『タプモニ−番外編』

「一体、あの後始末はどう付けるつもりなんだ!?」
所属事務所の社長室で硬いパイプ椅子に座らされ、顔を上げる事も出来ずに社長から怒鳴られているのは元朝娘。の
籠 亜依であった。
現在18歳の彼女は、わずか12歳で4期メンバーとして参加した後、同期随一の歌の上手さに加え物怖じしない性格と
頭の回転の早さ、それにモノマネを得意とする器用さから特に子供達からの絶大な人気を誇り、グループをトップに
のし上げた立役者の一人であった。また卒業後は同期の辻野 希美と共にユニット「WV」(ダブルブイ)で、グループ
時代と変わらぬ人気だったのだが、写真週刊誌になんと喫煙している所をスクープされてしまい、本人及びユニットが
活動停止となり、事務所に大きな損失を与えてしまったのである。
現在は希美が一人でTV出演をこなしており、一方の亜依は謹慎状態が続いていた。
「こうなったら、キミにはここで頑張って貰うしかない。かつての裕子達と同じ様にな!」
社長がプロデューサーのつんた、モニプロリーダーの仲澤 裕子と相談し出した結論は、朝娘。の原点でもある
地下リングへの参加であった。
「勝てば、即刻カムバックさせてやる。だが、負ければ謹慎は継続だ。そして、もしみっともない試合をやった
 場合には…」
一呼吸置いて社長は自らの首を親指で指し、横に動かした。
「こうだ。」
「…… はい、分かりました…」
最後まで顔を上げずに、震える声で応える亜依。その表情は蒼白になっていたが、社長が気付くことは無かった。
無論、気付いたとしても、決定を変えるつもりは無かっただろうが。

「キミはタプレンジャーを続ける気持ちが有るのかな?」
一方、こちらは地下リングの事務所。
呼び出され、ボス格の黒服と向かい合っているのは「タプブルー」こと多喜沢 乃南であった。
「このグラビアだと『タプ』とは言い難いし、試合内容も相変わらずだしな。」
ダイエットに成功して幾分スリムになると共に、一部からは大きな支持を受けていた太眉毛も綺麗に揃えられた
最新の乃南のグラビアは、綺麗では有ったが反面彼女の特徴を失った「普通のグラドル」的な物であった。
またリングでも先日は実力者の保多 圭を破ったとは言え、多分にラッキーな面も有り「タプレン最弱」の汚名を
返上するには至っていなかった。
「勿論、続けたいです。」
黒服を睨み付ける様に乃南が返事をする。
「では、それを証明して貰うしか無いな。」
「どうやってですか!」
「それは勿論、リングで証明して貰うしか無い。
 今度或るアイドルが『お仕置きマッチ』を行なうことになったが、その相手をやって貰う。
 ちゃんと『お仕置き』出来るなら、キミを今まで通りタプレンジャーとして認めよう。
 だが、もしそれが出来ないようなら…」
黒服もまた、自らの首を親指で指し、横に動かした。
「こうだ。」
「分かりました!」
即答する乃南に、黒服が続ける。
「キミの試合で、以前相手の水着を脱がせた事が有ったな?」
「ハイ。」
と苦笑しながら、乃南が答える。丘田 唯(美雄伝)との試合で、闘志を見せない相手のワンピース水着を腰まで
脱がせ、唯のバストを観客に曝した時の事であった。
「あれは観客にも非常に好評だった。
 今度の試合でも、最後はそれをやって貰いたい。
 と言うより、やって貰わないと『お仕置き』にはならない。
 無論、今回は上だけで無く、下もだ。
 分かったな?」
「…」
流石に、これには即答出来ない乃南。
「分かったな!」
「ハイッ!」
畳み込む黒服に、乃南は反射的に返事してしまった。
「ヨシッ。では、試合日の連絡は後日だ。帰って良い。」
答えてしまった事を後悔する乃南であったが、もはや黒服は席を立とうとしていた。
「相手は誰なんですか?」
部屋を出て行く黒服に、それだけは聞こうとする乃南であったが、
「それは当日になれば分かる!」
それだけ言い残して黒服は去って行き、残された乃南も帰るしか無かった。

お互い、相手が分からぬままにトレーニングを積む亜依と乃南。
共に試合については「口外無用」と厳重に言い渡されており、他のモニプロメンバーもタプレンジャー達も試合が
有る事は知らされていなかった。
とは言え、時には他のタプレンメンバーと合同で充実したトレーニングを積む乃南に対し、一人でトレーニングを
行なうしかない亜依の試合準備は不充分と言わざるを得なかった。

そして、当日を迎えることとなった。

控え室で一人いつものブルーのスポーツビキニに着替える乃南は、まだ悩んでいた。
誰かは分からないが「アイドル」の水着を脱がし、全裸にする事が果たして自分に出来るのか?
しかし、もしやらなければ「タプレンジャー」を去らなければいけないのである。
「サオ、ルイ、オーレ、あっちん…
 私はどうすれば良いの? 
 でも、あなた達とは一緒に闘い続けたい…
 あなた達だったらどうするの?」
誰もいない控え室で独り言を繰返し、黒服に呼ばれるまでウォーミングアップにも気持ちが乗りきらない乃南で
あった。

一方の亜依は、控え室に置いてあった試合用の水着を見て戸惑っていた。
それは他のメンバーが試合で着ていたワンピースでもなければ、スポーツビキニでもない普通のグラビア用の白い
ビキニであった。
"こんなの着て試合したら、脱げちゃうかも…"
無論、亜依は対戦相手も分からないし、その相手が自分の水着を脱がせる指示を受けている事など知る筈が無かった。
そしていかに不安や不満が有ろうとも、地下リングの決定に逆らう事は出来ない。
まして、今日は彼女の『お仕置きマッチ』なのである。
溜め息をつきながら指定のビキニに着替えた亜依は、自分の姿を鏡に映して見た。
そして再び大きな溜め息をつく。
そこに映っていたのはトレーニングしたとはいえ、謹慎中に更に肉付きの良くなってしまった身体であった。
特にビキニパンツに覆い被さったウェストには、自分でも眼を背けたくなった。
"モニプロ、クビになったら、「タプレンジャー」に入れて貰おうかな?
 でも、彼女達強いしな〜…"
ともあれウォーミングアップする亜依にも黒服からの声が掛かった。
"アッ、いつものやらなきゃ…"
亜依は自分の左手の上に、右手を乗せる。
「頑張って行きまっ」
「しょい!」
いつもなら大人数で行なう儀式を一人でやる亜依。その寂しさに負けまいとリングへ向かう。

亜依が向かうリングには、一足先に乃南が上がっていた。
観客達も「タプレンジャー」としてではなく一人で登場した乃南に少々驚いており、ブーイング一辺倒ではなく
声援と戸惑いが入り混じった不思議な状態になっていた。
その中で乃南も、いつもなら5人でやる「キメ」を一人で行なう。
「タプレンジャーは逃げない!」
「タプレンジャーは諦めない!」
「タプレンジャーは負けない!」
「肉体こそ真の凶器!」
叫んではみたものの反応は薄く、相変わらず中途半端な雰囲気が漂っていた。
『のなみんに言われてもな〜』
『タプレン最弱だしな〜』
『あいつには、何かブーイングもやり難いんだよな〜』
『しかも、大分痩せちゃったんじゃないのか?』

その雰囲気の中、対戦相手が花道から現われた。
その正体に気付いた観客が騒ぎ始めた。
『エッ!カゴちゃん?』
『アイぼんが、何で出てくるんだ?』
『確か、喫煙で謹慎中だったよな』
『と言う事は、『お仕置き』か?』
『それにしては、相手が中途半端だな…』
そして自然発生した「アイぼん」コールの中、亜依がリングに上がった。

無論、この相手には乃南も驚き、動揺を隠せなかった。
"「お仕置き」の相手って、カゴちゃん!
 確かに謹慎中とは聞いてたけど…
 私に彼女の水着を脱がせ、って言うの!"

リングに上がった亜依もまた驚きを隠せなかった。
"タプレンの人… 確か多喜沢 乃南さんだっけ?
 この前、圭ちゃんに勝った人よね…
 私が勝てる訳無いじゃない…"

また、亜依登場の当初の驚きから覚めた観客達は別な感情を抱き始めていた。
『しかし、あのアイぼんのお腹は…』
『暫く水着を見せてないと思ったら、あんなになっていたのか…』
『のなみんよりタプってるよな…』
ザワツキと共にあちこちから笑い声も起こり始めていた。そして、
「カゴちゃ〜ん、今日は勝ってタプレンジャー入りしろよ〜」
には会場が大きな笑いに包まれた。
戸惑いと共に悔しさを覚える亜依とは対照的に、乃南の表情には徐々に気合いが乗ってきていた。
"「タプレンジャー」を舐めないでよ! こんな鍛えて無いアイドルとは違うんだからね!"

アナウンスが入った。
「タプレンジャー対モニプロ番外戦、多喜沢 乃南対籠 亜依を行ないます。尚、この試合の決着はレフリーストップ
 のみとなっております。」
そのアナウンスに会場からはどよめきが起こり、亜依は絶望感に目の前が真っ暗になった。
"レフリーストップのみって、どういうこと?! 一体どうなったら、試合が終わるの?!"
そして、その中で乃南だけが「レフリーストップ」の条件を理解していた。
"やるしか無いのよ! タプブルー! 分かった!"
何とか気持ちを高めようとする乃南であったが、反対コーナーで蒼白な表情で震えている亜依を見てしまうと、
また気持ちが揺らぐのであった。

"カーン"
両者の複雑な思いが交錯する中、ついにゴングが鳴った。
「さあ、来い!」
大声を上げて気合いを入れた乃南が、亜依がたたずんだままのコーナーへ向かう。
その迫力に逃げ出しそうになった亜依であったが、『みっともない試合をしたら…』という社長の言葉を思い出し、
大声を上げると真っ向から組合った。
「ウワーーー!」
155cmの乃南に対し、亜依は公称148cm (実際には150cmは有りそうだが)と一回り小柄ではあるが、その横幅は
むしろ亜依が上回っているかに見えた。
しかし、いかに『タプレン最弱』の汚名を着せられているとは言え、モニプロでも実力者の芳澤 ひとみと好勝負し、
保多 圭を破った乃南である。
これがデビュー戦で、しかも充分なトレーニングを積んでいない亜依とではそのパワーは比べるべくも無かった。
乃南がグッと力を入れると亜依は腰砕け状態となり、そのままコーナーポストに背中が叩き付けられる。
"ドスーーン!"
背中に大きな衝撃を受け、亜依の息が詰まる。
この一合ではっきりとした実力差を感じた乃南には余裕が出た。コーナーに座り込む形となった亜依を深追いせず、
リング中央に戻ってこれからの試合組立てを考える。
"少しは攻めさせた方が良いのかしら? それとも一方的に攻めた方が?"
暫く考えた乃南は、前者を選んだ。
「さあ、掛かってらっしゃい!」
手招きしながら叫んだ乃南の声に観客からのブーイングが重なり、更に「アイぼん」コールが起こる中、立ち上がった
亜依は夢中で乃南に殴り掛かる。
「このヤロー!」
アイドルをかなぐり捨てた叫び声と共に繰り出したパンチ、更にキックが乃南を捕らえた様に見える。
更に亜依は首投げで乃南を投げつける。
"ドォーーーン!"
大きな音と共に乃南がリング中央に大の字になり、観客からは大きな歓声が上がるが、乃南は急所を外し、受身を
しっかり取っていた為、殆どダメージは無かった。
それでも、それに気付かぬ亜依は歓声を背に乃南の胸元からボディにキックを浴びせ掛け、更に立たせるとロープに
振り、ショルダースルーで投げ飛ばす。
"ドォーーーン!"
無論ここも派手な音に反し、完璧な受身を取っている乃南には何らダメージは無かった。
亜依は再び乃南にキックを数発浴びせると、逆エビ固めを狙う。
両足を取って乃南を反転させた (実際には、乃南が自ら反転したのであるが)亜依は両腕に力を込め、乃南の身体を
反らせようとする。
観客の歓声と「アイぼん」コールが更に大きくなるが、ここは乃南が身体に力を入れると、亜依のパワーでは乃南の
腰や背骨にダメージを与えるほどには反らせる事が出来ず、逆に自らのスタミナをロスするだけであった。
暫く膠着状態が続いたが、徐々に亜依の力が無くなってきたのを感じた乃南が身体の力を更に入れると、亜依の
身体が前方に投げ出された。
ダメージが有るふりでゆっくりと立上がった乃南が振り向いた所へ、亜依がタックルを仕掛けた。
乃南にとっては切ることも充分可能なタックルであったが、ここもあえてダウンする。
上になった亜依が乃南の顔面をパンチで狙うが、しっかりとガード姿勢を取った乃南に対し何も出来ない。
下になってはいるが、余裕の有る乃南に観客の声が聞こえてきた。
『やっぱり、のなみんは弱いな〜』
『アイぼんが一方的に攻めてるじゃないか』
『タプレン入替えだな、こりゃ』
"みんな、勝手な事言ってるな〜 じゃあ、そろそろちょっと反撃した方が良いかな?"
亜依の動きが止まった事も確認した乃南が動いた。
まず、手足を上手く使って亜依のバランスを崩し横に倒すと、自分がスッと上になる。
そして暴れる亜依の左手首を取ると、そのままアームロックを極める。
そのあまりにもスムーズな一連の動きは、それまで野次を飛ばしていた観客達を黙らせるには充分であった。
観客達が息を飲み黙った次の瞬間、会場には亜依の悲鳴が響き渡ることになった。
「ギヤーーーーーーーーーーー! イタイ! イタイ! イタイ!」
そのまま力を込め亜依の左腕を破壊する事も、或いはマウントポジションを取り顔面パンチを降らせる事も可能な
乃南であったが、ここはポジションを崩すと立上がった。
そして立上がった乃南に何のダメージもスタミナロスも無い事は、観客にも明らかであった。
一方、左腕を押さえながら立上がった亜依は肩で大きな息をしており、既に大きくスタミナをロスしている事もまた
明らかであった。
「カモーーン!」
余裕の表情で亜依を呼び込む乃南に対し、観客からは一斉にブーイングが起こる。
乃南の余裕を感じた亜依であったが、ここはとにかく行くしかなかった。
「クソーーー!」
ダメージの無い右手を振り上げると、ラリアットを乃南の胸元に叩き込む。
"バシーン!"
しかし、ここは乃南が踏ん張り倒れない。
焦る亜依は自らロープへ飛ぶと、反動を使って再びラリアットを乃南に叩き込む。
しかし、ここも乃南が踏ん張ると倒す事は出来ず、亜依自身の右手が衝撃で痛んだ。
ラリアットは無理と見た亜依は再度ロープへ飛ぶと、タックルで倒そうとする。
乃南の腰に飛び込もうとした亜依であったが、乃南は余裕を持ってタックルを切ると上から亜依を押し潰す。
「グオッ!」
うつ伏せ状態で乃南の体重を受けた亜依から変な声が出、観客から笑いが起こる。
乃南は素早く体勢を180度入替え、腕を亜依の首筋へ入れチョークスリーパーを狙う。
それを防ごうと必死にもがく亜依は体勢をうつ伏せから仰向けに替えたが、これは乃南にマウントポジションを
取らせる事となった。
仰向けの亜依に馬乗りの形となった乃南は、亜依の上半身に細かいチョップを振らせる。
そして再び亜依の左腕を取るとアームロックを極め、今度は先程より力を込める。
「イターーーーーーーイ! ヤメテーーーー! ギブアップーーーー!」
泣き叫ぶ亜依であったが、この試合にギブアップは認めておらず、当然試合は継続される。
乃南は亜依のアームロックを解くと一旦腰を浮かし、再度落とした。
"ドスン!"
「グエッ!」
このヒップドロップで亜依の胃液が逆流する。
乃南は亜依を立たせると、ボディスラムでリングに叩き付けた。
"ドッスーーン!"
受身を充分に取れず苦しむ亜依のボディに、再度乃南のヒップが落とされた。
"ドスン!"
「グッ! グエーーーーー!」
この一撃で、ついに亜依の口から反吐が吐き出された。
更にそのビキニからはみ出した亜依のボディにキックを連発する乃南。
"ボスッ!ボスッ!"
一旦亜依から離れた乃南は観客に右手を上げアピールするが、帰ってきたのは100%のブーイングであった。
そのブーイングにむしろ快感をおぼえる乃南。
一方の亜依は、乃南が離れた後もなかなか立ち上がる事が出来なかった。
「籠、ファイト!」
レフリーの声に社長の言葉を思い出し、亜依が涙目でフラフラと立ち上がる。
そこへ飛び込んだ乃南は亜依の両肩をホールドすると、ボディに膝蹴りを叩き込む。
"ドスッ! ドスッ!"
前のめりになりそうな亜依の身体を乃南はそのままコーナーへ押し込み、両腕をトップロープに掛けて固定する。
そして思い切り振り被っての水平チョップを亜依の首筋に叩き込む。
"バッシーーーン!"
大きな音が会場に響き渡り、亜依の重量感の有る身体が一瞬浮き上がる。
二発目はビキニに包まれたバストに叩き込まれた。
"バシン!"
「イターーーーイ!」
女性の急所に打撃を受けた亜依から悲鳴が上がり、会場のブーイングが更に大きくなる。
乃南は無抵抗の亜依の身体を軽々とリフトアップすると、そのまま反対コーナー目掛けてデッドリー・ドライブで
投げ付ける。
"ドッスーーン!"
このパワーには会場からも感嘆の声が上がる。
「カモーーーン!」
叫ぶ乃南であったが、亜依は身体の痛みと実感した実力差で完全に戦意を喪失していた。
コーナーへ逃げ込み動こうとしない亜依に乃南が襲い掛かり、キックを連発する。
「ブレイク!」
ロープブレイクを掛けたレフリーが乃南をチラっと見た瞬間、乃南は攻撃の興奮から覚め、この試合の意味を
思い出した。
"彼女の水着を脱がさないと…"
その時乃南の頭の中に、自分が唯と闘った時や早織が梨華と闘った時が思い浮かんだ。
"ヨシッ…"
そして、亜依に向かって叫ぶ。
「掛かって来い! 掛かってこないなら、その水着を脱がせるぞ!」
それを聞いた観客からまたまたどよめきが起こり、次に「脱がせ!」と「止めろ!」のコールが同時に起こった。
一方それを聞いた亜依は、
"水着を脱がすって… 私の…? 何言ってるの、この人…? 脅しだけでしょ…"
と戸惑うだけであった。
しかし、ダウンしたままの亜依に近付いた乃南は意を決すると、亜依の首の後ろに手を回しビキニブラの結び目を
解きに掛かった。
乃南がしっかり結ばれた紐に苦戦している内に、亜依は乃南の言葉が単なる脅しで無い事を確信した。
"この人、本当に私の水着を脱がそうとしている! イヤダーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!"
「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
乃南が亜依の叫び声に驚いた次の瞬間、股間から脳天に激しい衝撃を感じた。
亜依が油断していた乃南の股間に、力を振り絞ったパンチを打ち込んだのであった。
股間を押さえてダウンした乃南に対し亜依は背を向けると、転がる様に場外へ逃げる。
そして呼吸を整えると、何と花道へ向かい会場から逃げ出そうとする。
この時、亜依も『レフリーストップ』の意味を理解していた。
"この試合って、私が裸にされなきゃ終わらないんじゃない!
 そんなのヤダーー!"
しかし、その逃げ道は黒服達によってしっかりとふさがれていた。
そしてその時、亜依は社長の言葉をまた思い出した。
『勝てば、即刻カムバックさせてやる。だが、負ければ謹慎は継続だ。そして、もしみっともない試合をやった
 場合には…』
亜依は逃げる事は諦めた。
"勝てば良いのよね! なら、勝ってやる! 何をやっても!"
亜依は会場の椅子を手にするとリングへ戻った。
その頃、乃南もリング上で復活しており、その心中は怒りに燃えていた。
"女性の大事な所を… 許せない!"
そしてその怒りは、亜依が椅子を持ってリング上に戻ってきた時にピークに達した。
"やれる物なら、やってみろ!"
リング中央に仁王立ちになる乃南に対し、亜依は奇声を上げながら手にした椅子を振り上げ叩き付ける。
「キャーーーーーーー!」
"ガッシャーーーン!!"
その一撃で乃南が膝を落とす。
更に二発目を狙おうと、亜依が椅子を振り上げる。
「ウワーーーーーーー!」
しかし、そのボディに乃南のタックルが炸裂した。
バランスを崩し仰向けにダウンする亜依。
その勢いで椅子も手から外れる。
上になった乃南は亜依の顔面に一発パンチを叩き込むと、三度亜依の左腕をアームロックで固めた。
そして、今度こそは力を込め、亜依の左腕を破壊する。
「ガッ…!」
あまりの痛さに声も出せぬ亜依。
そして、乃南は亜依のブラに手を掛けた。
固く結ばれた紐を解く事を諦めた乃南は、亜依のブラの下側のワイヤーに手を掛けると上方に捲り上げた。
亜依のバストを剥き出しにした乃南は、次に背中のホックを外して立ち上がると、左腕から肩の痛みで無抵抗の
亜依のブラを頭の上から抜き取る。
そして必死に右手で剥き出しのバストを隠そうとする亜依をカナディアンバックブリーカーの形に担ぎ上げると、
そのまま一回りして観客に亜依のバストを曝す。
この時ばかりはブーイングは止み、歓声が上がる。
そして、
「ファイヤーーーー!」
乃南の叫び声と共に、乃南の肩の上で半失神状態だった亜依の後頭部がリングに叩きつけられた。
"ドッカーーーーン!"
リングが、そして亜依の剥き出しになったバストが大きく揺れ、それが治まった時にはリング上に大の字になって
失神した亜依がいた。
そして、乃南は亜依のビキニパンツに手を掛けると一気に毟り取る。
そのパンツを高々と会場に見せ付ける乃南に対し、会場から激しいブーイングが起こる。
試合終了のゴングを期待した乃南であったが、それは鳴らなかった。
乃南がリング下をチラっと見ると、黒服は『まだまだ』という表情で、レフリーに試合継続の指示を出していた。
乃南は意識を失った亜依を引き起こすと、羽交い締めにした。
そして、そのままスイング・フルネルソンで亜依の身体を回転させ会場全体にその全裸を曝す。
3周位した所で、亜依が左肩の痛みで意識を戻した。
"痛いっ! エッ…"
そして自分の状態に気付いた。
「…………!」
全裸の姿を会場に曝している事に気付いた亜依は、あまりのショックに声すら出なかった。
乃南は亜依を更にそのまま数周回し、リングに叩き付けた。
"ドスーーン!"
左肩が叩き付けられる痛みに亜依が再度失神すると同時に失禁し、股間に黄色い水溜まりが出来る。
ここで遂にリング下の黒服の合図で、レフリーが試合終了を告げた。

"カーン"
「只今の試合は、レフリーストップで多喜沢 乃南選手が勝ちました。」

大ブーイングの中、レフリーに手を上げられる乃南の足元で、失神した全裸の亜依が担架に乗せられようとしていた。
その姿を見て我に帰った乃南であったが、ここは先日の早織同様ヒールに徹することとした。
「こんな相手しかいないのか?! 私に見合うもっと強い相手を連れて来い!」
乃南のアピールに観客からのブーイングが更に大きくなるが、それを睨み返す乃南。
そこにいるのは紛れも無く『タプレン最弱』の汚名を返上した、ヒール『タプブルー』であった。

『タプモニ−番外編』−完−

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