「女子高生レスラー・美奈子」第2話 「小学生の部」

 美奈子は負けた。無惨な敗北だった。今までアマレスで積み重ねた技術など微塵も役に立たない「デスマッチ」。技もテクニックも無関係、勝つ為なら何をしても許される戦いだった。ふと、美奈子は額を触ってみた。朱美に噛み付かれ傷ついた額は手当てを受けていた。背中、太もも、腕、耳、どこもしっかり手当てされていたのだ。だが格好は試合で着ていた花柄の赤いワンピース水着のままだった。

 

辺りを見回すと、美奈子は刑務所の牢獄のような場所に入れられていた。その片隅には簡素なトイレ、洗面台、そして小さなモニターテレビ。窓もなく、唯一外を見れるのは鉄格子のみ。

「・・・あ・・・夢じゃなかったんだ・・・・」

その時、黒服の男が食事を持ってきた。

「食え!」

差し出されたのは肉も野菜もたっぷり入った、意外としっかりしたメニューだった。そういえば、あれからどれくらい時間が過ぎたのか?多くの血を失ったこともあり、美奈子はゴクリと唾を飲み込んだがふと我に返り言った。

「毒でも入ってるんでしょ!?」

「お前は大事な選手だ。毒殺などするものか。しっかり食ってまたリングに上がってもらわなければいかんからな。」

「じゃ・・・食べません!そしたら大事な選手も餓死して終わりよね。」

男はその言葉に苦虫を噛み締めたような顔をする・・・と思いきや、ニヤリと笑って言った。

「いやならいいんだぜ。タップリと栄養剤を注射した後『薬』を使うまでさ!」

「・・・え?く・・・薬!?」

そこへ、あの女プロモーターが現れた。

「あ・・・!貴女は!」

「元気そうね~、み・な・こ」

「貴女って人は!!!」

「うふふ。彼がいった話だけどね~・・・ホントよ!」

「え!!?」

「うちの選手はみんな、死ぬならリングの上なのよ~。だから試合を拒む娘には薬を使うんだけど?そうなったら悲惨よ~。なにせ、ものすごく高いんだから。薬を使われた娘はみんなファイトマネーの代わりに薬をもらうのよ~。」

「な・・・なんてことを・・・・!」

美奈子は言葉を失った。その時、試合場と思われる方向から物凄い歓声が飛び込んできた!

「いいぞー!!!」

「脱がせろー!!!そいつのマ○コを見せろー!!!」

「いや!もっと痛めつけろー!!!」

そして歓声がいっきに盛り上がる!

「おおーーーーーー!!!!!!!」

カンカンカン

ゴングが鳴った。

「ウフ、終わったようね。」

そして担架にすら乗せられず、黒服の男達に引きずられて選手が戻ってきた。真菜だ!

真菜は頭から腹の辺りまで血で真っ赤に染まって、失神している。

「真菜!・・・ま・・真菜!!!」

「あら~今日も負けちゃったわね」

次の瞬間、プロモーターは冷たい口調で男達に命じた。

「さっさと手当てして!まだ使うんだから!」

「真菜!!!」

鉄格子に頭を押し込むように真菜に声をかける美奈子。そんな美奈子の前髪を鷲摑みにして、プロモーターは先程とは違う穏やかな口調で言った。

「フフ、貴女は昨日素晴らしい試合をしてくれたから、今日は特別にオフにしてあげるわ。そ・れ・と~本当はそこのモニターで全試合を見てもらうんだけど、次の試合はリングサイドで見せてあげる。ウフフ。」

「つ、次の試合・・・?」

美奈子の頭に不安がよぎる。

「少し準備に時間があるから、会わせてあげるわ。次の試合に出る娘よ。」

連れてこられたのは美奈子の妹・典子だった!

「典子!!」

「お姉ちゃん!!助けて!!」

美奈子はプロモーターを激しく睨みつけ叫んだ!

「どうして!?妹は解放してって言ったじゃない!!」

「それがね~この娘、契約書にOKしたのよ」

プロモーターが見せたのは確かに出場の契約書。印鑑の代わりに手形が押してある。おそらく試合後の美奈子にすがりついて血まみれになった典子の手を押し付けてとったのだろう。

「・・く・・・卑怯者!」

「フフ、試合の準備ができるまでお話させてあげるわ。」

美奈子は泣きじゃくる典子に尋ねた。

「ね、あの人何か言ってた?」

「う・・うん。かなあみ・・・なんとかって言われたヨ。グス・・・」

「(金網デスマッチ!小学2年生の子になんてことを・・・!)いい?典子。お姉ちゃんの言う通りにするのよ。リングに入ったらね、すぐに相手の子のオッパイに『のりちゃんパンチ』を力いっぱいするの!典子、お姉ちゃんとけんかしたらよくやってたでしょ?その次は相手のお股に、よくパパにやってた『のりちゃんキック』よ!思いっきり!」

「でも、あれやったらいつもパパ泣いてたよ!?」

「いいの!今日は相手を泣かしていいの!で、相手が泣いたらね、典子駆けっことかジャングルジム得意でしょ?」

「うん。」

「思いっきり反対側に走って、そのままフェンスを登って外に逃げるの!そしたら典子の勝ちだよ!」

「わかった!お姉ちゃん、そうしたらお家に帰れる?」

「うん!一緒に帰ろうね!」

そのやりとりを、プロモーターは妖しい笑みを浮かべて聞いていた。

 

いよいよ試合の時が来た!美奈子もリングサイドに連行され、試合を見ることになる。

水玉模様の水着を着せられた典子が金網に囲まれたリングに押し込まれた。そして反対側のコーナーには、先日モニター越しにみたあのデブの6年生がいる。美奈子にとっては信じたくない光景だ。夢なら覚めて欲しいと何度も願ったが、リングアナのコールがそんな美奈子の僅かな祈りを踏みにじって響き渡る!

「本日のメインイベントは、女子小学生による金網デスマッチです!!赤コーナー、6年生、身長150cm、体重85kg、芝田依子~!!」

黒いスクール水着を着た依子。プロモーターが以前にいっていた。デブでなおかつ体臭がきついため苛めにあっている彼女は、このリングで憂さ晴らしをしているのだと。

「青コーナー、当L.D.F参加選手で最年少、2年生、身長128cm、体重30kg、小林典子~!!!!!!」

「うお~!!!!!!」

「小2だと~!?そりゃすげ~!!!!!!」

「依子~!今日も楽しませてくれよ~!!!」

その歓声に、今更ながら美奈子は感じた。

「こ、ここの観客はみんな普通じゃない!」

金網の出口は既に閉じられている。しかし、リング内にはレフェリーと思われるレオタード姿の女性がいる。

「(最悪の場合、あの人がストップしてくれるかな・・・・。)」

美奈子はそう思うとさっき典子に授けた作戦の成功を祈った。

典子は怯えていた。小刻みに震え、すでに汗をかいている。

「(典子・・・お姉ちゃんの言った通りにね・・・)」

と、その時レフェリーが典子と依子の首に首輪をかけた!しかも、その首輪は1m弱の鎖で繋がっていた!

「そんな!これじゃ典子は逃げられないじゃない!」

思わず美奈子が叫んだ!

「お・・!お姉ちゃん!!」

リングサイドを振り返り叫ぶ典子!

カーン!!

無情にも死闘の始まりを告げるゴングが鳴った!

依子が猛然と典子に突進する!逃げようとする典子!鎖につながれていることも忘れ金網を駆け上がろうとする!しかし鎖を引っ張られリングに引き戻されてしまう!尻もちをついてコーナーに追い詰められる典子。不気味な笑みを浮かべて歩み寄る依子。典子は美奈子の教えを思い出し、気合を込めて渾身の力で依子の胸にパンチを打つ!

「えーい!!!」

「いたっ!」

依子が怯む。続いて典子は依子の股間に蹴りを放つ!

「っつ・・・・!」

効いている!それを見た美奈子はいけると思った。

「典子!もっとよ!」

その言葉に応えるようにパンチを放とうとする典子。だが、その時依子が水着の中に手を入れ何かを取り出した。そして何かを握った手を典子のお腹めがけて突き刺すように繰り出した!

「キャー!!!」

たまらずお腹を押さえてうずくまる典子!

「うう・・・痛いよう~・・・」

立てない典子に凶器を握り締めた依子が歩み寄る。

「レフェリー!凶器持ってるでしょ!いくらなんでも小学生のプロレスでこんなのないわよ!」

美奈子の抗議にレフェリーは無反応。

「ウフフ。あの女は選手が試合続行できるかどうかをチェックする為だけにリングにいるのよ。」

何とか起き上がり、必死にロープに寄りかかる典子。その背後からにじり寄る依子。手にしている凶器はペンのようだった。

「フフ、シャープペンシルね。小学生らしい凶器だわ。」

シャープペンシルは先端が丸くない。ボールペンより凶器向きだ。

典子の前髪をめくり上げ、凶器で額を突き刺す依子!

「キャ~!!いったーい!!!やめてー!!!」

血と涙を流しながらもがき苦しむ典子!必死で依子の手と振りほどき逃げようとするがチェーンで引き戻されすぐに捕まってしまう。

典子を後ろからスリーパーホールドに捕らえ、太い腕で締上げつつ耳に噛み付く依子。そして耳を食いちぎらんとばかりに噛み付いたまま引っ張る!

「きゃーーーー!!!いたーーーーいーーー!!!!!」

依子は、今度は典子の体を自分の方に向けて逆さに抱えあげた。そして典子の顔面を大きな太ももでがっちりと挟み込む。

「・・・まさか・・・!」

美奈子がそう思った瞬間、パイルドライバーがきまった!しかも小さな典子の顔は依子の巨尻の下敷きになっている!

「んんー・・・!・・・ん・・・」

苦しむ典子の股を力任せに引き裂かんとばかりに大きく開かせる依子。

「んむーー!んんーー!!」

顔を押しつぶされ悲鳴もあげられない典子!

依子はそんな典子の股間をのぞきこみ、舌なめずりをした。

「可愛いわね~。羨ましいわ。あんたみたいに可愛い子みるとね、私を苛めるあの子達を思い出すのよ!!」

そう叫ぶと依子は典子の小さなお尻にかぶりついた!!典子の水着に鮮血がみるみる滲んでいく!さらに典子の顔を巨尻の割れ目にめり込ませるように激しく腰をくねらせる依子!

「の・・・典子―!!!」

美奈子は隣にいたプロモーターに頼み込んだ。

「お願いします!止めさせて!典子が契約したなら、その分も私が戦いますから!一日2試合でもリングに上がるから!」

プロモーターは無言のまま、笑みを浮かべてリングを見ている。

リングの上では、今度は依子が典子の顔面をわきの下に挟みこんでグイグイと締め上げている。その依子の怪力と腋臭にほとんど失神状態の典子。

「・・・もう見てられない!助けなきゃ!」

咄嗟に金網を上り始める美奈子。自ら試合を止めさせようと考えたのだ。

「フフ、無駄よ。」

プロモーターが呟いた。

ヘッドロックを解かれた典子はもはや立っている力が無かった。しかし首輪と長さ1mのチェーンで繋がれているため、倒れることができず宙吊りのような状態だった。

「典子!今行くからね!」

ようやく金網のてっぺんに辿り着いた美奈子だったが、ここでもまたL.D.Fの非情さを思い知らされた。下からではわからなかったが、金網の上はピアノ線が張り巡らされていた。リングから逃げることも外から助けに入ることもできないようになっていたのだ。

「の・・・典子・・・」

金網の上からリングを見下ろし涙を流す美奈子。

典子はもはや戦闘不能だ。

「もういいでしょ!レフェリー!その子の勝ちよ!試合を終わらせてよ!」

美奈子が叫ぶとレフェリーが典子の様子を伺った。そして依子に目をやる。依子は首を横に振った。するとレフェリーは試合続行を告げた!

「そ、そんな!!」

「フフ、依子はまだやらせろと言ってるのよ。」

美奈子は黒服達に引きずりおろされリングサイドに戻った。

典子はもう力を失い失禁さえしている。依子はそんな典子を、チェーンを持ってハンマー投げのように振り回し始めた。

「やめてー!!!典子―!!!」

典子を振り回しながら少しずつ美奈子の方へ近づく依子。そして、とどめとばかりに美奈子の眼前で典子の幼い肢体を金網に叩きつけた!!

「いやーーーーーーー!!!!!!!」

絶叫する美奈子!金網に叩きつけられ飛び散った典子の血が美奈子の顔にも当たった。そしてズルズルと崩れ落ちる典子。

カンカンカン!

ここでようやくレフェリーが試合を終わらせた。しかし、依子は勝ち名乗りを受けるどころか、典子の水着を脱がせた。

「あらら、やっぱりペタンコだね。オッパイ大きくしてあげようか?」

そういうと依子は、典子の乳首に噛み付き思いっきり引っ張った!

典子の乳首から血が流れ落ちる!

「やめてー!これ以上典子を苛めないでー!」

ようやくチェーンが外され、金網の出口が開かれた。美奈子は急いでリングに駆け上がり全裸の典子を覆い隠すように抱きしめた。

「の・・・典子ぉ・・・しっかりして・・・・。」

「デビュー戦としてはまずまずね。」

「デビュー戦!?まだやらせるつもりなの!?」

「何度も言ってるでしょ?勝つまでよ!」

「あ・・・悪魔!」

「フフ、嫌なら勝つことね。美しい姉妹の愛に免じて二人の部屋は一緒にしてあげるわ」

 

美奈子はキズだらけの典子と共にあの牢獄に連れ戻された・・・。

 

「女子高生レスラー美奈子」第2R 「小学生の部」完


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