〜〜〜 プロローグ 〜〜〜

「お願いします。また、歌手として復帰したいんですっ」地下プロレスの一室で鈴本あみが土下座をしてプロモーターにお願いをしている。
「土下座されても、無理な話もある」葉巻を吹かしながら答えるプロモータ。
「いままで、何試合もここでがんばっています。たしかに勝てはしませんけど、がんばっているんです。お願いします」床に頭を擦り合わせるようにお願いするあみ。
「まあ、そこまで言うのであれば掛け合ってみるが、断られた場合は諦めるんだな」
あみの必死の願いに折れる形でプロモータは某事務所に足を運んだ。
「今日は無理を承知でお願いに参りました」深々と頭を下げるプロモータ。
「で、要件は?」特にかしこまることもなく聞き出すのは、大プロデューサのつむくである。
「は。唐突ではありますが鈴本あみはご存知でしょうか?」プロモータは前置きなしでつむくに聞いた。
「アミーゴとか言っとる方ですか?」つむくは淡々と返事をする。
「実はですね、その鈴本あみがつむくさんのプロデュースを希望しているんです」時代を代表するプロデューサの前ですっかりあがってしまい、プロモータは汗でびっしょりになりながらつむくに話した。
「あの人をですか?そうですね、別に構へんよ」予想に反したつむくのの返事に一瞬とまどうプロモータ。
「ただし、条件があります。最近、猛娘が休暇が欲しいと騒いでぎよるのでおたくの地下プロレスでその鈴本あみさんと猛娘で戦わせて貰えませんか」本来ならプロモータから切り出すことをつむくから切り出され慌てるプロモータ。
「あ、はい。それは構いません」
「ただ、問題があります。休暇を取りたがっている猛娘が一人ではないことですわ」
「と、言いますと?」
「全員が言っとるんですよ。13人」
「13人ですか・・」人数を聞いて悩むプロモータ。いくらあみの相手といっても13人は多すぎる。
「はい。それでも構いません。ぜひお願いします」少し考えたが、面倒臭くなり了解してしまうプロモータ。
「それでは、お願いします」つむくも頭を下げた。
プロモータは大きな問題が残ったものの、つむくからの了解を得てあみの待つ地下プロレスの事務所に戻ってきた。
「お帰りなさいです。いかがでしたか?」不安そうな顔でプロモータに尋ねるあみ。
「ああ。一応、了解は貰った」
「本当ですか?やったぁ〜」あみは笑顔で喜んだ。
「相手は猛娘だ。試合の日程は後日調整してまた連絡する」プロモータはあみに伝えるとあみは軽い足取りで事務所を出て行った。
「(これから眠れない日が続きそうだ・・)」変則マッチといっても、1対13は企画したことなどない。プロモータは頭を抱えた。
つむくの事務所では猛娘が集められていた。
「君たちの希望にあった休暇の件についてなんやけど、こちらでも一応考えてみた」つむくは猛娘の前で話し始めた。
「やりぃ♪」まっさきに喜んでいたのは、安部なつみ(なっち)であった。
「なっちぃ、なにをそんなにうれしいのかな?」保多圭(圭ちゃん)が突っ込む。
「だってえ、休みだよ。お・や・す・みぃ〜♪」ニコニコするなつみ。
「頭の中はいつもおやすみのくせにぃ?」なつみに飯田佳織(かおりん)が突っ込む。
「かおりん、言っちゃったぁ」佳織のキツイ一言につっこんだのは後東真希(ごっちん)である。
「でもぉ、辻もうれしい」辻望美(のの)がなつみに賛同する。
休暇と聞いてワイワイと賑わう猛娘たち。
「ただし、条件がある。君らにはプロレスをしてもらおうと思う。それで勝ったなら休暇をやろう」つむくが猛娘の会話を遮るように切り出した。
「プロレス・・ですかぁ?」リーダーの佳織が確認する。
「痛いのとか、えっちなのは嫌ですよ」小川真琴(まこっちゃん)がきっぱり言う。真琴は自分では気付かないが影のリーダーと言われグループをまとめている。
「まこっちゃんの得意分野?(笑)」矢口真理(まりっぺ)が鋭いツッコミを入れる。
「あんだこのやろぉ〜」真琴がアントニオ猪木のものまねで矢口に言い返す。
「もちろん、君らには裸になってもらうことはあらへん。ただ、ちとだけ痛いかもしれへんがそれは相手次第やな」大笑いの猛娘に話すつむく。
「痛いんですかぁ・・」佳織が答える。
「ジョンソンのくせにかわいこぶってるぅ」加護亜衣(あいぼん)がつっこむ。
「あ〜い〜ぼ〜ん〜」佳織が加護を睨みつける。
「きゃあ♪ごめんなさい〜」加護が合掌をして佳織に謝る。
「ところで、つむくさん」なつみがつむくに手を上げて質問をする。
「プロレスにでなかったらお休みがないんですよね?」
「おう、そや」
「ということは、みんなで出ればみんなでお休み頂けるということですか?」
「もちろん」
「それでですね。例えばですね。姐さんとか、さやかとか、あすかっちとか、あやっぺとか声をかけたら・・」猛娘を脱退したメンバーの参加を提案するなつみ。
「それナイス!猛娘の同窓会」佳織が賛同する。
「そうやな、本人たちがええ言うたらええと思うが・・よっしゃ、聞いてみよ」つむくはただでさえ13人と大人数だということを忘れて約束をしてしまう。
「詳しい日程は後日に知らせよう。じゃあ、解散」
解散していくなか、石河梨華(りかっち)と芳澤ひとみ(ひとみん)は下を向いてうつむいていた(※第20回大会第5試合、第21回大会第5試合参照)。
なつみはうつむく二人を見て複雑な心境であった。
つむくは猛娘と約束したことを実行していた。
姐さんこと中澤優子(姐さん)の元へやってきた。
「ひさしぶりやね。調子はどうなん?」つむくが優子に尋ねる。
「ごぶさたしていました。猛娘のときみたいにはいかへんけどがんばってます」優子はニッコリしながら答える。
「唐突なんやけど、猛娘たちが同窓会をしたい言うとるんだが・・」
「同窓会ですか?もちろんOKです」
「ただな、その前にプロレスをしてもろうと思ってるねん」
「プロレス?もしかして地下プロレスとか言われとるあれですか?」
「知っとるんか?」
「はい。実は、前に一回だけ出たことがあるねん」優子は過去に今回の対戦相手であるあみとシングルマッチを行っていた。結果はあみが気を失う圧勝であった。
「どうするん?」つむくは悩んでいる優子に尋ねた。
「もちろん、参加させていただきます。猛娘たちとも会うたいし」
優子の了解を得ると、つむく優子と別れて次の元メンバーの石黒綾の元へ向かった。
「ひさしぶりやね。調子はどうなん?」優子のときと同じ切り出しで綾に尋ねる。
「猛娘のときはお世話になりました。いま、大変ですけどこどもと楽しくしています」
「そうか、ママになったんやね」
「はい」
「実はな猛娘たちが同窓会をしたいと言うとるんやけど・・」つむくは母親になった綾にプロレスの話しをすることをためらった。
「あ、はい。プロレスですよね」つむくの気持ちを察するかのように答える綾。
「石黒も経験しとるんか?」つむくは目を丸くしている。
「まさかあ。姐さんからさっき聞いたんですよ」つむくが綾のとこに来る前に優子から連絡があったことを説明する。
「そうか・・。そんでどないする?」
「もちろん、OKです」
予想もしなかった展開に困惑したが、つむくは綾の了解を得ると市井紗耶香(さやか)の元へ向かった。
「ひさしぶりやね。調子はどうなん?」お約束の切り出しで紗耶香に尋ねる。
「はい。元気です。猛娘で勉強したことが役に立っています」
「それでなんやけど・・」つむくは「(恐らく・・)」と思いつつ切り出そうとした。
「姐さんから聞いています。もちろんOKです。ただ・・」紗耶香も過去に地下プロレスに出場したことがあり、そのときなつみから受けた仕打ちを思い出していた(※第29回大会第5試合参照)。
「ただ、なんや?」つむくは紗耶香が飲んだ言葉を尋ねた。
「あ。いいえ。なんでもないです。」
つむくは淡々と話しがすすみ、楽だと思ったかたわら、中澤優子の存在が大きいことを再確認していた。
つむくは紗耶香と別れると福多明日香(あすかっち)の元へ向かった。
「ひさしぶりやね。調子はどうなん?」つむくは前の三人にも同じことを言ったなと自分でおかしくて笑いそうになりながら明日香に尋ねる。
「つむくさん。なにがそんなにおかしいんです?」明日香はきょとんとしながらつむくに聞いた。
「あ、いやすまん。なんでもあらへん。それでだ、たぶん中澤から・・」
「はい。聞いています。もちろんOKです。よろしくお願いします」
「(やっぱり・・)」つむくは猛娘の初代リーダーに中澤優子を選んだことを誇らしげに思った。
つむくが事務所に戻るとさっそく地下プロレスのプロモータに連絡を取った。
「13人から17人になった。よろしくな」簡単で一方的な電話だった。
「(じゅ・・じゅうななにん・・?)」プロモータは13人でさえ苦悩の日々なのに17人と聞いて口をあんぐりさせてしまう。
「(こうなりゃ、どうにでもなれっ!)」17人と聞いて逆に開き直ってしまい、プロモータの苦悩の日々が終わった。
そのころ、優子は電話をしていた。
「もしもし」電話の相手はなつみである。
「あ。なっち?中澤やけど」
「あ、ゆうちゃん。久しぶり」
「うん。で、聞いていると思うんやけど、地下プロレスのことなんやけど・・」
「は、はい」
「もちろん、うちも参加するし、あやっちもあすかっちもさやかも参加するって言うとったよ」
「ほんとうですか♪」
「ああ。そんでななっちにしてもらいたいことあるんやけど」
「は、はい?」
「りかっちとひとみんとさやかに私のいる前で謝って欲しいねん」
「え・・?」
「自分が一番知っとろうが。あんたが3人になにをしたんか忘れておらへんよな。」優子は怒ることなく優しい口調でなつみに話した。
「・・・」なつみは自分のしてきたことがすべて優子に見透かされていたと思うと、動揺して返事ができなかった。
「なっち。うちはもう猛娘とはぜんぜん関係あらへん。でもな、なっちだけやなく、みんなのことも好きだし心配なんやわ。それにうちはなっちのこと信じておるんよ。だから、お願いしたい思うて・・」優子はなつみに自分の気持ちを素直に伝えた。
「は・・はい・・」なつみは優子が指示した時間と場所をメモした。
同じように優子は過去の地下プロレスに関係した梨華とひとみと紗耶香にも連絡を取っていた。
優子が指示した時間に4人が集まる。
「うん。忙しいとこすまんね」優子が切り出す。
「過去にいろいろあったみたいやけど、今回はオール猛娘が集まる。その前にゆっくり話して欲しいんやわ」
梨華とひとみと紗耶香はなつみのことをじっと見ている。
なつみはなかなか声を口に出すことができずに優子に助けを求めるかのように視線を投げると優子はなつみににこっと笑顔を返した。
なつみは優子の笑顔に励まされると3人の方へ視線を向けて口を開いた。
「ごめんなさい。謝っただけで許されるとは思ってない。でも、でも・・」なつみは大粒の涙を流してうつむくと言葉が詰まってしまった。
「がんばりぃや」優子が優しくなつみを後押しする。
「あのときは、私は、みんながすごくうらやましくって・・」なつみは泣きじゃくりながら3人に謝った。
「うん。わかってるよ。なっちはがんばりやだもんね。たまに一人で突っ走っちゃうんだよね・・」3人はなつみの謝罪をこころよく受けとめると、いっしょに大粒の涙を流してなつみの方へ寄り添っていった。
優子は4人の光景を見て、満足そうに微笑を浮かべていた。
そのころ、地下プロレスのプロモータは試合日程と試合形式を決めていた。
そこへプロモータに呼ばれたあみがやってきた。
「あの・・鈴本あみですけど・・」あみはプロモータに呼ばれて来たのである。
「鈴本か。試合が決まったぞ。もちろん、お前が勝ったらつむく氏のプロデュースが受けられる」
「はい。がんばります」あみは目を輝かせながら答えた。
「ただ、今回の試合は猛娘が相手だ。いけるのか?」プロモータはあえて相手の人数を伝えなかった。
「相手がだれであろうと、がんばるだけです」17人を相手にすることを知らないあみは意気込んでいる。もちろん、その中に完敗した前回の試合で戦った中澤優子もいるなど知るよしもなかった。
「よし、じゃあやれるだけやってみてくれ」プロモータはあみに最終確認を済ませると、日程のことと試合形式をつむくに電話した。
@試合当日
あみの控え室では白いビキニに着替えたあみの身体が震えていた。
「(なにがなんでも勝つ)」武者震いである。
無理難題をプロモータに願望したことと、そしてここが地下プロレスだということであみには覚悟ができていた。
「(もう、失うものはない・・そしてあの舞台にまた立つんだっ!)」あみには怖さというものが微塵もなかった。ただ、戦い、そして勝つ。それだけであった。
オール猛娘の控え室では17人の猛娘たちが白のレオタードに身を包み輪を作っていた。輪の中心には真剣な表情の優子がいた。
「あんな、みんなは知らへんとは思うやけど、ここって遊び半分だと大変なことになるんよ」
優子の言葉にみんな驚くが言葉は発しない。優子の表情がかつての猛娘のコンサートのときより真剣であったからだ。
「それで、17人全員ではとりあえず戦わん。うちとなっち、さやか、りかっち、ひとみんが先陣を切る。それから圭ちゃん、かおりん、ごっちんが続いて・・」優子は話しを続ける。
「そのあとから、他のみんなが続いて欲しいと思うんや。あとな、ひとつ約束して欲しいことがあるんやけど攻撃を受けそうになったら逃げること。絶対に反撃しようと思ったらいけんよ」優子は全員の目を見ながら作戦を伝えた。
猛娘たちは少し怖いと思っていたが、優子の真剣な眼差しをみているとだんだん士気があがってきた。優子は全員の目がコンサートのように戦闘モードになったことを確認した。
「じゃあ、オール猛娘の出陣やっ!」優子は掛け声の音頭を取る。
「いきまっしょいっ!」オール猛娘の掛け声が控え室の廊下まで響いた。

〜〜〜 結束の力 〜〜〜

「(絶対に勝つんだっ!)」この試合に勝てば大プロデューサのつむくにプロデュースを受けられるあみは身体を振るわせ己の闘志を静かに燃やしていた。
「いきまっしょいっ!」新旧メンバー勢揃いのオール猛娘は掛け声とともに士気を爆発させていた。
両者の控え室に迎えの黒服が現れると、総勢で18人の選手が決戦の場所へ向かった。
今回はリングではなく空手場のようであった。ただ、床がだけがリングのもが使用されていた。普通のリングでは猛娘の全メンバーが乗りきれないからである。
『本日のメインイベント〜っ!』前の試合の片付けが終わるとリングアナウンスが響いた。
『赤コーナー、B80W55H82〜鈴本〜あみ〜』あみだけがリングにてコールを受けた。相手コーナーには誰もいない。
『青コーナーの入場ですっ!』入場の宣言がされると白いレオタードで揃えた17人の猛娘が優子を先頭に元気よく走りながら入場してきた。
「えっ?猛娘って・・もしかして全員っ?」あみはここで今日の相手の人数を把握した。
オール猛娘がリングに入ると、リングの上は満員になった。
『おお。すっげー。猛娘が勢揃いだぜっ』
『中澤も市井も、福多もいる。石黒もいるぜっ』
新旧の全メンバーが揃ったオール猛娘に観客のボルテージは最高潮に達した。
『青コーナーっ!オール〜猛娘〜っ!』オール猛娘がコールされると天井が抜けんばかりの大歓声が沸いた。オール猛娘も手を振って応えている。
観客はオール猛娘に魅了され、この夢のようなことに感動していた。
会場が大歓声に包まれているなか、優子はVIPルームの方へ視線を移した。視線の先にはVIP席にどっかりと座る和多秋子がいる。その両脇に北王、幽鬼が正座していた。
優子は深々と和多に頭を下げると、和多は微笑みながらうなずいた。
優子は余計な乱入者がいないよう和多秋子にお願いをしていたのである。
『今回は鈴本あみ選手が60分間、試合を続行できましたら鈴本あみ選手の勝利とします。』簡単に勝敗の説明がされる。
「ちょっと・・こんなにたくさんの相手なんか・・」あみの顔からは試合前の闘志がもなくなり、これから起こることを思うあまり蒼白になっていた。
カーン!あみの気持ちが整理されないうちに試合のゴングが鳴らされた。
試合が始まると、会場が揺れるほどの大歓声が沸いた。あみはこの歓声に圧倒され、嫉妬していた。
オール猛娘は優子、なつみ、紗耶香、梨華、ひとみがリングに残り、他のメンバーはリングの外に出た。
「どないんした?この歓声にびびっとるんか?安心しな。いきなり全員では攻撃せーへん」優子があみに声をかける。
「なっ、なんであなたがいるの?すでに猛娘ではないはず・・」あみは聞き覚えのある声で我に戻ると優子がいることに驚いた。
「今日は猛娘じゃなくて”オール猛娘”だって言うたやん。聞いてなかったん?知っとると思うけど、うちは初代リーダーなんや」ニヤリとしながら答える優子。
「ふん・・歳のせいでメンバーについていけなくなって逃げ出しただけじゃない」あみは優子が気にするようなことを探し、優子を挑発しようとした。
「なんぼでも吠えたらええやん。あんたがどんなに吠えようとも関係あらへん。そんで、少しは強くなったん?」優子は余裕の表情である。前回に勝ったからだけではなく、猛娘のリーダーを努めるほどの器の大きさもあったのだ。
「な・・なによっ。あの時はまぐれで勝っただけでしょ」あみは必死に言葉を返す。
「ほぉ・・まぐれやて?おしっこ漏らして、白目になって気を失ったのは誰やったっけ?」優子は横目であみのことを見る(デート♪参照)。
「あれは・・」前回の試合のフィニッシュが優子の”踵落し寸止め”であった。”寸止め”であみはアイドルとして最も恥ずかしい失禁+白目+泡吹きで負けてしまったのである。ただ、優子は寸止めで相手を落とせるほどの実力の持ち主でもあった。
「ねえ。ゆうちゃん・・」あみと言い合う優子の後ろで思いつめていたなつみが優子の肩に手をかけた。
「今日はオール猛娘の一員として、そしてゆうちゃんと作った猛娘の一員として、私から行かせて欲しいんだけど・・」なつみは過去にメンバーに酷いことを反省していた。自分にけじめをつけたいと思い志願してきた。
「なっち・・」優子はなつみの思いを察すると、肩にかかるなつみの手に軽くタッチするようにして先頭を交代した。
「安部なつみ?そういえばあなた男を誘惑してメンバーをリンチさせたんでしょう?」後ろに控える猛娘たちに聞こえるようにあみは言った。
「・・・」反省していたが、さすがに一番気にすることを言われると言葉を返せず唇をかみ締めるなつみ。
「だから、なんだって言うの?」なつみの代わりに口を開いたのは過去になつみと北王に有刺鉄線竹刀で女の大事なところを傷つけられた梨華であった(※第20回大会第5試合参照)。
「あのときはなっちにやられちゃったけどいまは仲間だもんっ!あみ先輩ががいまごろとやかく言う筋合いはこれっぽちもありませんっ!」いつも内気な梨華が感情を剥き出しにしている。「りかっち・・・」なつみは意外な梨華に驚いたが、熱いものがこみあがってきた。
「たしかにあみ先輩の言う通り私もなっちに傷つけられた。正直に言えばいまでもなっちのことが怖いかもしれない。でもね、だからと言ってね、なっちのことを放っておけないのっ!私はもう猛娘のメンバーじゃないけど、なっちは友達だからっ!ずっとずっと友達なんだからっ!」紗耶香が自分の気持ちを打ち明けた。なつみは紗耶香の方を向くと紗耶香はウインクしながら笑顔をなつみに送った。「さやか・・」なつみは幸せな気分になった。
「なっちはね、いつもやさしいけどたまに暴走するのっ!それだけのことっ!本当のなっちはすっごくやさしくて、思いやりがあって・・とにかく私はなっちのことが大好きなんです!あみ先輩にわかりますか?こういう気持ちっ!」ひとみも自分の気持ちを素直に言葉にした。「ひとみん・・」なつみの瞳は既に涙を抑えることができなくなり、大粒の涙がほほを伝わった。なつみは優子に目を向けると優子はやさいく微笑んでうなずいた「(ゆうちゃん・・ありがと・・)」。
「そんなのとっくにしってるもん。なっちは加護の仲間だよっ!」加護も続いた。
矢口も怒った顔で続き、圭、真希、辻、ひとみも続く。LOVERオーディション21で猛娘のメンバーになった真琴、新垣理沙(りさりさ)、高橋藍(あいあい)、紺乃あさ美(こんこん)も続いた。
「猛娘をなめないでっ!これだけ人数がいるのだからいろいろあります。でも、猛娘は過去のことにこだわるほどみみっちいグループではないですっ!」現リーダーの佳織が締める。
なつみは待機するメンバー全員を見た。みんなやさしく微笑みながらうなずいている。
「く・・・」あみは閉口した。いや、させられた。
「これでわかったん?猛娘の結束は固いよ。独り善がりでわがままを言うてきたあんたとはぜんぜん違う。ま、独り善がりだったから前の事務所に勘当されたんやろうけどね」なつみの横まで前にでると決定的な一言をあみに突き刺す優子。
「ひ・・独り善がりだなんてっ!」あみは必死に優子の言葉を否定する。
「そやね。たしかに前の事務所も悪いかもしれへん。ただ、あんた自身にも非があったんやないの?」猛娘のデビューから4年もリーダーを務め上げてきた優子の言葉はあみに重く圧し掛かっていった。
「そんなこと・・絶対にないっ!」あみは目に涙をためながらひたすら否定するだけであった。
「それが独り善がりって言うねんっ!」優子の強い口調があみを完全に黙らせた。
現猛娘のリーダーの佳織を含めて、猛娘のメンバーは優子の背中がとてつもなく大きくみえていた。
「なによ・・卑怯よ・・大勢で・・」あみは涙をすすりながら言った。
「今度は自分のわがままが通じんとなると、泣くんか?」優子は呆れた。
「一人でがんばるには確かに大変やと思う。でもな、それを乗り越えるから一人でがんばる価値があるんと違う。泣けばいいと思うんやったら、誰でも泣くわ。このあほっ」優子はあみをとことんまで追い詰めていく。
「一人って言ったって、そっちはグループじゃない・・」あみの顔は涙でグシャグシャになっていた。
「そうや、グループや。猛娘はグループや。でもな、猛娘は一人一人の力を合わせて100にも200にもしようとしとる。それが猛娘やっ!それが猛娘の結束やっ!!」優子は胸を張ってあみに告げた。観客も優子の言葉に大歓声を送っている。
「(結束・・・)」優子の言葉はなつみにも重く圧し掛かっていた。
「(私は・・私は独り善がりでメンバーに迷惑をかけた・・・でも、猛娘のメンバーはちゃんと私の居場所を作ってくれた・・・)」なつみは思いつめた目で優子を見た。優子がとてつもなく大きく見えた。
なつみは猛娘のメンバーに迷惑をかけていたことで優子に心配させていたと思うと「(いつまでも、甘えていちゃいけなんだっ!)」自分の情けなさを反省し真剣な眼差しで優子に語った。
「ごめん、ゆうちゃん。ゆうちゃんがせっかく考えてくれた作戦だけど、もう一回だけ私のわがままを聞いて・・」なつみは瞳で優子に訴える。
「わかったよ、なっち。なっちが納得するまでがんばりぃな。でもな、無理をしたらあかんよ。そんときは、ちゃんとなっちの手を引くよ」優子はなつみに任せるようにすると、紗耶香、梨華、ひとみを連れて猛娘の控えるリング外に行った。
「ふん。あんたもばかだね。ひとりじゃなんもできないくせに」あみは相手が一人となるといきなり強気になった。
「ひとりでできなかどうかは、やってみないとわからないでしょう?」
「それにしても、北王さんと幽鬼くんをその貧弱な身体で誘惑したって言うんだから・・おかしな話しよねえ」たしかにT152B80W54H80のなつみの身体は男を悩殺するようなもではないが、かわいい顔とみずみずしい肌と”安部なつみ”というパッケージは、男を惑わすには充分であった。
「でも、あみ先輩はなっちより貧相な身体だと思いますよ」T158B80W55H82のあみは、スリーサイズの数字だけ見るとなつみと似たようなものだが、身長がなつみの方が低い分、なつみの方が胸が大きく、ウエストもくびれ、ヒップもしまっていることになる。
「だれが貧相よっ!」顔を真っ赤にして怒るあみ。
「あみ先輩ですよ。それ、本当に80センチもあります?ぜんぜんあるように見えませんねえ」
「ちゃ、ちゃんとあるわよっ!」あみは胸を突き出し、少しでも大きく見せようとしてしまう。
「ん?胸?私のことかな?」二人の会話を聞いていた猛娘最大のバストの持ち主の佳織が85センチ胸を持ち上げるようにしている。
「私、胸ない・・」一番身長も低い75センチの矢口が哀しい顔をしている。
「まりっぺもそのうち大きくなるって」圭がフォローする。
「でも・・身長も止まっちゃったみたいだし・・」矢口が余計に哀しむ。
「あはは。うちとてこの歳で80しかあらへん。女は胸だけやない」優子が口を挟む。
「そうそう、あの人なんて胸が小さいどころかえぐれているかもよ?」真希があみを指差している。
「えぐれている・・ですってぇ〜?」あみは真希の言葉に反応した。
「じゃあですね。あみ先輩ってスリーサイズ詐称しているんですか?」藍がまじめな顔で質問している。
「スリーサイズ詐称・・そんな言葉あるの?」圭が藍に尋ねる。
「うう・・ん・・。きいたことないです」藍がまじめに答えた。
「ファンのみなさんのためにもちゃんとした数字を言った方がいいと思うな」なつみもおもしろがっている。
「詐称なんかしてないっ!」
「でも、なんでそんなに胸の大きさが気になるんです?もしかして、ごっちんの言う通りでえぐれてるのかな?」なつみはすっとあみに近寄るとあみの乳房をビキニ越しに触った。
「きゃっ、なにするのっ!」いきなり胸を触られ隠すようになつみから離れる。
「ごっちん、ざ〜んねん。一応、えぐれてないよ」真希に報告すると、猛娘たちは大笑いした。
「好き勝手なことばかり言わないでえっ!」あみは口では敵わないとみると、なつみに襲いかかった。
バキーン!「ぎゃう」顔面にパンチを食らったのはあみの方であった。あみの突進になつみはうまくカウンターで合わせていた。
「う〜ん・・なんで手を出してくるかな。」なつみもちょっと手が痛かったらしく手首を振っている。
「ところであみ先輩?なんでビキニなんか着ているんでしょうか?落ちちゃったら恥かしよ。もしかしたら少しでも大きく見せようと思っているのかな?」
「もう、言わないでっ!」あみは立ち上がるとファイティングポーズを取った。
「う〜ん・・。しょうがないなあ」なつみは構えることなく近づくとローキックを叩きこんだ。
ビシっ!バシっ!「きゃ・・いたっ・・」なつみはローキックで徐々に二人の間を詰めていく。
「それでゆうちゃんと戦ったんですか?」なつみは間を詰めるとあみの頭の後ろで手を組み首相撲の形にした。
スボっ「うげぇ・・」なつみの膝があみの胃袋を直撃した。
「こんなところで吐いたらやだよ」なつみはあみの頭をぐっと下げると膝で蹴り上げた。グジャ・・「がぐっ」顎への衝撃はあみの脳を揺すった。
バシュ・・ボシュ・・ブニュ・・「あんっ、いや・・ああん・・」なつみは狙っているわけでなはないが、ビキニブラでしか守られていないあみの乳房を膝で潰していった。
「あ、ごめんなさい。胸に当たっちゃいました。でも、これで80センチになったかな?」なつみは膝蹴り止めた。
「も・・もう、それは言わないでってばっ!」あみは胸に受ける痛みで逃げ腰となり始めていた。
「あ〜あ。弱気になったらだめだよ。だから、売れなくなっちゃったと思います」なつみはあみの顎を膝で蹴り上げると首相撲を放して、くるりと後ろ回し蹴りをあみの首筋に叩き込んだ。
「あぐうう・・」顎を叩かれ言葉が発すことができないあみはリングの上でのたうちまわった。
「むうう・・もう終わりなのぉ?つまんなぁい」なつみは息も切らせていない。
圧倒的な差にあみは屈していた。

〜 いきまっしょいっ 〜

名実ともにあみを上回るなつみの攻撃にあみはすでにグロッキー状態になっていた。
オール猛娘は観客を味方にしてあみを追い詰めていった。
「あ、ところでなんであみ先輩はこのリングにまた上がったんです?って聞いてないか・・」なつみは転げまわるあみに聞こうとしたが、あみの返事ができなかった。
あみは藻掻きながらリングの外にVIP席につむくの姿を見つけた。
「(あ。つむくさん・・)」あみはつむくにプロデュースしてもらうことを思い出した。
「(こんなことで負けられない・・!)」自力で立ち上がるものの、なつみに受けたダメージが足にきてふらふらになっていた。
「あ。すご〜い」なつみは立ち上がったあみの顔を容赦なく殴りはじめた。
グシャ・・バキ・・しかし、あみはなつみの回し蹴りで脳震盪を起こし一種の麻痺状態になっていたため、痛みを感じなくなっていた。
「(やだ・・負けたくない・・また、光の当たるところに戻りたい・・っ!)」あみはひたすら勝手に振える足を引きずりながら前にすすめていた。
「ひ・・っ」なつみは亡霊のように一歩一歩ゆっくりと近づくあみが怖くなってきて、攻撃する手が休まってきた。
「負ける・・わけにはいかないの・・」あみはなつみに近づくと、なつみの腰に前から手を回し膝をついたまま抱きついた。
「きゃっ!」なつみはいきなり抱きついてきたあみを無我夢中で離そうとして、あみのビキニに手が掛かってしまいあみをトップレスにしてしまう。
「(捕まえた・・)」あみはトップレスになったことも気付かず必死になつみに抱きついていた。
「やだあ。ブラが取れちゃってますよ」なつみはあみのブラを返そうと話し掛けた。
「(これで離れたら・・っ!)」しかし、あみはなつみの言うことを聞かずに必死でなつみに抱きついることだけを考えてた。
あみは離されないように腰に回していた手をなつみのヒップの水着ラインからレオタードの中に入れてなつみのお尻を抱きかかえるようにした。
「きゃっ!どこに手を入れるの・・」なつみは必死で離そうと膝をあみに蹴り込む。
あみの胸はなつみの膝の高さにあったため、なつみの膝で乳房が揉まれているようになったが、二人は密着しているためあみの胸は揉まれているようになっただけでダメージはなかった。
「あ・・っ」なつみがバランスを崩すと後ろに倒れてしまう。しかし、あみの手がなつみのレオタードの中にあったため二人の身体は離れることはなく密着したままである。
「いやあああん・・」悲鳴をあげたのはなつみである。あみがなつみのお尻を抱えている状態になっていたため、あみの顔がなつみのレオタードのデルタ地帯に埋もれた形になっていた。
「あみ先輩っ!どこに顔を・・っ!」なつみは上体を起きあがらせるとあみの髪の毛を引っ張り、自分の股間から離そうとする。
「(攻撃しなくっちゃっ!)」あみは手が自由に使えないが、なんとか攻撃をしようとして、無意識のうちになつみの股間に頭突きを落していった。
ゴキっ!「きゃあああっ」なつみは股間にヘッドパッドを受けると身体中に電気が走り悲鳴をあげた。
「いやあん・・やめてよぉ〜・・」なつみはあみの髪を引っ張るように抵抗を続ける。
ゴキっ!ゴキっ!「あううん・・」あみも必死になってなつみの股間にヘッドパッドを落していった。なつみは股間にヘッドパッドを受けるたびに身体をえび反りにして跳ね上げる。
「(なっち・・かわいそう・・)」猛娘たちはあまりの光景に目を覆っている。
「お願い・・やめて・・」なつみの手からあみの髪を掴む力が抜けてしまった。
「安部えっ!あんたの大事なとこを潰してあげるっ!」あみは頭を何度かなつみの股間にぶつけているうちに意識がはっきりした。あみは身体をしならせると頭を出きるだけ高く上げ、なつみの股間に狙いを定めて頭を落した。
ゴキィィィン!「ぎゃああああああっ!」鈍い音とともになつみは大きな悲鳴をあげる。「きゃあああっ!なっちいいいっ!!!」なつみが気を失うと待機する猛娘たちの口からも悲鳴があがった。
「とどめぇっ!」あみは再び身体をしならせ頭を高く上げた。
「てめえ。また、性懲りもなく・・」あみの卑劣な攻撃に我慢できなくなった優子が飛び出そうとすると、紗耶香が優子より早く動き出していた。
「調子に乗るなっ!」紗耶香はあみの顎に手を掛けヘッドパッドができないようにすると、そのまま背中にまたがりキャメルクラッチの姿勢にした。紗耶香が力いっぱいあみの身体をしならせたため、あみの乳房が観客に丸見えになったが、観客はなんの反応も示さなかった。
「姐さん!なっちをっ!」先を越されて、呆然としていた優子は紗耶香の声で気を取り直すと、ぐったりするなつみを助けにいった。
「なっち・・大丈夫?」なつみをあみから離してリングの外に連れ出すと、優子は心配そうな顔をしてなつみに声をかけるがなつみからの返事はなかった。
「担架をっ!」気を失ったなつみに声をかけながら担架を要請する優子。
リングに残った16人はなつみが担架で運ばれていくことを見守ると、リングを振り返り怒りの視線をあみに投げつけた。
「よくもなっちをっ!」まず、リングに飛びこんだのは元猛娘の綾と梨華である。
「さやかっ!」綾が走り出すと紗耶香に声をかけた。
紗耶香があみの顎から手を放すと同時に綾のサッカーボールキックがあみの顔を捉えた。
グチャア・・もろに綾のキックがあみの顔にめり込んだ。
「あが・・」顔を押さえてうずくまるあみ。
「こんなんで許されるとは思うなよ・・」紗耶香はあみを起こすとあみの腰に手を回し、高々く抱えがえアトミックドロップであみの股間を砕いた。
ガツン!「ぎゃふ・・」股間からものすごい衝撃が脳天に突き抜ける。
「そぉれっ!」紗耶香の膝の上に腰を掛けている状態のあみへ梨華が勢いをつけてドロップキックを見舞った。
「そりゃっ!」梨華のドロップキックの勢いを利用して、紗耶香がバックドロップであみの後頭部をリングに叩きつけた。
「これはおまけっ!」綾が高く飛びあがり、ギロチンドロップであみの首を狩る。
「うがああ・・」あみは一連の攻撃でどこが一番痛いのかわからなかったが、とにかく藻掻いていた。
「次、行きますっ」真琴、理沙、藍、あさ美のLOVERオーディション21を勝ち抜いてきた新メンバーである。
真琴が横たわるあみに背を向け片膝を立てた状態で座ると、理沙、藍、あさ美の3人はあみと真琴の延長線上に立った。
「いいよっ!」真琴が声を掛けると、あさ美が真琴の方へ走りこんだ。あさ美は真琴の膝の上の手のひらに足を掛けジャンプするタイミングに合わせて真琴があさ美を上に持ち上げると、あさ美は跳んだ。
「いっけぇ〜っ!」あさ美はあみのお腹に狙いを定めると両足を揃えてあみの柔らかいお腹に着地した。
「うげぇ・・・」あみは身体はくの字に跳ねあがらせながら口から液体が吹き出した。
「高橋、行きま〜すっ!」まるで体操の跳馬でも跳ぶかのように片手をあげてから、スタートを切った藍は真琴の補助を受け高く跳んぶとあみのお腹の上に綺麗に着地した。
「ぎゅえ・・」再び、あみの身体はくの字に跳ねあがった。
「げぇぇぇ・・」あみの口から胃の中のものがすべて出てきた。
「やだあ、きたな〜い」猛娘たちはあみの汚物を見て顔をしかめる。
「あの子たちもすごいことするなあ」アクロバットのような技を決めていくLOVERオーディション21組を見て感心しているのは真希である。
「(・・・ったく、なんちゅう危なっかしいことを・・)」真希とは逆に優子は心配していた。
新垣がスタートを切って真琴の補助で跳ぶと、バスケが得意な理沙は前の二人よりはるかに高く跳んだ。しかし、高く跳びすぎたため目標地点のあみのお腹より遠くに跳んでしまっている。
「(やばいっ!)」理沙は目測を誤ったことに気付くと空中でバランスを崩してしまった。
「あっ!言わんこっちゃないっ!」優子の心配が的中してしまいは声を上げた。
グジャ・・「っ!」あみは声にならない悲鳴をあげた。
理沙はなんとかバランスを取り戻して片膝を付くような形で着地し大きな事故にはならなかった。
「大丈夫?」先に跳んだ二人が理沙に手を貸すと、「うん」理沙は立ちあがった。
大丈夫でなかったのはあみの方であった。理沙が着地したのはあみの顔面であった。あみの顔に理沙の膝がめり込んだのである。
理沙の膝を受けた顔の一部がみるみるうちに変色して腫れあがった。
「ぎゃああああっ!」あみは一瞬の間のあと、大きな悲鳴をあげると顔を押さえてリング上を転げまわった。
「痛いよぉ〜顔がぁ〜」顔を押さえたままうつ伏せになって足をばたつかせて藻掻いている。
「なんか、悪いことしちゃったかな?」真琴が3人のところへ行った。
「うう〜ん・・でも、先になっち先輩に酷いことしたのはあみ先輩だよ」藍が答える。
「あ。あみ先輩って言えばさ、たき・・。ん、あみ先輩の元彼って誰だっけ?たき・・ざま・・さん?」あさ美が試合に関係ない話をはじめる。
「(えっ??)」顔を抑えるあみの耳に4人の会話が入ってきた。
「それ違う。たきざわさんでしょ。たきざまって誰よ?」藍が答える。
「たきぎさんでしょ」理沙が言う。
「たきびさん?」真琴がまじめな顔で答える。
「焚き火?」あさ美がぷっと噴出す
スキャンダル話に興味を持つ年頃の4人は普通の会話をしていた。
「焚き火って・・焼きいもじゃないんだから」あさ美のツボにはまったようで腹を抱えて大笑いしている。
「た・・”滝本くん”よっ・・」あみは顔へのダメージより、彼氏”であった”滝本の悪口に腹を立て立ち上がる。
「でも、その滝本さんに裏切られたんですよね?(※第32回大会第4試合参照)」決定的な一言を口に出したのは真琴であった。
「(なっ・・)」あみの顔は蒼白になっていく。
「え?まじ?それってサイアクじゃん・・」藍が答える。
「でも、裏切られたって?」あさ美が興味津々に聞く。
「詳しいことは私も知らないよ。でも、あみ先輩が一方的に振られたみたいだよ」真琴が答える。
「まじで〜?あみ先輩ってあんな人にも捨てられたんだ〜?」藍。
「あんな人に”も”って・・」あさ美。
「前の事務所にも捨てられたんでしょ?」藍。
「あ〜うんうん。ちょおみじめじゃん」真琴。
「・・・っ!いやあああっ!」4人の一言一言があみをズタズタに切り裂いていた。
「あ〜起きたみたい。でも、その話、わかるようなきがするなあ・・」理沙。
「あんたたちみたいなこどもになにがわかるっていうのぉぉぉっ」あみは髪を振り乱し、真琴に殴りかかった。
バキっ!「きゃあああっ」悲鳴がステレオで聞こえた。
あみに殴りかかられた真琴は頭を抱えて座りこんでいる。あみは顔を押さえてうずくまっている。
あみが真琴に殴りかかると真琴は悲鳴をあげながら座り込むとあみはパンチは空を切った。そこへ真希の前蹴りがカウンターであみの顔を捉えたのだった。
「(ああん・・また、顔・・)」あみは自分の顔が腫れ上がっている感じがわかっていた。
「あ〜あ。ごっちんもひどいなあ、一応タレントのあみ先輩の顔を蹴るなんて・・」圭があみを起こしながら言った。
「こんなことしたらまじマズイって・・」バギっ!やさしいい口調のまま、圭があみ顔を鋭いジャブで殴った。
「ふぎゃ・・」かえるが潰れたような悲鳴をあげると、鼻から忘れたように血が流れ出た。
「仕方ないじゃん。あみ先輩がなっちに酷いことしたんだから・・それに圭ちゃんだって、そんこと言いながらこんな風にあみ先輩に酷いことしてるよっ!」グチャ!真希も圭に話しかけながら鋭いジャブをあみの顔に叩き込む。
「私はそんなにやってないよ。これぐらいだよ!」ボギ!
「あ〜やっぱり、私より酷いことしてる。私はこれくらいだもん!」バキ!
ジャブ程度のパンチなので倒れることがなく何発も二人に顔を叩かれるあみはその場で立ち尽くしていた。あみの鼻からの出血は顎を伝わり自称80センチの乳房を赤く染めていた。
「も・・もう・・やめてくらはい・・」あみはフラフラになっている。
「うるさいなっ!黙っててっ!」二人の喧嘩キックが同時に乳房に叩きこまれた。
「ぎゃふんっ」あみは仰向けでリングの上に横たわった。
「で?誰が誰より酷いことしてるって?」真希が一歩踏み出るとあみの乳房を踏み潰した。
「ごっちんが私より酷いことしてると思う」圭も一歩踏み出るとあみの乳房を踏み潰した。
「ああん・・」二人に乳房を踏み潰され苦悶の表情を浮かべるあみ。
「だ〜か〜ら〜そんなことないっていってるじゃん」真希があみの乳房を踏んでいる足に力を入れる。
「そんなことあるからあるっていってるんじゃん」圭もあみの乳房を踏んでいる足に力を入れる。
「ねえ?かおりん。あの二人はいつもああなん」リングの外で圭と真希を見ていた優子が佳織に尋ねる。
「うん。たまにね・・」佳織が答えた。
「お願い、足をどけて・・おっぱいが潰れちゃう・・」あみの乳房はべったりと潰れていた。
「うるさいって言ったでしょっ!」二人はあみの乳房を踏み潰して足をどけると、あみの乳房を両脇から蹴ると二人のつま先があみの乳房にめり込んだ。。
ブニュ・・「あああぁんっ・・(また胸・・)」あみは乳房を蹴られると二人から逃げるように自分から飛んで行った。
「あらら・・飛んで行っちゃったよ」圭があみを見て言う。
「やれやれ・・あみ先輩も世話がやける・・」真希があみを起こす。
「大丈夫ですかあ?まだ、ミニ猛とリーダーたちが残っているんですけど?」真希はあみに声を掛ける。
「うう・・・」圭の言葉に反応するあみ。
「大丈夫、生きているみたい」真希が圭に言う。
「ごっちんはやっぱりいじめっこだ(笑)」
「そんなことないって」
二人はぺちゃくちゃと話ながらリングの外へ出ていった。
「あの・・あみ先輩?おっぱい出して寝ると風邪ひきますよ」矢口が声をかける。
「まりっぺ・・おっぱいにこだわりますね」辻が言う。
「だって〜やっぱり最低でもこれくらいは欲しいもん」矢口が答える。
「う〜ん・・でもぉ、まりっぺの身長でこのおっぱいだとら巨乳になると思うなあ」加護が続く。
「矢口の巨乳って見たくない?」矢口。
「イメージないなぁ」辻。
「それにしてもですね、おっぱいを出してて恥ずかしくないんでしょうか?」加護があみを見ながら言った。
「(えっ?ブラは???)」あみはここではじめて自分がトップレスだということに気付くと、潰れた乳房を隠した。
「あ。気付いたみたい・・でも、いまごろなんておっかしいです」加護。クスクス笑ってる。
「ところでですね、どうしてあみ先輩とプロレスなんてしているのでしょう?」辻。
「加護は休暇を貰うためだと思いますけど・・」加護。
「そういうことじゃなくて、あみ先輩がなんで辻たちと戦っているのでしょう?」辻。
「う〜ん・・、そうですねぇ。もしかして、猛娘に入って辻といっしょに踊りたいのでしょうか?」辻。
「あみせんぱ〜い。どうなんでしょう?」加護があみに質問をした。
「・・したい・・」あみは「〜私だって復帰したい〜」と言いたかったが声が出きらなかった。
「したいんだって」加護があみの言葉をそのまま二人に言う。
「ん〜・・それなら、ミニ猛のダンスをあみ先輩に教えてテストしましょう」辻が言う。
「そうだね。紫村さんがいないけどアウィーンダンス・・?」加護が答える。
「うんうん。テストにはちょうどいい・・のかな?」矢口。
「あみ先輩には、みけちゃんのパートはかわりにしてもらいましょう。だめですか?」加護。
「そか」辻。
「じゃあ、やってみようか。ののもあいぼんもOK?」矢口があみの手を引き、無理やりを立たせた。
「な・・なんで私がそんなこと・・」あみは嫌がった。
「これは私の推測なんですけど、このプロレスで私たちに勝ってつむくさんに売ってもらおうと思っているんですよね?」矢口にはなんとなくであったがあみの考えが見えていた。矢口はあみにつぶやくように言った。
「っ!?」あみは矢口にすべてを見透かされていると思うと体中に衝撃が走った。
矢口があみをポジションにつかせると、自分もポジションに立って観客に手拍子を催促した。観客も矢口に合わせて手拍子を打つ。
「かおりんっ!」矢口が佳織の名を呼んだ。
「私かい・・・(^^;。仕方ないなあ・・。あ〜み〜ま〜」佳織はノリながら最初の一声を発すると3人が歌いながら踊り始めた。
「♪アウィーンアウィーンアウィーン〜♪」三人はアウィーンポーズのとき、あみに肘打ちをジャブ程度に当てる。
「♪アッイーンっ♪」4つめのジャンピングアウィーンでフライングエルボーをあみに叩きつけた。
「しっかり踊らなきゃだめですよ」辻が踊りながらあみに言う。
あみは立っているのがやっとで踊ること以前に避けることもできなかった。
「なっちに酷いことしたお返しです」矢口はジャンピングアウィーンを叩きこみながらあみに告げた。
3人の身体は小さいが全体重を乗せたフライングエルボーはあみに大きなダメージを与えていた。
結局、1曲分が終わるとあみはその場に崩れ落ちるように倒れた。観客は思いがけないところでミニ猛のダンスと唄が観れて大喜びである。
「はあ、はあ、はあ・・これぐらいで倒れるなんて・・はあ、はあ・・」息を切らせながらあみに猛娘失格を伝える矢口。
ミニ猛は優子と佳織にタッチをするとリングの外へ出ていった。
「楽しかったよ。お疲れ様」優子はミニ猛の3人ににっこりと微笑んだ。ミニ猛の3人は優子の笑顔にちょっとだけ照れていた。
「ほら・・あみ。どうしたん?」優子は視線をあみに移すと表情が険しくなった。
「あみさん、だめみたいですよ・・」佳織が言う。
「そやね・・」優子があみに近づこうとした。そのとき・・・。
「中澤ぁっ!」会場の奥から声が聞こえた。
優子が声の方へ視線を向けると、医務室に運ばれたはずのなつみと滝本秀明が立っていた。
「なっちっ!」優子はぐったりするなつみの方へ駆け寄ろうとした−。

〜〜〜 滝本の暴走 〜〜〜

オール猛娘の個性溢れる猛攻にあったあみは既に戦える状態ではなかった。
優子が試合を終わらせようとあみに近づくと医務室に運ばれたはずのなつみを滝本を連れ会場にやってきた。
滝本は医務室に診断中の医務室に乱入すると、まっさきになつみに近づき持っていた有刺鉄線バイブで医師を脅すと医務室から連れだし会場にやってきたのである。
「なっちっ!」優子はなつみの方へ行こうとした。
「中澤ぁっ!動くなっ!」滝本の手には有刺鉄線を巻きつけたバイブが握られていた。
なつみを引きずるようにリングに上がる滝本。
客席はいきなりの滝本の登場にざわめいている。黒服たちも会場に入る前に滝本を取り押さえようとしたがなつみが人質に取られているためなにもできなかったのである。
「滝本・・」優子は滝本を睨みつける。
「そんなに怖い顔をするなよ。美人が台無しだぜ」滝本は勝ち誇ったような顔をしていた。
「なっちを放せ」滝本ににじり寄ろうとする佳織。
「おっと、動くなっていっただろ。こいつがどうなっても知らないぜ」滝本は有刺鉄線バイブをなつみに近づけた。
「ずる〜い!」「反則だぁ〜っ!」「卑怯なことするなぁっ!」リングの外にいる猛娘たちから非難の声があがる。
「っせーんだよっ!じゃりはだまってろっ!」滝本は猛娘たちに凄む。
「じゃりってなによー」「ちゃんとした日本語じゃないとわからないよーだ」「”たきび”さんはひっこめー」「”たきび”じゃないって・・たきもとっ」めちゃくちゃな声を立てる猛娘たち。
「うるせーっていってんだろっ!お前らの安部がどうなってもいいのかっ!」滝本はなつみの乳房の上に有刺鉄線を刺すと、なつみの白い肌から赤い線が流れてきた。
「あうっ・・」なつみは身体をビクンとさせる。
「きゃっ・・・」猛娘たちは目を伏せ黙りこんだ。
「おい。いつまで寝てるんだよ」滝本は横たわるあみを小突くとあみはぼんやりしながら起きあがった。
「あ・・うう〜ん・・。・・滝本くん・・?」助けにきてもらったかと思うあみ。
「勘違いするなよ。別にお前を助けにきたわけじゃあない。いま、人気のある奴らをかわいがってやろうと思っただけさ」冷たくあみをあしらう。
「そんな・・」あみは再び絶望の淵に立たされた気分になった。
「そんなことより、あみも中澤には借りがあるんだろう?」滝本はあみの矛先を優子に向けようと企てた。
「どうすれば、なっちを放してくれるんや?」優子は滝本に尋ねた。
「さあな。俺が満足すれば放してやる」
「そんな・・理不尽や・・」
「理不尽?世の中理不尽にできているんだよっ!」
「く・・っ」優子は言葉を詰まらせた。
「とりあえず、猛娘のストリップでも拝見しようか」
滝本の言葉に嫌がる悲鳴をあげる猛娘たち。
「ピーピーうるせえんだよっ!」滝本の一声で静かになる猛娘。
「その着ているものを脱げって言っているんだよ。それもファンサービスだろ」なつみの首筋にバイブを近づける。
猛娘たちは動揺した。
「ちょっと待ち、脱ぐならまず私だけでもええんやろ?」優子が一歩前に進み出る。
「ゆうちゃん・・」佳織が優子に声を掛ける。
「それにあんたは一人、いきなり全員は相手できへんやろ。なら、うちからあんたの好きにすればいい。それで満足できへんなら他の女の子を相手にすればええやろ?」佳織の言葉を遮るように続ける優子。
「なにを格好つけているんだ?もしかして、実は裸を見せたくてしょうがないんじゃないか?」滝本は大笑いしながら優子を罵った。
「・・・」滝本の言葉に顔を真っ赤にして耐える優子。
「だったら、とっとと脱いでもらおうか」滝本はレオタードを脱ぐように指示した。
「・・・」優子は従うようにレオタードの肩の部分をずり下げ、胸が見えるギリギリの所で止めた。
『おい。中澤が脱いでいるぜ』
『脱がされているんだよっ!』
『くそっ滝本の奴・・・』
『てめえ、それでも男かあっ?』
観客は優子が脱いでいくことで興奮せずに滝本の卑怯なやり方に腹を立てていた。滝本は観客が優子のストリップに喜ぶと思っていたが意外な反応に戸惑った。
「あにやっているんだよっ!全部脱ぐんだよ!」焦った滝本は早く脱ぐように催促する。
優子は胸を隠しながらレオタードを脱いでいく。レオタードが優子の身体から離れると、優子の身体が露わになった。レオタードの下にはアンダーショーツを穿いていたため全裸にはならなかったが、紐と小さな布だけのアンダーショーツは下手なヌードよりいやらしく見えた。
「ずいぶん、やらしい下着をつけているじゃねえかよ」滝本は優子のアンダーショーツを見て笑った。
「アンダーショーツも知らないの?」「下着とは違うって知らないんだ。ちょうださ」「私だって穿いてるもーん」猛娘たちが滝本をばかにしている。
「う・・うるせーんだよっ!静かにしろっつってんだろっ!」滝本が猛娘たちに怒鳴ると猛娘たちは黙った。
「その隠している手をどけな。見せたいんだろう」滝本は優子が胸を隠している手をどけるように指示した。優子は胸を隠している手をどけると、唇をかみ締めうつむきかげんで身体を振るわせていた。
「へえ。もう30になるっていうのに、結構いい身体しているんじゃん。ソロデビューしたのは男にいつも抱かれてたいからか?」80センチの形のよい乳房を見て滝本は優子をののしり、大笑いした。
「姐さん・・そんなことしてたの・・」辻はぽろっと口にした。
「滝本のうそに決まっているだろっ」圭は辻の頭にげんこつを落とした。
「ごめんなさい・・」辻はげんこつを貰ったところを押さえながら謝る。
「おい、あみ。なにをボーとしてるんだよ。お前もやられたんだろう?」滝本があみに言うと、あみは頷いて猛娘のところへ歩いて行った。
まず、ミニ猛の3人の前に立った。
「さっきは、ずいぶんふざけたことをしてくれたわね。アウィーンってこうやるのでいいのかしらっ」バキ、グシャ、ボキ・・あみは肘打ちを3人に叩きつけた。3人は身体が小さいため簡単に吹っ飛ばされた。
あみはLOVERオーディション21の4人の前に立った。
「さっきはずいぶんなめた口を聞いてくれたわねっ!」あみは順番に4人の首に手を回すと引きつけながら膝でお腹を蹴り上げた。お腹を押さえてうずくまる4人につばを吐き捨て圭と真希の前に立った。
「二人はずいぶん仲がいいみたいね」あみは圭と真希の頭を持つと、二人の顔同士をぶつけるようにした。
グシャ・・鈍い音とともに二人は抱き合う格好でその場に座りこんだ。
「安部に大事なところを壊されかけてもここにくるなんて、よっぽど虐められるの好きみたいね。あなたたちのアソコはっ!」梨華、紗耶香、ひとみの前に立つと3人の股間につま先蹴りを叩き込んだ。
「まったく、猛娘を辞めたのに、のこのことここにくるなんて物好きな・・・」あみは綾と明日香を抱え上げるとリング外の硬い床の上に二人を叩きつけた。
リングの外にいる猛娘たちは反撃することも許されず、ただあみの仕返しを受けうずくまっていた。
あみはリングの上に戻ってきてなつみの方へ近づいた。
「私の胸が貧乳だとか、好き勝手に言ってくれたわね!」あみはなつみのレオタードを剥ぎ取るようにすると80センチの乳房が露わになった。
「あなたも言うほど大したものじゃないくせにっ!」
スシュ・・バニュ・・ボニュ・・「あんっ。あう。ああん。」あみはなつみの乳房をパンチングボールのように殴り始めた。殴られるたびに白い乳房の色が変わりひしゃげていく。
「ああん・・やめておっぱいが・・私のおっぱいが潰れちゃう・・」なつみの胸の痛みを堪えていた。
「あんたの胸がどうなろうと私が知るわけないでしょ」なつみのお腹を膝で蹴り上げた。
ズボっ「うげぇ・・」なつみの口が酸っぱさでいっぱいになる。
「吐かないように我慢してるの?けなげねえ・・」あみは続けてなつみのお腹を膝で蹴り上げた。
ガツ・・ズブ・・「あう・・ぐふ・・」なつみは苦悶の表情を浮かべるが耐える。
「さっさと吐いて気持ちよくなればいいのに」バニュ!あみは渾身のアッパーをなつみの乳房に叩きこむとなつみは自力で立てなくなった。
「おっと・・まだ、おねんねには早いぜ・・」倒れそうになったなつみの乳房を後ろから掴み、なつみの乳房を揉むように手を動かした。
「ああん・・」あみに痛めつけられた乳房を滝本に揉まれ、なつみの口から言葉が漏れた。
「なんだよ?てめえも感じているのか?」滝本は片手をなつみの乳房から離すと、ビキニラインの脇から指を這わせてなつみの秘裂をいじりはじめた。
「あ・・いや・・そこは・・」なつみは身体をくねらせ、滝本の手から逃れようとするが指を入れられてしまう。
「なっちっ!」優子はなつみに声を掛ける。
「こんなのプロレスじゃあないっ!」佳織が滝本とあみに言った。
「なんだよ、あみ。忘れ物してるじゃねえか・・」あみは滝本に言われると佳織の方へ向かった。
「なによっ・・そんなにずるいことしていいと思ってるの・・」佳織は身構える。
「さっきからなにもしてないで、口だけのくせに・・」あみも身構えた。
「ああんっ・・んん・・」二人が対峙するとなつみの声が聞こえた。
滝本はなつみの乳房を秘裂を触りながら、なつみの唇も奪っていた。なつみはなす術なく滝本に身体を自由に扱われ、身体を膠着させ涙を流していた。
「抵抗すれば安部がどうなっても知らねえって言っただろ」滝本は佳織に言った。
「ず・・ずるい・・」佳織は滝本の方を見て呆然としてしまう。
「いやあっ!このっ!このっ!このぉ〜っ!」突然、あみは発狂するように佳織に襲い掛かった。滝本がなつみの身体だけではなく唇まで奪う形ではあったが、自分の目の前で他の女とキスをされ嫉妬していた。
バシ!ビシ!バチン!「きゃっ・・痛っ・・あんっ・・」あみの平手をほっぺに叩かれはじめた佳織がガードしようとした。
ズボ・・「ぐ・・」あみはがら空きにあった佳織のお腹にミドルキックを打ち込むと佳織は身体をくの字にしてうずくまった。
「なんでぇ〜っ!」あみは泣き叫ぶように声を上げると佳織の頭を沸きに抱え後ろに倒れた。
グシャ・・あみの放ったDDTで佳織の頭がリングにめり込んだ。
「他の女の子なんかに・・」あみはお尻を突き上げるように頭をリングにしている佳織の髪を掴むと立ち上がらせ、肩に担ぎカナディアンバックブリーカーを極めた。
「あうう・・腰があ・・」あみの肩の上で身体をしならせ苦し佳織。
ガシーン!あみは佳織の後頭部をリングに叩き落した。
「頭が割れそう・・」ナイアガラボムを受けた佳織は頭を押さえ藻掻く。
「いやあ〜〜〜っ!」あみは再び泣き叫ぶような声を上げると佳織の両足を掴み、グルグル回り始めた。
「(ううう・・)」あみのジャイアントスイングが回転を増すごとに佳織の頭に血が上り、佳織は朦朧としてきた。
バシーン!「きゃう・・」佳織はあみのジャイアントスイングから開放されると、リングに全身を叩きつけられたが無意識のうちに立ち上がってしまう。
「へへへ」佳織のすぐ後ろにはなつみの身体を弄ぶ滝本がいた。滝本は、なつみの胸から手を話すとクラクラしている佳織の胸に手を回してレオタードの上から佳織の胸を揉み始めた。
「あ・・」あみが声をあげた。
「滝本・・なんであみの気持ちを考えてあげないの?」優子はあみが佳織に攻撃していたとき、あみが滝本に対して特別な気持ちがあることに気付いた。
「はあ?なに言ってるんだ?おい、あみ、あのおばさんがなんだか吼えてるぜ?こっちは俺が遊んでいるからおばさんの相手でもしてやれ」滝本は佳織の胸から股間に手を移しながらあみに言った。佳織は必死で滝本の指が侵入を拒んでいる。
あみは複雑な表情でうなずき優子の方を見た。
「あんたなんかに私の気持ちがわかるもんですか・・そうやって格好つけて、ばかにするのもほどほどにしてっ!」あみはつま先で優子の胃袋を蹴り上げた。
「ぐえええ・・」優子は前かがみになる。
『鈴本ぉ〜汚ねえぞてめぇ〜』
『そんなことしかできなからいつもボコボコになれるんだよぉっ!』
『てめえは滝本とSEXでもしてあんあん言ってりゃいんだよっ!この貧乳女っ!』
『ひ・ん・にゅうっ!ひ・ん・にゅうっ!ひ・ん・にゅうっ!・・』
観客からあみに罵声が飛び、貧乳コールが沸きあがる。
「う・・うるさいわねっ!こうなれば、徹底的に猛娘をやってやるっ」あみはとうとう観客を完全に敵に回してしまった。
あみは優子の顎を持ち顔を上げると顔にパンチを叩きこんだ。
ガチン!「ぎゃうっ」優子は2・3歩後ろによろけて顔を押さえてうずくまった。
優子を背後から捕まえると、そのまま後ろに投げ捨てた。
バシーン!「きゃっ」後頭部を打ち付け意識が朦朧とする優子。
あみは優子の片足を掴むと反転し片えび固めを決めた。しかし、あまり深くなく優子へのダメージもあまりないものであった。
「こんな極まりきっていない技でうちを仕留められると思ってるん?」優子は表情ひとつかえていない。
「あんたもばかねえ。自分がどんな格好かわかってるの?」あみは空いた手で優子のアンダーショーツに手を掛けた。
「あ。なにすんねんっ!やめろ・・」優子はあみのお尻の下で首を横に振り嫌がっていた。
「へへへ、いいねえ。その悲鳴。やれっ、あみ」滝本はなつみと佳織の秘裂に入れている指を動かしながらあみに指示を出した。
「ほらっ!あなたたちの大好きな猛娘のリーダーだった女のアソコを拝ませてやるっ!」あみは半分ヤケになって観客に向かって言った。
ビリっ!あみは優子のアンダーショーツを一気にむしり取った。優子は全裸で片エビ固めを決められている。
「ああん・・あっ。見られるぅ・・」
「いいぞ、あみ。そのまま両足を持つんだ」あみは滝本の指示で優子の両足を持ち、逆エビ固めの形になると優子の秘裂を滝本にさらけ出した。
「なんだよ・・思ったほど使ってねえなあ」滝本はなつみと佳織の秘裂から指を抜いてから優子の方へ近づいていく。二人はその場にぐったりと座り込んだ。
滝本が優子の秘裂を舐めるように覗き揉むと、手をのばし優子のしげみを掻き分け、秘裂を開いた。
「あ・・いややっ!」優子は身体をくねらせるようにして抵抗した。
「おらっ!」滝本は優子の秘裂のなかに指を入れた。
「あんっ・・」優子の身体に電気が走る。
「中澤優子のAVデビューかあっ?」滝本は楽しむように優子の秘裂を責める。
「ああああん・・あん・・いや・・ああんん・・」滝本は巧みに指を動かしていく。
「なんだよ。いやだとか言って濡れてきているぜ」滝本は優子の股間を弄びながら言葉でも責めていく。
「ああん・・やめてぇ・・」身動きできない優子は滝本に秘裂を弄ばれるだけで、声だけで抵抗するしかなかった。
『滝本ぉ〜っ!てめえはなにやってんだよっ!』
『てめえが中澤のアソコをいじるなんて100万年はやぇんだよっ!』
『鈴本でも抱いてクソして寝てろっ!』
滝本にも観客の罵声が飛ぶ。
「っせーんだよっ!なんならお望み通り、中澤を犯してやるからそこでおとなしくみてるんだなっ!このゲス共がっ!」滝本も観客を敵に回してしまう。
グチュ・・グチュ・・「ああ・・ん・・」観客の罵声で怒り狂った滝本はムキになって優子の秘裂を責め始めた。優子は必死に耐えている。
「いきたきゃいってもいいんだぜ」滝本は指を動かしながら優子の奥へ入れていく。
グチャ・・グチュ・・「ああん・・(やだ・・こんな奴に・・)」優子は必死に耐えるが、滝本の責めに感じてきてしまっった。
「おらあっ!」滝本が優子の秘裂をいじっている手に力を入れると、優子の秘裂は滝本の手首まで飲み込んだ。
「へえ・・結構、入るもんだな・・。おいっ!まだガキのてめえらにはわかんねえかもしれねえから、潮吹きってのを見せてやるよっ!」滝本は優子の中でピストン運動のように激しく手を動かした。
「いやあっ。見ないで・・見られとうないっ!」優子は涙を流しながら必死に猛娘たちに言う。しかし、年頃の猛娘たちにとって興味があることであったため、猛娘たちの視線は優子の股間に集中されていた。
「おら、そろそろだぜ」滝本は優子の秘裂の感触がかわると一層激しく動かした。
「っあああんっ・・」優子は身体をビクンとさせると、秘裂から大量の透明な液体が吹き出させぐったりした。
「いっちまったのかい。じゃあ、仕上げだな。おい、準備しろ」滝本は優子の秘裂から手を抜くとあみに指示をした。あみは優子の頭を自分の股間に挟み腰に手を回し抱えあげ、一気にリングに叩きつけた。た。
ダダーンっ!あみはパワーボムで優子をリングに叩きつけるとそのまま優子の足を持って、股間が滝本によく見えるように開いた。
「本気でいったみたいだな。ヒクヒクと痙攣しているぜ。せっかくだから、一発やらせてもらおうか・・・」滝本は自分のズボンを下げると優子を責めた興奮で大きくなった己の凶器を出した。あみは少し妬けたが滝本のすることをただ見るしかなかった。
「あ・・いや・・やめてや・・」優子の弱々しくつぶやくような声になっている。
「がきどもの性教育だ。先生のやりかたをよく見ておくんだなっ」猛娘たちの悲壮な表情を見て楽しむ滝本。
「このゲス共!これから俺は中澤とSEXするぜっ!ひいひいいわせて、中にぶちまいてやるっ!」観客にも言うと、滝本は再び優子のクレバスを指で開くと自分の凶器を這わせた。
「んっ!(やだ・・こんな奴に・・っ)」優子は大粒の涙を流していた。
「おら、いくぜっ」滝本は凶器を優子の秘裂に突き刺そうとした。

〜 ファンとして 〜

オール猛娘は滝本の乱入から滝本とあみの卑怯な攻撃になにもできなくなっていた。
滝本がなつみを人質にとると、無抵抗な猛娘たちをあみが仕返しをした。
滝本はなつみと佳織の身体を弄んだ後、最後の標的として自分の凶器を優子の秘裂に突き刺そうとした。
ズブ・・身体に力が入らない優子の秘裂はなんの抵抗もなく滝本の凶器を飲みこんだ。
「へへへ・・なかなかのもんだぜ・・」滝本は優子の感触を堪能してから腰を前後に動かすと優子の秘裂は滝本の凶器を飲み込んだり吐き出したりしていた。。
あみは優子の足を放すと、その場に座りこみ呆然としていた。
「(なんでこんな人のこと・・)」あみの心は悲愁な感情で埋め尽くされ、がっくりと肩を落した。
「おらおら、どうした?気持ちよすぎて声もでねぇか?」滝本は優子の感触を楽しみながら猿のように腰を動かしていた。
「・・・」滝本の指でいかされ、感じやすくなってしまっていたが唇をかみ締めてひたすら声が洩れないようにがまんしていた。
「お・・。いきそうだぜ・・」滝本は気持ちよくなってくるとより激しく腰を動かし始めた。
グチュ・・グチュ・・優子の秘裂から再び秘液が出てくると、滝本の腰の動きに合わせていやらしい音がなり始めた。
「おまえも感じているんじゃねえかよ・・中澤の中にだしてやるからな・・」優子の腰を持ち固定させ激しく腰を動かしつづける。
「やだ・・中には出さんで・・」優子ははじめて口を開いたが、この声が弱々しくより滝本を興奮させてしまった。
「いいねえ・・そういう言葉は興奮するぜ・・」滝本は自分の凶器を優子の膣内に擦りつけるように腰を動かしていった。
「ん・・」優子の身体は自分の意識に反して、えび反りに腰を浮かしてしまう。
「どんどん敏感になっているぜ・・いま、出してやるからな・・」滝本は優子の中に出そうと必死に腰を動かしつづける。
「いや・・お願い・・中は絶対やめてや・・」滝本の凶器が自分の中でどんどん大きくなっていくことがわかると優子は力の入らない身体で必死に抵抗した。
「くっ・・いくっ・・」滝本の身体に電気が走った。
そのとき・・
「滝本っ!てんめぇ〜」もの凄い勢いでリングに向かう人影があった。
「てっめぇ〜いいかげんにしろよぉ〜」芸能界でも猛娘ファンとして有名な石橋貴昭である。
滝本が石橋の方へ振り向いた瞬間、漫才至上例を見ないほどの強烈な石橋の”つっこみ蹴り”が滝本の顔面を襲った。
グジャー・・「ぎゃっ」滝本はリアクションタレントのお手本のようにぶっ飛んだ。滝本は顔面で着地し、ズボンを膝まで下ろしていたため、尻を剥き出ししたまま突き上げている情けない格好になった。
同時に優子の中で出されるはずの液体が飛び散った。
「きゃあああっ!」「きたな〜い」滝本の凶液が猛娘の方へも飛んでいくと悲鳴があがたた。
『滝本の奴、すげえ格好っ!お笑いだぜっ!』観客は滝本を見て大笑いした。
『あいつ・・本気で中澤に出すつもりだったんだ・・』観客は怒りで爆発しそうになっている。
「貴さんキィ〜〜〜ック!」石橋がサッカーボールを蹴るように滝本の後ろから股間を蹴った。
バチーーン・・ブチャ・・。石橋の蹴りが滝本の秘宝を潰すと滝本は声も発せられず口をからよだれをながして身体をひくひくさせた。
『いいぞー石橋ぃ〜っ』オール猛娘にとっても、観客にとっても救世主となった石橋に観客から大声援が飛ぶ。
『滝本を殺せーっ!コ・ロ・セ!コ・ロ・セ!』観客から殺せコールが沸いてしまった。
「オッシャーーッ」石橋は片手を高く上げ観客に答える。
石橋は滝本が吹っ飛んだときに落した有刺鉄線バイブを拾った。
「シャキーン・・っ!おりゃああああっ」石橋は有刺鉄線バイブを滝本の尻の穴に一気に突き立てた。
ズボ・・「ふぎいいいいいいっ!」滝本は身体をえび反りしして上半身が持ちあげたが、再びぐったりと尻を突き上げた上体になった。
「姐さんの分〜っ!おらぁっ!」石橋が滝本に突きたてたバイブに前蹴りを入れると滝本の秘穴にバイブがすっぽり入りきった。
「ひょげえええええっ!・・」滝本は断末魔を最後に気を失った。滝本は白目を剥き口から泡ふいて失禁もしていた。
蹴られた勢いで猛娘のところへ転がると、猛娘たちの容赦ないストンピングが滝本に浴びせられた。
滝本の顔面はぐしゃぐしゃに潰れて原型がわからないくらいになっていた。また、股間の竿も潰され別の生物のように折れ曲がり、竿の先から血がながれていた。身体中には無数の痣ができていた。
「うおっしゃーーっ!」石橋はヒーローになった気分で四方の観客に指を刺してから、両手を高々く上げた。
「貴さん・・」優子は薄れている意識のなかで石橋が滝本から救ってくれたことがわかると、緊張していた糸が切れたように気を失った。
「姐さんっ!」佳織が滝本にずらされたレオタードのビキニラインを直すと、気を失った優子を見て悲鳴をあげた。
「す・ず・も・と・ぉ・〜」佳織は怒りで髪型が変わった。
「ひ・・いやあああっ・・」あみは佳織の気迫にびびり、逃げようとした。
調子に乗っていた石橋も佳織の気迫に気付くとびびっった。
「逃げるんじゃねえよっ!」佳織の一言に石橋は「はいっ」と返事をしてしまうが、矛先があみだと知ってほっと安心した。
佳織は逃げるあみのビキニショーツを引っ張った。
しかし、あまりにも強く引っ張ったため破けてしまい、あみを捕まえ損なった。
「やだ・・やだ・・」あみはとにかくこの場から逃げようとしていた。
「逃げるなって言っているのがわかんねぇのか、このぶぉけぇっ!」佳織はあみの髪の毛を掴むと無理矢理引っ張った。
「やあああっ!」あみは佳織に髪を引っ張られヨタヨタと佳織の方へ近寄ってしまった。
佳織はあみを近づけると髪から手を離し腰に手を回した。
「くたばりやがれっ!」佳織はあみを引っこ抜くように抱え上げると、投げっぱなしジャーマンであみを後ろに投げ捨てた。
バシーン!・・あまりにも勢いが強く、後頭部で着地したはずのあみは一回転して座っていた。
「おらぁっ!」佳織は素早く起きあがると、視線が定まらないあみの顔面に喧嘩キックを叩きこんだ。
「ぶぎゅ」あみはまた後ろに一回転すると誰かの足元にぶつかった。
「ヒィィィ・・っ」あみが見上げると紗耶香、梨華、ひとみが鬼のような形相で見下ろしていた。
VIP席ではつむくが席を立ち、退場しようとしていた。
「最後まで見て行かんの?」隣に座っていた和多が声を掛ける。
「試合の勝敗はわかってわかっておったけど、鈴本あみがどんなもんか見にきただけですわ。なりふり構わんで観客を沸かしたまではおもろい奴やなと思ったんですが、見込み違いでしたわ。あんな奴はいらん」つむくは和多に答えると会場をあとにした。
「そか。そらごくろうさん」和多はつむくに挨拶を済ませると、リングに視線を戻した。
リング上ではの紗耶香、梨華、ひとみがあみを見下ろしていた。
「あんたはやってはいけないことをしたんだよ・・」紗耶香の声は怒りで震えていた。
あみは腰が抜け、命乞いするようにずりずり下がって3人から離れようとした。
「ひとりだけ、のこのこ逃げるンじゃねえよっ!」紗耶香は走りこむと半開きのあみの股間につま先蹴りを叩きこんだ。
グチュ・・「ぎゃうっ・・」紗耶香のつま先があみの秘裂に突き刺さるとあみは仰向けに倒れた。
「姐さんたちに酷い事した報いはしてもらうよ」紗耶香はあみの股間に踵で踏むとグリグリと踏み潰していった。
ビキィィィっ・・あみの股間が悲鳴をあげた。
「これぐらいのことは覚悟の上で、あんなことしたんでしょっ!」梨華とひとみはあみのわき腹を蹴りこんだ。
バキィィィっ・・「ぎゃふっ・・」あみのあばらが悲鳴をあげた。
「猛娘を怒らせた恐ろしさをその身体に刻み込むことねっ!」梨華とひとみはあみの乳房をつま先で蹴り、紗耶香はあみの秘裂につま先で蹴りこんだ。
「ひぎゃあああああっ!」あみの乳房は異様な形にかわり、股間には深々となつみのつま先が食い込んだ。
「あははは・・私のおっぱいが潰れちゃった〜。お××こもぐちゃぐちゃ〜。あははは・・」一瞬の沈黙のあと、あみはぺたんと座り、笑い出しておかしなことを言い始めた。あみはあまりの恐怖と絶望と身体に受けた衝撃で狂ってしまった。
「・・・」あみの変化に驚いた猛娘たちは言葉を失い、目を覆ったりうつむいたり哀れな視線で見ていた。
「そんなことぐらいで許さない・・絶対に許さない・・」乳房を露わにし、レオタードのビキニランイがずれてヘアが見えているにも関わらず、なつみはうつ伏せに這うあみの腕を後ろから羽交い締めのように腕を絡めた。なつみは猛娘のメンバーを傷つけてしまったことを怒らずにやさしく接してくれた優子に卑怯で卑劣なことをしたあみを許せなかったのである。
なつみはあみを立たせると、タイガースープレックスであみを後ろに叩きつけた。
ドシーンっ!リングには轟音だけが鳴り響いた。あみは受身も取れずにリングに叩きつけとその衝撃で白目を剥き、口から泡を吹き失神した。
間もなくすると隠すものがない秘裂から黄色い液体が放物線を描き、あみの顔を濡らしていった。
カンカンカン!試合終了のゴングがならされた。
『なんか久々にすっきりした試合だな』
『でもよー。鈴本と滝本はいっしょに失神だぜ。お似合いのカップルだぜ。笑えるなっ』
『白目泡吹き失禁ペアか?』
『なんにしても、猛娘は最高だあっ』
観客から猛娘たちに大声援が贈られた。
大声援の中、佳織は黒服から奪うようにバスタオルを受け取ると優子の元へ駆け寄りバスタオルを掛けた。
「ゆうちゃん・・」佳織は心配そうに優子の顔を覗き込むみ声を掛ける。
優子は佳織の声に目を覚ますと、佳織の手に自分の手を掛けた。
「泣いたらあかんて。かおりんは猛娘のリーダーやろ・・」やさしく佳織に話し掛ける。
「う・・うん・・」佳織は必死に泣くことを堪えながら頷いた。
「ほら、お客さんが声援を贈ってくれいる。はやく応えんと・・」佳織は優子の指示に従うように観客に手を振って応えた。他の猛娘たちも手を振って応えてる。
優子は猛娘たちが観客に応えることを見ると、一言だけ残して満面の微笑みを浮かべながらまた眠りについた。
試合後、医務室では傷付いた選手の処置を行っていた。
診察時にあみの頭突きを受けたなつみの股間は恥骨骨折の疑いがあったが、診察の結果、ただの打撲だとわかっり本人も猛娘のメンバーもほっと胸を撫で下ろした。
優子は一時的なショック症状と診断され、数時間後には目を覚ました。
しかし、猛娘の猛攻を受けたあみは重症であった。顔は鼻骨骨折、眼下骨折、前歯4本損失、強度の脳震盪、強度の脊椎損傷(ムチウチ)、左右助骨骨折、秘骨骨折及び秘裂の裂傷と診察され、長期間におよぶ入院が余儀なくされた。
滝本については、あまりにも目に余る行為であったため処置をせず、そのまま会場の裏にあるゴミ捨て場に放置する話もあったが、滝本の生死にも関わるとされ処置された。滝本は尻の穴の有刺鉄線バイブを抜かれたあと、止血のための薬品が塗られ脱脂綿が詰め込また。潰れてしまった男の秘宝は再生手術が施され、竿もかろうじて再生されたためなんとか男としての機能を失うことはなかった。

〜〜〜 エピローグ 〜〜〜

傷もほとんど癒え、退院まで秒読み段階のあみが目覚めるといつもと変わらない風景があった。
隣のベッドには包帯姿の滝本が股間部分に大きなギブスを着けられ、両足を開いた状態でつるされ寝ていた。
入院当初は気になっていたが、情けない姿の滝本を見ているうちに気持ちも吹っ切れて、今ではなんとも思っていなかった。
あみは視線を滝本から窓の外に広がる空を見上げた。
『あみも何回ここで寝ているんだろうな?』
『ああ。よくやるよ、本当に・・』
『よくやるっていえば、今回の試合でつむくはあみを試していたそうだな』
『ああ。なんでも、猛娘を相手にして勝負は見えていたけど、内容によってはプロデューするつもりだったとか・・』
『手段はどうであれ、観客を沸かせたことは評価されたとか聞いたぜ』
『そこまではよかったらしいが、最後に逃げようとしたのが悪かったらしい』
あみは試合後の医務室で、薄れる意識の中で聞いた黒服たちの会話を思い出した。
『勝ちとか負けにこだわったのに・・』あみはベッドの上でうつ伏せになると枕に顔を埋め、枕を涙で濡らしていた。
枕に顔を埋めていると、あみの脳裏に試合中の優子の顔がよぎった。
『一人でがんばるには確かに大変やと思う。でもな、それを乗り越えるから一人でがんばる価値があるんと違う。泣けばいいと思うんやったら、誰でも泣くわ。このあほっ』優子の言葉が頭の中で響き渡る。
「(・・一人で乗り越えるか・・)」前の事務所から追い出されてから、復帰しようとして地下プロレスにすがっていた自分を思いだした。
「(情けないな・・私)」情けない自分におかしくなり小さく笑った。
あみがふと気付くと棚の上に昨日までなかった花が飾られていた。
「ん?」あみはベッドから起き上がると送り主もわからない花の近くに寄った。
花の中にカードが差されていることに気付くとカードを取り出した。
あみはカードの表と裏を見て贈り主を探したが書いていなかった。
「誰だろう?」カードを開きメッセージを読んだ。
「アミードへ。がんばりぃや。中澤優子より」
あみはメッセージを読み終えると、カードを持つ手が震えた。
「がんばります・・」あみは小さくつぶやくと大粒の涙でカードを滲ませた。

猛娘たちは約束通り休暇を貰い、オール猛娘17人で海外バカンスに行くため空港に集まっていた。
おいしいものを食べるんだと張りきる辻と加護は集合時間より2時間も早く空港に到着してしまった。
「ののぉ〜。なに食べているの?」
「ん?うむうむうむ。うんんんむうむむ?(ん?たこ焼きだよ。あいぼんも食べる?)」口の中がたこ焼きでいっぱいのため言葉になっていない。
「うん。貰う」加護には辻の言葉が通じたらしい。
しばらくすると矢口とLOVERオーディション21組の4人がやってきた。矢口の手には横浜名物のシュウマイがあった。
「んん〜っ!(ああっ〜!)」しゅうまいを見つけた辻は、またわからない言葉を発して矢口の持っているシュウマイを指差した。
加護もそのあとに気付き、無理矢理にたこ焼きを飲みこんだからむせた。
「あいっかわらず、二人はいやしいなあ(笑)」矢口もLOVERオーディション21組の4人も笑う。
「おお〜い♪」元猛娘の綾と明日香が7人を見つけると小走りでやってきた。綾はこどもを抱えている。
「あやっぺのこども?」矢口は加護にジュースを飲ませると綾のこどものところにきた。
「そうよ。かわいいでしょ?」自慢する綾。
「よかったでちゅね〜。ママに似なくて♪」矢口はこどもをあやしている。
「まりっぺ〜(笑)」
そこへ佳織、圭、真希がやってきた。
「な〜に空港で騒いでいるんだか?」佳織がヤレヤレといった表情で言った。
「そういうかおりんだって、空港までの駅を間違えたでしょう」圭がつっこむ。
「あ〜それって、言わないって約束でしょ〜っ!」佳織が圭を捕まえる。
「あんたたちが一番うるさいっちゅーねん(笑)」真希がつっこんだ。
12人がわいわい騒いでいると、なつみ、梨華、紗耶香、ひとみが手を振って来た。
「やっほお〜」たこ焼きに続いて矢口の持ってきたシュウマイをほうばりながら喜ぶ加護と辻。
「あんたたち、なっちたちよりシュウマイの方がうれしいんでしょ」佳織が呆れた顔で言う。
「そんなことないですぅ。どっちもうれしいですぅ」加護が膨れながら答える。
「なんだよ。また食べてるの?」なつみが二人に向かって言う。
「うんっ♪」ステレオで返事をする加護と辻。
「あは。二人らしいや♪相変わらずだね」紗耶香は変わりない猛娘に笑っていた。
彼女たちの笑顔には、あのときの地獄のリングのことなど微塵も感じられない。
そして16人はあと一人の到着を心から待っていた。
16人の視線は、空港の入り口に向けられ行き交う人を追う。
〜16人が待っているとそこへその人が笑顔で手を振りながらこっちに向かってくる〜
16人はそんな幻想ばかり見ていた。
出発時間が迫ると16人は焦り始めた。そこへポーターから1通の手紙が16人の元に届いた。
佳織は急いで封を破り、手紙を取り出すと16人の目が注がれた・・。
『走り続ける私について来て欲しいです。中澤優子』
16人は手紙を読むと不思議にも幸福感で満たされ、手紙の送り主に心の中で返事を送った。
「いきまっしょいっ!」

『一人でがんばるには確かに大変やと思う。でもな、それを乗り越えるから一人でがんばる価値があるんと違う。泣けばいいと思うんやったら、誰でも泣くわ。このあほっ』
『がんばりぃや』
控え室で試合を待つ鈴本あみは、中澤優子と16人の猛娘たちとの死闘後に中澤優子からのメッセージを心の中でつぶやいていた。
「鈴本時間だぞ」黒服があみに声を掛けた。
「はい」あみはいつになく明るい口調で返事をした。
「(がんばります・・)」あみは再び優子の残したメッセージに返事をしてリングへ向かった。
『30分1本勝負。プロレスルールで行います。赤コーナー、T152B80W54H80〜安部〜なつみ〜』なつみは今回の試合を自分から買って出ていた。吉木興業に移籍がほぼ決まり、大室哲哉のバックアップを受けることも決まったあみになつみ流のはなむけであった。
『青コーナー、T158B80W55H82〜鈴本〜あみ〜』あみはコールされると、リングの中央に進み深くお辞儀をして笑顔で観客にあいさつをした。リングサイドに目を落とすと猛娘たちが声援を送ってくれていた。
カーン!試合のゴングがなると二人はリング中央に歩み寄ると握手をした。
「前回みたいに負けませんっ!」あみは握る拳に力を入れた。
「私だって遊んでいたわけじゃないんだから」なつみも強く握り返すと、二人は小さく笑ってから間を取り構えた。
二人が対峙すると先ほどまでの笑顔はなくなり、一変して真剣な表情になった。あみが間を詰めるとなつみが間を開け、なつみが詰めるとあみが引く。しばらくの間、間の取り合いが展開されていた。
『あにやってんだよ!とっととはじめろーっ』
『にらめっこを見に来たわけじゃねーんだぞっ!』
しびれを切らしたのは観客であった。
「お客さんもしびれを切らしちゃッたみたいだし・・」なつみが口を開けた。
「そうですね」二人は呼吸を合わせたかのように間を詰め合うと手を組みあった。
なつみが体重を乗せようとした瞬間、あみがかわすようにしてなつみをリングに投げた。なつみはとっさに受身をとり、すぐに立ち上がると突進してきたあみをうまく腰に乗せて投げた。
あみも猫のように身体を使いくるんとリングの上で転がるように受身を取ってスタンディングポジションになった。
『おお・・』プロレスでは当たり前のことだが、地下プロレスではあまりみない攻防に観客は魅了されていた。
「さすがですね・・」あみがなつみを称える。
「そっちこそ・・」なつみもあみを称えた。
お互いにファイティングポーズに構えなおすと、こんどは一転してじりじりと間を詰め合った。
手を出せばすぐに届くところまで二人が近寄ると、二人はいきなり動き出した。
あみがパンチを繰り出すとなつみがしっかりガードして、なつみがキックを放つとあみがガードして・・パシ・・パシ・・バン・・パン・・クンフー映画のような二人の攻防がリングの中央で繰り広げられている。
『おお・・すっげーぜ・・』観客は息をすることも忘れ見入っている。
二人はいきなり攻撃を止めると間を取り、痛そうな顔をして手と足を振った。攻撃と防御していた手足がしびれてしまったのである。
なつみが先にしびれが納まり、あみとの間を詰めるとあみは待っていたかのようにミドルキックを合わせたが、なつみはあみのカウンターをくるりと身体を回転させ避けた。
ドン・・「うぐ」なつみは身体を回転させた勢いを使って後ろ蹴りをあみの胸に当てた。あみは一瞬だけ呼吸がとまり、3歩後ろによろめいた。
「いくよっ!」なつみはバランスを崩しているあみに詰め寄ると攻勢に出た。
ビシ・・バシ・・グチャ・・ビシ・・ズボ・・受けだけになってしまったあみはなんとかなつみの攻撃をかわしていたが、たまに攻撃を食らってしまい押されてきた。
「えいっ!」スガ・・「うぐ・・」あみは押されている間に足が揃ってしまい、そこをなつみにかられて倒れるとその上からなつみの肘がお腹に落ちてきた。
「あううう・・」なつみの肘がもろにあみのみぞうちをえぐったため、あみはお腹を押さえて藻掻いた。
なつみはリングの上に転げているあみを見ると、コーナーへ駆け寄り最上段まで登った。あみはなんとかお腹の苦しみが収まると立ち上がってなつみの姿を探す。
「あみちゃんっ!」なつみはあみを呼び、あみが振り返るった瞬間にコーナーからジャンプしてミサイルキックを放った。
バシーン・・「ふげ・・」なつみのミサイルキックを胸に受けたあみは後ろに吹っ飛んだ。
「(うう・・離れてたら分が悪いな・・くっつかなきゃ・・)」なつみの体重が軽かったせいもあり、あまりダメージを受けなかったあみはコーナーに寄りかかるように座るとなつみの行動を見た。
「たあっ!」なつみはコーナーに座るあみの元へ一気に駆け寄った。
「(ストンピングっ!)」あみはなつみの次の攻撃を読むと、くるんと前転するようになつみのストンピングを避けた。
ガツンっ!「きゃう」あみにいきなり避けられたなつみは勢いあまって、セカンドロープをまたぐようになってしまい、そのとき股間をセカンドロープに打ち付けてしまった。
「そんなワンパターンな攻撃っ!」なつみの後ろに回ったあみは腕をなつみの首に回し、リングの中央まで引きずるように運ぶと、腕をロックしてチョークスリーパーを極めた。
「あぐぐぐ・・」なつみはなんとか逃れようとロープに手を伸ばすが、身長差があるためなにをしてもあみのチョークスリーパーが緩むことはなかった。
「なっち!ギブアップしてっ!」あみは自分のチョークスリーパーがしっかり極まっていることがわかるとなつみにギブアップをすすめた。
なつみは目の前が暗くなってきて腕をだらんと垂れ下げた。
「(まいったな・・逃れられないかな・・。あ、そうか・・)」なつみは朦朧としてきた頭の中でひらめくとあみをおぶるようにして一気に後ろへ下がった。そのままロープまで行くとあみのチョークスリーパーが揺るみ、ロープの反動を利用して背負い投げのようにあみをリングに叩きつけた。
「あみちゃんが立ったままで助かったあ・・」なつみは首を押さえながら方膝をついた。
「そっかあ・・」バンバンとリングを叩き悔しがるあみ。
「でも、結構、効いたみたいだね」あみはなつみの髪を掴み立たせるとなつみの股間に手を入れて高々く持ち上げた。
バシーーンっ!「きゃっ」あみがなつみの身体をボディスラムでリングに叩きつけると、なつみは腰を強打した。
「いった〜〜い・・」腰を押さえて横向きになるなつみ。
あみはなつみが腰を傷めたことがわかると、反対のロープに走りロープの反動を得てからスライディング気味のドロップキックをなつみの腰に見舞った。
ガツン「んぎゃっ」腰に強い衝撃を受けたなつみはそのままリングの下にエスケープした。
「なっち〜〜〜ぃっ!」あみは起きあがるとトップロープを掴み、トップロープを乗り越えるようにしてなつみにボディアタックを決めた。
「ぎゃう・・」あみより小さななつみの身体があみの全体重を受けとめると腰に激痛が走った。
あみは腰を押さえて藻掻くなつみを無理矢理リングの上に入れてから、あみはコーナーの最上段まで登った。
ドスン・・「げえ・・」あみがコーナーの最上段からなつみのお腹をフットスタンプで潰すとなつみの身体はくの字に折り曲がった。
あみはなつみの足を持ち、片足をなつみの間を通し反転してさそり固めを極めた。
「ああん・・腰があ・・」なつみはリングをバンバンと叩き藻掻く。あみが力を入れてなつみの身体をCの字にするとなつみの腰も悲鳴をあげた。
「なっち!ギブしないと・・」さそり固めを極めていきながら、なつみの腰を気遣うあみがなつみにギブアップを催促した。
「・・これぐらいで、まだしないよ・・」なつみは涙を流しながら必死に耐えている。
「このわからずやっ!」あみは自分のお尻をなつみの腰に落した。
「ふぎぃぃぃ・・」なつみは歯を食いしばりなんとかロープまでたどり着こうしている。
少しずつではあるがロープに近づいていくなつみとあみ。
『ロープっ』やっとの思いでなつみの手がサードロープに届くとレフリーがあみにさそり固めを解いた。
あみはなつみの髪を掴んで立ち上がらせた。なつみの足は腰のダメージでガタガタと震え立っているのがやっとになっていた。
「せいっ」あみはなつみのわきの下から手を回すとフロントスープレックスでなつみの腰をリングに叩きつけた。
「あうっ・・!」なつみはリングに叩きつけられると身体をえび反りにして藻掻いた。
あみは再びなつみを立ち上がらせると、ブレーンバスターの姿勢になった。
「このっ!」あみがなつみの身体を持ち上げると、なつみは足をジタバタさせバランスを崩させるとあみの後ろに着地してあみの腰に手を回した。
「たあっ!」なつみがバックドロップであみをリングに叩きつけようとするが、腰に力が入らずあみを抱いたまま後ろに倒れてしまった。
あみはすかさずカバーに入った。
『ワン・ツー・ス・・』レフリーの手が3つ目のカウントを取ろうとリングに触れる瞬間になつみは返した。2.8秒といったとこだろうか。
「カウント・スリーでしょっ!」あみはレフリーに詰め寄るが、レフリーは首を横に振る。
「あみちゃんの相手はこっちっ!」あみがレフリーに詰め寄っている間に立ち上がったなつみはあみの片足を取りにいった。なつみはあみの足を持ったまま体を一転させるとドラドンスクリューであみの足を捻り上げた。
「ぎゃあ・・足があ・・」あみは膝を押さえて仰向けに倒れた。
「このっ!」なつみはあみの傷めた足に足を絡ませ、あみの身体を反転させるようにして腕であみの顔をロックした。
「ぐうう・・」STFを極められたあみの顔は苦悶の表情で歪んでいる。
「(これで極めなきゃ・・負けちゃう・・)このおおおおっ!」腰のダメージから得意のスープレックスが出せないため、一発逆転が狙えないなつみにとって苦手なサブミッションに頼るしかなかった。
STFをガッチリ極められたあみも必死の思いでロープに逃れようとしているがロープまではかなりの距離があった。
リング上で二人のアイドルがガチンコで絡み合い死闘を演じている。試合前にどちらのヌードが見れるかなど残虐なプロレスを予想していた観客も本当のプロレスで戦う二人の姿に魅入られていた。
あみは痛さと苦しさで半分あきらめかけていた。
『20分経過。あと10分!』残り時間がアナウンスされた。
『がんばれ〜っ!』
『あみいっ!逃れろ〜っ!』
『なっちっ!そのまま落せっ〜!』
アナウンスと共に観客から声援が飛ぶ。リングサイドの猛娘たちも祈るように手を組みリングの二人を見守っている。
あみは逃れらないと決めこみ、タップしてギブアップしようとしたが観客の声援が届くと、再びロープを目指した。
「(こんなことであきらめたらいままでの自分と変わらない!今回はギブアップしない!身体が動かなくなっても負けるまで絶対にあきらめないっ!)」あみは永遠と思えるこの苦痛を耐え続けていた。
『ロープっ!!!』あみがなつみにSTF極められながらロープに手が届くとレフリーが二人を解いた。観客から大歓声があがる。
渾身の力で締め上げていたなつみも大きく肩で息をしていた。
「お客さんの声援って気持ちいいよね」なつみはニッコリ微笑みながらあみに問い掛けた。
「うん。すっごく気持ちいい♪」あみもまたニッコリ微笑み返す。
体力もスタミナも底をついてきた二人はフラフラしながら立ちあがる。
あみは近くにあるロープで反動をつけるとなつみの胸元にラリアットを叩きこんだ。
バチーン・・「くうっ」倒れずに堪えるなつみ。
「もうひとつっ!」反対のロープで反動を得たあみはなつみに渾身の力でラリアットを叩きこんでいった。
「おんなじ技なんかっ!」なつみはあみのラリアットをくぐるように避けるとあみの腰に手を回した。
「スープレックスはできないくせにっ!」あみはなつみに後ろを取られたがスープレックスがないと思い込み油断した。
「やってみないとわからないっ!」なつみは身体に力を入れ、あみを後ろに投げることだけに集中した。
ダダーンっ!「ぎゃうっ!」綺麗な半円を描き、あみの後頭部はリングに叩きつけられた。
投げたなつみの腰も相当なダメージを負い起きあがることができない。
『両者、ダウンっ!ワン・ツー・スリー・・』カウントがはじめられた。
『アミード立てぇっ!』
『気合いれろおっ!根性だ!アミード』
観客はいつのまにかあみのことを本来の呼び名である『アミード』と声援を贈っていた。
あみは観客の声援に後押しされるかのおうに立ち上がっていく。
『なっち!がんばれ!』
『なっちぃっ!』
観客はなつみにも声援を贈り、会場はあみとなつみの両方に惜しみなく声援を贈った。
『シックス・セブン・エ・・』二人が立ち上がるとカウントが止まった。
『鈴本OK?安倍OK?』レフリーが二人に確認を取ると二人はレフリーのことを無視するかのように視線を合わせた。
『ファイッ!』レフリーの合図とともに試合が再開されてあみが一気になつみとの間を詰めた。しかし、なつみは腰のダメージのため立っているのが精一杯で動くことができなかった。
「なっち・・」あみはなつみの状態に気付いていたが、なつみの両腕を取り、前回の試合でなつみに倒されたタイガースプレックスでなつみの身体をリングに叩きつけそのままホールした。
『ワン・ツー・スリー!勝者、鈴本っ!』レフリーがスリーカウントを取ると勝者宣言するとレフリーがあみの手を高々と持ち上げた。
観客からは勝者を称える拍手が惜しみなく鳴り響いた。
リングの上で大の字に横たわるなつみの元へは猛娘たちが寄り添っていた。
あみは観客にお辞儀をして挨拶を済ませると猛娘を掻き分けるようにしてなつみの元へ駆け寄った。
「なっち。ありがとう」あみはなつみを抱き起こした。
「あみちゃん・・照れちゃうじゃんかあ・・」なつみはあみに笑いながら照れていた。
「今日は私が勝ったんだから、私の好きにさせてよねっ、なっち」
二人を祝うかのようにリング上の猛娘はあみとなつみをぐちゃぐちゃにした。
「ねえ、”あれ”やってくれないかな?」あみが猛娘たちにお願いした?
「あれ?」佳織が疑問顔になる。
「あれって、アウィーン・・」辻が言う。
「アウィーンもいいけどね(笑)」あみが笑って答える。
「かおりん、あれだよ。あ・れ♪」なつみが佳織に言う。
「あれね」佳織はやっと気がついた。
「あれか・・」「うん、あれだね」「あれだよぉ」猛娘たちも気付いたようである。
「せぇ〜のぉ」佳織が掛け声を言った。
『いきまっしょいっ!』あみと猛娘だけではなく観客もいっしょになっていた。
会場の片隅では、あみと猛娘が会場をひとつにしたことを見届けた優子は満面の笑顔で心からの拍手を送っていた。

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