『ミス漫画人-5』

後日行なわれる準決勝へまずは背戸 早妃と山咲 真実が名乗りを上げ、リング上ではベスト4の3番目を決める
闘いが始まろうとしていた。
まずリング上に、一回戦で「メガドル」時藤 ぁみを全裸KOした夏芽 理緒が上がったが、その姿には観客からの
大きなブーイングと「ブ○」コールが浴びせ掛けられていた。
それに最初は戸惑いと怒りを感じていた理緒であったが、それが徐々に興奮と怒りに変わって行った。
"ブ○で悪かったわね!
 何がアイドルよ、みんなブッ潰してやる! 
 きい、さっさと出て来い!"

だが対戦相手の北野 きいは、なかなか花道に現れなかった。
理緒のイライラが更に募る中、紺色のスクール水着のきいが二人の黒服に両脇を抱えられ引き摺られる様に、
いや小柄な身体を完全に引き摺られながら花道に現れた。
きいは今回の参加メンバーでは最年少の15歳('06年4月当時)で、'05年度のグランプリ受賞者である。
155cmと小柄で、80-58-81とまだまだ子供に近い体型で、グランプリ以降は水着グラビアも少なく女優路線を
目指していた。
今回は状況が良く理解出来ず、TVバラエティのノリで参加してきたが、目の前で起こる激しい試合の連続、特に
自分の相手となる理緒の凄まじいファイト振りにすっかり怖気付いていたのであった。
理緒とぁみの試合後会場から逃げ出そうともしたが、それが叶う筈も無く試合時間になっても控え室にずっと
篭っていたのだが、黒服たちによって引き摺り出されたのであった。
尻込みするきいが黒服たちにより無理矢理リングに上げられたが、きいは転がってリング下へ降りると花道を
帰ろうとする。
逃げようとするきいを捕まえた黒服は、今度は両脇を抱えたまま一緒にリングに上がる。
離すと逃げ出しそうな雰囲気を感じた黒服はレフリーと相談すると、観客をリング下に入れた。
いわゆる「ランバージャック・デスマッチ」方式で、きいを逃げ出せない様にする狙いであった。
「逃げ出しても、リングに戻すからな!」
そう念押しをした黒服たちはきいをリング上に残すと、自分達も観客と共にリング下に陣取った。
これは観客達が必要以上の事をするのを制止する目的も有るのだが、アイドルの身体に触れるチャンスとばかりに
目をギラギラさせる観客達の様子には、黒服たちも不安を感じていた。

リング上に残されたきいは、正面には自分を睨みつける理緒、そしてリング下には興奮状態の観客達を見て、
もはや絶望感に捕われていた。
"どうすればいいの? 誰か、助けて!"

「第七試合、北野 きい 対 夏芽 理緒を行ないます。」
"カーン"

ゴングが待ちきれないとばかりにコーナーから飛び出す理緒に対し、きいは立ち上がるとロープづたいに右へ
右へと回り始めた。
逃げ回るきいを捕まえようとする理緒であったが、大きな胸が邪魔をするのか軽快に動くきいを捕らえる事が
出来なかった。
「逃げるな! このヤロー!」
怒鳴る理緒の大声に一瞬、きいが立ち竦んだ。
そこへ理緒がラリアット狙いで、右手を伸ばして襲い掛かる。
「キャーーー!」
その迫力に、きいはその場で腰を落とす。
そのタイミングが良く、突っ込んだ理緒が屈んだきいの上に乗ってしまった。
「エイッ!」
そのままきいが立ち上がると、ちょうどショルダー・スルーの様に理緒の体がきいを飛び越えて、ロープ越しに
場外まで転落してしまった。
"ドスン!"
『オーーーー!』
転落した理緒に、リング下の観客たちが群がる。
本来はリングの中に押し上げる役割なのだが、そんな事は無視して観客達は理緒のJカップ巨乳や引き締まった
ヒップに手を伸ばす。
黒服たちも慌てて駆け寄ろうとするが、それより早く理緒が叫んだ。
「何するんだ! このヤロー!」
胸を触っていた観客を下から蹴り上げると、素早く立ち上がり、近付いてきた観客達に次々に張り手を入れる。
その勢いに押された観客達は理緒から離れ、理緒はその中を観客を睨みながらリングへ上がって行った。
「よくも、やってくれたわね! 今度はあんたを下へ落としてやるからね!」
叫ぶ理緒に、更に恐怖と絶望感を高めるきい。
迫ってくる理緒の迫力に押される形で、きいが今度は正面から組み合った。
身長はあまり変わらないが身体の厚みと迫力では理緒が圧倒しており、そのままコーナーまで押し込んでいく。
"ドォーーン!"
「ウッ!」
背中をコーナーポストに叩きつけられ一瞬呼吸が止まって苦しむきいに対し、理緒はキックを連発する。
"ドスッ!ドスッ!"
レフリーのロープブレイクが掛かるが、この数発だけで、きいは戦意を喪失してしまっていた。
誰かに助けて欲しい、とばかりに涙目でリング下の黒服やレフリーを見るが、無論その願いに応える者はいない。
その様子を見て、理緒は更に興奮してきた。
"何だ、この情けなさは! これで、グランプリかっ!"
理緒はレフリーの制止を無視して、きいにキックを連発する。
更にきいを立たせると、腰投げでリング中央へ叩き付ける。
"ドスーン!"
「ウウッ!」
きちんと受身が取れなかったきいは再び呼吸がつまり、うめき声を上げるだけだった。
理緒はきいの両足を取ると身体を反転させ、逆エビ固めに捕らえる。
「キャーーー! ギ・ギ・ギブ…」
あっさりギブアップしてしまいそうなきいに対し、理緒の気持ちが動いた。
"情け無い! やっぱり、同じ目に合せてる!"
理緒は逆エビの体勢を解くときいを立たせ、水着を掴むと場外へ放り投げた。
場外へ落ちたきいに対し、観客達が群がりそのスクール水着に包まれた身体を触りまくる。
「キャーーーー! ヤメテーー! 助けてーー!」
観客達を圧倒した理緒と違い、悲鳴を上げて逃げようとするだけのきいに観客達が追いすがる。
ワンテンポ遅れて到着した黒服たちが観客を制止し、きいをリングへと上げる。
半泣きになりながらリングに上がったきいに、今度は理緒が襲い掛かる。
"バシーーン!"
無防備なきいにラリアットを叩き込みダウンさせると、今度は反対側の場外に叩き落す。
「キャーーーーーーー!」
興奮状態の観客達に身体中を触りまくられ、きいは逃げる事も出来ずただ身体を固くするだけであった。
再び黒服たちによって観客からは救出されたきいであったが、理緒の待つリングに上げられるだけであった。
完全に戦意を喪失し、ベソをかきながら身体を固くしているだけのきいに理緒が容赦なく襲い掛かる。
強引にきいを立たせると、そのボディに膝を連続で叩き込む。
"ボスッ!ボスッ!"
うつ伏せに崩れ落ちるきいの背中に乗った理緒は、その首を捕らえキャメル・クラッチを極める。
「ウーー… ウーー…」
『ギブアップ』を口にしたいきいだが、身体が反らされてその言葉が発声出来ず、うめく事しか出来ない。
この状況に観客からは『可哀想』という声も有ったが、同時に一部の興奮した観客から『脱がせ』コールが起こり
始め、いつしか会場全体がそのコールに包まれた。
『脱がせ!』
『脱がせ!』
『脱がせ!』
そのコールを聞いた理緒に、観客の興奮が乗り移った。
完璧に極まっていたキャメル・クラッチの体勢を崩すと、無抵抗のきいの水着の肩紐を掴むと腰の辺りまで引摺り
下ろし、まだ未成熟なバストを観客の目に曝す。
そして理緒は上半身剥き出しのきいをフル・ネルソンに捕らえるとそのままスイング・ネルソンの要領で一周し、
四方の観客にそのバストを見せ付ける。
「………………………………」
「………………………………     ギブアップーーーーーーーー!」
暫らくはあまりの事に言葉を失っていたきいであったが、必死に叫ぶ。

"カーン"
「只今の試合は、ギブアップで夏芽 理緒選手が勝ちました。続いての選手、リングに上がって下さい。」

圧勝してレフリーに手を上げられ誇らしげな理緒に対し当初は歓声を送っていた観客であったが、その傍らで黒服に
バスタオルを掛けられ、顔を押さえたまま声も無く泣きじゃくっているきいの姿に同情したのか、徐々にその声は
理緒に対する非難に変わっていった。
そしていつしか再び巻き起こる「ブ○」コール。
「ブー○!」
「ブー○!」
「ブー○!」
「ブー○!」

その中を理緒は興奮状態で引き上げていき、一方のきいは肉体より精神的なダメージの為歩く事が出来ずタンカで
医務室へと連れられていく。

それと入れ替わるように、お馴染みのピンクのスポーツビキニの桜怜が入場してリングに上がる。
そして反対側の花道からは二人が入ってきた。
一人は試合に登場する和喜 沙也であったが、その後ろに付く大柄な人物の正体に観客達が騒ぎ出した。
『誰だ、あれは?』
『随分デカいけど、マネージャーか?』
『いや、女性だ!』
『輪田 アキ子だ!』
『そうだ、輪田だっ!』
『輪田だっ! 史上最強の暴君だっ!』

そう、沙也のセコンドとして入ってきたのはかつてこの地下リングで無敵を誇り『地下リング史上最強の暴君』と
までうたわれた輪田 アキ子であった。
一年近く前に一度カムバックしたものの、その試合でタプレンジャーの前身とも言うべき早織,明日香,綾乃に
襲われてKOされ、それ以降はリングへの登場は避けていたが、その際にパートナーであった宮路 真緒を短期間で
実力者へと鍛え上げたコーチング能力も高く評価されていた。
今回事務所の後輩である沙也の相手がその三人の仲間である桜怜になる可能性が高い事から、間接的なリベンジも
考え沙也を鍛えると共に、セコンドとして登場したのであった。
沙也としてはその存在は大きく、地下リング初登場とは思えぬ堂々とした入場であった。
沙也は22歳('06年4月当時)。02年度のミス漫画人グランプリ受賞者である。
受賞以前からプロダクションには在籍していて関西限定で活動しており、グランプリ受賞により全国区へとその
活動を広げようとしたが、『アイドル史上最悪』とまで言われた歯並びがそれを邪魔した。
その後歯並びを矯正して本格活動を開始。現在ではバラエティを中心に人気者となっているが、その矯正には
『ファイトには歯が重要』という意味合いも有った事は、彼女自身は知らなかった。

一方の桜怜は早織たちと輪田の因縁を知らなかったことも有り、リング上で戸惑いを隠しきれなかった。
"何で輪田さんがいるの…? 沙也ちゃんって、そんなに強いの?"

「第八試合、和喜 沙也 対 原多 桜怜を行ないます。」
"カーン"

沙也以上にセコンド輪田の存在が気になり桜怜は得意の先制攻撃を仕掛ける事が出来ず、ゆっくりとリング中央に
向かう。
桜怜の158cm 97-60-88(+α?)に対し、沙也は160cm 84-58-83と身長では僅かに上回るものの、身体の厚みと
パワーでは全く勝負にならない。
沙也は格闘スタイルで、正対を避け桜怜の周囲を回りながらローキックを狙う。
"パシン"
"パシン"
桜怜もそれをしっかりガードして、足へのダメージを防ぐ。
沙也は顔面パンチで一つ牽制を入れると、桜怜の足元へ飛込み片足タックルを狙う。
しかし、桜怜も重心を落とし上からタックルを潰しに掛かる。
ここはタックルを諦めた沙也は、桜怜の足を放すと潰されない様素早く横へ逃げる。
更に桜怜の後ろへ回りこんだ沙也は、四つんばい状態の桜怜の背中に密着するとスリーパーを狙う。
桜怜も、その沙也の腕を掴みスリーパーは許さない。
ならばと沙也は両足を桜怜の両足に絡めると、桜怜を完全に腹ばいの体勢に追い込み、その後頭部へエルボーを
落とす。
"ガツン!ガツン!"
それを嫌った桜怜は腕の力で身体を移動させロープへと逃げる。
「ブレイク!」
レフリーの声で桜怜の背中から飛び降りた沙也は素早くリング中央へ戻ると、再び格闘スタイルを取る。
桜怜も立ち上がりこちらはプロレス流のファイティングポーズを取り組み合おうとするが、それを嫌う沙也は
動きながらローキックで牽制する。
"ピシン!"
沙也のローキックが桜怜の太ももに命中し、桜怜がバランスをちょっと崩した瞬間沙也が飛び込んだ。
慌てて繰り出した桜怜のパンチをかわし後ろに回り込んだ沙也は、足を上手く絡めると桜怜を腹ばいにダウンさせ、
その背中に飛び乗り身体を密着させ、再度後頭部へのエルボーを叩き込む。
その体勢を嫌う桜怜は身体を反転させるが、それが沙也の狙いであった。
仰向けになった桜怜に乗った沙也は両足を上手く使い、マウントポジションを取る。
そして上からのチョップを桜怜の顔面、更に首筋へと叩き込む。
"バシッ!"
"バシッ!"
"バシッ!"
"バシッ!"
"バシッ!"
桜怜もガードしながら下からのパンチ,チョップを狙うが、体重が乗らず威力は小さい。
この体勢での反撃を諦めた桜怜は顔面のガードを固めると、絡められた足を解き体勢を崩すことを狙う。
ようやく足のフックを外した桜怜はパワーを活かして下から沙也のバランスを崩して、マウントポジションから
逃げる。
桜怜はそのまま場外へ逃げ、ダメージの回復と体勢の立て直しを狙う。
一方の沙也はここは深追いせず、自らのコーナーへ戻るとセコンドの輪田からのアドバイスに耳を傾ける。
大きく深呼吸した桜怜はリングへ戻り、格闘スタイルの沙也に対し自らも格闘スタイルを取る。
相変わらず回りながらのローキックを狙う沙也に対し、桜怜はキックをガードしながら早織ばりの嘗底を見せながら
前進し、沙也をコーナーへ追い込もうとする。
桜怜の圧力に徐々にコーナーに追い詰められた沙也であったが、桜怜の打ち込む嘗底を寸前交わすと桜怜の側面へ
飛込み、ダウンさせるとそのまま逆さ押さえ込みを狙う。
「ワン、ツー、ス…」
不意を突かれた桜怜もここは跳ね返す。
桜怜のバックを取った沙也はスリーパー狙いで、腕を桜怜の首筋へ差し込もうとする。
桜怜もそうはさせじと、その腕を掴み力比べの体勢となる。
力比べでは不利と見た沙也は膝を桜怜のヒップから腰へ叩き込む。
更に桜怜の後頭部へ頭突きを叩き付ける。
"ガツーン!"
これで一瞬桜怜のパワーが落ちる。
自身もその衝撃で眩暈を感じた沙也であったが、ここがチャンスと見てスリーパーの体勢を完成させると、桜怜に
しがみ付きながら全力で絞り上げる。
"クッ!"
不利な体勢となった桜怜はロープブレイクを狙うが、距離が有る為諦め沙也にしがみ付かれたまま立ち上がる。
そしてそのまま後方へ倒れ込む。
"ドスーーーン!"
この桜怜の苦し紛れの反撃が功を奏した。
二人分の体重を受けて息が詰まった沙也の手から力が抜け、スリーパーの体勢が崩れる。
しかし、桜怜もダメージが大きくそのまま場外へエスケープする。
場外で呼吸を整えながら反撃の作戦を考える桜怜であったが、沙也の予想以上の実力に考えがまとまらない。
それでも "タプレンジャーは逃げない!" とばかりにリングへ上がると、コーナーで構える沙也にタックルを
仕掛けた。
その思い切った攻撃に虚を付かれた形となった沙也は逃げ切れず、桜怜のタックルを喰ってしまった。
"ドガーーン!"
沙也の背中がコーナーポストに激しく叩きつけられる。
「サヤーーー!」
ここまで余裕の表情で戦況を見守っていた輪田が、初めて叫んだ。
"チャンス!"
ここをチャンスと見た桜怜は、コーナーを背にした沙也に対しロープを掴んでのショルダー・タックルを叩き込む。
更に反転すると、コーナーに崩れ落ちた沙也の身体にヒップドロップを落とし、そのまま体重を掛ける。
「ブレイク!」
レフリーのブレイクの声で立ち上がった桜怜は沙也を立たせると、腰投げでリング中央へ投げ飛ばす。
"ドッスーン!"
大の字になった沙也に対し、走り込んだ桜怜はエルボーを落とす。
"ドスン!"
そして、そのままフォールの体勢に入る。
「ワン、ツー、ス…」
しかし、沙也もスリー寸前肩を上げフォールは許さない。
沙也を再び立たせた桜怜は、沙也をコーナーへ振る。
"ドッスーン!"
そしてコーナーに棒立ちになった沙也に、ラリアット狙いで走り込む。
"貰ったーー!"
しかし次の瞬間、軽くサイドステップを踏んだ沙也は桜怜の振りかざした右手を避けると、その腕を取り脇固めの
体勢に入っていた。
「ヨッシャーーー!」
リング下で、手を突き上げる輪田。
トレーニングで散々やったパターンが、ここで綺麗に決まったのであった。
沙也の華麗な動きに観客からも歓声と拍手が起こる。
一瞬にして右腕を決められた桜怜は、何が起こったか暫らく理解出来なかった。
しかし痛みに現実感を取り戻すと、必死に近くにあるロープに左手を伸ばす。
「ブレイク!」
レフリーの声に技が解かれたが、右肩を押さえる桜怜に沙也が襲い掛かりローキックを連発すると、更に再度の
脇固めを狙う。
「チャンスだ! 行けー! サヤー!」
輪田の応援に応える様に沙也は桜怜の右腕を取ると、強引に引きずり倒し脇固めの体勢を極める。
「原多、ギブアップ?」
「ノー、ノー!」
レフリーの問い掛けに桜怜が叫ぶ。
"くそー! タプレンジャーは諦めない!"
技を極められ下になりながらも、桜怜は必死に動き回る。
その動きに徐々に技が崩れ、その隙にパワーを活かした桜怜がロープへ逃れる。
「ブレイク!」
レフリーのブレイクが掛かり、一旦離れた沙也が今度は桜怜の右腕にキックを連発する。
"ガスッ!ガスッ!ガスッ!"
更に再度の脇固めを狙うが、ここはロープに近くレフリーに制止される。
そしてなかなか起き上がれない桜怜に対し、レフリーがKOカウントを始める。
「ワン、ツー、スリー、フォー…」
その声に促される様に立ち上がった桜怜に沙也が襲い掛かる。
"勝てるっ!"
しかし、そこに隙が出来た。
反撃を考えずに突っ込んだ沙也に対し、桜怜のキックがカウンターで入った。
"ガツン!"
その一撃で動きが止まった沙也に、桜怜が左腕のラリアットを身体ごと叩き込んだ。
"バッシーン!"
更に桜怜は休まず、ダウンした沙也にヒップ・ドロップを落とす。
"ドッスーーーン!"
そして桜怜はそのままフォールの体勢に入る。
「ワン、ツー、スリ…」
しかし、沙也も粘りを見せスリーカウントは許さない。
右腕のダメージの大きい桜怜は、沙也を立たせると左腕で首を取りDDTでリングに叩きつける。
"ドガン!"
そして、上四方固めの様に自らの胸を沙也の顔面に押し付けた状態でフォールの体勢に入る。
桜怜の巨大なバストに窒息状態にされた沙也は暫らくもがいていたが、程なくその動きを止めた。
「ワン、ツー、スリー!」
"カーン"
「只今の試合は、フォールで原多 桜怜選手が勝ちました。本日の予定試合は、これにて終了となります。」

喚声とブーイングが相半ばする中、右肩を押さえて立ち上がった桜怜の左腕がレフリーに上げられる。
そしてリング上に輪田が上がり、KO状態の沙也の健闘を称える。
そして輪田は桜怜に近付くとスッと右手を差出す。
一瞬戸惑った桜怜であったが、握手を求められているのだと気付き右手を出そうとするが、脇固めのダメージで
上手く差出せない。
それに気付いた輪田が今度は左手を差出し、それに桜怜も呼応するとガッチリと握手を交わす。
輪田が桜怜に声を掛けた。
「ナイス・ファイト、桜怜。 早織達にも宜しくな。」
「ハ、ハイッ」
輪田と早織たちの関係を知らなかった桜怜は、ともあれ返事する。
桜怜と分かれると、タンカに乗せられた沙也に付き添い喚声の中を戻っていく輪田であったが、以前の試合で
自分を襲った早織たち「タプレンジャー」の事はその後も気になっていた。
沙也の相手がその一員である桜怜になりそうな事を知り、沙也を鍛えることで彼女達が本物かどうか確認する
つもりもあったのである。
そして、この試合での桜怜の力強くそして勝負を決して諦めない試合っ振りに感心して、「タプレンジャー」を
認めたのであった。
"ウチの連中にも、彼女達を見習わせなくちゃいけないな…"
そう思いながら、控え室へ戻る輪田であった。

ベスト4へ勝ち残った早妃,真実,理緒,桜怜は、それぞれに来る試合に備えての準備を始めた。

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