『ミス漫画人-3』

リング上には夏芽 理緒と時藤 ぁみが上がり、共にウォーミングアップに入っていた。

理緒は現在21歳、156cmと身長は大きくは無いが 98-58-85という3サイズの通り、ミス漫画人史上でも最大クラスの
巨乳の持ち主でありながら反面ウェストから下半身は普通サイズで、そのプロポーションは日本人離れしていた。
そのスタイルのインパクトは大きく水着グラビアは多かったが、一方ルックスには賛否が分かれ「胸だけ」という
声もまた多く、その為か仕事の幅はなかなか広がらずにいた。
年齢的にもグラビアアイドルとしては正念場を迎えた形であり、これからこの世界で生き残る為にも大会に賭ける
思いは他の参加者の誰よりも強かった。
この試合でも、敢えてビキニではなく胸元の大きく開いた黒のワンピースでバストを更に強調する理緒であった。

一方のぁみは現在18歳。かつて別名でデビューしていたが、ミス漫画人エントリーに合わせて改名すると同時に、
常にメガネを掛けている「メガドル」として再デビューした。
結果的にはそのキャラクターが大ウケして、グランプリこそ逃がしたものの、多くの「メガネフェチ」からの
大いなる支持を受ける事となり、彼女のイベントは常に大入りであった。
イベント参加者からの「メガネ、萌え〜〜〜」は彼女の代名詞となっていた。
また、あの「朝娘。」プロデューサーつんたにも認められ、CDデビューも既に果たしていた。
彼女にとって、ここまでの総ての成功はメガネに拠る物だと思っており、「メガネを外す時は引退する時です」と
いう発言も、半ば本気で有った。
理緒ともチームメイトのミス漫画人のフットサルチームでも、メガネを掛けたままゴール・キーパーをやっていた。
今日も勿論、真っ赤なビキニとお揃いの赤いフレームのメガネでリングインしていた。
そして…

いつもの通り、レフリーが両者を呼び軽い注意を与えるが、そこでレフリーはメガネを掛けたままのぁみに対し
試合中危険なので、外す様指示を出した。
しかし、それを断固拒否するぁみ。
困ったレフリーが黒服と相談した結果、メガネにレンズが入っていない事と、フレームが充分に丈夫で危険性が
少ない事を確認して、そのまま試合する事を認めた。
ここに、地下リング史上初の覆面レスラーならぬ、「メガネレスラー」が誕生することとなった。
その決定を聞き、満面の笑みを浮かべるぁみ。
そして、観客から起こる「ぁみ」コールと「メガネ、萌え〜〜〜」の掛け声。
会場は、あたかもぁみのイベント会場と化したかの様であった。
しかし反対コーナーの理緒は、表情に不愉快さと苛立ちを隠そうとはしていなかった。

「第三試合、夏芽 理緒 対 時藤 ぁみを行ないます。」
"カーン"

会場のコールを背に勢い良く飛び出したぁみが、理緒のボディにタックルを仕掛け、そのままコーナーへ押込む。
154cmで 85-58-83と理緒より一回り小柄なぁみであるが、スピードが功を奏した。
"ドォーーン!"
コーナーに背中を叩き付けられた理緒に対し、ぁみはキック,エルボーををボディに叩き込む。
"ボスッ,ボスッ"
更にぁみは水平チョップで、理緒の首筋から胸元を狙う。
"ピッシーーン!"
"ピッシーーン!"
このぁみの攻勢に観客からの声援が被さる。
『ぁみちゃん、強〜い』
『どんどん、やっちまえ〜』
『頑張れ〜 そんな○スに負けるな〜』
『メガネ、萌え〜〜〜』
『胸だけ女をやっつけろ〜』
『ぁみちゃんの方が、ずっと可愛いぞ〜』
『メガネ、萌え〜〜〜』
『○スの顔なんて、破壊しろ〜』
『メガネ、萌え〜〜〜』
観客の声援に乗せられたぁみは、理緒のボディに更にキックを叩き込むと理緒をロープに振り、帰った所を
ショルダースルーでリングに叩き付ける。
"ドッスーーーン!"
リングと共に、理緒の胸が大きく揺れる。
ぁみは理緒の首筋にギロチンドロップを落とすと、早くもフォールの体勢に入る。
「ワン、ツー」
しかし、ここは理緒がカウントツーで簡単に撥ね返す。
先に立上がったぁみが理緒を引き摺り起こそうとするが、理緒が下から地獄突きをぁみの喉元へ叩き込む。
"ドンッ!"
この一撃でぁみの動きが止まる。
理緒は起き上がると、地獄突きをもう一発ぁみの喉元へ叩き込む。
"ドンッ!"
「グッ!」
理緒はその場に座り込んだぁみを立たせると、コーナーへ叩き付ける。
"ドスーン!"
コーナーを背負ったぁみに、理緒のボディアタックが炸裂する。
"バスーーーン!"
ぁみの顔が理緒の巨大なバストとコーナーにサンドイッチとなり、見えなくなる。
理緒は両手でロープを掴むと、そのままバストをぁみの顔に押付け窒息攻撃を仕掛ける。
「ムゥ……………」
呼吸出来ない辛さに、足をジタバタさせるぁみ。
「ブレイク!」
ここはロープを使った攻撃と言う事で、レフリーがブレイクを掛ける。
すんなりブレイクした理緒はリング中央に戻ると、右手を上げて観客にアピールするが反応は薄く、むしろぁみへの
声援が一段と大きくなった。
アピールを諦めた理緒がぁみの方向へ歩を進めた瞬間、ぁみが立ち上がり理緒のボディにタックルを入れた。
"ドォーーン!"
そしてそのまま理緒をダウンさせると、馬乗りになる。
上になったぁみは理緒の顔面に張り手、或いはエルボーを狙うが、理緒もしっかりとガードし決定打は与えない。
ならばと、ぁみは理緒の左腕を取ると腕ひしぎを狙うが、これも理緒はしっかりガードする。
暫く膠着状態が続いたが、ぁみは理緒の左腕を外すと素早く立上がり理緒の胸元からボディにキックを浴びせ掛ける。
そしてぁみは自らロープへ飛ぶと、ジャンプ一番ダブルフットスタンプを叩き込む。
"ドスッ!"
更にぁみはその場でジャンプすると、エルボーを理緒のバストに突き刺す。
"ドウンッ!"
その弾力に驚くぁみであったが、痛がる理緒をそのまま押さえ込む。
「ワン、ツー…」
しかし、ここもカウントツーで理緒が撥ね返す。
残念がるぁみと観客達。
ぁみは理緒の水着を掴んで立たせる。
これにより、理緒のバストが水着からこぼれそうになり、観客からの歓声が上がる。
理緒を立たせたぁみは、理緒の顔面に張り手を叩き込む。
"パッシーーン!"
観客からまたまた歓声が上がるが、この一撃は理緒の怒りに火を付けた。
二発目を狙ったぁみの腕をガードすると、逆にぁみの顔面を張り飛ばす。
"バッシーーーン!"
この一撃でダウンしたぁみを理緒は強引に立たせると、コーナーへ運び両腕をコーナーに固定した。
そして無防備となったぁみの顔面を連続で張り飛ばす。
"バシーン!"
"バシーン!"
"バシーン!"
"バシーン!"
「ブレイク!」
"バシーン!"
"バシーン!"
レフリーの声も無視して張り手を連発する理緒に観客から激しいブーイングが起こり、レフリーは身体を呈して
ブレイクを掛ける。
「ブレイク!」
ようやく、ぁみから離れた理緒は再度リング中央で手を上げ観客にアピールするが、帰ってきたのは一段と大きな
ブーイングと罵声であった。
『ぁみちゃんに何するんだー!』
『そんなに可愛い顔が嫌いなのかー!』
『どうせ、お前は胸だけなんだよ!』
『○スは大人しく、引っ込んでろ!』
『自分の顔を張り手しろー!』
その観客の反応に怒り狂う理緒。
そしてその怒りは、顔面を真っ赤に腫らし、口中を切ったのか口から血を流しながらようやく立ち上がって来た
ぁみに向けられる。
顔面に痛さを通り越して熱さだけを感じるぁみは、立上がるとまずメガネがちゃんと掛かっている事を確認する。
"良かった、大丈夫…"
しかし、ぁみにホッとしている時間は無かった。
飛び込んできた理緒が、再びぁみの顔面に張り手を叩き込む。
"パッシーン!"
メガネを守ろうと顔面をガードするぁみのガラ空きになったボディに、理緒の膝が叩き込まれた。
"ドスン!"
"ドスン!"
「グエッ…!」
逆流する胃液に苦しむぁみのガードが下がった顔面に、またしても理緒の張り手が炸裂する。
"バッシーーーーン!"
この一撃でぁみが仰向けにダウンする。
ぁみに馬乗りになった理緒は、ぁみのメガネを外そうと手を掛ける。
それに気付いたぁみは、大暴れしながら叫ぶ。
「ヤメテーーーーー! メガネは取らないで!」
「ふざけるなっ! 何が、メガネ、メガネだっ!」
「メガネは私の命なのー! 取らないでーーーー!」
必死にメガネを守るぁみに対し、理緒は立上がるとボディから胸元を蹴りまくる。
そしてジャンプすると、膝をボディに落とす。
「グエッ! ウプッ!」
この一撃で、遂に口から血混じりの胃液を吐き出すぁみであったが、あくまでメガネを守ろうと顔面のガードは
崩さなかった。
理緒はぁみの髪の毛を掴んで引き摺り起こすと、再度ボディに膝を叩き込む。
"ボスッ!"
「グエッ…!」
胃液を吐きながらそのままうつ伏せに崩れ落ちたぁみに対し、理緒はキャメル・クラッチを仕掛ける。
最初はぁみのアゴに両手を掛け、その身体を反らせていた理緒であったが、暫くして片手を外すとまたしてもぁみの
メガネを外しに掛かる。
身体を反らされ身動き出来ぬぁみであったが、自由になる頭を振って必死にそれを防ぐ。
「ヤ・メ・テ… それだけは…」
この期に及んでもメガネを守ろうとするぁみに、理緒がキレた。
「いい加減にしろーーーーー!」
ぁみのアゴから手を外した理緒は、ぁみのビキニブラのホックを外すとそのまま強引にむしり取った。
そして再度キャメル・クラッチを仕掛け、ぁみの上体を反らす。
それと共に、反らされた分平坦になったぁみのバストが観客の目に曝される。
背骨の痛さと恥ずかしさに耐えるぁみであったが、レフリーの「ギブアップ?」の声には頷かない。
ギブアップを取る事を諦めた理緒が技を解くが、ぁみはうつ伏せのまま全く動く事が出来ない。
それでも両手でメガネを守ろうとするぁみに対し、理緒はそのビキニパンツに手を掛けた。
観客が呆気に取られる中、理緒はためらう事も無くぁみのパンツをむしり取る。
そして理緒は、全裸としたぁみの身体をうつ伏せから仰向けに反転させると、両足を取った。
そして、そのままジャイアント・スウィングで振り回す。
振り回されながらも、メガネが飛ばない様押さえるぁみ。
そして約10回転の後、ぁみの身体がリングに叩き付けられた。
"ドスーン!"
自らも目が回った理緒であったが、半失神状態で大の字となったぁみに馬乗りになると、またしてもその顔面に
張り手を連発する。
"バシーン!"
"バシーン!"
"バシーン!"
"バシーン!"
観客からの激しいブーイングの中、全裸で無抵抗のぁみの顔面を張り続ける理緒。
その時ゴングが鳴った。

"カーン"

「只今の試合は、レフリーストップで夏芽 理緒選手が勝ちました。続いての選手、リングに上がって下さい。」
このままでは危険と判断したレフリーがストップを掛けたのであった。
レフリーと飛び込んできた黒服によりぁみの上から理緒が強引に降ろされ、完全失神状態でメガネとシューズだけを
身に付けたぁみがタンカで運ばれて行く。
そして、レフリーに手を上げられた理緒に対しては、観客から一段と激しいブーイングと罵声が浴びせ掛けられる。
更にその罵声は、いつしか「ブ○」コールへと変わっていく。
『ブー○!』
『ブー○!』
『ブー○!』
『ブー○!』
その中を興奮状態で控え室へと戻って行く理緒。
一方、観客席でその試合を見ていた理緒の次の対戦相手北野 きいは、自分が次はああされるのか、という恐怖で
腰が抜けた様になり、暫く席を立つ事が出来なかった。

会場が落着かない中、次の対戦となる原多 桜怜と古林 ユリが入場してきた。

桜怜は現在20歳。ミス漫画人に選ばれデビューした直後に山元 早織等にスカウトされ、「タプピンク」として既に
地下リングではお馴染みである。特に朝娘。との対抗戦での5人抜きは大きな話題となっており、今回も本命視する
者が多かった。
158cmで 97-60-88という公称で有るが、最近更に巨乳化が進んでおり優に1mオーバーでは無いか、とも言われて
いるが、その反面あまりにも現実離れした巨乳振りに「偽乳」或いは「虚乳」疑惑も一部で起こっているのが、
彼女の悩みでもあった。また、ここまで実質負け知らず (唯一の敗戦が、梨華戦の意識的反則負け)ではあるが、
所謂「実力者」との対戦が殆ど無く、その実力に関しても一部では疑問の声が上がっていた。
それら総てを吹き飛ばす為にも初の一人での闘いとなる今回の大会に掛ける思いは強く、童顔に気合いを滲ませる
桜怜であった。

一方、対するユリは18歳。150cmと小柄ではあるが、94-60-86と昨年の最終候補者の中ではずば抜けた巨乳であった。
とは言え現在に至るまでは、多くの巨乳アイドルの中でなかなか自分の個性を出せず、苦戦が続いていた。
現状を打破する為にも今回は絶好のアピールの場であり、特に目の上のタンコブ的存在である桜怜や理緒への意識は
強い物が有った。
しかしながら、巨乳をアピールする為と選んだ胸元の大きく開いた白いワンピース水着も、前の試合での理緒の
二番煎じ的な印象を観客には与えてしまっており、アピールの為には試合内容しか無かった。

レフリーの注意を受ける為にリング中央に二人が呼ばれると、顔をぶつける様に睨み合う二人の顔より先に両者の
バストがぶつかりあい、観客から大きな歓声とどよめきが上がる。

「第四試合、原多 桜怜 対 古林 ユリを行ないます。」
"カーン"

「ウォーーー!」
大声で気合いを入れたユリはグッと重心を落とすと、桜怜のボディにタックルを仕掛ける。
"ガスンッ!"
しかし、桜怜も足を踏ん張って堪え倒れない。
何とか押込もうとするユリに対し、桜怜はユリの両腕を上からカンヌキに極め、重心を引き上げる。
パワーで勝る桜怜により、徐々にユリの上体が起きていく。
そして、桜怜はユリの身体をそのまま横に振り、リングに叩き付ける。
"ドッシーーン!"
そのまま馬乗りになろうとする桜怜であったが、ユリは転がる様にコーナーまで逃げる。
腕を押さえながら立上がったユリは、前屈み気味に重心を落とし飛び込むチャンスを狙う。
前屈みになった分、ワンピース水着の胸元からユリの見事な谷間が見え、観客から歓声が起こる。
ユリは再び桜怜の足元へ飛び込むと、今度は太ももへタックルを狙う。
しかし桜怜は倒れず、上から体重を掛けユリを押し潰す。
"ドスン!"
「グエッ…」
うつ伏せに押し潰されたユリの口から思わず変な声が出る。
立上がった桜怜は、軽くジャンプをするとエルボーをユリの背中へ落とす。
"ドッスーン!"
その衝撃で、リングと共に桜怜のバストが揺れる。
桜怜はユリを立たせるとロープへ振り、カウンターのエルボーを狙う。
しかし、ユリもここは体勢を低くしてエルボーを掻い潜ると反対のロープまで飛び、その反動で桜怜のボディに
タックルを入れる。
"ドッスーーン!"
体勢が充分に取れていなかった桜怜が、ユリの勢いに負けそのまま下になる。
上になったユリは何とかマウントポジションを取ろうとするが、桜怜もそれは許さない。
マウントを諦めたユリは腰を浮かすと、ヒップドロップを桜怜のボディに落とす。
"ボスン!"
更にもう一発狙うユリであったが、重心を浮かせた瞬間を桜怜は狙っていた。
身体と腕を上手く使ってユリを横方向にずらしダウンさせると、逆に自分が上になり袈裟固めの体勢を狙う。
一回り大柄な桜怜に圧し掛かられ身動き出来なくなったユリであったが、必死に暴れ何とか足をロープへ伸ばす。
「ブレイク!」
レフリーの声に応じて立ち上がった桜怜は、余裕の表情でリング中央へ戻る。
一方のユリはロープを掴みながら荒い息でようやく立ち上がったが、その目はまだまだ死んではいなかった。
「ファイト!」
レフリーの声に、ユリは再び重心を低くして構える。
そしてユリは思いっきり踏み込むと、ジャンプしてドロップキックを桜怜の胸元に叩き込む。
意表を突かれた桜怜が、これにはダウンする。
素早く立上がったユリは、キックを桜怜の見事に隆起したバストを中心に叩き込む。
「イタッ!」
流石の桜怜もこれは痛がる。
ユリは桜怜を立たせると、コーナーへ叩き付ける。
"ドッカーーン!"
リングが大きく揺れ、その揺れの中重心を落とし走り込んだユリの肩が桜怜のボディに炸裂する。
"ドスッ!"
更にユリは大きく振り被ると、水平チョップを桜怜のバストへ叩き込む。
"ボスーーン!"
「イタッ!」
続け様のバストへの攻撃に、胸を押さえて痛そうな表情を見せる桜怜。
ユリは桜怜の腕を取ると反対コーナーへ振ろうとする。
しかし、桜怜が上手く体を入れ替え、逆にユリの背中がコーナーポストに叩き付けられた。
"ドスーン!"
再び、リングが大きく揺れる。
ゆっくりとコーナーに近付いた桜怜は、ユリを立たせるとベアハッグに捕えた。
「アーーー…」
痛がり何とか逃れようとするユリの身体を浮かせた桜怜は、そのままユリの背中をコーナーに叩き付ける。
"ドッスーーーン!"
コーナーに尻餅を付いたユリの上に桜怜のヒップが落ちてきた。
"ドスン!"
「グエッ…」
更に、もう一発。
"ドスン!"
「…」
桜怜は、声も無く苦しむユリを軽々と持ち上げるとボディスラムでリング中央に叩き付ける。
"ドッスーン!"
桜怜はダウン状態のユリの上に圧し掛かると、首と腕を極め袈裟固めの体勢になる。
桜怜の体重を掛けられ、動けなくなったユリの意識が段々遠ざかって行く。
"クソッ! まだ、負けてたまるか!"
弱くなりつつある意識を奮い立たせたユリは足をバタつかせ、何とか押さえ込まれた上半身を自由にしようとする。
激しく暴れるユリに桜怜も押さえ込みきれなくなり、遂にユリが強引に抜け出した。
そのままコーナーまで転がる様にエスケープしたユリであったが、呼吸は荒く暫く動くことは出来なかった。
そのユリのコーナーへ桜怜が迫る。
気配を感じたユリがロープを掴んで必死に立ち上がり、桜怜と対峙した。
このユリに対し、観客から大きな歓声が起こるが、それはユリの健闘を称える物だけでは無かった。
桜怜の下で激しくもがいたことによりワンピース水着の肩紐がずれ、片方のバストが剥き出しになっていたのである。
「ユ、ユリちゃん…」
これには桜怜が慌てた。
試合中という事も忘れ、ユリの水着を注意する。
ユリはそのスキを逃がさなかった。
緊張感の切れた桜怜のボディにバスト剥き出しのままタックルを入れると、虚を突かれた桜怜が仰向けにダウンする。
"ドスーン!"
この一撃で後頭部を打った桜怜に対し、ここがチャンスと見たユリはギロチンチョークを狙い、腕を桜怜の首筋に
押付ける。
"勝ってやるー!  "タプレンジャー" が何だー!"
その苦しさに桜怜の意識も戻った。
"クソッ! タプレンジャーは諦めない!"
必死に極めようとするユリの腕を下から持ち上げようとする桜怜と、負けずに全体重を掛け極めようとするユリの
意地がぶつかり合う。
余力の総てをぶつけたユリであったが、流石にパワーでは桜怜が上回り、徐々にユリの重心が浮いてくる。
「ウォーー!」
桜怜が気合いを入れ、ユリを払いのける。
「ハァハァ…」
共に暫くダウンしたままであったが、総ての力を使い果たしたのか起き上がれぬユリよりも、桜怜が先に立上がる。
まだ片方のバストを剥き出しにしたままのユリを起こすと、そのボディにヒザを叩き込む。
"ドスッ!"
「グエッ!」
倒れそうになるユリの首を捕えた桜怜は、ユリの身体を垂直に担ぎ上げる。
そしてそのままの角度でリングに叩き付けた。
桜怜最大の必殺技、垂直落下式DDTであった。
"ドスーーン!"
大の字になったユリに桜怜が覆い被さる。
「ワン、ツー、スリー」
"カーン"
「只今の試合は、フォールで原多 桜怜選手が勝ちました。続いての選手、リングに上がって下さい。」

勝った桜怜はレフリーに手を上げられる前に、失神状態のユリの水着を直してやる。
ユリの健闘を称えると共に、試合中にスキを見せ、危ない状況を作ってしまった自らのファイトを反省する桜怜で
あった。

一方、観客席でその試合を見詰める次の対戦相手和喜 沙也の隣では、大きな影がアドバイスを送り続けていた。

そしてリング上では二回戦が始まろうとしていた。

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