「女子高生レスラー・美奈子」第3話 「Ladies.Death.Fight

 

L.D.F」・・・世間で知られている名は「Ladies.Do.Fight

武道、格闘技その他ジャンルを問わず、腕に自身のある女子選手が強さを競う女子格闘技の祭典。だが、その裏にはもう一つの顔「Ladies.Death.Fight」が存在する。前者は広く参加を呼びかけているのに対し、後者はスカウトのみ、観客も限られたルートでしかアクセスできないという、まさに闇の格闘技大会だった。そして「Ladies.Do.Fight」に参加後、行方知れずになった女性も何人かいた。

 

美奈子と典子がL.D.Fに囚われてから1週間、その間も二人はリングに上げられては痛めつけられる毎日だった。

今日もやっと生き地獄のような試合が終わり、生きていることだけが幸せと呼べるような状態だった。

傷の手当てや食事に関してはこれ以上ないと言えるほど充実している。

それも前に聞いた『死ぬならリングの上』という言葉のためだろう。決して選手を気遣ってのことではない。全てはL.D.Fの興行の為なのだ。

だがその時、美奈子の耳に一瞬悪魔がささやいた。

「(そうよ!いつもの生活に戻って、汗を流して稼いだお金でギリギリの生活をするより・・・明日もわからないような惨めな暮らしに戻るより、ここなら食事も保障されてるし、痛くて怖いけど治療にお金もかからないし、リングに上がってやられるのが仕事だと思えば・・・!)」

今頃、世間は正月を迎え、典子と同じ年頃の子達は晴れ着姿で楽しんでいることだろう。だが典子はこんな牢獄の中で水着のまま過ごし、美奈子は親代わりなのに1円のお年玉さえあげることが出来ない。

そんな惨めな心に、悪魔の声は大きくなっていく。

「(そうよ!勝つのよ!何をやっても勝つのよ!)」

そこへプロモーターが翌日のカードを知らせにやって来た。いつもその日の興行終了後に伝えられるのだ。

「ウフ、お・ま・た・せ。今回はあれこれ迷っちゃって〜。まずは典子ちゃん・・・」

典子がゴクリと息を呑む。

「ざ〜んね〜ん、明日は他の小学生の選手がいなくってお休みよ〜。」

典子はホッとした。もちろん美奈子もだ。

「で、美奈子だけど〜・・・」

美奈子は覚悟していた。どんな試合だろうと、どんな相手だろうと、どんな手を使っても勝つと!

「相手は堀内真理。42歳の熟女よ。そして試合は金網デスマッチ。」

42歳?・・ってベテラン選手なの?聞いたことない名前だけど・・・。」

「いいえ、格闘技はおろかスポーツ未経験の女よ。楽勝でしょ?」

だが美奈子には何かが引っかかっていた・・・。

「でも・・・いつもの相手みたいに、デブ女なんでしょ!?」

「いいえ〜、体格は美奈子と同じくらいよ。まあ、年の分それなりに贅肉はついてるけど〜。あと、金網デスマッチといってもルールは普通よ。ただ逃げられないっていうだけ。レフェリーもいるわ。だから〜安心して戦ってね。」

そういって立ち去るプロモーター。

「そうか・・・相手は素人のおばさん。しかも通常ルールの試合。勝てる!」

美奈子は典子に向かって言った。

「典子!お家に帰れるよ!」

「本当!?」

「うん!お姉ちゃん絶対勝つからね!」

格闘技もスポーツも未経験の熟女なら楽勝だと、美奈子は確信していた。そしてこれで少なくとも1試合分のファイトマネー30万円が手に入る。そうしたらそれを返上して、典子の参戦も取り消してもらおう・・・。

 

そして夜が明けた。差し出された朝食を済ませ、準備運動に余念が無い美奈子。

典子も昨夜の美奈子の力強い言葉にすっかり浮かれていた。

興行が始まるのは午後6時。5時まではトレーニングの時間に当てられている。

L.D.Fにもトレーニング施設がある。しかし美奈子や真菜のような『生け贄側』と朱美や依子のような『攻める側』は当然別の部屋である。

「さあ!トレーニングよ!」

意気揚々とトレーニングルームに入る美奈子。典子も一緒である。

部屋の一角で、サンドバッグにタックルの練習をしている真菜を見つけた。

額には大きな傷パッド・・・どうやら昨夜もひどい凶器攻撃を受けたのだろう。

「真菜、精が出るわね。」

美奈子が声をかけると

「・・・だって、一日も早くここから出たいもん・・・。」

真菜がそう言った時、美奈子は前から気になっていたことを尋ねた。

「ん・・・ねえ真菜。あんた、どうしてこんな所にきたの?」

「・・・。」

「私もそうだけど、あんたも騙されたんでしょ?・・・私は経済的に困ってたから盲目になってたけど、あんたは・・・。」

「先輩!!」

真菜が美奈子の言葉を遮る。

「・・・みんな・・ここにいる人たち、みんな同じなんです!」

そういうと真菜は無言でサンドバッグにぶつかり始めた。美奈子は何故か、それ以上何も聞けなかった。

周りにいる他の女達もしばし二人の会話を聞いていたが、また各々の練習に戻った。真菜のようにサンドバッグに向かう者、パンチングボールを殴り続ける者、リングに上がってスパーリングをする者。しかし、スパーリングといっても美奈子から見ればほとんど素人の取っ組み合い。

「こんな練習じゃ、勝てないわよね・・・。」

美奈子はポツリと呟いた後、真菜のところへ行った。

「真菜、リングが空いたらスパーリングよ!」

「え?」

真菜は一瞬驚いたが、そのうち笑顔がこみ上げてきた。

「はい!よろしくお願いします、美奈子先輩!」

「じゃあ、後でね。それまで典子を鍛えてくるわ!」

「ウフ、典子ちゃん、お気の毒。」

美奈子は空いているマットの上で典子にレスリングを教え込む。その厳しさに思わず泣き出す典子。

「お姉ちゃん!やだよ〜!もうやだよう〜!」

「典子!強く・・・強くなるのよ!戦うためじゃなく、生きる為に!」

そしてリングが空いた時、美奈子と真菜のスパーリングが始まった。

美奈子は思ったのだ。たとえ自分が今日の試合に勝って典子と一緒にこのL.D.Fから逃れることが出来ても、真菜は勝たない限りここのリングに上がり続けなければならないのだと。なら、自分の全てを真菜に伝え、彼女の成長を助けようと。トレーニング終了の時間ギリギリまで二人のスパーリングは続いた。

 

いよいよ、今日の興行が始まる時間がきた。

「そういえば、お姉ちゃんと試合する人、見なかったね?」

「ええ・・・多分、私みたいに突然リングに上げられるか、別の部屋で練習してたのね。試合前に私と会わないように・・・。」

やがて、歓声と共に第1試合が始まった。美奈子達の牢獄のモニターにもその模様が映される。そこには、さっきまで同じトレーニングルームにいた女性達が明らかに自分より強そうな、あるいは凶暴性剥き出しの巨女たちにいたぶられる光景が次々映し出される。

ある女は泣きながら助けを乞い、ある女は恐怖の余りリングを飛び降りて逃走するも捕まってリングに引きずり戻されて叩きのめされ、そしてある女は失神してもなおマットに叩きつけられる。

そしてセミ・ファイナル、美奈子が初めて戦った朱美と真菜のチェーンデスマッチだ。

真菜は美奈子とのスパーリングで思い出したレスリングのテクニック全開で挑む。タックルで朱美の巨体を押し倒し、すかさず立ち上がってボディに蹴りを連発する。

「いいぞ〜まな姉ちゃん!!」

典子が声援を飛ばす横で、美奈子は不安な表情で見ていた。

「真菜・・・それだけじゃダメよ・・・。」

真菜は蹴りの連発で息が切れていた。だが、それにも関わらず朱美は全くダメージを受けていなかったのだ。軽量の真菜の蹴りは朱美の太ったボディには効いていなかったのだ。

おもむろに立ち上がった朱美は真菜のボディにパンチを1発!

たまらず崩れ落ちた真菜の背後に回りこみ、チェーンで真菜を締め上げた!

「ハァ・・・・・ク・・・・・・ウゥ・・・・・・・・」

「やってくれたわね!」

朱美は真菜の額の絆創膏を引き剥がした!昨日の試合で受けた攻撃よほどひどかったのだろう、真菜の額には生々しい傷跡がある。朱美は躊躇なくその傷口に噛み付いた!

「アアアアアアーーーーー!!止めてーーーーーー!!!!!!!!」

塞がりかけていた傷口から更に鮮血が流れ落ちる!朱美はその血をすするかのように傷口に噛み付いて放さない。やがて真菜は意識が薄れてきた。

「フン!これでお終いよ!」

そういうと朱美は真菜の首に巻きつけたチェーンを使って背負い投げの要領でロープの向こうへ投げ飛ばした!チェーンがある為、当然真菜は宙吊りの状態になってしまった。渾身の力でチェーンを引く朱美。真菜は次第に白目をむき、涎をたらして失神した。

真菜の試合が終わった。次はメインイベント。美奈子の試合だ。

「じゃ、行ってくるね。待っててね典子。」

そう言って美奈子はリングに向かう。

視線の先にあるのは10m程の高さの金網に囲まれたリング。レフェリーは・・・

典子が依子と戦わされた時にもいたあのレオタードの女!彼女が止めてくれれば典子はあそこまで苦しまなかったのに!そんな思いと共にリングに上がる美奈子。そして、対戦相手の堀内真理がリングに上がった。

素人の40代の女、リングに上がってもオドオドして落ち着かない様子だ。

「(勝てる!)」

美奈子は確信した。

そしてゴングが鳴った!

新しく薄紫色のワンピース水着を与えられた美奈子。対する真理は花柄模様の茶色の水着を着ている。

すかさずタックルを仕掛ける美奈子!

「キャッ!!」

すばやく身をかわす真理。

「(なかなかすばしっこいのね)」

そう思うが早いか、再びタックルで追う美奈子。今度は捕まえた!

しかしロープ際だったのでブレイクを命じられる。

「アマレスにはロープブレイクなんてないから、ちょっとやりにくいな・・・でも慎重に攻めれば勝てる!」

真理は早くも息があがっている。年齢差もあるが鍛えていた美奈子とそうでない真理との違いだろう。

美奈子は裏投げで真理をリング中央に投げる。そしてフォールの体勢に入った!ここならロープには届かない!

「レフェリー!フォールよ!」

美奈子に促されてレフェリーが仕方なさそうに歩み寄り、カウントをとる。

「・・・ワン・・・ツウ〜・・・」

「お、遅いじゃない!!」

美奈子の抗議ももっともだ。普通に数えればとっくに10カウントでも取れそうな遅さだった。その間になんとか肩を上げる真理。そして苦し紛れに美奈子の肩に噛み付いた!

「キャア!!」

するとレフェリーは反則のカウントをとるのではなく注意するだけだった。

「ハイハイ、噛んじゃダメよ。」

必死に噛み付く真理の歯が美奈子の鎖骨の辺りに食い込んでいき、血が流れ始めた!

「レフェリー!反則でしょ!カウントは!?」

「え?ああ、そうね。ワ〜ン、ツ〜、スリ〜、フォウ〜・・・そろそろ止めないと反則負けよ。」

悠長にカウントをとるレフェリーに言われてようやく噛み付きを止めた真理。

美奈子は傷ついた肩を押さえながら思った。

「(まさか・・・この二人はグル?)」

だが美奈子が見上げた時に見た真理の顔は、今まで戦わされた凶暴な女達と違い、何か追い詰められたような、そしてどこか悲しい目をしていた。そして真理も美奈子の肩から流れ落ちる血をみて、しばらく立ち止まっていた。美奈子の胸に迷いが生じる。

「(もしかして、この人も私みたいに連れて来られたの?何か事情があるの?)」

だが、今の美奈子には他人の事情を思いやる余裕などない!真理を睨みつけながら立ち上がる美奈子。そしてドロップキックを放つ!その勢いでロープに飛ばされ、戻って来た真理に強烈なラリアットを決める!もちろんアマレスにはない技だ。美奈子はこのL.D.Fのリングでただやられるわけではなく、色々な実践技を体得していたのだ。

「フフ、流石だわ〜。ねえ、例の準備はしてあるわよね?」

試合の流れを見ていたプロモーターが黒服の側近に尋ねると、静かに頷いた。

更に美奈子はエキサイトするあまり、自分が受けてきたラフ攻撃までしていた。真理の額をロープに擦り付ける!背中をかきむしる!

モニターでそんな美奈子の姿を見た典子は叫んだ!

「やめて!お姉ちゃん!怖いよ!こんなのお姉ちゃんじゃないよー!」

その典子の叫びが心に響いたのか、美奈子は我に帰った。

「(わ・・・私、何してるの!?こんなことしなくても勝てるじゃない!)」

ラフファイトを止め、美奈子は真理をキャメルクラッチに捉えた。格闘技もスポーツも経験のないという真理。もはやギブアップ寸前だ。だがレフェリーが理不尽にブレイクを命じた。

「美奈子!チョークよ!」

「そんな!?」

「ワン!ツー!スリー!・・・」

反則のカウントをとられ、仕方なく技を解く美奈子。

かろうじて立った真理は突然背中を向けて駆け出し、金網を上り始めた。逃げようというのだ。

「ダメ・・・ダメ〜!!やっぱり私・・・こんなのイヤ!」

泣きながら金網をよじ登る真理。

「ここでエスケープされたら負けになる!!」

美奈子は金網に飛びつき、真理の足をつかんで引きずりおろしにかかる。

真理の太ももにしがみつき、力ずくでリングに引き戻す美奈子。

「お願い・・・もう許して・・・。死にたくないの!!」

「私は貴女を殺す気なんてないわよ!!」

「だって・・・ここは相手を殺すまで戦う所だって・・・。そして、相手は私より小さい素人の女の子だって言われたのに・・・!」

「!・・・あ、貴女、もし私が貴女より小さい素人の女の子だったら殺すつもりだったの!?そして、私にかなわないからって逃げようとして、命乞いするの!?」

「だって・・・」

「お金の為に、人を・・・自分よりも弱い相手を殺そうなんて・・・!!」

と、その時リングサイドに一人の少女が息を切らせてやってきた。

「お母さん!!」

少女は真理に向かって叫んだ!

「え?お母さん?」

その少女は見ると車椅子に乗っていた。

「幸子!どうしてここに!?」

真理が叫ぶ。

「連れてこらられたのよ!お母さんが働いてるとこ見学させてくれるっていうから・・・なのに!なんでそんな所でプロレスなんかしてるの!?お母さんは暴力なんて反対じゃなかったの!?」

美奈子は暫し立ち尽くしていた。真理はリングの隅へ歩み寄り、金網越しに娘・幸子に話し始めた。

「幸子・・・ごめんね。・・・お父さん、あんな人だったから貯金なんて1円もないし、それどころか保険金だって全部借金返済に充てないといけないの。

でもね・・・お母さんは手術のお金を何とかしたいの!そうすればこれからの生活だって・・・!だから、お母さん、暴力は嫌いだけど戦おうって決めたの!」

その会話を聞いた美奈子は涙が出そうになった。この母子の不幸、そして自分たち姉妹の不幸に。そして、そんな人の不幸につけいって殺し合いをさせるL.D.Fの卑劣さに!

金網越しに手を取り合う真理と幸子。そこに自分たち姉妹の姿を重ね見る美奈子・・・。

だが、次の瞬間!振り返った真理が美奈子の腹にパンチを叩き込んだ!強烈な、そして突き刺さる痛み!真理はその拳にメリケンサックを握っていた!幸子が渡したようだ。

一瞬、美奈子は状況がわからなくなった。その間に真理は美奈子の前髪をめくり上げ、メリケンサックで額を殴りつける!あっという間に美奈子の顔面は鮮血に覆われた!

「な・・・なんで?・・・貴女は・・・」

「そうよ!お金がいるの!もっと若い顔に整形する為にね!」

「じゃあ・・・手術って・・・」

「もちろん、整形手術よ!金づるの男を引っ掛ける為にね!」

「ママ!今度はもっとお金持ちのパパが欲しいな〜」

幸子は車椅子から立ち上がっている。全て芝居だったのだ!

その光景をみたプロモーターが囁いた。

「美奈子。非情になれない娘はこのL.D.Fでは生きていけないわよ。」

リング上では真理の攻勢が続く。

「さっきやってくれたのはこんなんだったわね!」

美奈子の傷ついた額をロープに擦り付けながら走る!

「キャアーーーーーーー!!!!!!」

「次はこれだったかしら?」

ダウンした美奈子の背中にメリケンサックの突起を突き立てかきむしる!

「ウウーーー!!!アアアアアーーーーーーーー!!!!!!」

顔面も背中も血だらけの美奈子。

「レフェリー・・・凶器・・・でしょ・・・?」

「あら?私には見えないわよ?」

真理は美奈子に馬乗り状態で、凶器パンチを浴びせ続ける。

そして美奈子の首に手をかけ、苦しみの余り開いた口にメリケンサックをねじ込んだ!!

「ンアーーーーー!!!!!アアアアアアアーーーーーーー!!!!!」

美奈子の口から夥しい血が流れ出す!メリケンサックを握った真理の拳が丸ごと入っていきそうな勢いだ!このままでは頬まで裂けてしまう!

だが次はその手を引き抜き、メリケンサックを拳から外して美奈子の水着の股の部分へ入れた。そして、股をめがけてのストンピングのラッシュ!

「ハアーーーーーー!!!!ウアアアアアアアアーーーーーー!!!!!」

美奈子の股間から大量の血が流れ出す!

股間に入れられたメリケンサックの為に、まともに立つことも出来ない美奈子。なんとか取り出そうとするが、真理の攻撃に合いどうにも出来ない。

余裕の表情に変わった真理が美奈子に言った。

「私が格闘技もスポーツも経験ないって聞いてたでしょ?それは本当よ。私が経験してきたのは、ここL.D.Fの殺し合いだけだもの!!」

そして美奈子を抱え上げ、メリケンサックが入った股間を鉄柱に叩き付けた!!

「ア・・・アアアアアアアーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

激痛と悔しさの中、美奈子はL.D.Fの底知れぬ卑劣さと恐ろしさを思い知らされた。そして、そのまま意識を失った。

カンカンカン!

ゴングが鳴った。美奈子の失神K.O負けだ。

だが典子はホッとした。家に帰れるより美奈子が生きていることの方が何よりだったからだ。

 

試合後、真理がプロモーターのもとへやって来た。

「今日はいくら貰えるのかしら?」

「そうね〜・・・15万てとこかしら?」

「なんですって!この私が前半あれだけやられ役になって、盛り上げたじゃない!それに、注文通り、殺さずに仕留めたでしょ!」

「私の期待した程、あの娘の力を引き出せなかったからよ。」

「だけど!・・・それじゃ、いつもの半額以下じゃない!!」

抗議する真理に、それまで背を向けて話していたプロモーターが振り返って言った。

「文句があるなら〜、私と試合する〜?」

口調とは正反対の冷たい視線に真理は凍りついた。

「い、いえ・・・。有難く頂きます・・・。」

「それでいいのよ・・・。」

 

一方、牢獄に戻った美奈子はようやく目を覚ました。そして泣いている典子に

「ごめんね・・・」と詫びた。しかし典子は思い切り首を横にふり

「いいの!お姉ちゃんと一緒にいられるからいいの!」

そう言って傷だらけの美奈子に抱きついた。

やはり、ここにいる限り恐怖や不安に縛られるだけで自由がない。ここにいることは幸せなんかじゃない!美奈子はL.D.Fに勝つ決意を新たにした。

 

Ladies.Death.F ight

ここにスカウトされるのは体格に関係なく「女」としての容姿を持つ者である。そして、適性や目的によって「生け贄」と「攻める者」に分類される。

そして、選手の死はリングの上のみ。「生け贄」がこの地獄から逃れる方法は二つに一つ

残虐な「攻める者」になるか、試合に勝つかだけである。

 

「女子高生レスラー・美奈子」第3R 「Ladies.Death.Fight」完
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