『モニプロの逆襲−4』

仲間を総て失い、セコンドも無くたった一人でリングに上がった梨華はこれまでの事を思い出していた。
アイドルになりたくて仕方なかった子供時代。
TVやステージで光り輝くなつみや真希に憧れ、親に黙って応募した朝娘。4期オーディションでの厳しかった
寺合宿を乗越えての合格。
晴れてメンバー入りしたものの、先輩メンバーへの遠慮からなかなか積極的になれなかったデビュー時。
そして、「可愛いが、大人しく消極的で暗い」というイメージが付きかけた頃に連れて来られた地下リング。
そこでは、大人しく消極的でいる訳にはいかなかった。
そんな事をしていれば対戦相手の攻撃を受けて痛く,惨めな思いをするだけであり、時には水着を脱がされ観客の
晒し者にされる事さえ有った。
闘う事,観客にアピールする事で、否応無しに積極性が身体に叩き込まれた。
そうして積極さを身に付けた事で、番組でコーナーを任され人気が上昇、更に田舎娘。とのユニットデビューや
グループでのセンター扱い,水着写真集も好評と完全にブレイクし、後は総てが好回転。気付けば朝娘。だけで
なく、アイドル界全体でも有数の人気者となっていた。
そして、かつて憧れたなつみや真希同様にエースと呼ばれる状態での卒業と、絵梨香,唯との美雄伝としての
新たな出発。
しかし、その前に有った出来事,朝娘。のタプレンジャー戦の敗戦、そしてそのリベンジメンバーに自分が
選ばれなかったショック。
これを精算しなくては、本当の朝娘。卒業は自分には無いと思った。
そして、今日を迎えた。

コールが行なわれる寸前に梨華がマイクを要求し、黒服から渡された。
観客の大声援の中、大好きな色でもあるピンクのスポーツビキニ姿の梨華がマイクを取った。一旦、静まる観客達。
「タプレンジャーの皆さん、結構強いわね。
 でも、私には勝てないわよ!
 全員倒して上げるから、さあ掛かってらっしゃい!」
再び起こる大喚声。
しかしその中には、この可愛く,人気者である梨華が派手にやられる事を期待する声も混ざっている事に、梨華は
気付いていなかった。

「第六試合、芳川 綾乃対石皮 梨華を行ないます。」
"カーン"
身体を軽く揺すりながらゆっくりと前進するグリーンの水着の綾乃に対し、梨華は横へ動く。
162cmの綾乃に対し、梨華は157cmと身長差も有るが、それ以上に身体の幅の差,特にお互いのスポーツビキニから
覗くウェストの差は大きく、観客からはほぼ倍にも感じられた。
横に回りながら時折ローキックを出す梨華であったが、綾乃のガードはしっかりしておりダメージを与える事は
出来なかった。
そして、早織ばりの掌底を交えながら迫ってくる綾乃の圧力に、梨華は徐々にコーナーに追い詰められる。
コーナーに詰まりながら、綾乃が飛び込んできたら交わそうと狙う梨華であったが、綾乃もそれは承知しており、
右左とフェイントを掛けて梨華のタイミングをずらし、そしてついに膝から飛び込んだ。
"ドォーーーン!"
梨華は綾乃の膝を交わしきれず胸板に受けると、更にその勢いでコーナーに叩き付けられた。
次いで綾乃の水平チョップが梨華の胸板を捕える。
"ピッシーン!"
更に綾乃は崩れそうになる梨華のアゴに手を掛けて立たせると、その頬に張り手を叩き込む。
"バシーン! バシーン!"
そして、梨華が慌てて顔を押さえるとガラ開きとなったボディにミドルキックを連発し、更には鋭いヒザを
叩き込む。
"ドス!"
「グエッ!」
その一撃で梨華がアイドルらしからぬ声を上げて、その場に崩れ落ちた。
"強い…"
実際に接して実感した綾乃の強さに驚き、そして自分が仕掛けた闘いの無謀さを改めて後悔する梨華。
一方の綾乃の動きは軽快であり、とてもこれが今日二試合目とは思えず、まるで前のあさことの試合が、単なる
ウォーミングアップに過ぎなかったとも感じられた。
彼女の課題であったスタミナ不足も、この試合に備えてのトレーニングで解消されつつある様であった。
観客も梨華の試合前の威勢の良さとはあまりに違う不甲斐無い状況に対し、梨華に対する声援に加えて、梨華が
もっとやられる事を期待する声が露骨に混ざり始めていた。
その声に対し怒ったファンが怒鳴り返し、場内が騒然とした雰囲気に包まれる中、綾乃がなかなか立上がれない
梨華の顔面を踏み付けた。
これには揉めていた観客も一斉に綾乃にブーイングを浴びせる。
梨華はこの屈辱的な攻撃から、身体をジタバタさせ踏み付けている綾乃の足を両手で持って逃れようとするが、
なかなか態勢を崩せない。
綾乃の足が梨華の顔からどけられた。
梨華は一瞬ホッとしたが、次の瞬間綾乃の重いキックが梨華の細いウェストに炸裂した。
「グウップ!」
逆流する胃液に苦しむ梨華を立上がらせた綾乃は、そのウェストに手を回し、ベアハッグの態勢を取った。
「ア、 アーーー…」
梨華の悲痛な声に、観客も再度梨華への応援半分,綾乃の更なる攻撃への期待半分という雰囲気になってきた。
細いウェストに恨みが有るとばかりに締め付ける綾乃のパワーに、なす術も無い梨華。
それでも、レフリーの『ギブアップ?』の声には首を横に振る。
暫く締め上げた綾乃はその態勢のまま梨華の身体を持ち上げると、自らの膝に梨華の股間を叩き付けた。
このマンハッタンドロップで股間を押さえてダウンした梨華に、観客からの黒い喚声が浴びせられる。
更に梨華の身体を軽々と持ち上げた綾乃は、梨華の尾てい骨をアトミック・ドロップで更に痛め付ける。
"ガツッ!"
「イター!」
綾乃はお尻を押さえる梨華を引き起こすと、重量挙げの様に頭上に高々と差し上げた。
そして、そのまま放り捨てる様に背中から落とす。
「グウッ!」
背中を打って苦しむ梨華を、綾乃は再度リフトアップした。
そして、こんどはお腹から真下へ落とす。そしてそこには綾乃の膝が待っていた。
"ボスッ!"
「グエッ! ウエッーーー!」
先程の試合であさこにも決めたストマック・ブロックで、梨華もあさこ同様反吐を吐き出してしまった。
反吐を吐きながらお腹を押さえて動けない梨華を尻目に、綾乃は両手を上げて観客にアピールする。
大きなブーイングが綾乃に浴びせられたが、その中には梨華の公開リンチとも思える試合が早々と終わりそうな
事に対する不満も混ざっている様であった。
アピールを終えた綾乃は梨華を頭の上に持ち上げると、デスバレー・ボムの態勢に入った。
観客からの大きなブーイングの中、綾乃はジャンプしながら側方に倒れ込み、梨華の脳天をマットに叩き付けた。
"ドスン!"
そして、鈍い音と共にダウンした梨華を押さえ込む。
「ワン、ツー、スリ…」
しかし、何とスリー直前に梨華が僅かに肩を上げた為、スリーカウントとはならなかった。
「スリーだろ!」
そのカウントに怒り、レフリーに詰め寄る綾乃。
激しく抗議するが、判定が覆る筈は無かった。
綾乃がレフリーに向かって抗議を続けている隙に、梨華がフラっと立ち上がり綾乃の後方へ近付いたが、
レフリーへの抗議に夢中な綾乃は気付かなかった。
そして、梨華は綾乃に横から抱き付くように「スクール・ボーイ」とも呼ばれる横入り式のエビ固めを決める。
「ワン、ツー、スリー!」
"カーン"
「只今の試合は、フォールで石皮 梨華選手が勝ちました。続いての選手、リングに上がって下さい。」
こちらもギリギリで綾乃が肩を上げた様にも見えたが、レフリーの判定は絶対である。
綾乃は一しきり抗議をした後、レフリーを睨みながらリングを降りる。

レフリーに手を上げられる梨華であったが、その表情は既に憔悴しきっていた。
それでも黒服にマイクを要求する。
「ハァッ… ハァッ… 約束… 通り… ハァッ… 一人… 倒したわよ… 次は… ハァッ… 誰…
 何なら… ハァッ… ハァッ… 全員一緒でもいいわよ! ウプッ…」
込み上げる吐き気にマイクを離す梨華。
そのアピールに観客から大きな喚声が上がるが、無論その多くはこの公開リンチがまだ続く事への黒い喜び
からのものであった。

梨華のアピールに早織が一旦黒服を見たが、結局予定通り黄色の水着を着た明日香だけがリングに上がった。

「第七試合、塁家 明日香対石皮 梨華を行ないます。」
"カーン"
梨華が殆ど休憩する間も無いままゴングが鳴った。
コーナーにもたれ、ようやく立っている梨華に綾乃よりも更に一回り大柄な明日香が襲い掛かった。
避ける事も抵抗する事も出来ず、梨華は明日香のボディアタックをまともに食らってしまう。
"ドガーーン!"
コーナーと明日香の身体に挟まれ梨華の姿が見えなくなった。
明日香が離れた時には梨華はコーナーを背に、尻餅をつく形になっていた。
その梨華に再び突っ込んだ明日香は、ジャンプするとそのボディを踏み付けた。
「グェ…」
そして、そのままレフリーのブレイクが掛かるまで踏み付け続ける。
梨華のお腹の上から足を下ろした明日香は、梨華の髪の毛を掴むとその顔を何と自分のスポーツビキニから
はみ出したお腹に押し付けた。
梨華の鼻と口が明日香の柔らかなお腹に包まれ、呼吸が出来なくなる。
グラビア史上最強の腹を持つ、と言われる『樽ドル』明日香ならではの窒息攻撃である。
この攻撃に観客からは大きな笑い声が上がるが、攻撃を受けている梨華に取っては笑い事では無かった。
呼吸も苦しく、目も見えない状態で手を滅茶苦茶に振り回すが、殆ど効果は無い。
もがき、暴れた足がたまたま明日香の足を踏み付けた事で、ようやく窒息攻撃から逃れた梨華であったが、
その場に倒れ込んだまま立つ事は出来ず、荒い呼吸を繰り返すだけだった。
踏まれた足をさすりながら近付いてきた明日香は梨華の両足を取ると、ジャイアント・スイングで無抵抗の梨華を
軽々と振り回し、観客のカウントと共に10回転させると、そのまま手を離してリングに梨華を放り出す。
自分も目が回った明日香だが、グッタリとダウンしたままの梨華の両足を再度取ると、今度は身体を反転させ
逆エビを極めた。
「ギャーーー!」
身体が反られる痛さに、飛び掛かっていた梨華の意識が戻る。
ポジション的にはロープに近い位置であったが、手を伸ばしてもギリギリ届かない。
レフリーの『ギブアップ?』には首を横に振り続ける梨華であったが、徐々に意識が遠のいてきた。
"もうダメ…   絵梨香ちゃん,唯ちゃん,あさこちゃん,みなちゃん,まいちゃん… ゴメンね…
 こんな、梨華を許して…"
もう眼を開ける事も出来ず、心の中で仲間に謝る梨華。
その時、彼女の耳に聞き覚えの有る声が聞こえた。
「石皮!諦めるな!もう少しだ!」
"今の声って、裕ちゃん? そんな筈、無い… 幻聴よ…"
眼を閉じ続ける梨華の耳に再び声が響いた。
「石皮!もう少しだ!手を伸ばせ!」
薄く目を開けた梨華の目の前にいたのは朝娘。の元リーダー、仲澤 裕子であった。
「裕ちゃん…」
「石皮!頑張れ!ロープを掴むんだ!」
その声に励まされて、梨華の身体が少し前に動いた。そしてロープを掴む。
「ブレイク!」
ようやく明日香の逆エビから逃れた梨華は、そのまま場外へ転がる様にエスケープする。
裕子が梨華の腰に水を掛けマッサージするが、これはレフリーから注意される。
「裕ちゃん… 何でここに?」
問いかける梨華に対し、裕子はそれには答えず
「朝娘。なら、最後まで諦めるな!」
それだけ言って梨華のお尻を叩き、セコンド位置に移動する。
"諦めないわ。あの子達の為にも。"
痛む身体に気持ちを込め、大きく深呼吸すると再びリングへ戻る梨華。
一方の明日香はその間に早織に呼ばれ、二言三言耳元で囁かれていた。
それを聞いて一瞬怪訝な顔をした明日香であったが、頷くとリングに上がってきた梨華に向かう。
裕子の登場で気持ちを取り直した梨華であったが、無論身体のダメージが回復した訳では無かった。
前進してくる明日香のお腹に懸命に前蹴りを入れるが、ダメージは与えられず逆にその反動で自分が後方に
倒れてしまう。
明日香はダウンした梨華のお腹に右手を食込ませた。ストマッククローである。
胃袋の辺りを鷲掴みにしながら、体重も掛けるとこれまでのボディ攻撃のダメージも有り梨華の胃液がまたも
逆流し、口から溢れ出す。
「グエッ、ゴボッ、ゲホゲホ…」
その辛さにのたうつ梨華は、それでも下から明日香の顔面に張り手を入れ反撃する。
それに対し明日香はクローを解くと、梨華の顔面を張り飛ばした。
"バッシーーーン! バッシーーーン!"
更にその首筋にギロチンドロップを落とす。
"ドッスーン!"
立ち上がった明日香は、抵抗出来ぬ梨華の身体をパワーボムの態勢に担ぎ上げた。
そして、そのまま梨華の後頭部をリングに叩き付ける。
"ドッカーン!"
クリップした手を離すことなく、更にもう一発。
"ドッカーン!"
そして三発目は投げ捨て式であった。
まるで縫いぐるみ人形の様に、無雑作に梨華がリング上に投げ捨てられる。
"ドッカーーーーーン!"
完全に意識を失い動かなくなった梨華に対して、レフリーのKOカウントが入る。
「ワン、ツー、スリー、フォー」
"終わった" と観客も裕子もレフリーさえも思った。
「エイト、ナイン」
テンカウントを目前にしても全く動けない梨華に対して、レフリーが「テン」を数えようとした瞬間、明日香が
突然レフリーに襲い掛かった。
レフリーの胸倉を掴むと、その顔面に軽い張り手を入れたのである。
"カーン"
レフリーの合図でゴングが鳴ったが、それは梨華のKO負けを示すものではなかった。
「只今の試合は、反則で石皮 梨華選手が勝ちました。続いての選手、リングに上がって下さい。」

いかに地下リングとは言え、レフリーに対する暴行は即座に反則負けである。
唖然とするレフリー,そしてどう反応して良いのか戸惑いどよめく観客達を尻目にさっさとリングを降りる
明日香に代わって、青い水着の乃南がリングに上がった。
そしてレフリーに、早くゴングを鳴らす様要請する。

一方の梨華はゴングと共にリングに上がった裕子の介抱にも関わらず、まだ意識を戻していなかった。
観客達同様裕子もまた、何が起こったのか理解出来ていない様であった。

「第八試合、多喜沢 乃南対石皮 梨華を行ないます。」
"カーン"
梨華が意識を取り戻さないままにゴングが鳴った。
これには裕子が激しく抗議するが、認められる筈も無く、裕子は黒服によりリング下へ引き摺り下ろされた。

「石皮!石皮!」
黒服に押さえ付けられた裕子の叫びにも関わらず意識を戻さぬ梨華に、乃南がゆっくりと近付く。
乃南は梨華のボディに軽いトーキックを入れるが、状況に変化は無かった。
少し悩んだ様子を見せた乃南は、梨華のグニャグニャの身体を持ち上げるとコーナーへ運んだ。
コーナーを背に、両腕をロープに引っ掛けて立たせると、その顔面に軽く張り手を入れた。
"パチン,パチン"
「ウンッ…」
梨華の眼が力無く開いた。
「起きたみたいね、石皮さん。」
梨華には、何故目の前に明日香ではなく、乃南がいるのか理解出来なかった。
"バシーン!バシーン!"
梨華の戸惑いとは関係無く、今度は乃南の強烈な張り手が梨華の両頬に炸裂した。
その場に崩れ落ちる梨華は口内を切ったのか、口から血が流れ出していた。
立ってこない梨華に対し、乃南はその全身にキックを浴びせ掛ける。
顔と頭は必死にかばう梨華であったが、その細くくびれたウェストや張りの有るヒップを明日香のキックが襲う。
乃南は梨華を引き摺り起こすとボディスラムで叩き付けた。
そして、大の字にダウンした梨華の程よく膨らんだバストを踏みにじる。
「ギャッ!」
女性の急所を責められる痛さに梨華の意識が戻るが、立上がる事は出来ない。
乃南は梨華の脚を取ると、足四の字固めを極めた。
その痛さに頭を抱えて耐える梨華。反転させれば良いと分かってはいても、その力は全く残っていなかった。
それでもレフリーの「ギブアップ?」には首を横に振り続ける。
暫く締め上げた乃南は自ら技を外すと、ロープへ飛びジャンプ一番、膝を梨華の首筋に叩き付けた。
"ドォーーン!"
梨華の身体がリングの上ではずむ。
更に乃南は、梨華をカナディアン・バックブリーカーで担ぎ上げた。
そして身体を上下に揺さぶり、更にダメージを与える。
レフリーが梨華にギブアップの確認をするが、梨華からの意思表示は無い。
いや、乃南の肩の上で既に意識を失った梨華には何の意思表示もする事も不可能だった。
「ファイアー!」
"ドカーーン!"
乃南の叫び声と共に、サンダー・ファイアー・ボムによって梨華の後頭部がリングに叩き付けられた。
全く動かぬ梨華に対しレフリーのKOカウントが開始される。
「ワン、ツー、スリー、フォー、」
"まさか…!?"
裕子や観客の疑惑が的中した。
テンカウント寸前に乃南が先程の明日香同様、レフリーを襲い後ろから突き飛ばしたのだ。
"カーン"
「只今の試合は、反則で石皮 梨華選手が勝ちました。続いての選手、リングに上がって下さい。」

そのアナウンスを聞きながら悠然とリングを降りる乃南と、代わってリングインするピンクの水着の桜怜。
ここへ来て、裕子も観客もタプレンジャーの狙いに気が付いた。
わざと反則負けする事で、梨華を全員でいたぶる目論見の様である。

リング上に飛込み必死に梨華の介抱をする裕子で有ったが、梨華の意識は戻らない。
試合開始のゴングを要求する桜怜に対し、裕子はそれを少しでも遅らせようとする。
しかし、レフリーから試合開始の合図が出た。

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