《K−1ベルト調印式》
先日、香理奈はMONSTAR、藤原紀華は笹木希に勝利し勝ち取った待ちに待った両者によるタイトルマッチの調印式が行われた。
既にテーブルに中央に主催者を挟んで、香理奈、紀華が両脇に座っている。
まずはルールの確認が行われた。
・1ラウンド3分×3ラウンド
・1ラウンドで2回のダウンか試合を通して3回ダウンすれば、KO
・3ラウンドで決着が着かなければ判定で決着。
ルールの確認が行われるとトークに入った。
司会:それでは始めたいと思います。まずはこの一戦に賭ける意気込みを聞かせて下さい。
香理奈:私は女王ですけど、紀華さんには挑戦者のつもりで戦いたいと思います。
紀華:最近凄く女優として伸びてきた香理奈から指名を貰えて嬉しいです。
司会:香理奈さん。紀華さんとは身長で6cm、体重は4kgの体格差がありますが、その対策はありますか?
香理奈:男と対戦しても勝てるのでパワーは問題ないです。
司会:香理奈さんはパワーに自信があるようですが、その辺り、紀華さんはどうですか?
紀華:男と女は別なので、女の怖さを教えて上げます。香理奈は勢いはあるけど、時には守る事も大切なのよ。
香理奈:キャリアでは紀華さんに全然敵わないんで、私には勢いしかないです。
紀華:真の“女王”になるにはしたたかさも必要なのよ。
司会:男にも勝てるパワーを持つ香理奈さんと女の怖さを持つ紀華さん。楽しみな一戦となりそうですね。
一般的な調印式に見られるような荒れた展開にはならず、相手への尊敬の念を持って静かな舌戦となった。
印象的だったのは、香理奈が男に勝った実績をアピールしたのに対して、紀華はあくまで女として戦う事を主張した事だ。
香理奈としてはプライベートでも男なんていつでも思い通りになり、力でも勝った事で、自信を掴んでいる。
紀華は香理奈のような時期もあったが、やはり結婚生活が影を落としており、女として強く生きていく事を固く誓っているようだ。又、香理奈にも自分の経験を伝えたいと考えているようだが、調印式では伝わらなかったようだ。
《エキシビジョンマッチ》
タイトルマッチに先立ってエキシビジョンマッチが行われる。
対戦カードはK−1ビューティーマックス準優勝の左藤江梨子と同大会ベスト4の保田美沙子だ。エキシビジョンとはいえ豪華カードとなった。
しかも、江梨子、美沙子ともにグラビアアイドルとあって対抗心もあり、激しい試合が予想される。
『赤コーナー、162cm、82−62−90、保田美沙子〜』
『青コーナー、173cm、90−56−91、左藤江梨子〜』
選手コールが終わると両者はコーナーにもたれかかって試合開始を待っている。
美沙子は赤いグローブに白のパンツ、江梨子は青いグローブに黒のパンツだ。
そして、共にトップレスとあって観客は大興奮だ。
『カーン』
1ラウンドが始まった。
軽くグローブを合せて向かい合う両者。
美沙子はフットワークで様子を窺うのに対して江梨子はリング中央でステイして様子を見ている。
ジャブやローキックで牽制し合う両者だが、それほど大きな動きは無く静かな立ち上がりとなった。
ただ、江梨子がリング中央、美沙子がその周りを動くという展開に変わりは無い。
美沙子は突破口を開こうと動き回るが、江梨子もガードを固くして中々攻めさせない。
かと言って江梨子も自分から前に出ようという気は無く、膠着状態が続く。
そんな中攻勢に出たのはやはり美沙子だ。
小刻みなジャブから一転踏み込んで、左右のワンツーパンチを決めてきた。
これで、江梨子も目が覚めたのか、一気に前に出てきた。
リング中央でパンチを打ち合う両者。
手数では美沙子が上回っているが、身長で11cm上回り、体格も一回り大きな江梨子の方が一発の威力では勝っている。その分を動きでカバーしようとする美沙子だが、打ち合いが長引くに連れて江梨子に捕まりだした。
バシ、バキ、
徐々に後退を余儀なくされる美沙子はいつの間にかロープを背にしていた。
これでは、江梨子の絶好の的になってしまうが、逃れられず、江梨子の打撃を喰らってしまっている。
バキ、
江梨子の右ストレートが美沙子の顔面にヒットすると、美沙子は崩れ落ちた。
流血こそしていないものの顔を真っ赤に紅潮させている美沙子。
江梨子の勢いに押されて一回目のダウンを喫したが、起き上がってファイティングポーズを取った。
『ファイト』
試合が再開されると試合序盤とは一転して江梨子が一気に攻勢に出たのに対して、美沙子はガードを固める展開になる。
江梨子はKOを狙って一気に畳み掛けていくが、美沙子も懸命に耐える。
ドン、江梨子のハイキックが美沙子の側頭部を捉えた。
フラつく美沙子だが、ダウンすれば即KO負けになるので、なんとか踏ん張る。
険しい表情になる美沙子。
このまま江梨子の猛攻を受ければKO負けは免れられないと美沙子もカウンターで江梨子の顔を狙っていく。
江梨子もカウンターがあるので、警戒してあまり前のめりになって攻められない。
それでも江梨子のペースである事には変わり無く、打撃を美沙子に浴びせていく。
美沙子は胸元に汗をびっしょりかいているが、構っている余裕は無い。
ボシュ、美沙子のカウンターが江梨子のバストにヒットした。
一瞬動きが止まる江梨子だが、すぐさま美沙子の顔面を殴り返す。
ドン、
今度は江梨子のカウンターパンチに鼻血を噴き出す美沙子。
打点の高さ、一発の威力では江梨子が一枚も二枚も上回る。
美沙子はスピードとスタミナでカバーしようとするが、コーナーに追い詰められて捕まると、スピードは封じられ、スタミナも削られる厳しい展開となる。
次第に美沙子は江梨子のサンドバックにさせられていく。
『カーン』
ここで1ラウンド終了のゴングが鳴った。
美沙子にとっては救いのゴング、江梨子にとってはもう一歩でという所だが、手応えは十分といった所か。
悠々コーナーに戻った江梨子に対して美沙子はフラつきながらコーナーに帰った。
『カーン』
美沙子にとっては束の間のインターバルが終わり、2ラウンドが始まった。
ゴングと共に前に出る江梨子。
大振りのパンチを打ち出すが、美沙子はフットワークを効かせて躱す。
美沙子はインターバル明けで体力が少しでも戻っているので、ここでリズムを取り戻したい所だ。
バシ、美沙子のミドルキックが江梨子の脇腹にヒットした。
体を捩らせて苦しむ江梨子。
美沙子はチャンスと見て、パンチを軽快に連打していく。
ガード出来ずにダメージを受ける江梨子。
江梨子は胸元に汗をびっしょりかいている。
すると、美沙子は江梨子のバストにパンチを撃った。
グニュ、美沙子の赤いグローブが江梨子のバストに食い込む。
江梨子:あうぅ、、、、やったわねぇ!
江梨子は自慢のバストを攻撃されてスイッチが入った。
今度は江梨子のパンチが美沙子のバストにヒットした。
美沙子もムッとすると、バストへのパンチの応酬が始まった。
グラビアアイドルの商売道具ともいえるバストを殴り合う両者。
どちらのバストが優れているかを賭けるとも言える打ち合いとあって負けられないと意地になる江梨子と美沙子。
グニュ、グニュ、
江梨子も美沙子もバストを真っ赤にさせながら殴り合う。両者とも苦悶の表情になっているが、なんとしてもここは負けられないという思いがある。
グチャ、
美沙子:あああーーーー
江梨子の渾身の一撃が美沙子のバストにクリーンヒットすると蹲ってダウンする美沙子。
やはり一撃の威力は江梨子が勝ったようだ。
美沙子は泣きそうな顔になりながらもなんとか立ち上がったが、バストがパンパンに赤く腫れ上がっているため、治療のためコーナーに戻った。
セコンドの事務所の社長と同僚の熊多曜子、レフリーが状態の確認のため美沙子を取り囲む。
美沙子:ハアハアハア、おっぱいが痛い。
曜子:美沙子、大丈夫?
曜子は氷袋を美沙子のバストに当てて冷やしている。
レフリー:戻れるか?美沙子。社長、判断を。
社長:うーん。これは厳しそうじゃな…。
江梨子:おい、何やってんだよ。てめえの事務所のエースのおっぱいはそんなもんかよ!
江梨子は出てくるように挑発する。
その後ろで黄色いタクシー軍団の社長は勝ち誇るようにニヤニヤして戦況を見守っている。
社長:なんだと〜、まだまだじゃ。美沙子、行くぞ!(あいつには絶対負けられない)
美沙子:(そんなぁ、おっぱいが壊されちゃう…)
曜子:何弱気になってるのよ!社長命令よ!(フフ、美沙子のおっぱいが使い物にならなくなったら私の仕事が増えるわ)
2人に押されて渋々リングに戻ってファイテイングポーズを取る美沙子。
『ファイト』
江梨子は美沙子に詰め寄っていくとパンチを美沙子のバストに連打を撃っていった。
バシバシ、江梨子の電光石火の攻撃に美沙子はガードする事も耐える事も出来ずにバストに喰らってしまった。
仰向けに倒れてダウンする美沙子。
『カーンカーンカーン』
仰向けに倒れている美沙子の赤く腫れ上がっているバストを踏みつける江梨子。
美沙子:いやぁ〜〜、痛い、離して、やめて〜
泣き叫びながらじたばたする美沙子。
江梨子は離すと美沙子を起き上がらせて相手のコーナーに投げ飛ばして美沙子を返した。
江梨子は勝ち誇ってコールを受ける。
『勝者:左藤江梨子』
ガッツポーズで声援に応える江梨子。黄色いタクシー軍団の社長とも握手を交わし満面の笑みを浮かべている。
一方の美沙子は社長に抱えられてリングを去った。
《美沙子控室》
美沙子:なんで、止めてくれなかったんですか?私があんな事になってるのに
社長:すまなかった。つい意地になってしまって…、許してくれ。
美沙子:見たらわかるでしょ。一発喰らっただけでどれだけ痛かった事か…
悪夢のような試合を思い出してしまい、またしても涙が溢れる美沙子。
美沙子:これだけ痛い思いさせたんですからマッサージはちゃんとして下さいよ。
社長:わ、わかったするする。
社長は美沙子のバストを揉み解すと美沙子は気持ち良さそうにしている。
やはり、多くのグラドルを生み出してきた社長とあってバストの扱い方は上手いようで、美沙子を手玉に取る。
その光景を羨ましそうに眺める曜子。
曜子:(ちっ、そんなに社長は美沙子が可愛いのかよ)
グラドルの世界で生き抜くにはバストだけでは無いようだ。
《タイトルマッチ》
エキシビジョンマッチが終わりいよいよタイトルマッチが始まる。
タイトルマッチ独特の緊張感が会場を包み込む。
このK−1ベルトは紀華が創設したもので、女王の香理奈が指名した事により実現したカードだ。
女王・香理奈、挑戦者・藤原紀華だが、キャリアで上回る女帝・紀華に香理奈が挑戦する構図とも言える。
紀華としては最近昇り調子であるものの女優として成熟しきってない香理奈の壁となって手本を示したい。
香理奈としては女王となって防衛にも1度は成功しているものの、紀華を倒してこそ“真の女王”になれると考えており、絶対に勝ちたい所だ。
ここで試合前のそれぞれの控室の様子を覗いてみよう。
《紀華控室》
ベテランの紀華落ち着いた雰囲気で調整を続けている。
パン、パン、パン
紀華:フー、今日もまずまずね。
同郷の後輩・北河景子を相手にミット打ちを終えると椅子に座って休んでいる。
景子:今日も行けますよ。ベルト、獲りましょう!
紀華:もちろんよ。力の差を見せつけて香理奈に恐怖を味あわせてやるわ。
景子:それは楽しみです。
紀華:香理奈は将来のある娘だから、女優としての心構えも示さないとね。
紀華はそう言うと控室を出てリングに向かった。
《香理奈控室》
香理奈:ハアー、
バシ、バシ、バシ、バシ、バシ、バシ、バシ、バシ、バシ
香理奈は先輩の田中麗菜を相手に気合の入ったミット打ちで最後の調整をしている。
香理奈:絶好調ね。紀華さん相手でも勝てるわよ。
麗奈:今日のために必殺技も開発したしね。絶対いけるわよ。
香理奈:技の開発に付き合ってくれてありがとうございました。
麗奈:どうも、でもあの技はリスクが大きいから使うタイミングを間違えたらダメよ。
香理奈:わかってますよ。出来れば使いたくないですけど、ヤバくなったら使います。今日、勝って真の女王は私だっていう事を証明してやるわ。そのために紀華さんを指名したんだから。
勝利への気迫を漲らせる香理奈は意を決してリングへ向かった。
さあ、タイトルマッチを賭けた両者の登場だ。
『青コーナー、171cm50kg、88−60−89、藤原紀華〜』
『赤コーナー、165cm46kg、80−58−88、香理奈〜』
紀華は黒、香理奈は青のパンツで堂々と入場してきた。
両者共にトップレスでの入場で、観客の興奮を誘っている。
紀華も香理奈もタイトルマッチという事で気合が入っており、むしろこの日のために鍛え上げた肉体美を誇示している。
紀華の方が、全体的に筋肉量は多くバランスもいい。
一方の香理奈は紀華に比べると線がやや細いもののバレエをトレーニングに取り入れてるとあって下半身、特に脚の筋肉が発達している。
リング中央で詰め寄って睨みながら互いの体を確認し合う両者。
香理奈:(流石、紀華さん、凄い肉体美だわ。でも私には勝てないわよ。私の鍛え上げた脚で一発KOして上げるんだから。)
紀華:(香理奈も流石に良く鍛えてるけど、相手が私だったのは残念ね。レベルが違うわ。試合が始まればきっとすぐに恐怖を味わう事になると思うけど。)
香理奈、紀華、共に肉体美には絶対の自信を持ってるようで、緊張感が漂う。
『カーン』
ゴングが鳴ると、両者勢いよく飛び出してリング中央でぶつかり合う。
激しくパンチを打ち合う両者。
香理奈、紀華、共に自慢の打撃を披露しようと相手の顔面を狙っていく。
バシ、バキ、バシ、
両者、互角に顔面を殴り合うが、紀華が嫌がって前蹴りで一旦距離を取る。
すると、今度は香理奈はローキックを紀華の太ももに打っていく。
動きを止められる紀華。
香理奈は勢いに乗って前に出ると紀華の顔面にパンチを打つ。
バシ、
しかし、紀華も打ち返してくる。
紀華は顔面を殴られてスイッチが入ったのか、怒りの形相で香理奈の顔面にパンチを打っていく。
再び、顔面へのパンチへの応酬になると、紀華のパワーが勝るようで徐々に香理奈を押していく。
香理奈はガードを固めるが、顔を殴られて苦しい表情になる。
紀華のパンチの方が、重量感がありそうだ。
香理奈:(くっ、強いわね)
紀華:(フフ、まだまだこれからよ)
香理奈はこのままではと紀華の脇腹にミドルキックを打っていく。
これには紀華も体を捩らせて苦しむ。
香理奈は距離を取ってローキックを打っていく。
紀華もローキックを打ち返すが、香理奈の鍛えられた美脚が躍動している。
紀華は香理奈のローキックを嫌がって前に出てパンチを打とうとするが、今度は香理奈が前蹴りで距離を取って近づけさせない。
香理奈は女帝・紀華相手に上手い試合運びを見せる。
しかし、百戦錬磨の紀華はそれでも香理奈の隙を見逃さずに踏み込んできた。
またしても至近距離から打ち合う両者。
バシ、バキ、ドス、バシ
打撃自慢の両者が真正面から打ち合っていく。
重量戦車の紀華が徐々に香理奈を押し込んでいくが、香理奈もガードを固めてカウンターを狙う。
バシ、香理奈のカウンターの左フックが紀華の顔面にヒットした。
隙を見せる紀華に香理奈はハイキックを撃っていくと、紀華の側頭部を捉えた。
バキ、
強烈な一撃を喰らうとフラつく紀華。
耐えてダウンは逃れるも形勢逆転、今度は香理奈が攻め込んでいく。
パンチ、キックを織り交ぜて攻めていく香理奈。
紀華は香理奈の猛攻を受けて苦しい表情を浮かべるが、しっかりガードして決定打は打たせない。
すると、一方的に攻めながら有効打が決まらない香理奈は徐々にイライラが募る。
一方の紀華はガードでしっかり守って逆にリズムを掴んできた。
前のめりになってガードが甘くなっている香理奈の顔面に紀華のカウンターが入った。
バシ、
険しい表情になる香理奈。
すると、紀華がラッシュをかけていくが、香理奈も堪らず抱き着いてクリンチして逃れた。
一旦距離を置いて、呼吸を整える両者。
『ファイト』
再びファイティングポーズを取って構える香理奈と紀華。
攻め手を探り合う両者。
先に踏み込んできたのは女帝・紀華だ。
左右のワンツーパンチを香理奈の頬にヒットさせていった。
バシ、バン、
勢いに押されて仰け反る香理奈。
紀華はチャンスと踏み込んでくるが、香理奈は前蹴りで一度距離を取った。
すると、今度は香理奈が思い切ってハイキックを打っていった。
しかし、紀華は躱すとノーガードの香理奈のボディーにパンチを打っていった。
ボシュ、
香理奈が険しい顔つきになると、紀華は香理奈のボディーに照準を絞って攻め込もうとする。香理奈も応酬していくと打ち合いになった。
紀華のボディーブローに顔を歪ませる香理奈。
香理奈も対抗してボディーを狙っていくが、手応えが無い。
香理奈:(か、固い。何よこれ。)
紀華:(そんな、パンチじゃ私の鍛えられたボディーには効かないわよ。)
紀華のボディーに驚く香理奈。
これでリズムに乗ったのか、紀華がボディーブローの連打で香理奈をコーナーに押し込んでいく。
逃げ場の無い香理奈はガードを固めるも苦しい展開だ。
重量戦車・紀華のパンチが、香理奈のボディーに炸裂していく。
ただ、香理奈も腹筋を入れてよく耐えている。
ボシュ、
紀華は膝蹴りで香理奈のボディーをコーナーと挟んで串刺しにしていった。
これには悶絶する香理奈だが、フラつきながらも紀華に抱き着いてクリンチしてダウンを逃れた。
観客は紀華の攻めと猛攻に耐えた香理奈に拍手を送った。
紀華:(良く鍛えてるじゃないの。)
香理奈:(まだまだこれからよ!)
『ファイト』
リング中央に戻って試合が再開された。
香理奈は攻められたボディーが赤くなっているのを少し気にしているが、今度は香理奈が前に出た。
香理奈は紀華の顔面にジャブを連打すると、ミドルキックを打っていった。
バシ、
紀華:あう、
強烈なミドルキックに動きが止まる紀華。
香理奈は紀華のボディーは破れないと考えて、顔面に照準を絞って攻めていく。
香理奈は左右のストレートパンチを連打して、紀華を攻めていく。
必死に顔のガードを固める紀華だが、香理奈の打撃はガードの上からでも効くようで、紀華は苦戦を強いられる。
紀華:(凄いパワーね)
香理奈:(どんどん行くわよ)
香理奈は勢いに乗って紀華をパンチ、キックの連打で攻め込んでいく。
顔を攻撃されて頬を紅潮させる紀華。
しかし、紀華はガードを固めてダメージを最小限に止めて耐えるとカウンターの左フックを香理奈のボディーにヒットさせていった。
ノーガードのボディーにパンチを打たれて一瞬動きが止まる香理奈。
息を吹き返して前に出てくる紀華。
香理奈も体勢を整えて応戦すると打ち合いになった。
バキ、ボコ、バシ、バキ、
女同士の激しい打撃戦に盛り上がる観客。
香理奈も紀華もこの日のために鍛えた肉体からもの凄い打撃戦を繰り広げるが、逆にやはり打たれれば女の子の体とあって悲鳴を上げる両者。
それでも、ガードするよりも相手により強いダメージを与えようとパンチ、キックを浴びせる紀華と香理奈。
バキ、
香理奈の右ストレートが紀華の頬にヒットすると紀華は思わず顔を歪める。
ボシュ、
しかし、紀華もすぐさま香理奈のボディーにフックを入れると、悶絶する香理奈。
互いにダメージを受けながらも相手を痛めつけていくと迫力の打ち合いに拍手を送る観客。
『カーン』
ここで、1ラウンド終了のゴングが鳴った。
自陣に戻って椅子に座る両者だが、集中力を切らさないように相手を睨み付けている。
《紀華陣営》
紀華:ハアハア、顔への攻撃はキツイわね。ちゃんとケアして頂戴。
景子:ハイ、紀華さん。
紀華:香理奈もいい打撃してるわね。早目に決めないとしんどいわね。
紀華は気丈に振る舞っているが、肩で息をしており、スタミナ面ではだいぶ厳しそうだ。
《香理奈陣営》
香理奈:ハアー、
麗菜:香理奈、大丈夫よ。
香理奈:やっぱり、強いわね。このまま打ち合ったら体が持たないわ。2ラウンドで必殺技を使うわ。
麗菜:ちょっと早いけど…。そうね、行きましょう。
自分よりも一回り大きな紀華と打ち合って、香理奈は相当ダメージを受けてるようで、勝負を早く決めようと練習してきた必殺技を2ラウンドで出すようだ。
『カーン』
グシャ、
2ラウンド開始のゴングが鳴り響いて早々に香理奈が走り込んで行って紀華の顔面にヒットさせた。
香理奈の足の裏が紀華の顔面にめり込む様にヒットすると紀華はガードの用意すら出来ておらず、まともに喰らってしまい、仰向けに倒れ込んだ。
『ダウン』
レフリーはダウンを取ると香理奈をコーナーに戻して紀華の様子を見に行く。
顔を抑えてぐったりする紀華。意識はあるものの額が割れて流血している。
その間にもカウントが数えられる。
『ワン、ツー、スリー、フォー』
香理奈はコーナーに肘をかけて様子をじっとみている。
紀華:(う〜〜〜、痛いわ。けどここで負けるわけにはいかないわ)
険しい表情の紀華。
『セブン、エイト』
カウントは進んでいるが、紀華はなんとか立ち上がると歓声が起こった。
レフリー:紀華、戦えるか?
紀華:ええ、もちろんよ。
しかし、流血が酷いので、1度コーナーに戻っての治療が認められた。
コーナーに戻ると再びぐったりする紀華。本当ならKO負けだが、紀華の情熱によって特別に試合の権利が与えられている。
セコンドの景子らによる懸命の治療により流血は治まってきたが、ダメージは大きそうで、時間を稼いでいる。
紀華:顔への攻撃はあんまりだわ…。
景子:紀華さん、もうやめましょう。ダメージが大きすぎますよ。
紀華:ダメよ、この試合はタイトルマッチよ。
レフリー:おい、何モタモタしてるんだ。早く戻ってこい。
景子:ちょっと!待ちなさいよ。不意打ちなんだからもうちょっと待ちなさいよ!
レフリー:ゴングが鳴ってからだから有効打だ。早くしろ!
紀華:わかったわ。行くわ。
景子:紀華さん。やめましょう。今後に響きますよ。
紀華:馬鹿言ってんじゃないわよ!タイトルマッチに次は無いのよ。戦い方を良く見ときなさい!
紀華はフラフラになりながらもタイトルマッチにかける意気込みを見せてリング中央に戻った。
景子は心配そうに見つめている。
香理奈は盤石の体勢でファイティングポーズを取ってるのに対して、紀華は立っているのが精一杯といった感じだ。
『ファイト』
試合が再開されるとすぐさま、香理奈がチャンスとばかりに前に出てきた。
打ち合いになる両者だが、決着はすぐに着いた。
紀華も必死に打ち返すが、体力に差がありすぎた。
香理奈の鋭い打撃が立て続けにヒットすると紀華は自陣のコーナーに追い込まれていく。
ドス、ボコ、バキ、
ラッシュをかけていく香理奈。
紀華はガードを固めてカウンターを狙うが、香理奈のパワーに押されて次第にサンドバックにされていく。
紀華:う〜〜〜、
景子:紀華さん!
紀華は反撃も無くなってきて、呻き声を上げるだけになってきた。
景子の目の前で紀華はボコボコにされていく。
香理奈が顔面に絞って打撃を撃っていくと、紀華の表情がさらに険しくなる。
ボコ、バキ、ドカ、ボコ、
紀華:んあーー
悶えながらも懸命に闘おうとする紀華に声援が送られるが紀華に声援に応えるパワーは残って無い。
香理奈は前蹴りのように足を上げるが、打点を高くして紀華の顔面に脚の裏をぶつけていった。
グシャ、
紀華:フンギャ、、(くそ〜、顔を踏みつけやがって、、)
景子:香理奈、やりすぎよ!(紀華さん!)
心配する景子の声にも耳を貸さずに攻め続ける香理奈。
顔を踏まれて悔しがる紀華だが、思うように体が動かず、反撃できない。
すると、香理奈のハイキックが紀華の側頭部を襲った。
ガァン、
紀華は堪えきれずに倒れ込んだ。
景子:紀華さーん!!
『カーンカーンカーン』
1ラウンド2回のダウンで、香理奈のKO勝ちとなった。
香理奈は念願の紀華を倒してのベルト防衛を果たしてガッツポーズをしながら自陣で喜びを分かち合っている。
一方の紀華は倒れ込んでいるが意識はあり、落ち着いて治療を受けている。
紀華の周りに付き添っている景子は香理奈を睨み付けるが、香理奈は全く意に介さずに自陣の歓喜の輪に入っている。
『勝者:香理奈』
コールされると香理奈は麗菜と一緒に手を挙げて歓声に応えた。
すると紀華がフラつきながらも立ち上がると香理奈の方に向かっていくとマイクを取った。
紀華:ハアハア、負けたわ。香理奈、あんたの勝ちよ。
紀華はそう言うと主催者からK−1ベルトを受け取り、香理奈の腰に巻いた。
K−1ベルトの創設者である紀華に巻かれて嬉しそうな表情を見せる香理奈。
すると紀華と香理奈は共にマイクを持った。
紀華:私が作ったベルトを強い女王が巻いてくれて嬉しいわ。
香理奈:ベルト創設者の紀華さんに認められて嬉しいです。
紀華:強くなったわね、香理奈。本当に痛めつけられたわ(笑)
香理奈:紀華さんが作ったK−1ベルトの女王ですからね(笑)
紀華:あら、偉そうになったもんね。それにしても顔面を踏みつけられたのは今回が初めてよ。やるじゃない(笑)
香理奈:そうでもしないと紀華さんには勝てないですよ。許して下さい(笑)
紀華:香理奈、今回は私の負けだけど、次に対戦するまでにもっともっと鍛えて今よりも強くなるから待ってなさいよ。
香理奈:まだまだ、行けますよ。紀華さん、もっと強くなるんですか?敵わないですよ。
紀華:そういう意味じゃないわよ。今までは受け身だったけど、今日香理奈に負けたおかげで、明日からは挑戦者として臨めるわ。ありがとう、香理奈。それも強い女王がいるからよ。
そう言うと、紀華は香理奈と熱い抱擁を交わした。
互いの健闘を讃え合う両者に惜しみない拍手が送られる。
こうして、紀華×香理奈のK−1ベルト・タイトルマッチは幕を閉じた。
香理奈にとっては、大きな存在だった紀華を倒しての防衛は自信になっただろうし、それだけで勲章を得たと言っても過言ではない。
紀華は1ラウンドの内容では勝っており、“不意打ち”による一撃によって結果が付いてこなかっただけだ。それよりも女優として戦い方を香理奈に示せなかったのが残念だ。しかし、これまでは女帝・藤原紀華として挑戦を受ける立場であったが、今回の敗戦によって解放され、次戦から挑戦者のような立場で試合が出来る事を喜んでいるようだ。