜんぜんないっ!」優子を睨みつけるあゆ。
「そら安心したわ」またあゆの顔を殴ろうとした優子の腕を掴んで押さえるあゆ。
「同じことの繰り返しでバレバレ」細く微笑むあゆ。
「よくしゃべるね」あゆの腕を優子が掴み、優子の腕をあゆが掴んだ態勢から優子のヘッドパットがあゆの顔を潰しにいった。
グジャ・・「ふぎゃっ」あゆの鼻に強い衝撃が走るとあゆの鼻から血が吹き出した。
「あゆの鼻があ・・」優子の腕を放し、潰れた鼻を押さえうずくまるあゆ。
「休むにはまあだ、早いんとあらへんか?」あゆの腕を引いてあゆを立たせる優子。
「もう、チョームカクっ!」あゆは自分から起き上がると手についた鼻血を白い肌で拭った。
「なにするんっ!」あゆの顔を叩く優子。
パーン!パーン!パーン!「きゃっ!きゃんっ・・」優子にほほを張られるたびにあゆの鼻から血が飛ぶ。
「パンパン人の顔を叩かないでよっ!」両ほほを腫らせたあゆが優子に密着して体重をかけて倒そうとした。
「叩かれる方がとろんだよっ!」倒されるタイミングを使って優子はあゆの顔をリングに叩きつけた。
グシャー「ぎゃふ・・」あゆの顔が叩きつけられたリングの上に赤い痕がつく。
「また、顔・・」顔を押さえてうずくまるあゆ。
「喧嘩なら昔から慣れてると言わんかったっけ?」ヤンキー時代を思い出した優子はプロレスなど格闘技としてではなく喧嘩をしている気であった。
「喧嘩ならなんでもありってことだよね〜っ!」あゆは狙いを優子の股間に絞り込んだ。
ズボ・・「ぎゃんっ」喧嘩で男を相手にして金的を蹴ったことはあったが、股間を蹴られたことのなかった優子の股間にあゆのつま先が突き刺さった。
膝を絞り込むようにして内股になり、股間を押さえてその場に座り込んでうずくまる優子。
「なにが喧嘩慣れよ。ただいじめをしてただけでしょ」あゆは鼻血を腕で拭うと立ち上がった。
「いきなり大事なとこを蹴っといてえらそうなこと言わんで・・」身体中から油汗を出している優子。
「さっきから関西弁でうるさいんだよえね〜」深呼吸をして呼吸を整えたあゆは優子の目の前に立って髪を鷲掴みにした。
「あゆの顔を痛めつけてくれたお礼っ!」優子の顔を拳を振り落として殴り始めた。
ガツ・・ガシュ・・。膝を付いて髪を鷲掴みにされた優子は最初のうちはガードしていたが、次第にあゆの拳が顔に当たりはじめると腕を垂れ下げ顎をあげていった。
ガシュ・・ガシュ・・。優子の顔は腫れ上がっていき、殴れられる度に身体をビクンと反応させるだけであった。
観客は優子の腕が垂れ下がり、顔を滅多打ちにされはじめると言葉を失っていった。
グチャ・・グチャ・・。あゆの殴る音が湿った鈍い音に変わっていった。
優子のまぶたが切れて鮮血が流れ、鼻からも血が溢れだし、口からも血を流していた。
「あゆの顔を殴ったんだからすぐに許されるとは思わないでね」優子の顔が血まみれになっても殴ることを止めないあゆ。
「(喧嘩のルールも知らん奴に・・)」顔のダメージは大きいものの、意識ははっきりしていた。
「どっちが甘ちゃんかわからせてるわっ!」あゆのお腹に肩をぶつけて腰に腕を回して優子はあゆをなぎ倒した。
「顔を殴ったぐらいで勝った気分されるなんてかなわんわ」マウトポジションを取った優子はあゆの顎を手で押し上げて身動きできないようにした。
「ぐう・・」顎にかかる優子の手をどけようとするあゆ。
ズボ・・ズボ・・「ぐえっ・・がふ・・」優子があゆのわき腹にパンチを打ちこんだ。あごを上げられ、不意打ち状態で脇腹を攻撃されたあゆの口から苦痛の声が漏れる。
『あゆが負けるのか?・・』一方的に攻め込まれるあゆを見て観客がざわめきはじめた。
「まだとーぶん、つきおうてもらわへんとね」あゆの脇腹が紫色になるまで殴り続けた優子はあゆの顎を押さえたままお尻を持ち上げた。
「はう・・はう・・」あゆの呼吸は乱れ、苦しそうな表情を浮かべている。
ドガ・・「がうっ・・」優子は持ち上げたお尻であゆのお腹を潰した。あゆはお腹を潰された瞬間に足をあげ身体をくの字にする。
ドガッ・・「うぐ・・」口の中が酸っぱさを感じるあゆ。
ドガッ・・「ごふっ!」優子のお尻が飛ぶように上げられてからお腹を潰されたあゆが吹き出すように反吐する。嘔吐物があゆの顔の上に散らばる。
ドガッ・・「うが・・」あゆの反吐も気にせずあゆのお腹をお尻で潰す優子。あゆは口をパクパクさせていた。
「人に喧嘩売っといて、情けない・・」ぐったりと横たわるあゆの髪を掴み立ち上がらせる優子。あゆの目は虚ろになっていた。
ズガッ・・。やっと立っているあゆのお腹を膝で蹴り上げる優子。
ズガッ・・、ズガッ・・。人形のように優子に攻めたてられるあゆ。
リングの上ではプロレスでもなければ喧嘩でもないただのリンチが繰り広げられていた。
観客は声をなくし、ボロボロになったあゆに哀れな視線を送るだけであった。
吐き出すものがなくなったあゆは血の混ざった黄色い胃酸のようなものを吐き出している。
優子はお腹を膝で蹴り上げてあゆを前かがみにすると両手を組み、背中に打ち下ろした。
ドガッ・・「あう・・」崩れるように膝をつくあゆ。
膝をついて意識が朦朧とするあゆの視線には優子の白い脚と股間のデルタゾーンがおぼろげに映った。
あゆの体が無意識のうちに動くと四つん這いのまま頭を優子のデルタゾーンに叩きつけた。
ガツン!「ひゃっ!」あゆの頭突きが優子の恥骨を砕くと前かがみになって後ずさりする優子。
ガツン!ガツン!「ぎゃっ・・あんっ・・やめて・・」あゆは四つん這いで優子を追ってなんども頭突きで優子の恥骨を砕きにいった。
あゆは優子をコーナーに追い詰めると勢いを付けてから優子の恥骨を砕きにいった。
「いやっ!」優子は股間を守るために必死に避けた。
ドガっっっ・・。あゆはそのままコーナーに突き刺さるように激突した。
「一度ならず二度までも大事なとこを・・」優子は歯を食いしばって股間の痛みに耐えると膝に手を置いて上体を起こした。
立ち上がった優子はあゆのお尻に飛び付くように行くと、あゆのビキニショーツに手を掛けた。
「あ・・いやっ!」歌姫あゆにとって多勢の観客の前で大事な秘部を露わにしたくなかった。抵抗しようとしたが体がコーナーに突き刺さった態勢だったため優子にショーツを膝まで下ろされ、脱がされてしまった。
「永瀬さんやったっけ?彼には悪いとは思うけど・・」優子はあゆの恋人である永瀬智也の名をあげるとあゆの剥き出しとなった秘裂にパンチを入れた。
ズガ・・ズガ・・ズガ・・「いやあああああっ!」秘裂に今まで経験したことのない激痛が走るとあゆは悲鳴をあげた。
ズガ・・ズガ・・ズガ・・「やだあああっ!」あゆは首を横に振り悲鳴を上げ続けていたが、次第に体から力が抜けてとコーナーに縺れていった。
優子はあゆの傷ついた秘裂の鮮血で真っ赤に染まっていた手をあゆの少し小麦色のお尻で拭った。
観客は想像もしなかったあゆの無惨な姿に完全に言葉を失っていた。
優子があゆの髪を掴み、コーナーから引き抜くようにして立たせる。
無理矢理立たされたあゆは股間から熱いものが流れ、内股に伝わっていくことに気付いた。
自分の髪を掴んでいる優子の手が赤く染まっている。
「(まさか・・)」あゆはとっさに自分の秘裂に手を当てその手を確かめた。
「いやああああっ!」自分の手にべったりと血がついていることに気付いたあゆは気が狂ったような悲鳴をあげた。あゆの身体からがっくりと力が抜けていく。
「・・あゆの大事なところ・・よくもおっ!」しばらくの沈黙のあと、あゆは口を開き手についた自分の血を優子の顔に擦り付けた。
「きゃっ・・」顔を掻き毟られた優子はあゆの髪を放して顔を押さえた。
あゆはすかさず優子の腰に手を回すと高速ジャーマンで優子をリングに投げ付けた。
バッシーンっ!バッシーン!バッシーン!
優子を投げるとすぐに起こして3連発で投げるあゆ。
優子は受身が取れずに後頭部をリングに強打して意識がほぼ飛んでいた。
「あゆが脱がされてあなたが水着を着てるっておかしくない?」あゆは優子の水着を脱がしにかかる。
「裸にしてから大事なとこも潰すからね〜」優子の乳房が露わにして、あゆは自分の大事なところを傷つけられたお返しをしようと思った。
「あ・・」あゆは優子の股間を露わにするまで水着を脱がすと動きが止めた。
優子の股間はあゆのつま先蹴りと頭突きによって既に腫れ上がっていたのである。
「・・・」あゆは優子の股間を隠すように水着を着せると後ろに回りチョークスリーパーで優子を締め上げた。
半失神していた優子が落ちるまで時間はかからなかった。
カンカンカンカン!優子がぐったりすると試合終了のゴングがなった。
『只今の試合、中澤優子選手の失神により濱崎あゆみ選手の勝利とします』勝者がアナウンスされた。
花道の奥では次の試合に出場する鈴本あみが見ていた。
二人は一方的に攻められながらも中澤優子を沈めたあゆのジャーマンを警戒していた。

試合結果:○濱崎あゆみ(KO:チョークスリーパー)×中澤優子


準決勝第2試合

『これより準決勝第2試合を行います』
『赤コーナー、ラッキースーパーベビーフェイス〜、T158B80W55H82〜、鈴本〜あみ〜』準々決勝で優花から金星を上げたあみがレモン色のビキニで観客にあいさつをしている。
準決勝の相手が相手なだけにあみの顔には笑顔はなかった。
大会主催者は笑顔ではないものの、あみがしっかりとリングに立っていることを見届けると、理奈のようにならずにとひとまずは安心していた。
『青コーナー、世界の歌姫〜、T158B85W59H84〜、歌田〜ヒカル〜』あみとは逆に1回戦と準決勝と無傷で勝ち進んできたヒカルがリングの中央に進むと観客から大声援が起こった。
『ヒッキー!サイコー!』
『歌良し、頭良し、スタイルもよくって強いのかよ〜っ!』
1回戦と準々決勝とワンピースであったヒカルが黒褐色のビキニになっていた。
アメリカらしい大胆なデザインであるため、それも新鮮に見えていたのである。
大歓声がいつまでも続いたためなかなか試合が始まらない。
おもしろくないのはあみであった。人気の差は本人も仕方ないと思っていたが、同じ歌手としてここまで差があるとは思っていなかった。
『試合なんかしなくていいからよ〜、そのままヒッキーを見せてくれよぉ〜っ』
『あみ邪魔だあ〜っ』
『あみのヌードはあとで見てやるから今は引っ込んでろおーっ!』
観客はヒカルのビキニ姿に魅了されていた。
あみへは野次だけが飛ぶ。あみは奈落の底へ叩き落された思いになり思わず涙ぐんでしまった。
しばらく、ヒカルがリングと会場を独占したのち、やっと観客が収まった。この間、あみは泣き出したかったが涙は堪えていた。
カーン!選手紹介からかなり遅れてから試合開始のゴングがなった。
それまで笑顔で観客に愛想を振りまわしてこれから戦うそぶりも見せていなかったヒカルであったが、ゴングが鳴ると表情が変わり一気に戦闘モードになった。
あみはヒカルの表情が変わってから堪えていた涙をすすり、表情を引き締めて戦闘モードになった。
二人がリングの中央で対峙する。
ヒカルの身体はムッチリとした感じであるが、バランスのとれた無駄のないものであった。
細ければよしとされる日本で育ったあみは身長は同じもののヒカルより一回りも二回りも小さく見えた。
「それで・・あなたは?」ヒカルが口を開いた。
「は?」ヒカルの口から出た言葉がわからないあみ。
「あなたは誰?」ヒカルは鈴本あみの名は聞いたことがあったが実際にはどんな人間なのかはわからなかったのである。
「な・・なにそれ・・?」あみは大きなショックを受けた。確かに事務所とのゴタゴタで置いて行かれた感はあったもののそれなりには人気があったと自負していたのである。
「ごめんなさい。いままでに戦った人もわからないんだよね」険しい表情から一転してとぼけた表情になるヒカル。
「ふざけないでよっ!」あみはヒカルの口から信じられない言葉が続けられるとカッとなりヒカルの顔を張りに行った。
ヒカルがあみの平手打ちを軽く避けると、あみはカウンターを恐れて身体を強張らせた。
しかし、あみの意思とは逆にヒカルは腰に手を添え、キョトンとした目であみを見ている。
「な・・。」肩透かしを食らった気分になったあみであったが、カウンターがないと思うと平手打ちでヒカルを攻めに行く。
すべて軽く避けるヒカルであったが一向に攻める気配はなかった。
「ちょ・・ちょっと!やる気あるの?」あみはヒカルに尋ねた。
「ない」ヒカルの一言で返した。
「ないって・・ないってどういうことっ?」ヒカルの意外な返事に混乱するあみ。
「だってさ弱そうだし、迫力もないんだもん」ヒカルはあっさり答える。
「・・・」あまりの強烈すぎるヒカルの返事に言葉を失うあみ。
「お願いだからね、負けを認めてここから降りてよ」さらに追い討ちをかけるヒカル。
「やりもしないで勝手に決めていい気になるなあっ!」拳を握り、ヒカルに殴りかかるあみ。
ブンっ!あみの打ち降ろし気味のパンチはヒカルに潜るようにして避けると空を切った。
ガツっ!「ぎゃう・・」あみの後ろに回ったヒカルがあみのくびれたウエストの背骨あたりを拳で叩くと、あみは身体を反らせてカエルが潰れたような声をあげた。
「ね。わかったでしょ。着ているもの脱いでアソコを私に見せて負けを認めたら?」アメリカのスラムで見てきた地下リングのやり方をあみにすすめるヒカル。
「そんなことできるわけないでしょうっ!」あみは怒りの形相でヒカルをタックルで捕まえに行った。
バシーン!二人の身体がぶつかり合い、乾いた音が会場に響いた。
「捕まえたっ!」あみはタックルが決まった瞬間倒したことを確信したが、ヒカルはあみの全体重をかけたタックルを受けとめていた。
「なっ!?」驚くあみ。
「♪タンタタタンタタタ〜タンタタタンタタタ〜」あみのタックルを受けとめたヒカルがある曲を口ずさみはじめた。
「♪タタ〜ンタ〜ン〜タタ〜ンタ〜ぁン・・」ロッキーのテーマである。
ヒカルはあみを突き放すと両手を顔の前に置いてボクシングスタイルを取った。
「こんなときにぃっ!」ヒカルに侮辱されたと思ったあみはヒカルに飛びかかった。
バシュ・・「ぎゃう・・」飛びかかったあみの顔にヒカルのストレートが炸裂する。あみは顎を上げてあとずさった。
ズボ・・ガシュ・・バシュ・・ガキィ・・「きゃっ・・きゃん・・ぎゃう・・ぐは・・」ボディからフック、ストレート、アッパーとヒカルのコンビネーションが的確にあみを捉える。
ダダーン・・。あみは大の字になってリングに倒れた。
「な〜んだ。やっぱり映画みたいにはならないか」ヒカルはボクシング映画のように攻撃を受けても必死で倒れないようにするシーンをあみにかぶせていた。
「ぐぅ・・」大の字にダウンしたあみであったが、すぐに立ち上がった。
「やっぱり、そうこなくっちゃ・・。ファイティングポーズは?」ヒカルは立ち上がったあみに感心するとファイティングポーズを求めた。
あみが催促されたかのようにファイティングポーズを取ると、ヒカルは低い姿勢であみに接近していった。
「あみだってっ!」あみはヒカルにカウンターを合わせに行った。
ズボォ・・「ふぐっ・・」あみのカウンターよりヒカルのフックが先にあみの脇腹を捉えた。
ズボォ・・ズボォ・・「がう・・うぐ・・」ヒカルのフックがあみの脇腹に炸裂するとあみは身体を浮かせていった。
「だめ・・やだ・・」なんとかヒカルから離れようとヒカルの頭に手を添えてさがるあみ。
ズボォ・・ズボォ・・「うげ・・うぐ・・」映画ロッキーのワンシーンがリングで繰り広げられている。あみは身体をくの字にして苦悶の表情を浮かべる。
バキィィィ・・っ「ぎゃう・・」ヒカルはあみの手を振り払って姿勢を高くすると強烈なフックであみの顎を砕いた。
一回転してからロープに縺れ合うようにしてダウンするあみ。
ビキニ姿のヒカルのボクシングであみがダウンすると歓声があがった。
会場の隅では第1試合で受けた怪我の治療を終えたあゆが見ていた。あゆは自分とは同じボクシングスタイルでもヒカルはインファイターだと分析していた。
しかし、あゆの分析は次の瞬間にことごとく打ち砕かれた。
あみがロープを頼りに立ち上がるとヒカルは軽快なステップを踏み始めたのだ。
バシッバシッ・・「きゃ、きゃんっ・・」速くて鋭いジャブがあみの顔を捉えていく。
あみの顔は鞭で打たれたようにすぐに腫れ上がっていった。
「これぐらいのパンチでっ!」あみは繰り出されるジャブの嵐の中を強引に突き進んだ。
グシャーっ「ぎゃう・・」ヒカルのストレートがカウンターで決まった。
アウトボクサースタイルでもあみを圧倒するヒカル。
ダウンはしなかったもののヨタヨタとするあみ。
ヒカルはスタンディングダウン状態のあみの前から脚に腕を回して抱きかかえた。
バッシーン!「がうっ・・」あみの背中をロックボムでリングに叩きつけた。
再び大の字にリングに横たわるあみ。
ヒカルはあみの頭を掴み立ち上がらせると、あみのお腹をつま先で蹴り上げ前かがみにさせてから身体を反転させあみの顔を肩に乗せ、腕を首に回してから尻餅をつきに行った。
グジャ・・「ぶぎゃ・・」ヒカルのスタナーで顔と首を痛めたあみがグッタリとうつ伏せに横たわる。
「(強い・・強すぎるよぉ・・)」自由の利かなくなってきた身体を転がして、仰向けになって混沌とする意識の中天井を見詰めながらヒカルの実力に驚愕するあみ。
「わかったでしょう?実力の差がね」天井を見詰めるあみを覗き込むヒカル。
「まだ・・まだ、負けてない・・」あみは弱気になった自分に腹を立て、残る力で立ち上がろうとする。
「あん・・」あみはなんとか立ち上がるが、足に力が入らず倒れそうになった。
「ほら、もう無理だって」倒れそうになるヒカルがあみを抱きかかえて支える。
バッシーン!「あう・・」ヒカルはあみを抱きかかえるとフロントスープレックスであみをリングに叩きつけた。身体をバウンドさせリングに横たわるあみ。
あみは再び天井を見上げたまま呆然となっていた。
ヒカルは勝利を確信すると観客にアピールするようにして会場を見まわした。
会場の隅で観戦しているあゆを見つけると口元を細く笑わせた。
「(ん?)」ヒカルと視線が合ったあゆはヒカルの不敵な笑みに気付いた。
「いくよぉ〜っ!」会場にトップロープまで登ったヒカルのハスキーボイスが響き渡る。
ズブッ!「げえ・・っ」トップロープを蹴って、高く舞い上がったヒカルはあみのお腹の上に着地した。
「ブハッ!」フットスタンプでお腹を潰されてから一瞬の間をおいてあみは噴水のように反吐する。
「ゲホッゲホッ・・」お腹を抱え横向きにうずくまり咳き込むあみ。
「あんまり続けると疲れるし。そろそろ終わりにしちゃおう」うずくまるあみのビキニショーツを掴んで持ち上げるヒカル。
「あ。いや、そんなっ!」あみはショーツを脱がされると思って焦った。
ヒカルは引き付けたあみの腰に腕を回すと後ろに投げた。
バッシーン!「ぎゃうっ」ヒカルの高速ジャーマンは小さな半円を描いてあみの後頭部をリングに叩きつけた。
「そぉれっ!」ヒカルは身体を反転し引っこ抜くようにしてあみの身体を持ち上げると急降下型バックドロップであみの背中をリングに叩きつける。
「もういっこっ!」再びあみの身体を引っこ抜くように持ち上げると身体をえび反りにして急降下型ジャーマンであみの後頭部をリングに叩きつけた。
バッシーン!「がはっ・・」あみの目から火花が飛び、あみの身体は勢いがあまって後転するようにしてペタンと座り込んだ。
「なっ・・」あゆは自分と同じ高速ジャーマンだけでなく、バリエーションに富んだヒカルのジャーマンに驚愕した。
「もうちょっとだからね」意識がほぼ失ったあみの頭を掴んで股に挟むと、あみの腕を取って持ち上げるヒカル。
『おい・・あれ、ヤバクないか?』ヒカルに頭と足を逆さまにされたあみを見て観客が青ざめていった。
グッシャアアア・・!観客の心配を余所に膝を畳んであみの全体重に自分の体重を乗加えてターガードライバーであみをリング突き刺した。
あみは頭で倒立をしてから高層ビルを爆破したように崩れていった。あみは身体を痙攣させている。
ヒカルは間髪入れずにあみの後ろを取ると、腕をあみの首に巻き、足をあみの胴体に巻いて胴絞めスリーパーを極めた。
ガッチリと極まった胴締めスリーパーにあみは身動きしなかった。できなかったのである。
あみは既に気を失っていたのであった。
「はやく、試合をやめろおっ!あみちゃんが死んじゃうっ!」リングから一番遠いところにいたあゆが声をあげた。
レフリーはあゆの声に驚いたようにしてゴングを要請した。
カンカンカンカン!あみの顔色が変わって、泡を吹き出したころにやっと試合終了のゴングがなった。
レフリーがタイガードライバー後のヒカルの動きに惑わされた結果であった。
『ドクターっ!』身体を大きく痙攣させ、泡を吹いたあみの異常事態に顔を青くしてドクターを要請するレフリー。
会場全体が騒然とするなか、ヒカルはリングを降りて控え室に戻ろうとした。
「最後のスリーパーはいらなかったでしょう・・」花道の奥でヒカルを迎えたあゆがすれ違い様にヒカルに言った。
「さあてね・・」ヒカルはあゆに一言だけ残して会場を後にしていった。

試合結果:○歌田ヒカル(KO:胴絞めチョークスリーパー)×鈴本あみ

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