逆エビに耐えきれなくなったさやかが、遂にギブアップを口にしたのであった。

腰を押さえたさやかが退場する。リング内は葉子一人にモリ・プロ三人となった。

ここで、レフェリーがモリ・プロ側に一人になる様注意し、順子だけがリング内に残る。

ガッチリ組み合う二人。葉子がやや優勢と見えたが、ここにのりが飛込み、葉子の背中を

キックした。ダウンする葉子に二人掛かりのストンピングが加えられる。再度、

レフェリーの注意が有り、のりはコーナーへ下がる。

うつ伏せにダウンした葉子の背中に、順子から交代したさおりがロープ最上段から膝を

落とした。更にさおりはのりに交代する。のりは葉子を引き起こすと再度得意の

ブレーンバスターの態勢に入り、観客に見得を切ってから比較的大柄な葉子を軽々と

持ち上げた。トレーニングによる、パワーアップ,ウェイトアップの効果充分である。

そして、そのまま後ろへ叩きつける。リングが大きく揺れ、真緒は思わず目を覆う。

大の字になった葉子に、ノータッチでロープ最上段から飛んだ順子がエルボーを落とす。

更に、こちらは正規に交代したさおりがダウンした葉子の左腕を取り、逆十字を極めた。

反射的に残った右腕でタップする葉子。

カーン

レフェリーの要請でゴングが鳴らされた。

あまりにも呆気なく葉子も退場してしまい、ついにエージェンシー側は真緒一人となった。

「さあおいで、宮路さん。いや『晴天』さん。大丈夫、11で闘って上げるからね。」

さおりから交代した順子がリング内から呼込む。レフェリーもリングインを促す。更に

観客からはまたもや『晴天』コール。助けてくれる筈だった二人はもういない。

リングインするしか道の無い真緒は、覚悟を決めてロープをくぐった。

リング中央で見様見真似で順子と組合う真緒。身長はほぼ同じだが、横幅では大分順子が

上回る。更にトレーニングも積んでおりパワーの差は歴然である。順子がグッと押込むと

真緒は腰砕け状態になり、崩れ落ちた。順子が上から嘲笑し、観客からも笑いが漏れる。

コーナーののりとさおりも顔を見合わせ、苦笑いする。

起上がろうとする真緒だが、上半身を起こした所へ順子が顔面にキックを入れる。

「キャッ」

顔を押さえ崩れ落ちる真緒。今度は片手で顔を押さえながら立上がろうとするが、その

手の上からキックを入れる順子。思わず手が外れると顔面へ再度キックが入る。

「顔は止めてー!」叫ぶ真緒に、順子が

「何、甘い事言ってんだよ!いっぱしの女優気取りか!だったら、もう水着のグラビア

 なんかやるなよ!」

確かに『晴天』終了後も、幾つかの水着グラビアの仕事をこなしていた真緒であった。

まずはグラビアアイドルを目指す順子にとっては、真緒も敵の一人であったのだ。

尚も執拗に顔面を狙う順子だったが、必死に顔をカバーする真緒にイラつき、目標を

ボディに変えた。トーキックを、ビキニの為大きくムキだしになっている細くくびれた

ウェストに打込む。

ドスッ、ドスッ

「グエッ!イタッ…ウッ!グプッ」

全く鍛えられていない細いボディには、この小手調べの様な攻撃でも充分きつかった。

胃の中身を吐き出してしまう真緒。先程のさやかの姿がダブる。

「汚いなー。何が『10年に一人の逸材』よ?フザケルんじゃないよ!」

ちなみに『10年に一人の逸材』とは、真緒のデビュー時のキャッチフレーズである。

顔とボディを守ろうと、カメの様に丸くなった真緒の背中にもう一発キックを入れると

順子はさおりに交代した。

「立ちな!」

叫ぶさおりだが、真緒はそのカメの姿勢を崩さない。どうしようか迷ったさおりであったが、

それならと、真緒の首の後ろにあるビキニブラの結び目を解きにかかった。

それに気付いた真緒が慌てて防ごうと手を首筋に回した。その瞬間、ガードが無くなった

真緒の顔面にさおりのキックが入った。

パシーン

「キャーー」

再度、真緒の悲鳴が上がる。更にさおりは真緒の右腕を取ると先程葉子をギブアップさせた

逆十字の態勢に入った。防ぐ術を知らぬ真緒は、簡単に腕を極められてしまった。

「イターイ,イターイ,ギブアップー!お願い、もう止めてー!」

実際には形だけで力は殆ど入っていないのだが、初めて経験する真緒には充分な痛みで

あった。だが、いずれにせよキャプテンである真緒にはギブアップは認められておらず、

戦闘不能と認められるまで試合が続行されるのである。

一方さおりは、小柄でスリムな体型で順子やのりにパワーでは見劣りする為、徹底的に

間接技を練習して今日の試合に臨んでおり、まったく素人の真緒は格好の練習台であった。

さおりは逆十字を自ら解くと、アームロック,キーロック,脇固めから、アキレス腱固め,

ヒザ十字と次々に面白い様に間接技を極めていった。逆十字同様、敢えて形だけの技に

しているのだが、その度に悲鳴を上げ、脂汗を流す真緒。既に眼からは涙が流れ落ちている。

「流石に女優さんね。涙を流す演技も上手なこと。」

嫌味を言いながら、さおりはのりに交代した。

「ホラ、立ちな。『晴天』さん。アタシも遊んで上げる。」

のりの実力は真緒の耳にも入っており、事実今目の前でさおりや葉子が一方的に

やられたのを目撃してしまっていた。

とにかく何か攻撃しなくては、と思った真緒は何とか立上がるとのりのボディに頭から

体当たりした。しかし、それを苦も無くガッチリ受け止めるのり。

「何それ?タックルのつもり?まさか、違うよね。やっぱり遊びたいんだ。」

フロントネックに真緒の首を捕えたのりは、その太い腕に力を入れ締め上げる。

息が詰まった真緒は足をジタバタさせるだけであるが、その動きが段々鈍くなる。

暫らく締め上げたのりは真緒が落ちる前に手を放す。その場に崩れ落ちる真緒を引きずり

起こすと、ボディスラムで叩きつける。受身の練習をしていない真緒には、こういった技も

きつい。まともに背中を打ち、息が止まりそうになる。

更にのりは、ダウンした真緒の顔を踏みつける。

「顔はヤメテー!」

必死に叫びながら、のりの足にしがみ付く真緒だが、まったく動かない。

「顔,顔ってうるさいんだよ!そんなに美人なのか、お前は?!リングに上がった以上は

 覚悟しろ!」

顔を踏みつけながら叫ぶのりに対し真緒は、

上がりたくて、上がったんじゃないのに!何でこんなことになっちゃったの?

もう充分でしょ。もう止めてよ。誰か助けてよ!と、ただ嘆くしかなかった。

への攻撃を極端に嫌がる真緒に対し、モリ・プロ側は意識的に真緒の顔を狙おうと

し始めた。のりは踏みつけを止めるとストンピングに切替えた。顔面を集中的に狙う。

再度、顔面を必死にカバーする真緒。

のりは順子に交代した。またしてもカメの様になった真緒の背中から腰を蹴りまくった後、

丸くなった真緒をそのまま持上げると、無雑作にリング中央へ叩きつけた。順子の方は

パワーファイトを目指し、相当な筋トレも行なっていたのである。

受身無しで背中を強打して、息が詰まった真緒の右腕を取ると力まかせに捻りあげる。

「イターイ!ヤメテー!」

更に順子は真緒を立たせると捻りあげた腕を、背中越しに自らの肩に叩きつけた。かつて

猪木がシンの腕を折ったアームブリーカーである。

「ギャーー」

真緒の悲鳴が更に大きくなる。

二回,三回と肩に叩きつける順子。真緒は右腕の感覚が無くなってきた。

順子はさおりにスイッチした。さおりは、ひざまづいて右腕を押さえている真緒に近付くと

まずは嫌がる顔面にキックを一発入れた。左手で顔を押さえながら倒れる真緒。

さおりは真緒の右手を取ると再度逆十字を仕掛けた。そして今回はしっかりと力を込め、

真緒の細い右腕の筋を伸ばしきった。

「アーーーーーーー!イターーーーー!」

断末魔の様な悲鳴を上げる真緒。これで、右腕が完全に使えなくなった。さおりの間接技の

切れに拍手を送りながらも、恐怖をも感じるコーナーののりと順子。

真緒の右腕を破壊したさおりはニヤッと笑いながらのりに交代した。右腕を押さえ

ダウンしたままの真緒を引起こしたのりは、まず顔面に回し蹴りを入れた。後方へ吹っ飛び

崩れ落ちる真緒。さらにマウントポジションを取り、上から睨み付けるのり。

「さーて、その可愛いお顔をどんな風にしちゃおうかな?」

ニヤニヤ笑いながら両こぶしを作り、パンチを振り下ろす真似をする。

「お願い!顔だけは止めて!許して!」

下から涙ながらに許しを請う真緒に対するのりの返事は、無防備となった顔面へのパンチの

連打であった。

ガツーン

ガツーン

 顔はヤメテー!お願い!お願い!誰か止めさせて!

祈りが通じるはずも無く、ただ涙を流しながら殴られ続けるしかない真緒。顔面の痛みも

マヒし始め、ただ熱さだけが感じられる様になってきた。

「順子、代わって。」

殴り疲れたのか、飽きたのか、順子にタッチするのり。順子も顔面パンチを引継ぐ。

この頃から観客は悲鳴一つ上げない真緒への不安が増し、声援が止んできた。

静かな中を順子が真緒を殴る音だけが響き渡る。レフェリーが真緒のKOを確認しようと

するが、順子は真緒を引き起こした。観客に久し振りに見せられた真緒の顔は赤く

腫れあがり、とても連ドラのヒロインとは思えない状態になっていた。目も殆ど塞がって

しまい、視界の確保も怪しかった。

そして激しい動きの中、もう一つの真緒の不安も現実となりつつあった。ビキニのブラは

ずれて乳首が覗きそうになっており、下もTバックに近くなり、サポーターを履いて

いない為、ヘアすらあわや見えそうである。しかし、それすらこの時点では真緒の頭からは

消えていた。

順子は、引き起こした真緒の細くくびれたボディに膝蹴りを叩き込んだ。

崩れ落ちそうになる真緒を支え、二発目を叩き込む。真緒の胃液が再度逆流し、口から

反吐となって吐き出された。先程からの顔面パンチで口中を切っていた為、その反吐が

赤く染まっていた。

順子が支えを外すと、自らの反吐の上に崩れ落ちていく真緒。荒い呼吸音が聞こえる。

しかし、ボディ攻撃で意識が戻った為、戦闘不能とは認められなかった。

順子はさおりに交代した。どう攻めようかと考えながら、動けぬ真緒の回りを廻るさおり。

そこへ、リング下から声が掛かった。

「真緒ちゃーん。頑張ってー。起きなきゃ駄目よー。」

いつのまにか控え室からリング下へ戻っていた葉子とさやかが、ニヤニヤ笑いながら声援と

言うより、冷やかす様な声を掛けていた。二人とも、ダメージは殆ど無い様子だ。

真緒の狭い視界にも二人のニヤニヤ笑いが写った。

何で、二人とも笑っているの?何で、そんなに元気そうなの?やっぱり、この試合は何か

企まれていなのね。

試合前の疑念が確信となった真緒。その右足にさおりは膝十字固めを極めた。

「アッ、アッ…」悲鳴も出せぬ真緒は、その痛みに左手で頭を抱えるしかなかった。

その時、葉子とさやかは、のり達のいるコーナー下へ移動していた。

葉子「どう、楽しめてる?これでお詫びでいいよね?」

のり「ちょっと弱過ぎて、技の練習台にしかならないけどね。まあ、二人が楽しんで

   いるからいいか。」

順子「ストレス解消にはなるわね。あの人、『顔、顔』とうるさいから、逆に顔ばっかり

   攻めたけど。」

さやか「いいんじゃない。別に美人って訳でもないし。あたし達の方がずっと可愛いもんね。」

葉子「特に、あの団子鼻、もっと潰してもいいよ。女優気取りはもうさせないから。」

のり「怖いね、アンタ達。」

さやかが、話を変える。

さやか「でも、やっぱりのりさん、強いですね。アタシへのニードロップといい、

    葉子ちゃんへのブレーンバスターといい。」

のり「あれでも、手加減してるのよ。後で、あの子相手に手加減無しのも見せたげるね。」

その返事に頷きながらもゾッとする葉子とさやか。

のり「そろそろ、仕上げに掛かろうかな?予定通りに行くからね。」

葉子「いいよ。お願い。」

順子「ヨシッ、じゃあ行くか。」

リングインしようとする順子に葉子が声を掛けた。

「アラー、アタシの水着、随分汚れちゃったな。順子ちゃん、あれ脱がせちゃってよ。」

「いいんですか?」流石に聞き返す順子。

「いいよ。とにかく今日は徹底的にやっちゃって。」

そう、葉子はなんと同僚の真緒をモリ・プロ側に人身御供として差し出す事で、自分が

頭を下げる代わりとしたのであった。一人全国区の知名度を得て人気者になった真緒は

彼女達全員、特にユニットを組んでいた葉子にとっては ジェラシーの対象であったのだ。

そして、そうであったからこそ、のり達も簡単に了解したのだった。

勿論、試合前にのりが真緒を激しく挑発したこと。真緒がビキニを着せられたこと。

ルールの変更。葉子とさやかがある程度闘ってから、簡単にギブアップしたこと。総て、

彼女達の予めの相談通りだったのである。

レフェリーの制止を無視してノータッチでリングインした順子は、膝十字の痛みに脂汗を

流して悶える真緒の、葉子が言うところの団子鼻、実際は彼女のチャームポイントの

一つでもあるのだが、を思いっきり踏み付けた。鼻が潰される痛みに反射的に左手で鼻を

押さえる真緒。自らの鼻血がその左手を赤く染めるのが、真緒の狭い視界にも写った。

順子が真緒のわずかに暴れる左足を押さえつけ、さおりが膝十字の技に力を込めた。

「ギャーーーーーーーー!」

再び起こる真緒の断末魔の悲鳴。右足の筋も伸ばされ、自由が利かなくなってしまった。

一方の順子は真緒の上半身を起こすと首筋のブラの結び目を解き、更に背中のホックも

外した。ブラを順子がむしり取ると真緒のバストが観客に露わになった。グラビアでも

定評の有る、細い身体に似合わぬ豊かな膨らみに、観客から感嘆の声が上がる。

だが、一人だけ違う印象を持った者がいた。

「細いくせに、何でこんな大きい胸しているの?腹立つなー!何か入れてるんじゃないの?

 本当に本物なの?」

膝十字を解いたさおりであった。今回の六人中、唯一 貧乳と言って良い存在である。

「調べてやるわ。」

と言ったさおりは、いきなり真緒のバストを鷲掴みにした。

「アー!」

新たな痛みに真緒の小さな悲鳴が上がる。

「アタシも触ってみたいな。」

順子も手を伸ばし、もう一つのバストを鷲掴みにする。

「ウッ!」

痛みと共に恥ずかしさが真緒を襲う。触っているのが同性なのがまだ救いではあるが、

そのシーンは多数の男性に見られてもいるのである。

「本物みたいだよ、コレ。アー悔しい!」

自身の貧乳との違いに怒るさおりは、立ち上がると真緒のバストを踏付け、踏みにじった。

「アッ、アッ、アッ」 痛いよー、もう止めてー!

さおりのやつ当たりとも言える攻撃に、声にならぬ悲鳴を上げる真緒。

一方順子はと言えば、葉子の言った通りビキニの下も脱がし始めていた。

抵抗する余裕すら無い真緒は、殆ど気付かぬ内に下半身も剥き出しにされてしまった。

水着グラビアに備えているのか、ヘアは綺麗に手入れされていた。

今度は順子が先に反応した。

「何、綺麗に手入れしてるの?まだ、水着やるつもり?じゃあ、はみ出さない様に

 してあげるよ」

手を伸ばした順子の狙いは、何とそのヘアであった。一部を鷲掴みにすると、そのまま

引きちぎった。

ブチッ

「ヤメテーーーー」

何をやられたかに気付き、痛さより恥ずかしさで小さく叫ぶ真緒。その時まで、下までもが

脱がされている事自体に気付いていなかった。

「お客さん、欲しい?」

引きちぎったヘアを観客席に投げ込もうとする順子だが、当然ずっと手前に落ちる。

数人の観客が拾いに行こうとするが、これは黒服に制止された。

「アタシも。」

今度はさおりがヘアに手を伸ばす。

自由の利く左手で秘部を隠そうとする真緒だが、その手を順子に押さえられた。

ブチッ

さおりによって更にヘアが引き抜かれた。

「もう少し減らしちゃえ。」

順子が再度手を伸ばし、ヘアを更に引き抜く。

ブチッ

ヘアは最初の半分位のまばらさになってしまった。

「順子ちゃん、アレやってみれば。」

「そうね、少し手伝ってね。」

うつ伏せにした真緒の手足を固めた順子はさおりの助けを得て、真緒の身体を上方へ

吊り上げた。釣り天井、ロメロスペシャルとも言われる技である。固め技とは言っても

見せ技に近く、本来はそう痛い技ではないのだが、右腕と右足の筋にダメージを受けている

真緒には激しい痛みが襲った。が、それ以上に開脚状態になった、もはやヘアもまばらな

秘部が観客に曝されている精神的ダメージが大きかった。

こんなことヤメテー!恥ずかしい!

空中に固定され、心の中で叫ぶ真緒。

疲れた順子が技を崩す。マットに叩きつけられる真緒。

今度はさおりが真緒の後ろに廻り込み、真緒の足を内側から自らの足で開脚状態で固定して、

上に吊り上げた。通称 恥ずかし固めと言われる技で、股裂き状態の痛さはあるが、

それ以上に観客に秘部を曝す精神的ダメージが大きい技である。そう言えば真緒も、以前

本物の女子プロレスに参加した久慈 麻理奈と仁志田 夏がこの技を掛けられているシーンを

新聞で見た事があった。しかし、その時麻理奈達は水着を着けていたが、今の自分は何も

身に着けていない。しかもヘアすら引きちぎられ少ないのである。真緒は固く眼をつぶり、

自分の姿を想像しまいとした。しかし、観客の野次がそれを自覚させる。

さおりが技を外したが、自分もやりたいという順子が 恥ずかし固めを引き継いだ。

別な方向の観客に真緒の秘部を曝す方向で技を極める。

次にさおりと順子は真緒を二人で持ち上げ、トップロープをまたがせた。

「アウッ!」

剥き出しの秘部にロープが当たる感触に、真緒の口から思わず声が出る。

「ナニー、感じてるの?あなたも結構敏感ね。じゃあ、もっと感じさせてあげる。」

エプロンへ出たさおりが茶化しながら右足を押さえ、リング内の順子は左足を押さえている。

二人はタイミングを合わせ真緒の両足を上下させて、ロープを秘部に食い込ませる。

「イヤー、イタイ!ヤメテー!」

最大の痛みの原因は先程膝十字で痛めた右足であったが、股間に食い込むロープの痛みも

負けずに大きかった。涙が更にこぼれ落ちる。真緒は、自分の身体からこんなにも沢山の

涙が出ることを不思議に思った。

観客達は下半身の食込みを想像し、また上下させられる度に揺れる豊かなバストにも目を

奪われ、今や興奮の絶頂であった。

「気持ち良くって泣いてるんだ。その演技、実際にも活かしてね、大女優さん。」

なおも茶化すさおり。順子もニヤニヤしながら、さおりに合わせている。

「じゃあ、もっと気持ちの良い事してあげる。気持ち良すぎてお漏らしなんかしないでね。」

上下運動を止めた二人は片手で足を持ち、もう片手を真緒のロープを跨いだお尻に添えた。

「ヤメテ、そ、そんな。ヤメテーー!」

二人の意図に気付いた真緒が必死に許しを請うが、それを無視した二人は、

「セーノ」

掛け声と共に、ロープを跨いだままの真緒の身体を前方に押した。

ロープとの摩擦熱で人毛の焦げる嫌な匂いがただよう。その匂いに鼻を押さえ、真緒から

離れる二人。支えを失った真緒はそのままリング内へ転落した。

左手で股間を押さえる真緒の目はうつろであった。

「オ○コがー!、あたしのオ○コがー…」

関西,淡路島出身の真緒にとってその部分は関東の四文字ではなく、三文字であったのだが、

いずれにせよ年頃の女性が決して口にしてはいけない言葉を繰返し口走る真緒の精神状態は、

危険な状態と思えた。

尚も攻撃を加えようと真緒に近付くさおりと順子だが、ここでゴングが鳴った。

カーン

レフェリーの制止を無視して二人掛かりの攻撃を続けた二人に、反則負けの裁定が

下されたのだった。

十分真緒をいたぶったことで満足していた二人は、抗議もせず素直にリング下へ降り、

葉子、さやかと握手を交わした。当然、この二人の反則負けも予定通りであった。

そして、試合の方はモリ・プロ側もキャプテンののりが残っている為、尚も続行される。

リング上は両チームのキャプテンだけが残る形となった。

とはいえ、状態は比較にすらならない。実力者ののりが殆ど無傷で攻め疲れすらないのに

対し、格闘技素人の真緒はほぼ限界まで痛めつけられ、全裸で股間を押さえボロ切れの様に

横たわっている。鼻血の跡が残る顔面は腫れ上がり、右腕と右足の自由は利かない。

更にバストや秘部までもが痛めつけられ、精神的ダメージも大きい。

リングインし、自分の方へ向かってゆっくり近付いてくるのりを認めた真緒であったが、

動く事は出来ない。攻撃は勿論、逃げる事も不可能である。

のりの選択は更なる顔面攻撃であった。真緒の上半身を起こすとその鼻に膝を叩きつけた。

吹っ飛ぶ真緒の止まっていた鼻血がまた流れ落ち出した。更に側頭部を両膝で挟みこみ、

ジャンプして顔面をマットに叩きつける。叩きつけられたマットが赤く染まる。

鼻での息が出来なくなり、大きく口を開けて荒い呼吸で横たわる真緒の左手と左足を

持ったのりは、そのままアルゼンチンバックブリーカーで持ち上げた。

パワーファイターの面目躍如である。痛みを与えると共に、観客にスタイル抜群の真緒の

裸体を晒す。リング下から拍手を贈る四人。観客からもここでは大きな声援が上がった。

痛い!苦しい!もう、許して!のりちゃん。葉子ちゃん,さやかちゃん,私があなた達に

 何したって言うの!何で、こんな目に合わなきゃいけないの?誰か教えて!

自問する真緒だが、回答が出る訳は無かった。何故なら総てはジェラシーという理屈では

無い物から出ているのだから。

失神寸前にのりは真緒をリングに叩きつけた。これでまた真緒は意識を戻してしまった。

「とどめだー!」

ゆっくりと右手の親指で首を掻っ切るポーズをしたのりは、真緒を引きずり起こし得意の

ブレーンバスターの態勢に入った。

「みんな、本当のブレーンバスターを見せてあげるよ。」

リング下の四人にアピールしたのりは、真緒を垂直に持ち上げた。そして先程の葉子の時は

後方へ投げ背中,腰から落としたが、今度は自らが腰砕けの様に崩れ、真緒の後頭部から

マットにほぼ垂直に落としていった。これぞ本当のブレーンバスター,正式名称バーチカル

スープレックス。昔キラー カール コックスというプロレスラーがリング上で相手を

殺してしまった為、その後は封印したという伝説の技である。

叩きつけられた真緒に、もはや意識が有るとは思えなかったが、レフェリーが確認する前に

のりはロープへと飛び、真緒の首筋に膝を落とした。こちらも手加減無し,足よりも膝を

先に落とし、そこへ全体重を掛けた文字通りのニードロップである。

真緒の身体が衝撃で跳ね、その後は全く動かなくなった。口が開き、腫れあがった瞼の

中で白目をむき、完全に意識を失なっている。

それを確認したレフェリーがゴングを要請した。

カーン

アナウンスが続いた。

「只今の試合、モリ・エージェンシーチームのキャプテン 宮路 真緒選手が戦闘不能と

 認められましたのでモリ・プロチームの勝利となりました。」

片手を上げ勝利をアピールするのりに、さおりと順子が駆け寄る。更に退場時には葉子と

さやかも加わった。

控え室へ戻った五人はのりはビール,他の四人はジュースで乾杯し、これからの協力、

そして打倒 キャブオスカルを誓い合った。

 

一方の真緒はリング上で完全に失神しており、ドクターの応急処置の後、身体に

バスタオルを掛けられて、黒服に担架に乗せられ医務室へ直行した。

 

診察の結果、真緒の女優の命とも言うべき顔面には鼻骨骨折以外にも多数の打撲による

内出血が有り、流石の地下リング医療技術を持ってしても完全に元へ戻すには1ヶ月程度は

掛かる見込みであった。

また右腕と右足の治療,リハビリにも同程度掛かると見られた。更にはバストと秘部の

治療にも時間が費やされたが、幸い女性機能への後遺症は無い見込みであった。

ちなみに、引きちぎられて変な風になってしまったヘアは手術の為という名目で、一旦

総て綺麗に悌毛されたとのことであった。

そして結局真緒は、表向きにはデッチ上げの交通事故による約1ヶ月の入院治療と

いうこととされた。

また全裸の身体を多くの観客に曝したこと、そしてそれ以上に同じプロダクションの仲間に

裏切られた事による精神的ショックが大きく、このままの精神状態では仕事の継続にも

関わる、という診断が精神科医から有った為、事務所の依頼により殆ど催眠術,或いは

洗脳とも言える様な精神治療を受けることともなった。

これにより、真緒の脳裏からは地下リングで闘った記憶は消され、自分自身でも交通事故に

あったものと信じ込んでしまった。

 

その結果、1ヶ月少々してリハビリも終え退院してきた真緒は、事務所の歓迎ににこやかに

対応し、仕事も無事再開した。

しかし、その歓迎の中で葉子そしてさやかと握手する時だけ言い知れぬ恐怖が自分を襲った

理由は、全く理解出来なかった。

またその恐怖はスタジオやTVでのり,さおり,順子を見た時にも襲ってきた。

その何故かは分からぬ恐怖心は、長い間真緒を苦しめた。

「ジェラシー-1()

inserted by FC2 system